月別アーカイブ: 2022年11月

第57回 日本脊髄障害医学会(佐藤貴洋)

2022年11月17日,18日の2日間,パシフィコ横浜にて第57回日本脊髄障害医学会が開催されました.本会は長らく理事長を務められていた島田洋一名誉教授が理事長の任を降りられるということで私たちにとってはメモリアルな会となりました.

初日学会最初の特別講演で我らが島田洋一名誉教授がご講演されました.座長で本学会の会長でもある渡辺雅彦先生よりご紹介頂き島田名誉教授の講演が始まりました.「本会の目玉講演」,「長きにわたり理事長に就任されて来られ,我々を牽引して下さった」と渡辺先生からご紹介頂き,勝手ながら誇らしい気持ちで拝聴しました.「日本脊髄障害医学会の最新トピックスと将来展望」というテーマでのご講演でしたが,その内容は日本脊髄障害医学会の集大成そのものでした.脊髄障害医学会の歴史から,脊髄障害医学会に関連する様々な分野のエキスパートの先生方が出演され,それぞれの分野のトピックスが一つに集まった非常にボリュームのある講演内容でした.本学会は各科に跨る範囲を有しており,単科のみでは完結しません.そういう意味で多くの人に支えられ,また多くの人を導いてきた島田名誉教授の器の大きさを感じる素晴らしい講演でした.島田名誉教授が教授時代に尽力されていたロボットリハビリテーションに関しても講演頂き,改めて今自分が研究できているのは島田名誉教授のおかげだと感じました.

現在,ステミラック®注をはじめ脊髄再生医療が盛んに研究されています.その中で新理事長に就任された中村雅也先生の特別講演では,脊髄再生医療とリハビリテーションに関して熱く語られていたことが非常に印象的でした.慢性期の完全脊髄損傷を治療するという夢のような話を現実するためには,iPS細胞のような再生医療の技術のみでは不十分であり,リハビリテーションを組み合わせることが必要不可欠となることを示しておりました.脊髄損傷のリハビリテーションを研究している私にとっては本当にありがたい言葉であり,今後も研究を進めていくモチベーションにつながりました.

今回は脊椎・脊髄外科領域の演題が多い会とはなっておりましたが,自分の研究にも繋がる実りのある学会でした.いつか自分の研究している「Akita Trainer」が脊髄損傷後の方々に使ってもらえる日を夢見て今後も研究を進めていきたいと思います.

第11回秋田県股関節研究会(河原木剛)

2022年11月12日(土)、第11回秋田県股関節研究会がオンラインで開催されました。毎年恒例、木島先生の躍動感溢れるオープニングムービーを皮切りに、今年も大変盛り上がる会となりました。

一般演題では、若手整形外科医が治療に携わることの多い大腿骨近位部骨折について活発な議論が繰り広げられました。また、人工関節後のforgotten joint scoreの有用性や、術後感染に対するCLAP併用の治療成績についても紹介いただき、まさに目から鱗の内容でした。

特別講演1前半は、由利組合総合病院の長幡樹先生から脆弱性骨盤輪骨折に対するアプローチについて講演いただきました。今までは保存治療が選択されることが多い骨折でしたが、痛みが強い場合には早期離床やADL向上のためにTITSといった固定術が有用であることや、手術の合併症、ピットフォールについてもわかりやすく解説いただきました。特別講演1後半では、大曲厚生医療センターの岩本陽輔先生から大腿骨近位部骨折の治療について、術式やインプラント選択、手術のタイミングをまとめて解説していただき、今までの知識を整理、アップデートすることができました。

特別講演2では、愛媛大学整形外科教授の高尾正樹先生より、「コンピュータ支援整形外科の歴史と今後の展開〜疼痛管理を含めて〜」と題して、ロボット支援手術の精度や術後の筋萎縮解析など、コンピュータ技術を活用した数多くの研究成果を紹介いただきました。AIをはじめ、こうしたコンピュータ技術により、より幅広い研究活動ができ、よりよい医療を提供できるのだと実感しました。講演を聞いて、今後の整形外科診療の発展が楽しみでなりませんでした。また、自分自身も整形外科の発展に貢献できるように精進しようと思いました。

今回も非常に勉強になる充実した研究会となり、あっという間の3時間でした。企画運営していただいた方々、ご講演いただいた先生方に御礼申し上げます。ありがとうございました。

若林玲奈先生「第56回日本側彎症学会ショートシンポジウム優秀賞」受賞

この度、秋田県立医療療育センターの若林玲奈先生が、「第56回日本側彎症学会ショートシンポジウム優秀賞」を受賞されました。

受賞演題は、「思春期特発性側彎症におけるRisser 4症例のCobb角進行と関連因子の検討(Curve progression and related factors in patients of adolescent idiopathic scoliosis with Risser 4)」です。

この研究は、思春期特発性側彎症において、装具適応外とされる骨成熟度がRisser 4の症例であっても約2割でカーブが進行することを突き止め、その関連因子を検討するとともに今後の予防策を提唱した優れた研究です。

若林玲奈先生の益々のご活躍をお祈りいたします。

第85回秋田書道展一般一科 「秀作」を受賞して(齊藤英知)

