月別アーカイブ: 2022年2月

第2回JAK阻害薬の適正使用を考える会(大屋敬太)

まだ寒く雪の多い2022年2月18日に、第2回JAK阻害薬の適正使用を考える会がインラインで開催されました。臨床データがまだあまり多くは無く、医療者にとってもリウマチ専門医でなければ馴染みの少ない薬剤であるため、最新の知識をアップデートすることができ、大変勉強になりました。

一般演題の一つ目は、北秋田市市民病院の加賀望先生から「リウマチ手への手術の試み」の演題でご発表いただきました。視聴した方は、リウマチ手への手術における手術場のセッティングや手関節鏡手術、尺側偏位に対する軟部手術などについて理解が深まったのではないでしょうか。手術件数の減少は、秋田県のリウマチ治療の発展を物語っていると思いました。

 一般演題の二つ目は、平鹿総合病院の櫻場乾先生から「JAK世代のRA治療の変化」の演題でご発表いただきました。JAK阻害剤、特にペフィシチニブの臨床での貴重な使用経験を共有することができました。まだ使用経験がない方も少なくないと思われ、今後さらなる症例の蓄積が期待されます。

特別講演は、松野リウマチ整形外科院長の松野博明先生から「明らかになってきたJAK阻害剤の違い」の演題でご講演いただきました。JAK阻害剤の歴史や、誰もが一度は疑問を持ったと思われる阻害剤ごとの特徴や違いについて大変勉強になりました。バリシチニブは他剤と比べ、やや帯状疱疹になりにくいという知見は今すぐにでも臨床で活用したく思います。筆者は関節リウマチの造詣が深いとは言えませんが、本講演を拝聴し、匠の知識に一歩近づいたと実感しました。

JAK阻害剤の最新の情報についてご講演くださった松野博明先生、並びに本講演の運営に携わった先生方、誠にありがとうございました。

第29回秋田県スポーツ医学研究会 (木村竜太)

2022年2月19日、第29回秋田県スポーツ医学研究会がオンライン開催されました。

下記、プログラムからの転載になりますが、それぞれがとても興味深い内容ばかりで、スポーツの幅広さを実感いたしました。ご講演いただきましたシンポジストの先生方、誠にありがとうございました。

【シンポジウム1】スペシャリストからの提言

1)「SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体価」

富樫 賢 先生 (あきた 腎・膠原病・リウマチクリニック)

2)「アスリートと生活習慣病」

森井 宰 先生 (秋田大学 糖尿病・内分泌内科)

3)「秋田県医師会「明日はきっといい日になる」ロコモダンスプロジェクト」

高橋 郁子 先生 (秋田大学 小児科)

4)「秋田県女性ジュニアアスリートと女性医学指導の実態」

小野寺 洋平 先生 (秋田大学 産婦科)

【シンポジウム2】障がいを超えた地域スポーツの取り組み

  • 「スポーツを通した子どもたちとの関わり」

佐藤 理枝子 先生 (秋田県立医療療育センター リハリハビリテーション部門)

2)「eスポーツでつくる新たな参加の形」

若狭 利伸 先生 (社会福祉法人北杜 障がい者支援施設ほくと)

3)「義足スポーツサークルAmbeinsについて-スポーツ活動からみる義足の可能性-」

佐藤 陽介 先生 (秋田厚生医療センター リハビリテーション科)

4) 「パラアスリートサポートの最前線 〜 Tokyo 2020 Paralympic Games 活動報告 〜」

藤井 昌 先生 (市立秋田総合病院 整形外科)

特別講演1は、「最期まで自分の脚で歩くためのスポーツ疫学研究~こどもからトップアスリートまで~」と題して、千葉大学大学院国際学術研究院准教授(千葉大学大学院 医学研究院 整形外科学)山口智志先生にご講演いただきました。

山口先生は整形外科医でありながら、教育学部関連のご所属ということで、疫学をもとにしたアプローチを主体にご講演いただきました。ロコモーティブシンドロームへの介入の重要性についてデータを元にご説明いただき、改めて積極的な介入の必要を実感させていただきました。また、ヘルスリテラシーを高めるという点について、インターネット上に誤情報が多くあるからこそ大切な介入点だと思いました。アキレス腱の治療は日本は手術が増加傾向、子供は身体が硬いのが普通、扁平足は痛みの原因でない、アスリートのトランスジェンダーなど多くの話題で、疫学調査から得られる学びをご教授いただきました。

また、東京オリンピック2020で金メダル獲得のスケートボード種目の、裏側のお話も興味深く、テレビ中継の裏ではかなりのご苦労があったことを知ることができました。

スポーツ障害について、疫学調査から介入を始めるというお考え、とても素晴らしくぜひ秋田でも取り組みたいと思います。

特別講演2は、「総合診療と喘息・スポーツ」と題して、秋田大学大学院医学系研究科 総合診療・検査診断学講座 教授 植木 重治先生にご講演いただきました。

喘息の基本的な知識から、IgEが日本で発見された(石坂公成先生)こと、IgEが関係しない喘息(非アトピー型喘息、成人発症)があり、気道の上皮障害などが原因で生じること、整形外科で多用するNSAIDsに関連するアスピリン喘息(N―ERD)について、アスピリンに対するアレルギーではない=アレルギー学的検査では診断不能、問診が重要など、なかなかブラッシュアップできずにいた知識について、とてもわかりやすくご教授いただきました。

