2024年3月9日~17日にかけて、ドイツに病院研修に行ってきました。
この研修は、秋田労災病院の奥山幸一郎先生が開催した日独整形外科Web conferenceでのご縁があり、宮腰尚久教授にご高配いただいて実現した研修になります。参加者は私と、秋田労災病院整形外科の佐藤千晶先生の二人です。
行きは、羽田空港からトルコのイスタンブール空港を経由して、ドイツのシュトゥットガルト空港へ到着。
最初はトゥットリンゲンTuttlingenという街に一泊し、インプラントメーカーのバイオメカのラボを見学させてもらいました。歴史ある会社で、過去のインプラント博物館や、インプラントの耐久試験の様子をみせてもらい、日本ではなかなか経験できない貴重な機会となりました。
その後、コブレンツKoblenzへ移動し、Katholisches Klinkum Koblenzという病院に行き、キリアン先生の手術を見せてもらいました。キリアン先生は、奥山先生と長年のお付き合いがあり、日本へは何度も訪れたことがある方です。頸椎前方手術を非常に得意とし、初日から前方の4椎間の頸椎椎体間固定術を見せてもらいました。2日目には実際に術野に入らせていただき、キリアン先生の頸椎前方固定術を間近で経験させてもらうことができました。午後には症例検討会を行い、自分たちが治療方針について悩んだ症例を英語でプレゼンする機会も与えてもらいました。我々の拙い英語を、キリアン先生は優しく汲み取ってくださり、非常によいディスカッションができました。
(写真中央がDr.Francis Kilian。左が筆者。右が佐藤千晶先生。)
(創業800年のレストランでDr.Kilianとディナー時の写真。)
最後はオッフェンバッハに移動し、Sana Klinkum Offenbachという病院で手術を見学しました。コブレンツで訪れた病院よりも規模が大きく、年間1000件近く脊椎の手術を行っているそうです。2日間で、変性側弯に対するTLIFや、腰部脊柱管狭窄症に対する腰椎除圧術、脊椎転移に対する後方除圧固定術、といった手術をみせてもらいました。印象的だったのが、セメントを使用した椎弓根スクリューです。こちらのラウシュマン先生は、大変ご高名な先生で、数十年前から(本人がおっしゃるには20年くらい前から??)自ら色々と工夫してセメントを用いたスクリューを使用してきた、とのことでした。実際にセメントを入れる様子をみると、セメント挿入のタイミングや入れ方、量など、日本で自分が教わったことと異なる点が多数あり、衝撃をうけました。他にも、椎弓根スクリューの理想的な長さ、挿入時の透視の使用方法(これは執刀医により様々でした)、椎間板郭清の手技、などなど・・・細かいところを含めれば記載しきれませんが、国や病院が変わると、手術方法も変わる、というのを改めて実感しました。
(Offenbachで訪れた病院の外観)
(写真の左がラウシュマン先生。右が筆者。)
私にとって、今回が海外で脊椎手術を実際にみる初めての機会でした。英語でのコミュニケーションに不安を感じておりましたが、現地の方々には非常に優しく受け入れていただきました。ただ、もっと踏み込んだ会話をするとなると、英語能力の向上が必須であり、自分にとっての今後の課題とも感じています。
今回得た経験を、自分の日々の診療にも活かしつつ、臨床・研究・英語、と研鑽を積んで、再度、海外に研修(次回はAO traveling fellowなどのfellow shipを利用)に行きたいと強く感じました。
ご高配いただいた宮腰教授、奥山先生、不在中に日常業務を対応いただいた大学スタッフの皆様にこの場をお借りして深謝いたします。
(ドイツで最後に食べたソーセージ。ベルリンで人気のカリーヴルスト。)