月別アーカイブ: 2018年8月

第5回日本重度四肢外傷シンポジウム(JSETS)(三田基樹)

 

2018年7月21,22日、東京で第5回日本重度四肢外傷シンポジウム(JSETS)が開催されました。秋田大学からは伊藤博紀先生、谷貴行先生、野坂光司先生、白幡毅士先生、湯浅悠介先生、東海林諒先生、自分が参加いたしました。

 

1日目は「young surgeonによるfix and flapの今」のシンポジストとして白幡毅士先生のご講演から始まりました。御自身が経験された遊離・有茎皮弁や血管壁つき腓骨移植症例の話から、福島県立医科大学 川上亮一先生の手術を見学された時の話を御講演いただきました。特に、秋田で皮弁文化を根付かせる為には主治医だけでなく診療チーム全体で支え合う事が必要である事を力説されており、白幡先生の熱い気持ちがフロアに伝わる非常に感動する御講演でした。

午後には特別企画として野坂光司先生のシャッフルディベートがありました。「外傷後の骨再建(Masquelet法vs骨延長)」のディベートで、野坂先生はMasquelet法サイドで御講演されました。日々の診療で骨延長をされているからこそ分かる患者・医療者のストレスフルな治療面を交ぜつつ、Masquelet法の特徴である手術と共に治療が完了するメリットを含め御講演されておりました。ディベートの最後に“55歳男性 骨欠損を伴う脛骨骨幹部開放骨折”に対しMasquelet法と骨延長どちらを選択するか議論になりました。フロアの印象としては全荷重可能であり早期帰宅/社会復帰が可能である点からIlizarovによる骨延長に軍杯が挙がった印象でした。

白幡先生・野坂先生、貴重な御講演ありがとうございました。

その他の講演では、重度軟部損傷・開放創に対するNPWTの適切な使用法、局所軟部組織及び骨髄の感染制御目的に抗菌薬の高い局所濃度を保つiSAP/iMAP、Gustilo3C阻血四肢をサルベージするshut(TIVS/CVS)など非常に勉強になる内容でした。特にiSAP/iMAPを今回初めて知った私としては目から鱗の治療戦略でした。

 

2日目は主に皮弁に特化した症例報告とシンポジウムでした。中でも遊離皮弁術後管理の静脈鬱血モニタリングとして経皮的PaCO2が鋭敏という講義は新鮮でした。不良flapは経過を追う選択肢は無く、「術後、皮弁に添い寝する」事に加え早期判断・早期対応の重要性を再認識しました。

 

Gustilo3B,Cといった重度外傷は非日常的ですが、正しいストラテジーに則ったマネージメントで治療しないと温存出来る患肢を失う結果に繋がります。Ending lectureで土田芳彦先生は、この様な事態を防ぎ患者ADLを守る為には「日々の知識・技術の準備が重要」と仰っており心に響きました。秋田大学整形外科の先生方がここまで築き上げて来られた伝統と技術を絶やさぬ様これからも精進して行こうと強く感じた学会でした。

第36回日本骨代謝学会学術集会 (湯浅悠介)

2018年7月26~28日に長崎県長崎市の長崎ブリックホール、長崎新聞文化ホールにて日本骨代謝学会学術集会が開催されました。本会は長崎大学の小守壽文先生が会長となり第36回目の開催となりました。
秋田県からは5演題の発表が行われました。佐々木聡先生は「超高齢者におけるデノスマブの効果」と題し、90歳以上の超高齢者を対象としたデノスマブの治療効果の検討結果を御発表されました。粕川雄司先生は「腰痛や関節痛を生じた低リン血症の検討」と題し、低リン血症で生じる疼痛が低リン血症の改善で軽減した治療経験を御発表されました。木下隼人先生は「片側および両側非定型大腿骨骨折の比較」と題し、両側例の危険因子についての検討結果を御発表されました。長幡樹先生と私は大学院の研究結果を発表致しました。長幡先生は「Povidon-IdineとEthanolが骨に与える影響とハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体による骨癒合促進効果」と題し、骨条件の悪い環境下においてもハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体が骨形成に対して有用であることを発表しました。私は「卵巣摘出ラットにおける選択的エストロゲン受容体モジュレーターと低強度有酸素運動の骨と脂肪に対する効果」と題し、SERMと運動療法の併用が腰椎骨密度、骨髄内脂肪、体脂肪に対して効果的であることを発表致しました。
本学会は整形外科のみではなく内科、歯科、そして理工学など様々な分野の先生が参加されておりました。本学会を通じ、骨代謝はあらゆる角度から研究され、発展しているのだと実感しました。今後も研究を続け、骨代謝の発展へ貢献できるよう努めていきたいと思います。

Spine Across the Sea(工藤大輔)

2018729日から82日の日程でハワイ カウアイ島にてSpine Across the Seaが開催され、宮腰尚久准教授、奥山幸一郎先生、本郷道生講師、阿部和伸先生、笠間史仁先生、私のメンバーで参加してまいりました。気温は30℃弱で秋田よりも過ごしやすい印象でした。初日は夕方のレセプションに参加、2日目から成人脊柱変形、頚椎、低侵襲手術、ニューテクノロジー、腰椎、外傷、腫瘍、骨粗鬆症、診断、合併症など幅広い分野の最新の研究を聞くことができました。秋田大学からは、宮腰准教授がシンポジウムで骨粗鬆症とサルコペニアの関連、ビタミンDの重要性について大変わかりやすくご講演されました。手術に関する演題が多い中、骨粗鬆症とサルコペニアに関する最新の知見のレビュー、ビタミンD欠乏の疫学研究、運動療法によるQOL改善効果などいずれも手術を含めた高齢者の脊椎疾患の治療に欠かせない事項について解説され、海外の先生方も熱心に聞き入っていたのが印象的でした。本学会の口演の採択率は極めて低かったようで、今回残念ながら私自身は演題が通りませんでしたが、また3年後に再チャレンジしたいと思います。