月別アーカイブ: 2015年2月

木島泰明先生留学便り5

「自由」の国、フランスの手術2と題して今回は、ここフランスのHôpital Henri Mondorにおける人工股関節置換術Total Hip Arthroplasty (THA) についてご紹介致します。

人工股関節置換術 Prothese Total de Hanche (PTH)

臨床配属みたいな学生さんは、とても熱心なのか義務なのか、いれば必ず手洗いをして手術に入るが、13時ころからは講義があるらしいので、13時以降の手術や、朝の用事で学生さんがいない時には手洗いして手術に入らせてもらっている。

手洗いは水道水とイソジンスクラブで1回洗った後、不潔の紙タオルで拭いて、アルコールを念入りに刷り込むスタイル。指輪を付けたままの人もいる。次にガウンを羽織り、手袋を1枚付けてからガウンの帯を締める。そしてもう1枚、手袋。

さて、ここでのTHAのアプローチはなんと今はposterolateralでした。パリで1番大きな整形外科施設であるコシャン病院はtrans-trochanteric approachだそうで、そこがライバルなので、前方系やHardinge (ハーディンジュと言っていました)などもやっていたが今はこれだそうです。教育がメインの施設のせいもあるかもしれません。それもあって、皮切長にもこだわっていませんし、教わりながらインターンの先生が執刀していて、手術時間は2時間くらいです。ちなみに僕がこのあと回らせていただくもう2施設は前方系のアプローチのはずですし、プライベートクリニックなので、また全然違ったレポートができると思いますので、そちらも楽しみにしていて下さい。(あとでHernigou教授に、アプローチについてお伺いしたところ、フランスでは7割はposterolateral、2割がanterior、1割がtrans-trochantericとおっしゃっていました。)

体位は側臥位で、いわゆる骨盤支持器は使わず、普通の体側支持器で仙骨と恥骨を挟むようにして固定するのみです。通常は両下肢の間に枕は挟まないので、反対側の下肢も圧布の下に触れるため、両下肢を揃えるようにして両側の膝や踵を触って脚長差を確認しています。やや外転位を保持したいときには滅菌した枕を使っています。実際には滅菌した袋に不潔のタオルを入れているのでやや怪しい感じですが、秋田で使っている大枕をそのまま滅菌できるならそれもありかなと少し思いました。足袋にはストッキネットを使っていますが下腿以遠はそれを二重にしています。ちなみに3時間近いような手術以外はフォーレはいれないようです。

外旋筋群は切離して最後はそれなりに再建(縫合)していますが、術者によっては関節包もなるべく縫合するという先生もいるし、切除している先生もいます。関節包を大事にしている先生はproprioceptorが関節包に存在するから重要視しているのだ、とおっしゃっていました。

機種はTKAと同じCERAVERというフランスメーカーのものを全員が使用。ですが、臼蓋側のリーマーだけはまたもやストライカーを使用していました。これはパワーツールをストライカーで統一しているせいのようですが、つまりはストライカーのツールが使いやすいからのようです。

カップはPoignard教授とヒップ専門で小西先生似のDelambre Jérôme先生はセメント、それ以外はセメントレスがメインだと思われました。セメントレスの時は最終リーミングサイズと本物のカップサイズは同サイズと話していましたが、接触面の構造のためか、楕円カップでなく半球カップにもかかわらず、ほとんどがプレスフィットするためスクリュー固定する例は稀でした。寛骨臼形成不全症例がほとんどないのも一因と思われます(約5%)。

