月別アーカイブ: 2019年10月

第46回日本股関節学会学術集会に参加して(三浦隆徳)

2019年10月25日(金)~26日(土)に宮崎大学の帖佐悦男教授のもとシーガイアコンベンションセンターで開催された第46回日本股関節学会に参加して参りました。

本学会は、股関節学における新生児から高齢者、障害者・健常者までの幅広い世代、変性疾患、外傷、スポーツ疾患、感染症、骨代謝疾患、先天性疾患、腫瘍など多岐にわたる疾患を対象としており、日常診療のアップデートと普段遭遇することが少ない疾患の見識も深められることが特徴です。

秋田大学からは木島先生が末期変形性股関節症の痛みに関連する画像上の差異について、河野先生がシェーグレン症候群による股関節炎、私がTHA術前内服薬と術後成績の検討について発表して参りました。同門の先生方からは小西先生が豊富なご経験からS-ROMステムの有用性、佐々木研先生が外側大腿皮神経のエコー下深度、岩本先生が大腿骨近位部骨折エリア分類Type3−4の治療成績、長幡先生がTHA後の手術部位感染の予測因子の検討をご発表され、秋田で取り組んでいる多岐に渡る研究内容を討議し非常に有意義な会となりました。

学会で印象に残った内容について紹介致します。招待講演ではFAIやPAOの提唱者であるスイスベルン大学名誉教授のReinhold Ganz先生が“Hip preserving surgery. Where do we come from and where are we today” というタイトルで発表され、世界的な権威の講演に国内の重鎮の先生達が集結していたのが印象的でした。私も講演を拝聴してHip preservation surgeryについて勉強していく必要があると感じました。また近年股関節領域のトピックの1つである、いわゆる鼠径部痛「グロインペイン」について教育研修講演を受講し、受傷かoveruseによる障害かの問診から身体診察でのGroin triangleでわけた鑑別方法、身体所見のとり方が大変勉強になりました。代表疾患であるFAIにおいてもCAMタイプの大腿骨頭変化はスポーツによる骨端線の負荷が要因の1つであることやスポーツでは一輪車、アイスホッケーなど股関節屈曲位をとる競技に多いこと、プロサッカー選手の2/3程度にCAM変形があるなどの興味深い内容がありました。本学会で得た知見をもとに今後も患者様へよりよい医療を提供できるように精進して参りたいと思いました。今後ともご指導ご鞭撻何卒宜しくお願い致します。

第44回日本足の外科学会学術集会地域別研修医セッション優秀賞の報告(原田俊太郎)

この度、9月26・27日に札幌で開催された、第44回日本足の外科学会学術集会にて地域別研修医セッション優秀賞を受賞いたしました(演題名『Pilon骨折感染をIlizarov創外固定で救肢した1例)。今回、初めて全国規模の学会で発表させていただき、無事初受賞することができました。

 

秋田大学整形外科では島田洋一教授、野坂光司先生ご指導の下、重度四肢外傷や外傷後の変形治癒・偽関節等に対するIlizarov創外固定を用いた手術が盛んに施行されています。自分もまだまだ未熟ではありますが、情熱のある指導医の先生方の下日々研鑽を積ませていただいております。Pilon骨折感染という難治症例に対して果敢に立ち向かう姿を見て、「自分もいつかこういう診療をしたい」「こういう整形外科医になりたい」と強く思うようになりました。経験も技術もまだまだ未熟な自分にとって今は遥かな高みかもしれませんが、ご指導いただきつつ一歩一歩邁進していこうと思います。

 

最後に,このような発表の機会を与えて下さった島田洋一教授ならびに野坂光司先生,その他ご協力を賜りました多くの先生方に,厚く御礼申し上げます。

第10回秋田県骨粗鬆症PTH治療研究会(齋藤光)

2019年10月3日に第10回秋田県骨粗鬆症PTH治療研究会が開催されました。
研究会では一般講演として能代厚生医療センターの飯田淳平先生、大曲厚生医療センターの嘉川貴之先生からご講演いただき、香川大学医学部整形外科准教授の真柴賛先生から特別講演をいただきました。
飯田純平先生からは「脊椎領域における早期離床のための疼痛コントロール」のテーマでご講演いただきました。慢性腰痛症に対する内服治療としてのサインバルタの使用方法や、急性疼痛を呈する脊椎疾患・重篤な脊椎外傷に対する早期の手術治療の成績を提示いただきました。若手脊椎外科としての飯田先生のご活躍は後輩の我々としてはとても輝いて見えました。
嘉川貴之先生からは「肩関節周囲の疼痛について」のテーマでご講演いただきました。肩関節の疼痛について、原因別にその詳細を解説いただき、痛みの原因同定の重要性を教えていただきました。肩痛を訴える患者は外来に多数みられますが、治療に難渋する慢性疼痛の悪循環を改善させるための内服治療の経験を教えていただきました。両先生の講演とも明日からの診療に役立つ内容で、大変勉強になりました。

 

真柴賛先生からは「テリパラチドの生理的な骨代謝促進と整形外科治療にとってのメリット」と題してご講演いただきました.骨の解剖と代謝メカニズムの基礎から始まり、骨粗鬆症治療薬の作用機序について基礎から臨床まで最新の知見もあわせてご講義いただき、目からウロコの内容が盛りだくさんでありました。特に、骨吸収抑制剤と骨形成促進剤の作用の違いについては大変わかりやすく説明いただき、日頃から多数の骨粗鬆症治療薬の選択にせまられる我々には非常に重要な内容でありました。今回学んだことを活かして明日からの骨粗鬆症治療,PTH製剤使用についてより一層見識を深めるように努めていきたいと思います.

