月別アーカイブ: 2017年4月

The 4th Japan Korea Knee Osteotomy Symposium(赤川学)

平成29年4月22日、富山市民プラザにおいてJapan Korea Knee Osteotomy Symposiumが開催されました。我々ASAKGはここ数年毎年このシンポジウムに参加していますが、今回はシンポジウムに先立ち、前日の4月21日にAO Around the Knee Osteotomy seminarが開催され、国内外の膝周囲k関節温存手術のエキスパートからOsteotomyの基本を学ぶ機会を得ました。セミナーには海外からの参加者も多く、講演からハンズオンまで大盛況でした。当科からは齊藤英知先生がFacultyとして講演し、日本一のTCVO surgeonとして手術手技の基本から豊富な症例を示してくれました。

翌日のJapan Korea Knee Osteotomy Symposiumにも多くの整形外科医が集い、関節温存手術の最新の研究について熱いdiscussionを交わしました。当科からは塚本泰朗先生、佐藤千恵先生がポスターセッションで、斉藤公男先生、齊藤英知先生が口演で発表しました。国内外を通してもTCVOを行っている施設は限られており、その発表は大きな注目を集めました。

ここ数年、膝関節温存手術は急速に普及してきており、特に日本の様な膝の深屈曲を要する生活様式では、その需要はまだまだ大きなものがあると思います。HTO、TCVO、DFOとその術式は多様で、さらにこれらを組み合わせたDouble level osteotomy、Double level triple osteotomyにより、進行した変形性膝関節症患者さんにも対応できる様になってきています。関節温存手術で痛みを取りながらも、自分の膝で生きていく。この意義は非常に大きく、我々ASAKGはますますこのOsteotomyの発展に貢献していかなければならないと感じました。

第8回日本ニューロリハビリテーション学会、The 6th Japan-Korea Neurorehabilitation Conference(木村竜太)

H29年4月22日、23日に富山国際会議場で第8回日本ニューロリハビリテーション学会、The 6th Japan-Korea Neurorehabilitation Conferenceが開催されました。当大学からは島田洋一教授が「Neurorehabilitation with most advanced biomedical engineering technology」と題してlectureを、松永俊樹先生、木村が一般口演で、岩本陽輔先生がポスター発表を行いました。島田教授から、我々の主なテーマである医工連携による医療機器の開発ならびにその臨床応用について、韓国の先生方にも力強いメッセージを伝えていただきました。

ニューロリハの概念が一般的となり、黎明期、そして揺籃期を経て次の段階へ進む時期のようです。再生医療技術、またロボット技術の発展で急激に発展する可能性をもった分野であり、秋田大学整形外科、リハビリテーション部でも最先端の知識を得ながら、日常診療に還元をしてまいります。

 

追記、晴天の春の富山はとても清々しいところでした。同日隣で行われていた The 4th Japan-Korea Knee Osteotomy Symposium参加の先生と交流もできました。

第46回日本脊椎脊髄病学会学術集会 (工藤大輔)

第46回日本脊椎脊髄病学会学術集会を2017年4月13日〜4月15日、札幌市のロイトン札幌、さっぽろ芸文館で秋田大学整形外科主幹のもと開催させていただきました。遠方にもかかわらず演題数約1500題、参加者数約2300人といずれも過去最大級の学術集会となりました。会長は当教室島田洋一教授で開会式では本大会のテーマ「サイエンスに基づく脊椎脊髄外科の進歩 The practice of spine surgery is an art, based on science」とともに教育研修講演、シンポジウム、パネルディスカッションなどについてご紹介いただきました。また秋田ならではのおもてなしの一つとして秋田銘菓かおる堂についてご紹介いただきました。

各セミナーでは、日本の第一線でご活躍されている先生方に教育的かつ最新の知見について幅広い分野からご講演いただきました。秋田からは阿部栄二先生より成人脊柱変形の治療の変遷と現在の最新知見について、宮腰尚久准教授より骨粗鬆症患者における転倒・骨折予防に対する運動療法とビタミンDの有効性について大変分かりやすくご講演いただきました。また河谷正仁教授より慢性疼痛に関するfMRIや遺伝子工学などを用いた最新のメカニズムについてご講演いただきました。

