月別アーカイブ: 2025年6月

海外学会参加報告 in EuSARC 2025(中西真奈美)

2025年6月2日~6月10日にEuSARC 2025に参加してきましたので報告します。

EuSARCはヨーロッパ全域の肉腫(sarcoma)研究者と臨床医からなる「Europe‑wide group of dedicated scientists and clinicians」を指す名称で、2017年からワークショップとして始まり、年1回ヨーロッパの様々な国でEuSARC meetingが開かれています。ヨーロッパの若手肉腫研究者も多く集っているようです。 筆者は大学院の骨代謝グループ(ABONE)所属しており、腫瘍班で肉腫モデルマウスの骨代謝について研究しています。指導医である土江先生から本学会への参加のお話を頂きました。

今年のEuSARCは6月5日~7日にイタリアのベネチアで開催されました。会場は、本島から船で15分ほど離れたところにあるサン・セルヴォーロ島の会議場です。ごく小さな島ですが公園もあり緑豊かで、会議場の建物はベネチア国際大学のキャンパスとして使用されているようです。ひとつの部屋で研究会のように近い距離で集い、3日間みっちりとスケジュールが組まれた学会でした。 演題はポスター採択でしたが、筆者はFlash Talkにも割り当てられていたため、およそ5分間の口頭発表も行いました。英語での研究会・学会発表は初めてでしたので非常に緊張しましたが、聴講者の方々も真剣に聞いてくださり大変嬉しく思いました。無事に終えることができ安心しております。

本会ではいくつかの団体や企業から研究助成金が用意されており、筆者はBone Cancer Research Trust(イギリス肉腫研究の慈善団体)からの渡航助成金であるTravel Grantに選出して頂きました。このような賞を獲得できたのも、ひとえに常日頃から研究の御指導をしてくださる宮腰教授、土江先生ならびにABONEの先生方のおかげと思っております。Poster Awardの受賞とはなりませんでしたが、本会を通して非常に貴重な経験をさせて頂き、誠に感謝申し上げます。

学会以外では、北イタリアを中心にたくさん観光しました。30度を超える日もざらでない真夏日続きでしたが、ミラノ、ベローナ、学会開催地のベネチア、そして土江先生がかつて留学されていたボローニャ・リッツォーリ病院にも足を運びました。中でも印象に残ったのは、ガルダ湖のほとりに位置する世界遺産の都市ペスキエーラ・デル・ガルダです。緑色の湖がとてもきれいな素敵な場所で、癒されました。また、個人的なお気に入りはベネチアンガラスで有名なムラーノ島にあるムラーノガラス美術館です。色とりどりの綺麗なガラス細工や美術品がたくさん飾られており、何時間でも眺めていられると感じました。イタリア飯はどれを食べても美味しく、カルボナーラやペスカトーレなどのパスタは勿論、アマローネワインで煮込んだリゾットや、山盛りの生ハムなど感動の連続でした。アペロールスプリッツや本場の赤ワインも堪能できました。

終わってみればあっという間でしたが、濃い9日間を過ごし、海外学会での発表という貴重な経験をさせて頂きました。医局の皆様には心より御礼申し上げます。まずはしっかりと学位研究を形にし、今回の経験を活かして、臨床の場面でもリサーチマインドを忘れず精進したいと思います。

医局の先生方は現在も、ヨーロッパやマレーシアなど各国で学会活動を行っている最中ですし、留学されている先生もおります。学外の同門の先生方も積極的に海外学会へと足を運ばれています。研修医の先生や学生の皆様、興味がある・話を聞きたいなどありましたらいつでもご連絡ください。お待ちしております。

学会場にて。

ベローナのアレーナ(左)とペスキエーラ(右)

ムラーノガラス美術館

整形外科単科病院 Rizzoli病院(左)  右は医局研究棟。

美味しいイタリア料理をみんなで頂きました

留学だより(赤川学)

