月別アーカイブ: 2017年2月

第47回人工関節学会in沖縄に参加して (岩本陽輔)

2/24-25に沖縄で開催された第47回人工関節学会に参加してきました。

今回の人工関節学会には秋田の同門からはAHRG、ASAKGから過去最多の発表、参加がありました。

2/24の夜には日整会かと思うほどの盛大な同門会が行われました。秋田のこれからの人工関節に対しての熱い討論が繰り広げられました。

学会では最近の話題であるMISの中期〜長期の臨床成績やMISに伴うshort stem の臨床成績についての発表が多い気がしました。また当科でも使用をはじじめたcorailの演題も多く見られました。

同じ専門領域を志す人たちと交流することもでき、大変良い刺激をうけました。この会で得た知識を日々の診療・研究に活かしていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発表をするAHRG若手と華麗に座長をこなす秋田赤十字病院、田澤人工関節センター長

 

2017人工関節学会で膝周囲骨切り術のハンズオンセミナー講師を担当して(齊藤英知)

リーフレット

内側開大型高位脛骨骨切り術後X線像

脛骨近位に変形がある場合に行われる高位脛骨骨切り術の手術の適応、プランニング、実際、合併症の注意点について述べた

熱心な眼差しで取り組む参加者の先生方

2017人工関節学会で膝周囲骨切り術のハンズオンセミナー講師を担当して

変形性膝関節症に対する手術治療として、関節温存手術である高位脛骨骨切り術などの膝周囲骨切り術や人工膝関節置換術がある。膝周囲骨切り術の特徴として、術後可動域や深部感覚が保たれる。一方、人工膝関節置換術では、可動域は失われるものの除痛効果が高いという特徴がある。人工関節置換術は、関節軟骨を金属とポリエチレンで表面置換する、いわば、最終手段であり、若年で活動性が高いほど術後の満足度が低く、ポリエチレンの磨耗も生じやすい。現在に日本では、人工膝関節置換術は、年間10万件以上が施行されている一方、膝周囲骨切り術は年間、7000件しか行われておらず、日本に2530万人の患者さんがいると推定される変形性膝関節症の進行度の分布や医療経済の側面から考えても、膝周囲骨切り術の手術件数はもっと多くてしかるべきである。

今回、第47回人工関節学会において、高位脛骨骨切り術ハンズオンセミナーが主催された。「なぜ人工関節学会で骨切り術のハンズオンやるの?」と多くの声を聞いた。この企画は、非常に画期的であり、従来、人工膝関節置換術を専門として行ってきた整形外科医で会場は、立ち見が出るほどであった。今回、私に与えられたテーマは、surgical technique of OWHTO(高位脛骨骨切り術の手術技術)ということで、手術適応、プランニング、コツとそのエビデンス、合併症、後療法などについて、ドイツ仕込みのテクニックを豊富な手術ビデオとともに概説した。特に驚いたのは大学病院からの参加された先生方の多さである。このことは、今後の膝周囲骨切り術が、より日本中に浸透していくであろうことが予想される。模擬骨を用いたワークショップでは、細かなポイントを参加者の皆様にお伝えした。幸い、秋田県では、我々Akita Sports Knee and Arthroscopy Group内で、変形性膝関節症に対する手術適応および手術技術が一貫教育されており、すでに知識や技術が若手整形外科医に渡るまで維持されている。このような体制で膝周囲骨切り術と人工関節置換術の適応をバランスよく、大学主導で教育できている都道府県は少ない。これも、ひとえに島田洋一教授の指導力の賜物であり、秋田県民にとって、非常に有難い環境を作って下さっていると感じる。先日も、福島からわざわざ秋田まで膝周囲骨切り術を受けに下さった患者さんがいらっしゃった。あくまで人工関節置換術は、最終手段であり、侵襲の少ない膝周囲骨切り術がもっと日本中に浸透していくことを切に願う。

「死ぬまで自分の膝で!」

第10回秋田県運動器リハビリテーション研究会 (木村竜太)

 

 

H29年2月25日に第10回秋田県運動器リハビリテーション研究会が開催されました。

講演1として湯沢医院の那波康隆先生より「ロコアテープ使用経験からの考察」、秋田大学の益谷法光先生より「動的座位バランス装置を用いた若年者と高齢者の体幹バランス評価」、秋田県立医療療育センターの湯浅悠介先生より「小児運動器疾患の治療経験(運動器の命令系統からの検討)」、木村より「中枢神経術後例に対する歩行練習アシストGEAR」と様々な専門分野から発表がありました。