本学術集会の目玉の一つであるパネルディスカッションでは「医工連携による脊椎バイオメカニクス研究」として日本あるいは世界最先端のシミュレーション技術、バイオメカニクスについて各大学の先生方から最新の研究をご紹介いただき、活発なディスカッションとなりました。特に秋田大学からは理工学部教授巌見武裕先生、当科飯田純平先生より秋田大学独自の最新のシミュレーションモデルについてご紹介いただきました。本モデルの作成は現在もなお進行中で、近い将来本モデルを用いて臨床データをより迅速に検証、評価できるようになるものと期待されています。

会長講演では島田教授より脊柱変形診療の歴史についてご講演いただきました。30年以上も前から秋田県ではモアレ法を用いた側弯症検診が行われてきたこと、1992年当時に世界に先駆けて当教室で胸椎椎弓根スクリュー法が開発されたことなどをご講演いただきました。現在では胸椎椎弓根スクリューは側弯症手術におけるゴールドスタンダード法ですが、当時は危険な方法として世界に受け入れられなかったことなど先輩の先生方の当時の革新的な手術法の開発、それに伴う苦労が伝わってきました。

会期中は一時季節外れの吹雪にも見舞われましたが、幸い大きなトラブルもなく、日本全国のみならず教育講演として世界中から第一線でご活躍されている先生方にもご参加いただき大盛況にて閉幕となりました。ご参加くださいましたすべての先生方、関係者の皆様、企業の皆様、また2年前から本大会を支えてくださいました株式会社コングレの皆様にこの場をお借りして深謝申し上げたいと思います。また本大会が大成功しましたことを会長の島田教授に改めてお慶びお祝い申し上げます。

5月13日 秋田大学Ilizarovセミナー開催します(野坂光司)

5月13日 秋田大学Ilizarovセミナー開催します

申込みは nozakak@med.akita-u.ac.jp 野坂光司まで

場所:秋田大学医学部附属病院 臨床棟 2階カンファランスルーム(整形外科医局隣り)

先着30名 参加費無料です

今回のベーシックコースは最新のシステムを用いた新鮮外傷の実際です.可変式ストラットによる明日から使える開放骨折治療の奥義を伝授いたします

プログラム

9:35~9:40  島田洋一教授ご挨拶

9:40~10:10  レクチャー(野坂)

10:10~11:40 ハンズオンセミナー(リング型創外固定のベーシックコース)

2017 AAOS(American Academy of Orthopaedic Surgeons,アメリカ整形外科学会)のpaper(口演)を経験して,いま思うこと(野坂光司)

2017年3月14日~3月18日,サンディエゴで開催されたAAOSで.口演してまいりました.発表内容は,足関節周辺骨折におけるMATILDA法(Multidirectional Ankle Traction using Ilizarov external fixator with Long rod and Distraction Arthroplasty of Pilon fracture )の有用性についてです.MATILDA法とは,秋田Ilizarov法グループで発案した,高齢者足関節周辺骨折に対して行うIlizarov創外固定の特徴を生かしたLigamentotaxisによる整復, Distraction Arthroplastyを行いつつの早期荷重を可能にするリング設置による治療法です(別冊整形外科66:173-177,2014,整形外科サージカルテクニック 5:56-62, 2015,整形外科手術 名人のknow-how イリザロフ創外固定を用いた難治骨折の治療.整・災外 59:1152-1157,2016).

20年後の関節症性変化が勝負とされるPilon骨折において,わずか1年の臨床成績のこの我々の後ろ向き研究に対し,これまで国内のプレゼンではときに批判も受けてきましたが,今回,難関のAAOSのOralに採択されたことで,さらに,フロアの反応も良好だったことで,我々のしてきたことが世界でも認められたと嬉しく思っております.

県内では,島田教授の応援に加え,山田晋講師が『MATILDAっていいな』と言ってくれたことがとても心強かったです.

