月別アーカイブ: 2019年12月

第9回こまちリウマチセミナー(齋藤光)

令和1年12月12日、第9回こまちリウマチセミナーが開催されました。

 
一般演題1は、北秋田市民病院の岩本陽輔先生から「RA治療におけるアバタセプトの有効性〜AORA registryから読み解く〜」の題で発表いただきました。秋田県内でのリウマチ患者さんを登録した“AORAレジストリー”の特徴は高齢者が多いことであり、その中でのアバタセプトの使用状況についてわかりやすく報告いただきました。

 
一般演題2は能代厚生医療センターの伊藤博紀先生から「リウマチ上肢手術の適応とタイミング」の題で発表いただきました。リウマチ患者さんの生活に大きな影響をあたえる“手関節”の手術治療について、手術のタイミングやその実際について解説いただきました。

 
特別講演は、山形大学医学部附属病院 リハビリテーション部 准教授の高窪祐弥先生から「北欧フィンランドリウマチ診療を目指して−山形循環型病診連携“やらんなネット”5年間の軌跡−」という演題名でご講演いただきました。まずリウマチ治療の基礎について最新の知見を交えながら解説いただき、フィンランド留学中のご経験を多数の写真を交えながら臨場感たっぷりにご紹介いただきました。フィンランドの医療状況、食文化や生活は非常に興味深く、楽しく拝聴させていただきました。日本との相違点として、フィンランドでは一人の患者さんにじっくりと時間をかけて診療することが可能で患者満足度も高く、医師患者間の信頼関係構築もしやすいのかなと思いました。ご留学から帰国後に、高窪先生が山形県で取り組まれたリウマチ診療病診連携システムの構築については、立ち上げから現在にいたるまでの紆余曲折を教えて頂きました。地域連携ネットワークを構築する際のノウハウは私達にとっても大変役立つものであり、貴重なお話を聞くことができました。高窪先生、大変ありがとうございました。
本セミナーで学んだことを、明日からの臨床に役立てて、さらに研鑽を積んでいきたいと思います。

 

 

 

第8回秋田県股関節研究会(三浦隆徳)

 

2019年12月7日「第8回秋田県股関節研究会」が秋田温泉さとみで開催されました。

一般演題は、全6演題で筆者の発表の他、五十嵐駿先生(秋田厚生医療センター)、阿部和伸先生(秋田県立療育センター)、長幡樹先生(大曲厚生医療センター)、岩本陽輔先生(北秋田市民病院)、佐々木研先生(平鹿総合病院)から素晴らしい発表をいただき、大変勉強になりました。

 

ミニレクチャーでは秋田大学の河野哲也先生から「人工股関節置換術後ステム周囲骨密度と骨粗鬆症治療」と題した講演をしていただきました。人工股関節置換術は良好な治療成績ですが、stress shieldingなど検討すべき課題もあり、リスクを下げるためにも積極的に骨粗鬆症検査、治療を行うことや患者さんの生涯に関わる大腿骨ステムの選択には慎重にするべきかと考える機会を頂きました。

 

特別講演Ⅰでは角館病院の谷貴行先生から「大腿骨近位部骨折の診断と治療‐頚基部骨折って何ですか!?‐」というご講演をして頂きました。大腿骨近位部骨折は整形外科医として診療する機会が多い疾患ですが、骨折形態と解剖学的関係、分類、治療などを成書、論文をもとに系統立ててご紹介くださり大変勉強になる内容でした。またHip research groupで治療方法に直結する分類として提唱しているArea分類(Akita分類) の有用性やご自身の執筆された英語論文の紹介などもあり圧巻のご講演でした。

 

特別講演Ⅱでは金沢医科大学の兼氏歩教授から「形成不全股に対する寛骨臼骨切り術‐昭和から令和へ‐」という題目で、骨盤骨切り術の歴史から最新の治療、今後の展望までご講演いただきました。

寛骨臼骨切り術の代表的な手術としてChiari骨盤骨切り術、寛骨臼回転骨切り術などがありますが。皮切の大きさ、筋腱処理などの侵襲の大きさや、安静期間の長さ、Chiari骨盤骨切り術では自然分娩への懸念がありました。