でも、どの先生もリヴィジョンの時はあまり迷わずセメントカップを使っています。臼蓋側セメントのアンカーホールは鋭匙で6-8mmくらいの穴を前方、上方、後方に1か所ずつ、合計3か所だけ穿けると決めているようです。セメントはTKAと同じものでワーキングタイムが長いので、やはりカウントせずにゆっくりカップ設置。体重をかけて圧入するというより、セメントカップでもインパクターをガンガンハンマーで叩きます(ハンマーはフランス語で「まとー」です。マトー・シルヴプレで看護師さんが渡してくれますが、本当は冠詞を付けてル・マトゥだそうです。)臼蓋側の展開には細めのピンレトラクターをたくさん打ち混んでいます(これはフランス語で「ぴんち」のようです。ちなみにガーゼはデ・コンプレイス・シルヴプレで何枚かくれます。”デ”は複数を表わす冠詞だからですね。もう1枚欲しいときは”あんこーふ”-encore-です。そうです、日本語のアンコールはフランス語からきているようです。)

カップの設置位置に関しては横靭帯を重視している先生が多いようで、そこにハサミ(れ・しぞー、あるいは、マイヨ―・ロン「長いメイヨ―」)を入れてぐっと開いて剥離したところにホウマン鈎を入れてからリーミングという先生が多いです。ほとんどがプライマリーOAのような症例ですが、1例だけ寛骨臼形成不全のキアリ骨盤骨切り術後OAという症例だけが僕が経験したdysplasiaのケースでした。この症例には手洗いして入らせていただいた(―手洗いしていいですか―ジュ・プ・スクラビン?で通じました。スクラビングは英語ですが..)のですが、ブロック骨移植にセメントカップ固定していました。(全部で50例近くのTHAを見せてもらいましたが、massiveの骨移植はこの1例のみ、morselizedの骨移植も1例だけ、KTプレートの脇にしているのを見たのみです。) これだけプライマリーOAがあるとやはりそのうちの相当数はいわゆるFAI由来かもと思われる画像所見でした。

ステムは気まぐれに?若いから?1例のみセメントレスを使っているのを目撃しましたが、その1例以外は全員がセメントステムを使用していました。スターターリーマーは使わず、鋭匙で髄腔内の海綿骨を掻き出すようにして髄腔を確認した後は通常通りブローチング。ギチギチに入るまでサイズアップしたらトライアルせずに(トライアルする先生もいます)セメントプラグもブローチを使って押し入れてからセメンティングです。セメントガンは使わず、吸引チュ-ブを髄腔の奥に入れて、50㏄シリンジでセメントを注入。1回だけの注入で足りるようです。

ステムはブローチとほぼ同じ大きさなのですごく薄いセメントマントルです(いわゆるフレンチ・パラドクスっていうやつですよね)。ポリッシュですがカラー付きのステムなので、どこで荷重を受けていると思いますか?でもフランスではずっとこうやってきて、長期の成績も良いとのこと。ちなみにステムもセメントですがガンガン叩きます。そのあとにトライアルをやってネックの長さを決定してヘッドを付けています。このトライアルもしないという先生もいます。トライアルも70度くらい屈曲位で30度くらい内旋しても脱臼しなければまあ大丈夫でしょうという感覚のようです。ちなみにここで使っているCERAVERのセメントカップには内部に可動性のOリングみたいなものがついていてそれも脱臼の抑制に有利みたいな話だったのですが、どういうメカニズムなのかもう一つ理解できずにいます。結構前からのシステムのようです。ちなみに術前プランニング用のCTは撮っていないようですが、カップトライアル設置後など、少しでも不安要素があれば術中写真は結構ためらわずに撮っています。

ということで摺動面はセメント派はCoP、ハイブリッド派はCoCです。ヘッドサイズは基本32mmのようです。フランスといえばdual mobility cupでも有名ですが、ここでは現在は、ほとんど使われていません。ある先生は、dualにしても外れるときは外れるし、誰かのデータでは脱臼率が変わらなかったみたいだよ、こんなトラブルもあるしね(ちょうどdualのアウターカップとインナーカップの間で外れた症例のリヴィジョンの手術の時でした)、だから今、うちでは積極的には使っていない、とのことでした。あとでHernigou教授に個人的に伺ったところでは、高齢者にはとても良いと思う、でも若年者にはちょっとね、ということでした。ちなみにフランスでは高齢者でもひどい骨盤後傾の患者さんは見かけません。脊椎の変形も日本のような全後弯になることはあまりなく、胸椎だけ後弯する円背や、胸椎後弯・腰椎前弯の凹円背がほとんどのためのようです。

