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2016年日本脊椎脊髄病学会     粕川雄司

平成28年4月14日から16日千葉市の幕張メッセで第45回日本脊椎脊髄病学会が開催されました.今回はAkita Spine Group (ASG)からは,合計23題の発表がありASGでは過去最多の発表演題数となりました.14日木曜日午前中のセッションでは秋田厚生医療センターより成人脊柱変形に対する矯正固定術の手術成績や固定範囲についての複数の発表があり,とても活発な討論がされました.午後からはポスター発表が複数あり,それぞれの演題について有意義なディスカッションがありました.夕方からは学会の全体懇親会に参加し,とても楽しいマジックを観ながら他施設の先生方とも交流を深めることができました.

学会2日目は朝から宮腰尚久准教授がモーニングセミナーで,”運動器疾患としての骨粗鬆症に対するトータルマネージメント”と題して骨粗鬆症に関連した脊椎・運動器疾患についての御講演をされました.午前中は島田洋一教授がシンポジウム”脊椎脊髄手術この10年のイノベーション”とディベート”成人脊椎変形矯正~後方骨切り vs 前方矯正”の座長を務められました.両セッションとも現在とても注目されている分野のご発表が多数あり,参加された先生方も非常に多く質疑応答も活発に行われました.本学会で最も注目されていたシンポジウムとディベートだと感じました.午後からはASGから複数の一般演題の発表があり,どの演題もとても盛り上がっていました.夕方は学会に参加した同門の先生方が集まり,楽しいひとときを過ごすことができました.

最終日は高橋靖博先生の発表がありました.日本脊椎脊髄病学会での発表演者としてASGでは,最も若い先生とのことでした.今後ますますの活躍を期待しています.また,午後にかけては宮腰尚久准教授がコースマネージャーを務めた日整会脊椎脊髄病医向けの脊椎脊髄病研修コースがありました.「脊椎・脊髄損傷」のテーマで疫学,頚椎損傷,胸腰椎損傷について各分野のご高名な先生方より御講演いただき,その後“頚髄損傷の全身症状と急性期治療について”秋田赤十字病院の石河紀之先生より,“脊髄損傷に対するリハビリテーション”について松永俊樹准教授より御講演いただきました.専門の先生方から大変わかりやすい御講演を頂き,とても有意義なセミナーとなりました.

このように大変充実した学会で3日間があっという間に過ぎていきました.学会に参加された先生方,お疲れ様でした.来年の日本脊椎脊髄病学会は島田洋一教授が会長をされ,当教室が主催することとなります.来年も参加いただく先生方に有意義な学会となるように,しっかりと準備を進めていきたいと改めて感じました.これから1年間よろしくお願い致します.

島田教授1 島田教授2

イギリス留学記 ~その8~ (工藤大輔)

渡英して3ヵ月,ちょうど折り返しを迎えた.シュート練習(自分にとっては素振り!?)のように側弯症の手術を見学している.今週末は4月6日から8日の日程でBrit Spine (Nottingham Conference Centre)があり参加してきた.入り口は日本脊椎脊髄病学会のようにテーマを掲げた看板で彩られることもなく、学会の名前が書いたのぼり旗が置いてあるだけでちょっと寂しい.口演が約80題,ポスターが約60題であった.側弯症の演題を主に聴講したが,特に興味をひいたのはMagnetic controlled growing rodいわゆるMAGEC®Rodに関するdebateであった.通常のConventional Growing RodではRodを伸張するために半年に1回の再手術が必要であるが,MAGEC® Rodでは体外から磁気を利用して伸張するため,伸張に伴う再手術を減らすことができるというのが利点である.しかし,実際は感染はゼロではないし,Rodの破損やMetallosis の問題 (特にMetallosisの問題を強調していた),コスト,うまく伸張しない症例があるなどの問題もあり,個人的には否定派の方が説得力があったと感じた.最新の論文にも同様の報告がされるようになってきており,反省の時期に入っているのかもしれない.いっぽう,日本では最近LLIFに関関する演題が飛ぶ鳥を落とす勢いで盛り上がっているが,今回はLLIFに関する演題は少なく,逆に成人脊柱変形の矯正ではPSOなどの3 column osteotomyに関する演題が多かったように思われる.いずれにせよ,Pelvic incidenceとLumbar lordosisのmatchが重要という意見は共通であった.(写真15)

写真15