月別アーカイブ: 2018年3月

留学報告⑱ 医学教育について(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Institute(OTI)です.

今回は,米国の医学教育についてです.

今の時代,アメリカと日本の医学教育の違いなどは,調べればどこにでものっている内容なので簡単に説明と,実際に見学してみての印象を報告します.

日本の場合,整形外科医になるためには 大学医学部(6年)⇒初期研修医(2年)⇒医局所属/民間病院整形外科所属(4年)⇒整形外科専門医,という流れです.基本的に初期研修医も専門医も同等の責任があります.

アメリカの場合は 一般大学(4年)⇒メディカルスクール(4年)⇒レジデント(4-5年)⇒(フェロー(2-3年))⇒整形外科医です.

メディカルスクールに入学するために,推薦状が必要で,それをもらうためには医療機関でのボランティアなどが必要となるようです.そのため,病院では医師やレジデントの他に学生ボランティアもよくもみかけ,医師や患者さんと接して,診察以外のできる業務を行っています.この制度は医師を目指す前に現場をよく知る意味でも非常に有用だと感じました.

メディカルスクールに入ってからはほぼ休みなしで,1年目が座学,2−3年目には病院実習となり,レジデントとともに診察を行ったりもします.日本の研修医1−2年目のようなことをここで全て行います.4年目はSub I(サブアイ)と呼ばれ,インターンの下,日本でいう研修医と同様のことができ(しないといけない),その間に次年度以降に行きたい希望の科のレジデンシープログラムにマッチングするという流れです.

レジデント1年目はインターンと呼ばれ,日本で行われているスーパーローテートを行います.2−5年目は専門科の研修をみっちり行うシステムです.レジデントの過程が終了すると晴れて専門医試験を受ける資格を得て,試験通過後,専門医としての活動が可能です.希望者はその後,更に専門性の高いフェローシッププログラムにマッチングして1−2年のフェロー研修を行います.

上級医はアテンディングと呼ばれ,その待遇が保証されている一方,責任も大きくなり,レジデントの責任も担保しないといけなくなります.

この立場の違いが変わる日も厳密に決められていて,毎年7月1日から.この日を境に立場と責任が(賠償保険の額も)急激に変わるため,レジデント4-5年目やフェローは死に物狂いで手術に明け暮れる生活だそうです.

よく,日本の学生はアメリカと比べて…,とか,日本の研修医はアメリカと比べて…とかいう批評・批判があったりしますが,システムが違うので一概に比較はできないと思います.ただ,アメリカの医学生やレジデントは非常に優れたコミュニケーション能力と臨床能力を確かに持っていました.日本の学生や研修医ができないという意味では無く,日本より病院の中でやれることが多く,よく訓練されていて,厳しく淘汰されている,という意味です.また,上下ペアにする教育方法が浸透していて,指導する立場と指導される立場が明確です.皆が必ず下の先生を教育するという経験していることはとても重要なことだと思います.

話は少しそれますが,山形大学や兵庫医科大学では整形外科修練医の先生を毎年OTIに短期留学させる試みを行っているようです.言葉の壁はハードですが,ここのレジデントやスタッフはアットホームなのでとても勉強になると思いますし,モチベーションも上がりそうです.ちなみに秋田大学も毎年4月にOTIの外傷コースに若手の先生が約1週間参加し,研鑽を積んでいます.

 

 

 

 

 

 

 

 

左が3rd gradeの医学生.この時期から予診を行い,上級医にチェックを受けます.順にレジデント,長尾先生,ロザリオ先生

 

 

 

 

 

 

 

 

左から長尾正人先生,兵庫医大吉江先生,山形大学金谷先生,筆者

つづく

留学報告⑰ 五十嵐先生,笠間先生 訪問(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

今回はAAOSと五十嵐駿先生,笠間史仁先生訪問

2018年3月6日からアメリカ整形外科学会(AAOS)学術集会がニューオリンズで開催されました.

3月9日に,これから整形外科の仲間に加わって頂く,秋田厚生医療センターで初期研修中の笠間史仁先生,中通総合病院で研修中の五十嵐駿先生のお二人がサンフランシスコを訪問してくれましたのでご報告致します.