誤解を恐れずに言えば、ここの先生たちはあまり脱臼を、もしくはリヴィジョンを我々ほどには“恐れていない”のかもしれません(リヴィジョン-フランス語ではReprise-もしょっちゅうやっているし!?)。もしかしたら、数多くやっている先生あるいは施設は日本でもそうなのかもしれません。ただフランスは結構、患者さんにも受容されやすいのかもしれません。おそらくアメリカのような訴訟社会でもなく、日本ほどにもインフォームド・コンセントも厳しくなく、合併症があってもそういうものかなとみんなが感じちゃう土壌があるのかもしれません。役場の事務手続きが全然進まなかったり、手続きの方法までが担当者によって言うことが全然違ったりするのもフランスなら当然らしく、みんなそれをしょうがないことだと受け入れているらしいのですが、それと関係があるかどうかはもちろん不明ですが。

ちなみにリヴィジョン時の感染の有無の確認は血液検査(主にCRP)とリヴィジョン手術時の関節液などの組織培養くらいのようです。それとリヴィジョンの手術で驚いたのは、前に入っていたセメントやセメントプラグを除去するのに、外傷に使うストライカーの髄内釘用のドリルやガイドワイヤーや髄腔リーマーを使用していることです。ストライカーが許してくれるのであれば使えるかもと思いました。

(追伸:人工骨頭症例は結局1例も見ませんでした。頸部骨折症例には全例THAをやっておりました。寛骨臼骨折も保存治療がメインで1-2年後にOAの診断でTHAという症例が多いようです。)

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(写真1) ↑体重かけたリーミング!

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(写真2)↑ステムも緑でおしゃれ。

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(写真3)↑骨頭は軟骨をボーンソーで除去して移植。   ↑ジェローム小西先生!?

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(写真4)(写真5)(写真6)↑商品化された同種骨

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(写真7)↑KTプレートはこのように把持していました。

第6回日本ニューロリハビリテーション学会・The 4th Japan-Korea NeuroRehabilitation Conference報告(柴田暢介)

2015年2月21日と22日の2日間に渡って, 秋田ビューホテルにおいて第6回日本ニューロリハビリテーション学会及びThe 4th Japan-Korea NeuroRehabilitation Conferenceが開催されました. 今回は秋田開催ということで, 医局員・スタッフ一同一丸となり準備にあたりました.

初日の日本ニューロリハビリテーション学会の特別講演1では, 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座准教授の加賀谷斉先生が, 「摂食嚥下の生理と治療成績」の演題でご講演をしていただきました. 豊富な動画で詳細に解説していただき, 普段嚥下にあまり関わらない整形外科医としては新鮮なご講演でした. なかでも, 選択的に嚥下に関わる筋(舌骨上筋など)を電気刺激して嚥下機能を改善させるという治療は, このようなFESもあるのかと大きな感銘を受けました.

加賀谷斉先生

特別講演2はUniversity of Maryland School of MedicineのProf. Keith McBrideに, “Contemporary Functional Electrical Stimulation in Persons with Stroke” の演題でご講演をいただきました. FESの歴史から学会当日(!)にFDAに認可された新しい機器の紹介まで, 多岐に渡る話をしていただきました.