日本骨折治療学会 研修会 (野坂光司)

日本骨折治療学会 研修会に講師として参加してまいりました.

今回,リング型創外固定の基礎について,講演と実際のハンズオンでレクチャーしました.リング型創外固定を学びたいと感じている整形外科医は潜在的には非常に多く,全国各地から参加してくれたヤングドクターのやる気はとても高く,たくさんの実践的な質問をいただき,非常に盛り上がりました..

フロアには,実際の臨床現場では,まだリング型創外固定を使用したことがないというヤングドクターもまだまだ多く,リング型創外固定の普及のために,私自身が,創外固定手術の適切な保険収載に向けた日本骨折治療学会社会保険委員としての地道な活動と,正しいリング型創外固定手技の伝承を続けていかなければならないと決意を新たにいたしました.貴重な機会を下さった関係各位には心より御礼申し上げます.

秋田大学イリザロフハンズオンセミナー ベーシックコース (野坂光司)

9月21日,秋田大学イリザロフハンズオンセミナー ベーシックコースを開催しました.

秋田大学整形外科がいかにイリザロフ創外固定に力を注いでいるかということを島田洋一教授,宮腰尚久准教授から,全国各地からの参加者に向けてご挨拶をいただきました.

本セミナーのターゲットは,イリザロフ創外固定の基本を深く学ぶ機会として,若手医師,手術室看護師としています.今回も告知と同時にあっという間に定員に達する人気ぶりでした.毎回全国各地からおいでいただき,同門以外からも非常にわかりやすく,実践的だとアンケートからも高評価をいただきました.秋田イリザロフ法グループ(AIMG)の目標の一つに,全国からイリザロフ創外固定過疎地をなくすことを掲げています.これからも全国から積極的に参加いただけるよう,AIMGメンバーの知識,技術をアップデートしていく努力を続けていき,我々の技術を全国に広めていきたいと思います.

土曜日のお忙しい中集まってくれた参加者のみなさん,テーブル講師をしていただいたAIMGメンバー,開催に多大なるご協力いただきました関係者のみなさま,本当にありがとうございました.

第4回秋田大学イリザロフケアセミナー(野坂光司)

第4回秋田大学イリザロフケアセミナーを9月29日,秋田大学本道記念講堂で開催いたしました.

島田洋一教授のご発案で始まったこのセミナーも早いもので第4回を迎えました.

秋田イリザロフ法グループの最大の特徴は,何と言っても,退院支援多職種連携,『チームイリザロフ』の集結したパワーです.

特に今回はイリザロフ創外固定に関わる病院から,看護師さんにシンポジストとして講演いただき,それぞれの病院で行われているイリザロフケアについて深く話し合いました.

参加者は88名,いつも全国各地から参加いただいておりますが,今回は大阪掖済会病院 副院長で,昨年の日本マイクロサージェリー学会の会長をつとめられた,五谷寛之先生はじめ,6名の方においでいただきました.また,福島や岐阜の先生も参加されました.本当にありがとうございました.我々は『イリザロフで大切なことは全職種によるトータルケアである』ということをこれまで強調してきましたので,今回も秋田イリザロフ法グループの核心部分をお伝えできたと思います.

秋田大学医学部附属病院 整形外科病棟 澁谷浩子師長,門間りつ子看護師を中心に,チームイリザロフスタッフが手作りで準備,運営を行い,講演の質疑応答,ディスカッションも大変に盛り上がりました.

イリザロフ創外固定の管理は看護師さんが中心である特殊性を持ちます.秋田大学医学部附属病院イリザロフチームは全国トップレベルの管理能力を持っていることは全国的にも認知されております.また,今回もイリザロフ歩行を科学する渡邊基起先生のご講演は印象的でした.当院イリザロフチームがどのように感染ゼロと早期退院を達成しているのか,その極意がお伝えできたと思います.

現在,全国各地から難治症例を紹介いただき,病棟は年々厳しい症例が増えておりますが,チームイリザロフのイリザロフ創外固定患者へのあふれる愛情により,治療が進んでいます.患者への愛情なくしてイリザロフ創外固定の管理に成功はないと思います.

全国各地で患者さんファーストのイリザロフケアが行われることを願ってやみません.

 第44回日本足の外科学会学術集会参加報告(柴田暢介)

 

2019年9月26日,27日と,札幌にて日本足の外科学会が開催されました.