だいぶ間があいてしまいましたが、無事に過ごしています。

最近はPFに関連して、膝蓋骨置換の要否や二期的置換、関連する因子などを考えることが多く、忙しくも充実した日々を過ごしています。

こちらは3月末にサマータイムとなり、時間が1時間進みました。日本ではあまり馴染みのないサマータイムですが、もともとは明るい時間を長くすることで電気などのエネルギーの節約、屋外での活動を増やし経済活動を活発にすることなどを目的としていたようです。確かに最近はサマータイムのせいもあり、21時をすぎてもまだ外は明るく、たくさんの人が出歩いています。

ボルドーにはMiroir d’eau(ミロワール・ドー)という世界最大級の水鏡があります。冬は凍結防止のために水が止まっていたのですが、5月に入ってから水が出るようになりました。ネットには美しい夜景が水面に反射した画像がたくさんありますが、今は日が長く、夜景がうつった写真をとるのは難しい季節です。日中はミストが出たり、子供たちが水遊びをしたりして、これまた水面に景色がうつった写真をとるのが難しいのですが、なんとかとった写真を載せました。写真をとるのはあまり得意ではありませんが、それでもブルス広場といわれる美しい建築と融合された景色はなかなかに見ごたえがあります。

先日、秋田から塚本先生、高橋靖博先生、河原木先生、石垣先生の4人がボルドーまで来てくれました。リビエール先生の手術を共に見学し、夜は秋田の近況を聞いたり、ASAKGの今後について皆で語りました。遠いボルドーまでわざわざ来てくれた皆に本当に感謝しています。

私の留学もまもなく終わりとなります。半年間はあっという間でしたが、本当にたくさんのことを学ぶことができました。リビエール先生には手術や研究だけでなく、休日にもたくさんのアクティビティに誘ってもらい、ボルドーの文化をたくさん教えてもらいました。違う言語・文化の土地で過ごした経験は本当に大きく、一回りも二回りも成長できた気がします。

このようなかけがえのない経験ができたのも、医局の先生方、そして家族の支えのおかげです。心から感謝し、帰国後も頑張っていきたいと思います。

あまりきれいな写真ではありませんが、水面に反射した建物が見えるでしょうか。日中は子供たちが元気に遊んでいます。

Loic先生と。Robotを使用したKA techniqueをたくさん教えていただいました。

左からRivière先生、私、もう1人のFellowのRoberto、機械出し看護師のJackson。最高のチームでした。

第122回東北整形災害外科学会(森下耀)

2025年6月6日〜7日にかけて、第122回東北整形災害外科学会(会長:新潟大学整形外科 川島寛之先生)が、朱鷺メッセ(新潟市)にて開催されました。当教室からも多数の演題が採択され、各セッションでは活発な議論が交わされ、盛況のうちに幕を閉じました。

初日の朝6時からは恒例の親善野球大会が開催され、今回は東北大学との対戦となりました。序盤に2点を先制するも、終盤に追いつかれ、延長戦の末、惜しくも敗戦となりました。

大内先生・泉先生の好投、杉村先生・阿部和伸先生・東條先生の好守が光る好ゲームとなりました。惜しくも勝利には届きませんでしたが、来年こそは初勝利を目指したいと思います。

宮腰教授をはじめ、多くの先生方に応援にお越しいただき、晴天のもと、和やかな雰囲気の中で試合を楽しむことができました。 私自身はセカンドで途中出場しましたが、今年もエラーでチームにご迷惑をおかけしてしまいました。

学会では、当教室から多彩な演題が採択されました。中でも、医学科6年生の武藏聖治君は学生セッションにて「特発性側弯症術後成績の男女間比較」と題して発表を行いました。事前準備から当日の質疑応答に至るまで非常に丁寧かつ堂々としており、多くの先生方から高い評価をいただきました。惜しくも受賞は逃しましたが、その完成度の高さに、感銘を受けました。