Prof. Keith McBride;
ランチョンセミナーでは, 札幌医科大学附属病院神経再生医療科教授の本望修先生より「脳梗塞と脊髄損傷の再生医療-医師主導治験による実用化-」の演題でご講演をしていただきました. これは脳梗塞や脊損患者に対して, 腸骨から採取した骨髄から間葉系幹細胞を分離して培養し, 静脈投与することで麻痺が改善していくというものでした. 紹介された症例では投与後わずか3日目より上肢機能の劇的な改善を認めていて, 非常に興味深い内容でした.
本望修先生
シンポジウムでは, 東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野准教授の田中尚文先生に「骨格筋パルス磁気刺激装置」の演題で, 骨格筋用の安価でコンパクトな磁気刺激装置を紹介していただきました. 当科でも奥寺良弥先生が末梢への磁気刺激を研究されていて, 今後研究を発展させていく際にこの機械があればベッドサイドで磁気刺激が行えるので非常に有用と思いました. また, 国際医療福祉大学病院リハビリテーション科部長の太田喜久夫先生からは, 「同名半盲に対する反復視覚刺激の効果-ニューロモデュレーションの可能性-」の演題で, コンピューターで視野を計測し, その辺縁に反復視覚刺激を加えることで, 視野が広がる症例があったことをご報告されていました. 滋賀県立成人病センターリハビリテーションセンター医療部長の中馬孝容先生からは「脳卒中に対するボツリヌス療法」の演題で, ボツリヌス療法をする際の注意点について詳細なご講演をしていただきました. 解剖学的な知識, 正確な注射はもちろんのこと, 患者へ注射の効果を十分に説明し, 理解してもらうことがいい結果につながるとお話しされていました. 最後に, 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座助教の平野哲先生からは,「脳卒中片麻痺患者の歩行練習における歩行練習アシストの有用性」の演題で, 歩行練習アシストロボット, Gait Exercise Assist Robot (GEAR)を紹介されていました. 今までは脳卒中片麻痺患者のトレッドミルを用いた歩行訓練は主に長下肢装具を装用していました. しかしこのロボットでは膝関節部にモータを搭載していて,膝伸展や振り出しの補助をすることができます. さらに麻痺肢の荷重を計測する圧センサー, 関節のトルクセンサー, 患者自身が歩きながら歩容を確認できる前面モニタ, など多くのフィードバックを得ることができ, それをもとに補助量を個々の患者に応じて設定することができるというものでした.
また一般演題では当院及び関連施設からも多くの発表があり, 非常に有意義な会となりました.

 

2日目のJapan-Korea NeuroRehabilitation Conferenceでは, 始めに藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座教授の才藤栄一先生より, “Exercise and robotics in neurorehabilitation”の演題で, Balance exercise assist robot (BEAR)や, 前述のGEARの紹介をされました. 招待講演では, 慶應義塾大学医学部整形外科学教授の中村雅也先生より, “Regenerative medicine for spinal cord injury”の演題で肝細胞増殖因子(HGF)やiPS細胞を用いた脊髄損傷に対する再生医療についてご講演いただきました. シンポジウムでは兵庫医科大学リハビリテーション医学教授の道免和久先生よりconstraint-induced movement therapy (CIMT)について, 東京慈恵医科大学附属第三病院リハビリテーション科准教授の角田亘先生からは反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)について, Kyungpook National University Hospital リハビリテーション科教授のYang-Soo Lee先生からは”task-oriented gait training”について, Asan Medical Centerリハビリテーション科教授のCenter Chun Minho先生からは脳梗塞患者に対しての歩行訓練ロボットに関してのご発表をしていただきました. その後の討論でも活発な討論を聞かせていただきました.
ポスター会場では昨日に引き続き多くの発表があり, 2日目も大成功で終えることができました.リハビリテーションは整形外科とは切っても切れない関係にあり, 非常に勉強になった素晴らしい会でした. 整形外科だけでなく, リハビリテーションにも深く関わっていきたいと改めて感じました.
才藤栄一先生

 

 

 

 

中村雅也先生シンポジストの先生方

今回の2日間の学会の成功は学会運営に関わった先生方, スタッフの方々. ご支援いただいた同門の先生方のおかげです, 誠にありがとうございました.