今回の会長は我々Akita Foot Group (AFG)が大変お世話になっている,羊ヶ丘病院の倉秀治先生ということもあり,当医局一同気合を入れて臨みました.

その結果,採用演題数は全国単独トップとなり,また柏倉剛先生はランチョンセミナー講師,パネルディスカッションのパネリスト,野坂光司先生,千田秀一先生がシンポジストを務められました.

さらに,(整形外科)研修医のセッションでは原田俊太郎先生が優秀賞を受賞されました.

 

今後もこの勢いを絶やさぬよう,努力して参りたいと思います.

 

ASBMR 2019 (2019.9.20-23)  (阿部和伸)

 

日本では暑さがひと段落し、過ごしやすい季節に変わりつつある9月下旬、私たちは米国骨代謝学会(ASBMR 2019)に参加するためにフロリダ州、オーランドへ向かいました。つい数週前のニュースでハリケーンがそこに到来していたようですが、今回の旅程中は連日晴天に恵まれ、ほっとしています。現地は最高気温30度、最低20度と非常に過ごしやすかったのですが、時折日差しは強烈で、サングラスや日焼け止めは必須でした。

 

会場のOrange County Convention Centerはホテルのすぐ向かいにあり、涼しげな池のある広大な庭を横目に会場入りしました。今年は当教室から粕川雄司講師が「Surgical results of osteoporotic vertebral fracture causing thoracic myelopathy combined with ossification of the ligamentum flavum at the same level」という演題で、佐藤千晶先生が「Effects of teriparatide and low-intensity aerobic exercise on bone and fat parameters in rats」という演題でポスター発表をしました。発表は参加者の注目を集め、活発な質疑応答が行われました。また、全世界から集まった骨代謝に関する様々な演題をみて大いに勉強しました。

 

オーランドといえば世界最大のディズニーリゾート、Walt Disney Worldをはじめ、Universal Resort OrlandoやSea World Orlandoといったテーマパークの宝石箱のような都市です。学会の合間に訪れるとそこはたくさんの人で溢れ、バカンスを楽しんでいました。私たちもその特別な空間で素晴らしい時間を過ごしました。

 

今オーランドから経由地のシカゴに向かう飛行機の中でこの記事を書いています。長旅の疲れはありますが、この学会出張の数日間を振り返り、心は充実感で満たされています。また一年研究に勤しみ、来年もこの学会で成果を発表できるよう頑張りたいと決意を新たにしました。シカゴから13時間のフライトを終えると日本に到着します。わがふるさと秋田はもはや肌寒く感じる頃だろうかと想像し、季節が急速に進むことに若干の心配を感じつつ、筆を置くことにします。

 

 

第2回秋田リウマチ治療トピックスセミナー(阿部和伸)

朝晩は肌寒さも感じられるようになってきた2019年9月19日、「第2回秋田リウマチ治療トピックスセミナー」が秋田キャッスルホテルで行われました。時々刻々と進歩する関節リウマチ治療の最新トピックスを勉強する貴重な機会でした。

 

Lecture1では、中通総合病院整形外科の杉村祐介先生に「関節リウマチ患者の残存症状の検討」という演題でご講演いただきました。関節リウマチで通院中の患者さんにおいて、治療が奏功し臨床的・機能的・構造的な評価は良いにもかかわらず、痛みやこわばり、倦怠感といった症状が残存している患者さんがしばしばみられます。最近、patient-reported outcome (PRO)が提唱され、患者さんの自覚的な症状、特に倦怠感、痛み、こわばりの程度を評価することが重要視されるようになってきました。杉村先生は外来通院中の関節リウマチ患者さんにPROに基づいたアンケート調査を行い、疾患活動性、エコー所見、内服薬、身体活動度による違いを評価された貴重なデータをご提示いただきました。結果、DAS-28 ESRにおいて寛解、低疾患活動性である患者さんにおいても、5-6割程度の患者さんが倦怠感、痛み、こわばりを自覚していることなどが分かりました。倦怠感の原因としては炎症、筋力低下、不安やうつなどが考えられ、今後はこれらに対するアプローチによりPROの改善も目指していく必要があると分かりました。

 

Lecture2では新潟県立リウマチセンターの阿部麻美先生をお招きし、「関節エコーできった鑑別学」という題でご講演いただきました。阿部先生の豊富な治療経験から、関節リウマチによって関節破壊が年々進行していく様を、多くのレントゲン写真を使って示され、衝撃を受けました。手術経験も豊富であり、手術で採取した滑膜をRooney scoreで評価され、エコー検査で滑膜炎の所見が強い患者さんほど、滑膜造成、リンパ球浸潤が強いことなどを示されました。また、関節リウマチと乾癬性関節炎をエコー所見で鑑別できる可能性を示され、今後の診療で大いに役立つ内容でした。

 

今後も日々進歩を続けるリウマチ治療の知識をアップデートし、最適な治療を提供できるよう精進していきたいと思いました。