 

 

 

 

 

 

 

 

長尾正人先生と

研究スタッフや現地のドクターとも交流し,米国留学の雰囲気の一部を味わって頂きました.その後,食事を含め,サンフランシスコ市内を少しだけ観光して頂きました.

 

 

 

 

 

 

 

 

Facebook本社前

 

 

 

 

 

 

LGBTの聖地,カストロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フルハウスの舞台(もう分からない人も多いかも)

楽しい時間をありがとうございました.4月から一緒に頑張りましょう.

つづく

第55回 秋田県脊椎脊髄病研究会(飯田純平)

去る317日秋田県脊椎脊髄病研究会が開催されました。

研究会では木村先生と尾野先生に症例提示をしていただき,それに対し秋田大学神経内科 華園先生より脊椎脊髄疾患と神経内科疾患の鑑別のポイントや日常診療におけるテクニックについてレクチャーしていただきました。整形外科医にとって非常に有用なお話であり、明日からの診療に役立てたいと思います。

また、ミニレクチャーとして本会の当番幹事の工藤先生が化膿性脊椎炎の治療に関する最新の知見としてPPSの有用性などをお話していただきました.一般演題では関連病院から4演題あり,秋田労災病院の東海林先生の演題「小児陳旧性頚椎回旋位固定の1例」が優秀賞を受賞されました。おめでとうございます。

 待ちに待った特別講演では岡山病院機構岡山医療センター整形外科医長の竹内一裕先生から,「脊椎外科手術 –低侵襲化の歩みとその実際」と題し,最前線の低侵襲脊椎手術についてご講演いただきました.総論からMED/PEDの違い、胸椎におけるVATSまで様々なMISの手技から歴史,最新の知見まで、幅広く教えていただきました。新潟大学整形外科准教授の平野徹先生から,「小児脊柱変形における治療の進歩と今後の課題」と題し、側弯症の歴史としてScoliScore、日本での遺伝子解析などの研究、手術治療の実際や合併症についてわかりやすくご講演いただきました。平野先生は公私ともに秋田県になじみが深いということも伺い、大変うれしく思いました。

  本研究会で拝聴したことを、自分の脊椎外科医としての礎としていきたいと思います。

 今後の先生方のご盛栄を心よりお祈り申し上げます。

AAOS2018米国整形外科学会参加報告(笠間史仁)

この度、36日~10日まで行われたニューオーリンズでの米国 整形外科学会(AAOS)に参加させて頂きました。
参加メンバーは、島田洋一教授をはじめとし、 大学から本郷道生講師、齊藤英知先生、木島泰明先生、 藤井昌先生、秋田労災病院から加茂啓志先生、 秋田厚生医療センターから木下隼人先生、UCSF留学中の斉藤公 男先生、そして若手医師として佐藤光先生(北秋田市民病院)、 五十嵐駿先生(中通総合病院)、笠間(秋田厚生医療センター) の総勢11名で行って参りました。
 私にとって初めての海外学会参加であり、 程よい緊張の中アメリカへ入国しようとしました。が、 アメリカ到着後の入国審査で審査官に「YOU HAVE NO ESTA」と言われ、 旅行会社に代行で申請してもらったことなどをカタコトの英語で伝えましたが叶わず、バックヤードへと連行されてしまいました。 その場で携帯での申請を求められましたが携帯の不調によりWifiが繋がらず、日本語の話せる黒人のiPhoneを借りて申請し 、何とか入国を認めてもらえました。 申請の間に乗継便を逃してしまいましたが、 私のことを待ってくださった本郷講師と日本人空港職員の計らいで 3時間後の便を確保していただき、 無事ニューオーリンズへと到着することができました。 旅行会社に確認しましたが、 なぜESTA申請ができていなかったのかは原因不明であり、 自分でできることは自分で確実に行うべきだという良い教訓になり ました。本郷先生、本当にありがとうございました。
 さて学会では、私は股関節と脊椎の講演を拝聴してきました。 最新の知見に基づいた報告を聞くことができ勉強になった一方、 英語力が足りないために内容のほとんどが分からなかったものもあ り、帰国後も継続した英語学習が必須だと痛感しました。
 また世界最大規模といわれる機械展示会場は圧巻でした。 大手メーカーの巨大ブースはもちろんですが、 日本企業も会場に点々とあることが印象的でした。
 AAOS参加後に五十嵐駿先生と私でサンフランシスコへと移動し 、23日でUCSF留学中の斉藤公男先生にサンフランシスコお よび留学先の案内をしていただきました。 サンフランシスコの多様な文化や現地での生活、医療事情等、 様々なことをご教示いただき、いずれは自分も留学を…! と大変刺激を受けました。公男先生、 何から何まで本当にありがとうございました。
 この度はこのように大変貴重な経験を得る機会を我々に与えてくだ さいました島田教授をはじめ、引率していただいた先生方、 並びに整祐会員の皆様方ににこの場を借りて御礼を申し上げたいと 思います。本当にありがとうございました。 この渡航期間に受けた刺激を大事にし、AAOS演題採択と留学を目標に来年度からの後期研修に臨みたいと思います。