集合写真

お疲れ様でした!

第12回秋田県骨軟部腫瘍セミナー (永澤博幸)

第12回秋田県骨軟部腫瘍セミナーが、2015年2月14日に開催されました。

本セミナーは県内整形外科医を主な対象とし、骨軟部腫瘍に関する診療技術向上のため年1回開催されております。今回の特別講演は、JA北海道厚生連旭川厚生病院整形外科主任部長の川口哲先生をお招きして、「米国テキサス大学アンダーソンがんセンターでの整形外科診療」というご講演をしていただきました。川口先生は米国医師免許試験に合格し、いくつかの州で医師免許を取得されております。このうち、テキサス大学アンダーソンがんセンターでのご勤務時代の経験をもとに日米の整形外科医療制度、骨軟部腫瘍診療の違いについてご講演いただきました。

米国医師免許を持たない医師の研修は基本的に見学のみになりますが、米国医師免許を取得され実際に勤務なされていたご経験による講演は、特に若い先生にとってインパクトがありました。セミナー終了後の情報交換会では、もっと詳しい話を聞かせてもらうべく多くの県内若手整形外科医が川口先生の周りに集まっていたのが印象的です。

川口先生におかれましては、新千歳空港が雪まつり状態の中、岩手県花巻空港より秋田市入りすることになり、ご足労をお掛けしました。今後ともご指導よろしくお願いします。

 

木島泰明先生留学便り4

留学便り4

今回はパリ第12大学アンリ・モンドール病院のカンファレンスについてご紹介します。

毎朝7時半過ぎ(フランス人は時間にルーズという話もよく聞くが、確かにそうかもしれない。カンファも、全員が集まって「さあ始めましょう」という感じではなく、それなりの時間に、それなりの人数が集まると、なんとなく始まり、徐々に人が増えてくる、つまり学生さんも含め、ほとんどの人が遅れてくる)から、前日の急患と前日の手術症例のプレゼンがある。

シャーカステンでの提示がほとんどだが急患の画像は病院端末の画像を大きなテレビに映している(東芝ビエラ!)。急患は予定手術とは別にすぐに手術が施行されていて、カンファに出されるときにはもう術後である症例も少なくない。そういう意味でも専門以外の手術も普通にこなせる技量が要求されるが、少し困難な例では専門医が呼ばれたり、後日の手術になったり、やり直しになったりすることもあるようです。

カンファでは1例1例終わるたびに、主にPoignard教授(No.3の教授)がレコーダーにカンファの結果を録音している(ここでは手術記録だけでなく、すべての記録をレコーダーに録音する。そうすると誰かがタイプしてくれるらしい。欧米はみんなこうなのでしょうか)。カンファの内容を録音したものは、コンクルジォン・ドゥ・スタッフというカルテのページにしっかり記録される。

夕方のカンファレンスは月曜日と水曜日の16時半過ぎ頃からなんとなく始まる。結構前からインターンの先生がプレゼンの準備をしている。夕のカンファでは術前の症例が提示されるが翌日や翌々日などの症例なので、問題点が指摘されれば準備が間に合わないのではないかという気がするが、結構1例1例、みんなが言いたいことを言って時間をかけて話しているわりに、結局は術者の当初の方針を押し通す!という印象でした。

カンファは、僕が来て最初の1回だけは、Japanese friendがいるからとか言って頂いて英語で行われたものの、やはり大変だったようで、その後はフランス語で行われています。カンファをある程度理解するには、まずはフランス語の数字を聞き取れるといい。アン、ドゥー、トワのその続きを100まで分かれば事足りる。症例提示では患者さんの名前に続いて年齢が示される。その年齢を聞き取れるだけでまずはうれしい。プレゼンでは必ず年齢を最初に言っているのに、議論中に何回も「その患者さん(まらーどぅ)は何歳だっけ(けらーじゅ?)」と聞かれるのは日本のカンファにもよくあることで、整形外科の治療方針決定には、洋の東西を問わず、年齢はかなり重要だということでしょう。