また国内でも,私のIlizarovの師匠である大関教授や杉本先生,さらには多くのPilon骨折の達人の方たち,特にJSETS土田芳彦先生の応援は非常に心強く,『MATILDA法は世界に誇るべき優れた方法です』という励ましのメッセージを,AAOS発表前,緊張を和らげるために何度も読み返しました.今回創外固定学会で多くのシンポジウムを下さった白濱正博先生,また衣笠清人先生,野田知之先生,小川健一先生,松村福広先生ら,多くのプレートの達人,髄内釘の最上敦彦先生や,EOTSで認めて下さった黒住健人先生など,IlizarovなしでもPilonをラクラク治せてしまう天才外科医の方々の励まし,Ilizarov界では竹中信之先生の応援など,私が若い頃から本当に憧れ,目標にしてきた多くの偉大な先生方がMATILDA法を認識して下さったことはAIMGにとって本当にありがたいことです.

留学先のBossで,アメリカ足の外科学会の重鎮であるProf. Brodskyの高評価と激励も大変な自信になりました.

これまでIlizarovのプレゼンをするたびに,幾度となく『そんなもの(Ilizarovなんか)いらない』と言われてきました.その通りです.患者さんを,トラブルなく,内固定し,しっかり歩かせられて,早期に社会復帰させることができれば,あんな大きくて不快なIlizarovなどいらないのです.僕はMATILDA法が最強だ,などとは微塵も思っておりません.内固定で上手く,そして早く社会復帰させられたら,それに優るものはないのです.でも残念ながら,世の中は天才外科医だけではありません.私のもとには多くの悲惨な感染例が紹介されてきますし,骨はついたけど尖足で困るといった症例なども後を絶ちません.いい手術だけど2ヵ月ほど『足をつかないで』と言われてリハビリ病院で車イス生活になった人もいます(それはいい手術ではないかも).

いつも思うことは,プレート,髄内釘,Ilizarovは単なる固定材料であり,そこに優劣などつけるべきものではありません.Bone Transport,血管柄付腓骨移植,Masqueletも手術方法であり,それに優劣をつけようとするのも同様の行為と思います.大切なのは,どの治療戦略が,目の前の患者さんを最も上手く早く治すのかという,詳細な術前準備と,患者を最後までしっかり治そうとする強い意志(自分の哲学)と,自分の力量の把握だと思います.

何事も,我々の対象は患者さんです.外科医の手術自慢であってはなりません.その患者さんにとって何がベストなのか,症例ごとに大腿骨か下腿か,関節内か関節外かなどの部位,重症度のグレード,骨強度,若年か老年か,骨欠損なら大きさ,開放骨折ならGustiloのグレードなど,丁寧に適応を議論したり,エビデンスを模索すべきものなのに,一元的に何が一番いいかに固執することはナンセンスと思います.

自戒も込めて,若手にはIlizarovは患者の快適さを犠牲にしているという謙虚さを常に忘れないように口を酸っぱく言います.1㎜の整復不良が,1日のLIPUSの注文忘れが,骨癒合を遅らせるのです.また,AFTTGの若手にはFlapは健常組織を犠牲にしているという謙虚さを忘れないMicrosurgeonになってほしいです(もちろん積極的に必要なFlapを行うことで,これまでのIlizarovよりも快適な術後生活を早く提供できる腕も身に着けてほしいです).相手は生きた患者なのです.

最近,偉大な先生方の講演を拝聴し,トラブルケースの相談を受け,思うところを綴ってみました.

日本中の優秀な外傷外科医が本気で力を合わせたら,日本中の患者がHappyになるはずです.いがみ合っている場合ではありません.

そのような日が一日も早く訪れるように,もう若手ではない自分は,『老害』と言われないように勉強を続け,もっともっと自分の尻を叩いて,奮起しなくてはと思います.時代は刻一刻と変わり,この多様性に適応するには,あらゆる分野の『融合』が必要なはずです.まさに『現状維持は退化』なのだと感じずにはいられない今日この頃です.