第7回しらかみ疼痛セミナー(五十嵐駿)

2022年2月9日、第7回しらかみ疼痛セミナーがオンラインで開催されました。

一般演題1では大曲厚生医療センター整形外科の岩本陽輔先生から「大転子部痛症候群における鏡視所見と病態の検討」と題してご発表いただきました。近年、股関節周囲の痛みの原因として注目されている大転子部痛症候群に関して、実際の術中の画像所見や、これまでご経験された症例のデータを分かりやすく説明して頂きました。また、大転子部痛症候群主体が大転子部滑液包炎であるといった最新の知見も教えて頂きました。

一般演題2では当教室の工藤大輔先生から「四肢体幹筋肉量が脊椎矢状面アライメントに与える影響」と題してご発表いただきました。脊椎のアライメントに与える因子や、サルコペニアと腰痛の関連などに関して自験例での検討結果や過去の報告などを詳細に報告して頂きました。脊椎のアライメントにおいては筋量よりも背筋力が重要な因子となりうることをお示し頂きました。

特別講演では秋田大学大学院麻酔・蘇生・疼痛管理学講座准教授の木村哲先生から「慢性疼痛診療における多職種連携」と題してご講演頂きました。

初めに痛みの概念、定義、種類、生理学的な仕組みといった基礎的なことから詳細に解説して頂きました。その中で、以前は心因性疼痛と呼ばれていた疼痛が、近年Nociplasticな疼痛(痛覚変調性疼痛)と名称が変更になったという最新のトピックスがありました。Nociplasticな疼痛とは痛覚伝導路の可塑的変化で生じる痛み、痛覚の機能的異常による痛みを指し、整形外科医にも必須な知識と思われました。薬物治療に関しては抗うつ薬、抗てんかん薬、オピオイドの生理学といった基礎的な内容から実際の適応症例などについて、また、神経ブロックに関しては、その利点や注意点、使い分け、適応の限界について詳細にご説明頂きました。最後に慢性化する疼痛に対しては生物学的要因のみではなく社会的要因、心理的要因も視野に入れることが重要であること、多職種が連携をとりあう集学的治療が今後必要になることを解説して頂きました。疼痛を訴える患者を診ることが多い整形外科医にとっても大変ためになるご講演でした。

今後、痛みで困っている患者さんに対しては、整形外科医で適切に治療していくことはもちろんのこと、治療に難渋する場合には麻酔科をはじめ多職種と連携し、より効果的な治療を行なっていけるように心がけることが重要と思います。