 

特別講演は、東京慈恵医科大学リハビリテーション医学講座主任教授の安保雅博先生から「脳卒中後遺症である上肢麻痺に対する経頭蓋磁気刺激療法〜自験例から」と題してご講演いただきました。

安保教授が厳しい過去から作り上げられたという教室の歴史から、世界最先端の治療NEURO(rTMS:反復性経頭蓋刺激治療+集中リハ)の素晴らしい臨床成績、患者さんの驚くほどの変化、基礎実験に裏付けされた効果まで、余すところなくご紹介いただきました。

これまで脳卒中など中枢神経性麻痺疾患は一定期間を過ぎると改善しないというのが定説でしたが、近年ニューロリハビリテーションという考え方から、それが覆されています。安保教授のご講演を聞き、改めて人間の持っている底力を、我々医療者はまだまだ引き出すことができると実感しました。秋田大学でもrTMSを用いた研究を行っております。ぜひ秋田からもTMSによる臨床効果を発信していきたいです。

第14回秋田県骨軟部腫瘍セミナー  (水谷 嵩)

2月18日(土)に秋田ビューホテルにて第14回秋田県骨軟部腫瘍セミナーが開催されました。

1演題目はイタリア留学から帰国された土江博幸先生による基調報告でした。土江先生からは、これまで当ブログで主にイタリアの文化についてご紹介頂いていましたが、今回は主に臨床的な内容でご発表いただきました。腫瘍に関しては積極的にアログラフトを用いたり、術後放射線療法を行うことが多く広範切除は日本に比べるとマージンが小さかったりなど、イタリアと日本との診療の違いについて提示していただきました。術中大声で歌いだすエピソードはさすが陽気なイタリア人、と感じました。

 

2演題目の教育講演は、『ビタミンD製剤による骨粗鬆症・運動器疾患の治療』というタイトルで秋田大学医学部附属病院の粕川雄司講師からご講演をいただきました。日常臨床でも身近になっているビタミンD製剤について、働きや代謝など基礎的な内容から説明していただきました。特に最近重要となっている慢性腎不全が原因となる骨代謝異常、CKD-MBDについての概念から診断、治療方針の建て方など臨床データを交えて詳しく解説していただきました。骨密度と骨代謝マーカーだけを見ていれば見落としがちですが、診断が重要な疾患であるだけに大変参考になりました。また、今回は骨軟部腫瘍セミナーということで腫瘍性の骨軟化症、FGF-23関連低P血症についてもご発表頂きました。

 

3演題目は東邦大学整形外科主任教授の土谷一晃先生の特別講演で、『外来診療に役立つ骨軟部腫瘍の知識 〜cancer survivorの骨粗鬆症対策を含めて』というタイトルでご講演をいただきました。現在は患肢温存が原則となってきた骨軟部肉腫治療の時代的背景からお話し頂きました。骨軟部腫瘍専門医、病理医でも診断が別れた症例を提示して頂き、臨床所見、現病歴、病理組織診断など総合的な診断が必要となるとお話され、骨軟部腫瘍の難しさを改めて感じました。また、生検などのために前医によって無計画に皮膚切開を置き、その後に行われる広範切除の侵襲が大きくなる事が問題となるunplanned excisionや、ガングリオンと誤診されて播種してしまった悪性腫瘍の症例、若年者でスポーツ外傷と誤診され発見が遅れるsports tumorという概念などご説明頂き、今後自分の外来診療でも十分に気をつけなければいけないと感じました。

 

第31回東日本手外科研究会(伊藤博紀)

平成29年2月11日、札幌市で東日本手外科研究会が開催され、8名参加してまいりました。学会長は札幌医大のご出身で、現在北海道医療大学リハビリテーション科学部教授の青木 光広先生が務められました。テーマは「手外科の継承と発展:私の選択」でした。中通総合病院 千馬誠悦先生が、『私の選択』というメインテーマのパネリストを務められ、手外科医としての歩みと苦労、そして今後の抱負(使命)を熱く語られました。たくさんの聴衆の前で、秋田の手外科の現状と課題についてもお伝えになり、AHGメンバーもそれぞれが目指すべき目標を今一度認識することができたと思います。他に中通総合病院 成田裕一郎先生が「PIP関節開放脱臼から指壊死を生じたAeromonas hydrophila感染症の1例」、由利組合総合病院 白幡毅士先生が「小指MP関節伸展拘縮に対して創外固定器により治療した1例」、私が「第2中手骨頚部骨折に対してintrafocal pinningを行った1例」を報告してまいりました。