アスリートの喘息有症頻度が一般より高いこともあり、プレーへの影響がどうなのか気になっていたのですが、オリンピックのメダリストは参加者の中でも喘息有症率が高いということで、コントロールできているとプレーに影響しないということで、アスリートの支えになる内容でした。

また、総合診療部で行われている渡航外来では、英文診断書・証明書の作成や、ワクチン接種、マラリアや高山病予防薬などに取り組まれていらっしゃり、スポーツ選手にも大切な存在が身近にあることを知りました。

講演中、植木先生が不意に発せられた、「スポーツを通して全人的にみる」という表現が素敵だなと思いました。スポーツが好きな医療者は、スポーツを通してその人そのものをみたいのかもしれません。

最後に、秋田県スポーツ医学研究会では、パラスポーツ推進ワーキンググループを作り、パラスポーツ(障がい者スポーツ)の普及にも取り組んでまいります。

第5回整形外科若手セミナー開催報告  (東海林諒)

2022/2/19に第5回となる整形外科若手セミナーをオンライン開催させていただきました。

今年は学生や研修医の整形外科に対する敷居を下げ、より近い存在になることを目標に、例年とは一味違った「勧誘」をテーマとしました。Covid-19の影響もあり、ハンズオン開催は困難でしたが、整形外科救急を中心に5題の発表をいただきました。

原田先生からは整形外科救急として防ぎえる死をいかに防ぐか、膨大なボリュームで発表いただきました。五十嵐先生からは、よく見る骨折のレントゲン所見についてイメージの湧きやすい発表を、自分は整形外科の呼び方を発表させていただきました。光先生からは外固定の仕方として救急でのシーネの当て方を中心にためになる発表を、笠間先生からは若手に必要な創傷治癒と縫合について詳しく勉強させていただきました。

本会開催にあたって、主幹である我々の学年は2名であるため力不足は否めず、演者として原田先生、笠間先生、五十嵐先生にご協力いただきました。また各病院への声かけは、歴代の大先輩や後輩の皆さんに大変ご尽力いただきました。

結果として最大人数50名、学生さんと研修医の先生で概算25名ほどの皆さんに拝聴頂けました(プロジェクター使用での複数名参加も考慮するとさらに多いかと思われます)。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。またこのような会を開催する機会をいただけた宮腰尚久教授と本会の立ち上げに携わった木村竜太先生に感謝申し上げます。

この会がきっかけで整形外科に興味を持つ若手が増えること、整形外科のイメージがより明るくなることを心から願っております。

第3回秋田県リウマチ治療講演会 (原田俊太郎)

秋田はまだまだ冬の寒さ厳しく、雪深い中ではありますが2022年2月15日に「第3回秋田県リウマチ治療講演会」がオンライン開催されました。

Lectureでは平鹿総合病院小林志先生から「AORA registryにおけるサリルマブ投与例の調査」を御講演いただきました。サリルマブを用いることでの他剤減量など、他科と併診が多く内服薬の多い高齢者における有用性は大変勉強になりました。超高齢県である秋田県ならではのデータに基づいたAORA groupの先生方の発表は毎回、大変興味深く拝聴させていただいております。

Special Lectureでは岡山大学学術研究院医薬学域准教授の西田圭一郎先生から「関節リウマチに対する外科的治療のピットフォール」をご講演いただきました。Champion症例の発表や教科書は世の中にたくさんありますが、top surgeonが一度うまくいかなかった際にどのようにrecoveryするかという本当に貴重な内容でした。人工肘・手関節から、人工関節周囲骨折に至るまで豊富な画像や手術動画を交えた実臨床に即した明日からの我々の診療に役立つ情報満載のご講演でした。

講演後はフロアからも質問が殺到し、秋田の深い雪を溶かすほどに大変な盛り上がりを見せておりました。私自身も多くのことを学ばせていただき、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。今回学んだ内容を今後の診療、研究に役立て行きたいと思います。

第7回しらかみ疼痛セミナー(五十嵐駿)

2022年2月9日、第7回しらかみ疼痛セミナーがオンラインで開催されました。

一般演題1では大曲厚生医療センター整形外科の岩本陽輔先生から「大転子部痛症候群における鏡視所見と病態の検討」と題してご発表いただきました。近年、股関節周囲の痛みの原因として注目されている大転子部痛症候群に関して、実際の術中の画像所見や、これまでご経験された症例のデータを分かりやすく説明して頂きました。また、大転子部痛症候群主体が大転子部滑液包炎であるといった最新の知見も教えて頂きました。