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留学報告⑯ 清水智弘先生とCHINABASIN(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回はCHINA BASIN見学について

2017年9月1日から9月11日までセットアップのため渡米した際,北海道大学清水智弘先生にホームステイ,銀行口座開設,アパートの契約から野球観戦に至るまで,大変お世話になりました.その清水先生の御高配で,CHINA BASINという施設の見学させて頂きました.

清水先生はこれまで骨粗鬆症,RAと様々な分野に精通しておられる先生で,現在UCSFでは動作解析と画像機器を用いた研究をされております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CHINA BASINは自分のアパートから徒歩で行ける距離にある研究施設とオフィスの共同ビルで,UCSFのDepartmentはEpidemiology,Biostatistics Radiology,Biomedical Imagingが入っています.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1Fにはイメージセンターがあり,high-resolution peripheral quantitative computed tomography (HR-pQCT)が導入されており,研究も盛んです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロアスペースは広大で整然としており,入り口ではタッチパネルの案内板が出迎えてくれました.

 

 

 

 

 

 

 

 

左が筆者,右が清水先生

 

このような機会を与えて頂いた北海道大学 清水智弘先生にこの場を借りて御礼申し上げます.ありがとうございました.

 

つづく

留学報告⑮  臨床研究について(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回は臨床研究について

私の留学の目的は米国リハビリテーションの臨床研修です.それとともに,臨床研究も行う必要があり,現在進行中であります.

研究の指導医は,Dr, Saam Morshedです.彼はUCSF整形外科の准教授で,外傷を専門としている先生です.統計学に造詣が深く,M.D(Doctor of Medicine),Ph.D(Doctor of Philosophy; 医学博士)のほか,M.P.H(Master of Public Health; 公衆衛生学修士)も取得されている数少ない医師です.そのため,研究内容は大規模多施設での臨床研究を得意とされています.現在も10以上の多施設共同研究を行っており,そのグラントの総額は数億円を超えているそうです….

Dr, Morshedの下,OTIのClinical research部門にお世話になり,臨床研究の立ち上げ,IRB; Institutional Review Board,日本で言う倫理委員会の承認を経て,臨床試験が始まっています.

実際には,OTIでPhysiatristとして勤務されているDr, Karina Rosario,長尾正人先生の助力を頂き,臨床研究を行っています.発表前ですので詳細はお知らせできませんが,アナログ機器とデジタル機器を使った臨床研究を行っております.

週1回の研究ミーティングでは,現在進行中の研究の進捗状況や学会発表のスライドなどを逐一チェックし情報を共有していきます.

研究構想から研究チームの立ち上げまでのスピードがとてつもなく速く,データの管理方法や収集方法まで非常にシステマティックで統制されており,勉強になっています.日本との研究体制の違いも多々あり,うらやましかったり勉強になったりしています.

 

 

 

 

 

 

 

 

リサーチミーティング 左奥がDr,Saam Morshed,左手前がUCバークレーの学生.優秀です.

 

 

 

 

 

 

 

 

左からTgist(研究助手さん),筆者,Poul(ポーランドからのフェロー),Eleni(研究助手さん).いつもお世話になっています.

 

 

 

 

 

 

奥がDr, Karina Rosario,被験者が長尾正人先生 いつもお世話になっております.

 

つづく