また、当教室の久田朱里先生が、東北整形災害外科学会 Travelling Fellowship に選出されました。心よりお祝い申し上げます。

来年の第123回大会に向けて、さらに充実した発表と、念願の野球勝利を目指して準備を進めてまいります。 今後とも変わらぬご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

第3回書友展 日本酒ラベル企画応募(中西真奈美)

2025年6月14日(土)に医局カンファレンス室にて、第3回書友展の日本酒ラベル企画に応募するための書道企画を行いました。昨年は銘酒「一白水成」でしたが、今年は同じ福禄寿酒造の日本酒「桜名月」のラベルがお題となっています。桜名月は、井川町の農業生産法人ローカルフレッシュが栽培した酒米「秋田酒こまち」を初めて採用したお酒とのことで、ラジオ番組「ハナキン桜庭編集部」のアナウンサーらの名前からとって命名され、井川町を盛り上げるための日本酒であると紹介されています。

14日当日は、ほかのセミナー等が重なったこともあってか、宮腰教授、石垣先生、筆者の3人だけの参加となりましたが、黙々と集中し時に語らいながら書に向き合うことができました。桜がうまく書けない、名がうまくいかない、3文字のバランスが難しいなどなど…書いてみて意外と難しいお題であることに気が付きました。最後にはお仕事をしていらした粕川先生を引っ張り出し(笑)、素敵な桜名月をしたためて頂きました。来て頂いた先生方、お忙しい所本当にありがとうございました!

英知部長には事前に完成した作品を頂いており、さすがの書でありましたが、我々の作品と合わせて今年もまた「秋田大学整形外科書道部」として出品したいと思います。今年こそはめざせ最優秀賞!四合瓶ラベル!ですね(^▽^)

第18回 秋田県手外科研究会(中西真奈美)

2025年5月31日(土)に第18回秋田県手外科研究会が開催されました。秋田さとみ温泉にて例年開かれていたこの会ですが、今年は秋田拠点センターALVEにて執り行われました。同門の先生方だけでなくハンドセラピストの方々にも多く足を運んでいただき、広い会場が埋まるほどの盛況でした。

会に先立ち行われた幹事会では、近年AHG/AFTTGとしての学会活動や論文執筆が増えてきていることが取り上げられ、若手の自分もその一員となるよう頑張らねばと感じました。

一般演題では白幡毅士会長の座長のもと、5演題の発表がありどれも活発な議論がなされました。齋藤先生の肘頭骨折TBWのバックアウトについての検討では、リングピンを使用すべきとの御意見も確かに道理にかなうものと存じますが、安価でどんな病院にも必ず置いてあるK-wireを使用し、いかなる手術法でどんな工夫をするとBack outを防ぐことに繋がるのかという検討内容も非常に興味深いと自身は感じました。加賀先生の陳旧性スワンネック指のお話では、普段外来でよく見る掌側板損傷の成れの果てにこのような病態に発展する場合もあるのだと実感しました。

ミニレクチャーでは、秋田赤十字病院の湯本聡先生より「四肢主要血管損傷の治療経験」として、現在までに経験してこられた四肢重度外傷の症例の数々や初期治療医にどういったことが求められるかについて熱くご講演頂きました。本会の幹事会では湯本先生より退会の御挨拶がございましたが、湯本先生は本当に長い間ずっと秋田県の重症外傷治療を支えてこられ、今現在もなお第一線で御活躍されております。湯本先生と一緒に勤務し外傷治療を学んできた若手整形外科医は多いですし、これからも我々に引き続き御指導を頂きたいと強く思っております。

