第85回秋田書道展一般一科 「秀作」を受賞して
2022/11/7記
秋田大学整形外科 書道部部長 齊藤英知
この度、2022年10月29日から11月2日まで第85回秋田書道展(秋田魁新報社主催)が秋田市中通のアトリオンで開催されました。
秋田書道展は県内最大の書道展で、小学生から一般までを対象としており、書道展は学生と一般の部で入賞384点、入選161点が審査により決まりました。一般には一科と二科があり、ざっくり言うと作品の紙の寸法の違いです。一科の方が大きく(横2尺縦8尺:天井からぶら下げるサイズ)、二科はいわゆる条幅サイズ(掛け軸にちょうどいいサイズ)です。比較的決められた約束の範囲内で作風を出せる「自運漢字」と古典を似せて書く「臨書漢字」があります。その他にも「自運かな」「臨書かな」「調和体(近代詩文)」「篆刻・刻字」などのジャンルもあります。賞については、上から「推薦」「特選」「秀作」「褒状」「入選」があり、「推薦」を3回受賞すると書道の先生を名乗ってもいいとされている「無鑑査」として出品が許されます。最高賞である「魁星賞」はこの「無鑑査」として出品された作品から審査され2点が選出されます。
2021年に秋田大学整形外科書道部の初代部長を拝命し、2021年9月から瀾の会という教室に通い、長沼雅彦秋田大学名誉教授のご指導の下、書道のいろはを習い始めました。2022年1月に行われた「第44回瀾の会書展」で、人生初の書展に出品し、書道部としての活動の第一歩を記したことを整形外科ブロクでご紹介させて頂きました。その後、地道に活動を続け、今回の第85回秋田書道展への出品となりました。私は一般一科「自運漢字」というカテゴリーに挑戦しました。題材は、「書譜」といって、中国は唐の時代(687年)に孫過庭という人によって書かれた優れた書論として高く評価されているもので、典型的な草書体で書かれた長文であり、真跡(紙にかかれたもの)が今に伝えられていて細やかな運筆もよくわかり草書を学ぶには最適な古典といわれているものを、長沼先生にご指導戴き、隷書として作品化されました。作品としては以下となります。
懸針垂露之異,奔雷墜石之奇,鴻飛獸駭之資,鸞舞蛇驚之態,絕岸頹峰之勢,臨危據槁之形 書譜之一(節) 英知
限られた時間の中、43文字を白と黒の空間をバランスを意識しながら、一文字一文字の筆法も意識するとバランスが崩れてなかなかうまくいかなくて泣きそうにもなりました。書き込んでいくうちに、墨の濃淡によるにじみとかすれ、空間のバランスなど、たまたまうまくいった一枚が写真のものです。審査の結果ですが、「秀作」を受賞させて頂きました。自分でも身に余る賞を頂いたと感じております。
秋田大学整形外科は、前島田洋一名誉教授のご指導の下、スポーツに秀でた選手が数多く入局してくれ、その情熱で全国に誇れる業績を出し、非常な発展を遂げて参りました。書道部顧問でもある宮腰尚久教授の下では、さらなる発展と人材育成、教育も兼ねて、整形外科開闢以来初となる書道部を立ち上げました。若手の新進気鋭の脊椎外科医の笠間史仁先生は、筆さばきがよくなると手術の電気メスさばきもよくなった「電気メスの先に神経が通った」と述べております。佐藤貴洋先生は、昨年の筆納め会に出席して、「一生懸命に字を書すことで、心が研ぎ澄まされる感じがして非常に良かった。」と述べています。参加者にとって書道との対峙の仕方はまさに多様性があり、我々秋田大学整形外科は、多様性のある医局として、意欲と好奇心に満ちた若手の先生方と一緒にこの整形外科という分野を盛り上げていきたいと考えております。