研究会後の懇親会はさっぽろビール園で開催され、手外科に関わる多くの先生方と交流することができました。主管の皆様から、会の運営から懇親会まで、細やかな配慮をいただき感銘を受けてまいりました。

今回、市立角館総合病院の村田昇平先生が初めて手外科関連の学会に参加してくれました。私達AHGメンバー一同、手外科に興味を持ってくれる医局員が増えたことをうれしく思い、また責任も感じた次第です。8名というこれまでにない人数で参加することができましたが、これも島田洋一教授はじめ、各関連病院の先生方のご理解のおかげと思っております。この場をお借りしまして御礼申し上げます。

今回の研究会で得た知見を、日常臨床や後進の指導に活かしていきたいと思います。

第29回日本肘関節学会学術集会(伊藤博紀)

平成29年2月3・4日の両日、東京で開催された第29回日本肘関節学会学術集会へAHGより5名参加し、中通総合病院の千馬誠悦先生が「小児の陳旧性肘関節脱臼の1例」、成田裕一郎先生が「Cannulated screwによる小児上腕骨内側上顆骨折の治療経験」、由利組合総合病院 白幡毅士先生が「脳性麻痺による橈骨頭脱臼に伴う肘関節ロッキングの1例」、そして私が「上腕骨遠位部骨折後偽関節に対する人工肘関節置換術の経験」を発表してまいりました。

学会長は、昭和大学整形外科の稲垣克記教授で、メインテーマは肘関節不安定症でした。Mayo Clinicから著名なO`Driscoll先生が来日され、肘不安定肘に対する診断と治療と(特にPLRI:posterolateral rotatory instabilityに関する診断について動画を交えわかりやすく解説されました)、最新の人工橈骨頭に関する講演を行いました。これまでの人工橈骨頭は、長期成績は十分なものではありませんでしたが、新しい人工橈骨頭は解剖学的に形状が近似し、長期的にもよい成績が期待できそうな製品であると感じました。

肘不安定症に対する数多くの演題発表がありました。湘南鎌倉総合病院外傷センターの土田先生がTerrible triadに関する報告を行っており、発表のまとめにおいて『エビデンスに基づいて治療を行えば、もはやTerribleではない』との言葉が非常に印象に残りました。他にも人工肘関節、野球肘に関するシンポジウムや、エコーによる肘の画像診断、肘周辺外傷に対する治療戦略、小児の外傷に関する発表等、最新の知見を得ることができ、非常に有意義な2日間でした。

本学会で得た知見を、日常臨床や後進の指導へ活かしていきたいと思います。

秋田県骨粗鬆症PTH治療記念講演会(河野哲也)

2017年2月2日秋田ビューホテルにて、秋田県骨粗鬆症PTH治療記念講演会が開催されました。

ミニレクチャーでは秋田労災病院 加茂啓志先生より「大腿骨近位部骨折に対するテリパラチドの役割」をご講演いただきました。良好な整復を得られた場合でも、重症骨粗鬆症患者では骨癒合が得られづらい場合もあり、テリパラチドによる骨癒合促進効果、早期除痛効果など、臨床経験に基づくお話をいただきました。

特別講演Ⅰでは、宮腰尚久准教授より「骨粗鬆症性脊椎疾患-注意すべきポイント対策-」をご講演いただきました。椎体骨折の診断・評価方法から保存治療、手術治療にいたるまで、多岐にわたる内容をお話いただきました。中でも、腰椎損傷に引き続くアライメント異常はQOL低下や内科疾患の合併、ひいては寿命にもつながるなど、椎体骨折予防の重要性を改めて痛感しました。

特別講演Ⅱでは、東京大学整形外科 田中栄教授より「骨形成促進薬の位置づけ」をご講演いただきました。同じ骨吸収抑制薬であるビスホスホネートとデノスマブの骨代謝形態の違いから、骨形成促進薬であるテリパラチドの特徴について大変分かりやすく解説していただきました。デノスマブとテリパラチドの併用効果や、新たな骨形成促進薬であるromosozumabについても知識を深めることができました。

