第8回秋田県股関節研究会(三浦隆徳)

 

2019年12月7日「第8回秋田県股関節研究会」が秋田温泉さとみで開催されました。

一般演題は、全6演題で筆者の発表の他、五十嵐駿先生(秋田厚生医療センター)、阿部和伸先生(秋田県立療育センター)、長幡樹先生(大曲厚生医療センター)、岩本陽輔先生(北秋田市民病院)、佐々木研先生(平鹿総合病院)から素晴らしい発表をいただき、大変勉強になりました。

 

ミニレクチャーでは秋田大学の河野哲也先生から「人工股関節置換術後ステム周囲骨密度と骨粗鬆症治療」と題した講演をしていただきました。人工股関節置換術は良好な治療成績ですが、stress shieldingなど検討すべき課題もあり、リスクを下げるためにも積極的に骨粗鬆症検査、治療を行うことや患者さんの生涯に関わる大腿骨ステムの選択には慎重にするべきかと考える機会を頂きました。

 

特別講演Ⅰでは角館病院の谷貴行先生から「大腿骨近位部骨折の診断と治療‐頚基部骨折って何ですか!?‐」というご講演をして頂きました。大腿骨近位部骨折は整形外科医として診療する機会が多い疾患ですが、骨折形態と解剖学的関係、分類、治療などを成書、論文をもとに系統立ててご紹介くださり大変勉強になる内容でした。またHip research groupで治療方法に直結する分類として提唱しているArea分類(Akita分類) の有用性やご自身の執筆された英語論文の紹介などもあり圧巻のご講演でした。

 

特別講演Ⅱでは金沢医科大学の兼氏歩教授から「形成不全股に対する寛骨臼骨切り術‐昭和から令和へ‐」という題目で、骨盤骨切り術の歴史から最新の治療、今後の展望までご講演いただきました。

寛骨臼骨切り術の代表的な手術としてChiari骨盤骨切り術、寛骨臼回転骨切り術などがありますが。皮切の大きさ、筋腱処理などの侵襲の大きさや、安静期間の長さ、Chiari骨盤骨切り術では自然分娩への懸念がありました。

今回ご講演頂いたSpherical periacetabular osteotomy; SPO)は原俊彦先生により開発され、兼氏教授は第一人者であります。SPOは以前までと異なる前方アプローチで恥骨、Quadrilateral surfaceを骨切りすることなく寛骨臼周辺を球状に骨切りして骨頭の被覆を改善させる手法です。そのため低侵襲(7cm程度の皮切)、閉鎖動脈損傷リスク回避、骨盤の安定性確保、広い骨切り面、産道温存などの利点があります。実際には症状を伴う、寛骨臼形成不全を適応としていますが、CE角20°以上はOA進行がほとんどなく、15°未満は進行リスクであることから15°未満の症例を対象としていると伺いました。その良好な治療成績をご紹介いただき、我々が今後進むべき道を示して頂いたかと思います。

今回学ばせていただいたことを今後の臨床、研究に活かして、患者さんに満足していただける医療を行えるように努めて参りたいと思います。