第85回秋田書道展一般一科 「秀作」を受賞して

2022/11/7記 

秋田大学整形外科 書道部部長 齊藤英知

この度、2022年10月29日から11月2日まで第85回秋田書道展(秋田魁新報社主催)が秋田市中通のアトリオンで開催されました。

秋田書道展は県内最大の書道展で、小学生から一般までを対象としており、書道展は学生と一般の部で入賞384点、入選161点が審査により決まりました。一般には一科と二科があり、ざっくり言うと作品の紙の寸法の違いです。一科の方が大きく(横2尺縦8尺:天井からぶら下げるサイズ)、二科はいわゆる条幅サイズ(掛け軸にちょうどいいサイズ)です。比較的決められた約束の範囲内で作風を出せる「自運漢字」と古典を似せて書く「臨書漢字」があります。その他にも「自運かな」「臨書かな」「調和体(近代詩文)」「篆刻・刻字」などのジャンルもあります。賞については、上から「推薦」「特選」「秀作」「褒状」「入選」があり、「推薦」を3回受賞すると書道の先生を名乗ってもいいとされている「無鑑査」として出品が許されます。最高賞である「魁星賞」はこの「無鑑査」として出品された作品から審査され2点が選出されます。

秀作を受賞

2021年に秋田大学整形外科書道部の初代部長を拝命し、2021年9月から瀾の会という教室に通い、長沼雅彦秋田大学名誉教授のご指導の下、書道のいろはを習い始めました。2022年1月に行われた「第44回瀾の会書展」で、人生初の書展に出品し、書道部としての活動の第一歩を記したことを整形外科ブロクでご紹介させて頂きました。その後、地道に活動を続け、今回の第85回秋田書道展への出品となりました。私は一般一科「自運漢字」というカテゴリーに挑戦しました。題材は、「書譜」といって、中国は唐の時代(687年)に孫過庭という人によって書かれた優れた書論として高く評価されているもので、典型的な草書体で書かれた長文であり、真跡(紙にかかれたもの)が今に伝えられていて細やかな運筆もよくわかり草書を学ぶには最適な古典といわれているものを、長沼先生にご指導戴き、隷書として作品化されました。作品としては以下となります。

懸針垂露之異,奔雷墜石之奇,鴻飛獸駭之資,鸞舞蛇驚之態,絕岸頹峰之勢,臨危據槁之形 書譜之一(節) 英知

限られた時間の中、43文字を白と黒の空間をバランスを意識しながら、一文字一文字の筆法も意識するとバランスが崩れてなかなかうまくいかなくて泣きそうにもなりました。書き込んでいくうちに、墨の濃淡によるにじみとかすれ、空間のバランスなど、たまたまうまくいった一枚が写真のものです。審査の結果ですが、「秀作」を受賞させて頂きました。自分でも身に余る賞を頂いたと感じております。

秋田大学整形外科は、前島田洋一名誉教授のご指導の下、スポーツに秀でた選手が数多く入局してくれ、その情熱で全国に誇れる業績を出し、非常な発展を遂げて参りました。書道部顧問でもある宮腰尚久教授の下では、さらなる発展と人材育成、教育も兼ねて、整形外科開闢以来初となる書道部を立ち上げました。若手の新進気鋭の脊椎外科医の笠間史仁先生は、筆さばきがよくなると手術の電気メスさばきもよくなった「電気メスの先に神経が通った」と述べております。佐藤貴洋先生は、昨年の筆納め会に出席して、「一生懸命に字を書すことで、心が研ぎ澄まされる感じがして非常に良かった。」と述べています。参加者にとって書道との対峙の仕方はまさに多様性があり、我々秋田大学整形外科は、多様性のある医局として、意欲と好奇心に満ちた若手の先生方と一緒にこの整形外科という分野を盛り上げていきたいと考えております。

秋田大学整形外科書道部は、いつでもご興味ある先生方をお待ちしております。

整形外科市民公開講座2022(佐藤貴洋)

秋も深まる今日この頃2022年10月29日に整形外科市民公開講座が行われました.

この会は秋田県整形外科医会と秋田県臨床整形外科医会が主体となり,ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)を市民に認知・理解いただきながら健康な生活につなげるために毎年行われてきました.

しかし,昨今の新型コロナウイルスの蔓延から現地開催は自粛し,秋田魁新報の誌面ディスカッションの開催となっていました.今回,遂に2年ぶりの現地開催が実現しました.

テーマ「アフターコロナに向けたロコモ対策」,キャッチコピー「いくつになってもサキホコレ!」と題として80名以上の市民の方に集まって頂きました.

秋田魁新報社 代表取締役社長の佐川博之様より開会挨拶を、秋田市保健所所長の伊藤善信様より開催に関してお祝いの言葉を頂き,本会が開始されました.

まずは基調講演として宮腰尚久教授より「コロナ渦のロコモ予防」という題名でご講演頂きました.ロコモとは何か,というところから健康寿命の重要性,ロコモにならないための方法は何かなど詳細に教えて頂きました.一般の方向けの内容ではありましたが,医療者である私も有意義に拝聴させて頂きました.

そして,パネルディスカッションとして秋田テレビ八代星子アナウンサーに司会をして頂き,コーディネーターである粕川雄司先生(秋田大学)とパネリストの鈴木均先生(湯沢病院),杉村祐介先生(秋田労災病院),木下隼人先生(秋田大学),若林玲奈先生(秋田県立医療療育センター)とで対話形式によるロコモの解説が行われました.

ロコモに関して専門家から生の声が聴けることもあり,非常にわかりやすい内容となっておりました.

私はというと,ロコモ体操が絵やスライドだけだとわかりにくいこともあり,自ら壇上にあがり皆さんの前でそのロコモ体操を披露させて頂きました.後ろにもよく見えるように必死で身体を大きく動かしました.届いてくれていれば幸いです.

秋田県臨床整形外科医会会長の斎藤晴樹先生より閉会のお言葉を頂き,会が終了となりました.

県民のみなさまがいくつになっても咲き誇った人生を謳歌できるよう,我々も臨床現場だけでなくこのような活動も含め,今後も様々な方面から頑張っていきたいと思います.