2時間ほどの講演会でしたが、本当に沢山の知識を得ることができました。

骨粗鬆症患者さんに対し、より適切な治療を行っていきたいと思います。

第24回秋田県スポーツ医学研究会(赤川学)

2017/02/04、ビューホテルにて第24回秋田県スポーツ医学研究会が開催されました。毎年行われるこの研究会は、秋田県のスポーツ医学に関して、整形外科、内科、そして秋田県体育協会がともに勉強する非常に貴重な会です。

まずはじめに、レクチャーとして嘉川貴之先生(市立大森病院整形外科)、柏倉剛先生(市立秋田総合病院整形外科)、柳澤宗先生(アーク循環器クリニック)、成田琢磨先生(秋田大学内分泌・代謝・老年内科学講座)、小野寺洋平先生(秋田大学付属病院産婦人科)の5名の先生から、明日からすぐに役立つスポーツ医学に関わる講演がありました。中でも小野寺先生の「アスリートの無月経」に関するレクチャーは、日常診療に役立つのみでなく、今後の産婦人科医との連携を深めていく上で非常に貴重なレクチャーでした。

続いて秋田県体育協会の片野裕先生から、「オリンピック競技となった空手道」と題して、特別レクチャーをしていただきました。秋田大学整形外科は、島田洋一教授が空手の元国体選手ということもあり、空手がいかにしてオリンピック競技となったかについて、非常に興味深く拝聴させていただきました。

特別講演1では、産業医科大学整形外科スポーツ関節鏡センターの内田宗志教授から「アスリートの股関節痛の診断と治療戦略」についてご講演いただきました。アスリートの股関節痛について、その概要から診断、鑑別疾患、画像所見、治療方針まで含め、幅広く、しかし詳細な部分まで教えていただきました。非常に濃い内容でしたが、印象的なプレゼンテーションでとても興味深い講演でした。ありがとうございました。

特別講演2では、埼玉医科大学総合医療センタースポーツリハビリテーション科の陶山哲夫教授から「パラスポーツと医師の役割」についてご講演いただきました。陶山先生は日本障害者スポーツ協会の医学委員長も努めており、講演では、われわれが普段あまり診療する機会の少ない障害者スポーツにおいて、選手が困っていること、その医学的原因、そしてそれに対して我々がどのように対応していくべきかを詳細に講演していただきました。ありがとうございました。

今回の研究会は、他分野の講演もあり非常に多岐にわたる内容で、医師としての幅を大きく広げるチャンスをもらった会だったと思います。さっそく明日からの日常診療に活かして頑張っていきたいと思います。

第38回 東北骨代謝・骨粗鬆症研究会(粕川雄司)

2017年2月4日仙台サンプラザにて第38回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会が開催されました.この研究会は,佐藤光三名誉教授が創設メンバーのお一人となっている歴史ある研究会です.今回A-BONEから,宮腰尚久准教授が福島県立医科大学 甲状腺内分泌学 鈴木眞一先生のミニレクチャーの座長をお務めになり,田村康樹先生,堀川 明先生,佐々木寛先生が発表しました.田村康樹先生は「エディロール投与例における血中カルシウムおよびeGFR値の変動と併用薬との関連んついて」,堀川 明先生は「経年的に調査した経口と注射製剤の骨粗鬆症治療薬の使用割合の推移と要因」,佐々木寛先生は「骨粗鬆症患者における血中25(OH)ビタミンD濃度と重心動揺との関係」の発表を行いました.また,秋田労災病院から奥山幸一郎先生が主導している臨床研究の結果について,中央検査部の長岐ゆいさんから「北緯40度地域における勤労者の血中25(OH)D濃度と腰痛およびQOLの関連について」と題した御発表がありました.数多くの素晴らしいご演題の中から,今回堀川 明先生が臨床系の最優秀演題賞を受賞されました.五十嵐記念病院での1000例を超える症例を対象に,経口と注射の骨粗鬆症治療薬の使用割合とその継続率について詳細に検討した内容でした.堀川 明先生,受賞おめでとうございます.

特別講演では帝京大学ちば総合医療センター 第三内科 教授 岡崎 亮先生より「ビタミンDの多面的作用」と題し,近年その様々な効果が知られているビタミンDの基礎から骨やその他各臓器疾患に対する様々な効果についての御講演がありました.ビタミンDの基礎から臨床での効果について大変勉強になりました.

今後も基礎から臨床までの骨・骨粗鬆症についての研究を継続していければと感じました.今後ともよろしくお願い致します.