特別講演では、四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター長 平瀬雄一先生に「Orthoplastic hand surgeryのすすめ」と題してご講演いただきました。Orthoplasticとは、おもに(重度)四肢外傷に対して、皮膚軟部組織再建と骨折治療・骨関節再建の両方を行う外科分野のことを指します。平瀬先生はそこへ到達する道を登山に例えられ、Orthoplastic山に登るにはOrthopedic山からもPlastic山からも登れるが、お互いの分野をよく理解することが大事だと仰いました。 ご存じの方も多いと思いますが、平瀬先生はかの有名な著書「やさしい皮弁」「やさしいマイクロサージャリー」の著者であります。やさしい皮弁の最初のページには、聞くだけでなく、見て行動してはじめて理解ができるのだという意の孔子の言葉が書かれています。その言葉の通り、講演のスライドには実際の症例写真や手術動画が非常に多く盛り込まれており、神業の数々にただただ圧倒されました。個人的には、wrap-around flapの手技で1趾だけでなく2趾からも連続したflapをあげ1本の指を再建する手技や、爪床移植により爪の一つまでこだわって再建するところに、flap surgeonならびにOrthoplastic surgeonとしての流儀や、患者様への思いを感じました。

講師を囲む会では、秋田の日本酒を飲みながら、AHGの先生方が皆こぞって平瀬先生に質問をし、本会では聞ききれなかったことを余すことなく教えて頂きました。平瀬先生本当にありがとうございました。

今回の研究会で学んだPlastic surgeryの考え方、tipsを活かして、AHG/AFTTGの一員としてこれからも頑張っていきたいと思います。本会がご参加いただいた先生方の日常診療の一助となりましたら幸いです。

第32回よこはまスポーツ整形外科フォーラム(浅香康人)

第32回よこはまスポーツ整形外科フォーラムが6月1日に東京たま未来メッセで開催され、会長の東海大学整形外科内山善康教授のご高配によりシンポジウムで講演の機会をいただきました。全国から元プロ野球選手の医学生や元オリンピック選手の医師が集結し「一流アスリートが医師を目指す理由」というテーマのもと討論を行いました。私自身は一流アスリートと呼ばれるには程遠い存在ですが、ボディビル競技の経験と医師としての経験を併せ持つ立場から、競技生活と医師生活の両立やスポーツ医学に対する自分の考え等をお話しさせていただきました。アスリートとして最前線で活動しながら医療に携わる方々の様々な考え方を耳にして、今後の競技人生や医師人生について改めて考える大変良い機会になりました。

特別座談会では元女子バレーボール日本代表の大友愛さんから、出産や大怪我を経てオリンピックで銅メダルを獲得されたご経験を伺いました。貴重なメダルの実物を見せていただき、またリハビリのリアルな過程を詳細にご講演いただき、大変感銘を受けました。

今回私のような若輩者を歴史ある研究会のシンポジウムにお招きいただいただけでも感謝に堪えないのですが、似顔絵入りの感謝状までご用意いただき、心から嬉しい気持ちになりました。また高いレベルでスポーツ整形外科の診療に取り組まれている多くの先生方との繋がりを得ることができ、私にとって非常に大きな財産となりました。文武両道で頑張る姿が、患者様やこれから医師を志す方々の心を動かすきっかけになれば幸いです。医師としてもボディビルダーとしてもまだまだ未熟ですが、どちらも向上心を持って日々取り組んでいきたいと思います。

タイからのSpine Fellow Program 修了(尾野祐一)

2025年5月、定期的に交流を行っているタイ、バンコクにあるRamathibodi Hospital, Mahidol UniversityからChutinun Assavatanalab(ニックネームはChu)が約1か月間、脊椎手術見学に来ました。

タイからのSpine Fellowとして女性医師が来たのは初です!

大学病院をはじめ、複数の関連施設での脊椎手術を見学していただき、幅広い症例や手術技術に触れていただきました。Dr.Chuは非常にアクティブで、登山を趣味とし、何度も訪日経験があり、また、日本滞在中もジムに通っていました。性格も明るく、誰とでもすぐに打ち解ける社交的な人柄で、スタッフや医学生とも英語で積極的に交流していました。今回の滞在を通して、我々にとっても多くの刺激を受ける機会となりました。

今後もこのような国際的な交流を大切にしていきたいと考えています。