今回ご講演頂いたSpherical periacetabular osteotomy; SPO)は原俊彦先生により開発され、兼氏教授は第一人者であります。SPOは以前までと異なる前方アプローチで恥骨、Quadrilateral surfaceを骨切りすることなく寛骨臼周辺を球状に骨切りして骨頭の被覆を改善させる手法です。そのため低侵襲(7cm程度の皮切)、閉鎖動脈損傷リスク回避、骨盤の安定性確保、広い骨切り面、産道温存などの利点があります。実際には症状を伴う、寛骨臼形成不全を適応としていますが、CE角20°以上はOA進行がほとんどなく、15°未満は進行リスクであることから15°未満の症例を対象としていると伺いました。その良好な治療成績をご紹介いただき、我々が今後進むべき道を示して頂いたかと思います。

今回学ばせていただいたことを今後の臨床、研究に活かして、患者さんに満足していただける医療を行えるように努めて参りたいと思います。

 

 

 

 

 

秋田県リウマチアーベント (村田昇平)

霜が朝日にキラキラと溶けていく様子に清々しい一日の始まりを感じる、師走間近の今日この頃でありますが、11月28日、「秋田県リウマチアーベント」が秋田ビューホテルで行われました。

一般演題では、市立秋田総合病院、柏倉剛先生を座長に、秋田大学の河野哲也先生より「AORA registryにおけるステロイド性骨粗鬆症治療の現状と試み」、平鹿総合病院、小林志先生より「AORA registryにおける高齢関節リウマチ患者の実態」という題でそれぞれご講演をいただきました。お二人の先生とも、莫大なAORA registryから抽出したデータをもとに、リウマチ治療の現状から今後の展望について大変ためになるレクチャーをいただきました。

特別講演では島田洋一教授の座長のもと、信州大学医学部附属病院整形外科講師、中村幸男先生をお招きし、「関節リウマチの最新治療と骨粗鬆症合併対策」という題でご講演いただきました。中村先生は2019年に全国ネットのテレビ番組に出演もされている、大変ご高名な先生でありますが、骨粗鬆症予防のための「かかと落とし運動」、骨粗鬆症の栄養学、周産期の骨粗鬆症、骨粗鬆症の分子病態学、リウマチ患者の骨粗鬆症治療戦略などなど、多岐に渡って最新の知見や、先生自身の研究データを惜しみなくお示しいただき、大変勉強になりました。知識を啓蒙していただいただけではなく、先生がいかに魂を込めて情熱的に臨床、研究に取り組んでいるかが伝わってくるご講演で、非常に感銘を受けました。

今回勉強させていただいたことを活かして、日々自己研鑽を行いながら、明日からの診療で一人でも多くの患者さんにより良い治療が提供できるように取り組んでいきたいと思います。

第46回日本マイクロサージャリー学会学術集会に参加しました(野坂光司)

第46回日本マイクロサージャリー学会学術集会(2020年11月28~29日,ハイアットリージェンシー東京),パネルディスカッション「長管骨偽関節に対する再建」にパネリストとして参加してまいりました.市立奈良病院整形外科 矢島弘嗣先生,帝京大学整形外科 渡部欣忍先生の司会のもと,血管柄付き骨移植術,Masquelet法,Bone transportについて議論いたしました.巨大な第1会場が満員となり,この組織再建に対する参加者の関心の高さを感じました.パネリストは,それぞれの長所,短所,実際の症例について詳しく解説され,私自身,大変知識の整理になりました.マイクロサージェリー学会ではありますが,Ilizarov創外固定によるBone transportの重要性も,会場のみんなに深く理解されていることが伝わってくる内容でした.フロアでAkita Hand Group&Akita Ilizarov Method Group期待の星,益谷法光先生が熱心にメモを取っている姿が印象的でした.益谷先生はじめ,秋田大学の若手がIlizarovとMicrosurgeryを融合させ,全国にアピールしてくれる日が,そう遠くない将来に来ることを確信しました.

世の中には血管柄付き骨移植術やMasquelet法の不成功例がたくさんおり,特に血管柄付き骨移植術の不成功例は,それ以上粘ることなく,切断を選択されることが多くあります.救肢が困難と思われる難治例でも,時間をかけて,IlizarovによるBone transportで最後の最後まで救肢を目指せることを今後も地道に伝えていきたいと思います.