一般演題2では当教室の工藤大輔先生から「四肢体幹筋肉量が脊椎矢状面アライメントに与える影響」と題してご発表いただきました。脊椎のアライメントに与える因子や、サルコペニアと腰痛の関連などに関して自験例での検討結果や過去の報告などを詳細に報告して頂きました。脊椎のアライメントにおいては筋量よりも背筋力が重要な因子となりうることをお示し頂きました。

特別講演では秋田大学大学院麻酔・蘇生・疼痛管理学講座准教授の木村哲先生から「慢性疼痛診療における多職種連携」と題してご講演頂きました。

初めに痛みの概念、定義、種類、生理学的な仕組みといった基礎的なことから詳細に解説して頂きました。その中で、以前は心因性疼痛と呼ばれていた疼痛が、近年Nociplasticな疼痛(痛覚変調性疼痛)と名称が変更になったという最新のトピックスがありました。Nociplasticな疼痛とは痛覚伝導路の可塑的変化で生じる痛み、痛覚の機能的異常による痛みを指し、整形外科医にも必須な知識と思われました。薬物治療に関しては抗うつ薬、抗てんかん薬、オピオイドの生理学といった基礎的な内容から実際の適応症例などについて、また、神経ブロックに関しては、その利点や注意点、使い分け、適応の限界について詳細にご説明頂きました。最後に慢性化する疼痛に対しては生物学的要因のみではなく社会的要因、心理的要因も視野に入れることが重要であること、多職種が連携をとりあう集学的治療が今後必要になることを解説して頂きました。疼痛を訴える患者を診ることが多い整形外科医にとっても大変ためになるご講演でした。

今後、痛みで困っている患者さんに対しては、整形外科医で適切に治療していくことはもちろんのこと、治療に難渋する場合には麻酔科をはじめ多職種と連携し、より効果的な治療を行なっていけるように心がけることが重要と思います。

第43回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会 基礎部門優秀賞選出の喜び(五十嵐駿)

東北骨代謝・骨粗鬆症研究会は昨年より昨今の新型コロナウイルスの情勢を踏まえ完全オンライン開催となっておりましたが、今年の参加者は100人を超え、専門の科を跨いだ質疑応答や議論によりオンラインにも関わらず例年以上の盛り上がりとなりました。

当教室では自分と原田俊太郎先生と野坂光司講師から、関連病院では秋田労災病院の奥山幸一郎院長、中通総合病院の湯浅悠介先生、由利組合総合病院の三田基樹先生からの発表がありました。

ミニレクチャーでは、新潟リハビリテーション病院整形外科の山本智章先生から、日本における骨形態計測学の歴史と基礎についてご講演頂き、私を含めた大学院生には特にためになるレクチャーとなりました。

特別講演では、りんくう総合医療センター腎臓内科主任部長兼血液浄化センター長の重松 隆先生から「慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常と骨粗鬆症の接点」という題でご講演頂きました。慢性腎臓病患者に対する骨粗鬆症治療で注意すべき点や、今後の展望などについて詳細にご講演頂き大変勉強させて頂きました。

また、私個人としては現在大学院で研究している内容に直接的にリンクすることであり大変有意義な時間でした。

そして今回、私の演題である「アデニン誘発型慢性腎臓病モデルラットにおけるエテルカルセチドとテリパラチドの骨に対する効果」が一般演題基礎部門で優秀賞に選出されました。

近年、高齢化とともに慢性腎臓病患者や透析患者は増加しています。本研究では、慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)や二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療薬であるカルシウム受容体作動薬のエテルカルセチドと、骨粗鬆症治療薬であるテリパラチドとの併用効果を、ラットを用いた動物実験で検討しました。慢性腎臓病患者では、ステージが進行期に至ると骨粗鬆症治療に使用できる薬剤が制限されるといった問題点があり、高齢者に多く骨折リスクの高い慢性腎臓病患者に対して十分な骨粗鬆症治療ができないこと、治療の選択肢が限定されていることは今後の課題と言えます。

本研究は現在使用の制限のあるCKD患者に対するテリパラチドの効果を検討し、今後の慢性腎臓病患者や透析患者に対する骨粗鬆症治療の選択肢に新しい可能性を提案することを目的としております。

そのような背景のもと本研究を開始し、その成果が由緒ある本学会において評価されたことは至上の喜びです。

また、今回本教室の野坂光司講師も臨床部門で優秀賞に選出されております。大変おめでとうございます。骨代謝を専門とされる宮腰尚久教授の新体制が始まったばかりの当教室において、大変喜ばしいニュースとなったのではないでしょうか。

今回受賞できたのは、宮腰教授をはじめ、骨代謝グループの先生方のご指導と、大学院生、実験助手の工藤さん、実験に関わる全ての方々のご協力のおかげであります。皆様を代表して頂いた賞であり、この場をお借りして改めて皆様に深く感謝申し上げます。今後はさらに研究を続け、その成果を国内外での学会発表や、論文として世に送り出すために今後も精進して参ります。今後ともご指導の程何卒よろしくお願い申し上げます。