あとはL4/5の4-5は「かとうさん」に聞こえる(きゃとる・さんき)」し、5/Sは「さんき・え・さん」に聞こえる(ほんとは何と言っているのかわからないけど…)。あとは意外と英語よりもローマ字読みに近いし、画像を見ていればなんとなくわかる。たとえば、いんすたびりて、すこりおーす、とらんすばはす、ばはてぃかる、などは意味が分かる。それと、Thereforeは<どんく>、Howeverは<め>、Becauseは<ぱすく>だと思えばだいたいいいようです。街での買い物でもRの発音さえ気を付ければだいたい通じます。Rの発音が英語と違っていて、教科書では「らりるれろ」で表記されますが、「はひふへほ」に聞こえます。なので、舌を下の前歯の裏につけて「はひふへほ」と発音すれば通じるようです。パリに来てよく使うのが「じゅ・ぷ・ぺいえ・ぱは・かふとぅ」(Je peux payer par carte?カードで支払えますか)です。大抵のお店でクレジットカードは使えます。

ちなみにカンファレンスで、固有名詞は「じゅで」と「ますきゅれ」(と聞こえる)以外は出てこない(聞き取れている範囲ですが)。チャンレーもシャンリー(もしかしてチャンレーをそう読んでいたりしてと思ったが)も出てこない。Alexandreはエリクソン、incisionはアンシジォンに聞こえる。執刀時は「お願いします!」ではなく、皮切を入れながら大声で「あんしーじぉん!」と言って手術を始めています。

写真1 写真2

前から偉い人順に座る。シャーカステンだけで見えない時は前まで見に行くスタイル。
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左側に東芝ヴィエラ。カンファ内容はテープレコーダーでカセットテープに。
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こちらは手術と手術の合間に使う整形専用控室。ここで手術直前に作図。

第2回しらかみ疼痛セミナー(水谷 嵩)

第2回 しらかみ疼痛セミナーの報告(水谷 嵩)

2015年2月12日、秋田ビューホテルで第2回しらかみ疼痛セミナーが開催されました。整形外科医として日常診療でもっとも関わりの多い疼痛に関するセミナーで、第2回となる今回も平日にもかかわらず多くの先生方にお集まりいただきました。

今回は特別講演2題をご講演頂きました。1題目は九州大学病院整形外科講師の播广谷勝三先生から「脊椎腫瘍性疾患に伴う疼痛-診断と治療におけるknack & pitfalls-」の演題でご講演頂きました。播广谷先生は脊椎と腫瘍を専門とされており、今回は脊椎腫瘍について豊富な経験から手術症例、診断に至るまでをご発表していただきました。最近注目されている低リン症誘発性骨軟化症に関する話題や、脊索腫、骨巨細胞腫の手術治療など大変興味深い内容でした。

2題目は大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学の准教授富田哲也先生から「整形外科医のためのNSAIDの使い方」という演題でご講演いただきました。富田先生の専門は関節リウマチで、他にも様々な分野でご活躍されておられます。そのご経験の中で、今回は我々整形外科医には切っても切れないNSAIDsに関する話題でご発表いただきました。NSAIDs潰瘍とその予防、NSAIDsと骨粗鬆症についてなど明日から使える知識を自験例を含めお話ししていただきました。

秋田大学大学院  水谷 嵩

第22回秋田県スポーツ医学研究会の報告(佐々木研)

2015年2月7日,秋田ビューホテルにおいて,第22回秋田県スポーツ医学研究会が行なわれました.この研究会は,整形外科に関わらず内科の先生方も多く御参加される会となっております.今回から,一般演題というこれまでの形式を変え,すべてレクチャー形式となりました.

レクチャーは4演題でした.1題目は,秋田大学内分泌・代謝・老年内科学講座の成田琢磨准教授による,スポーツと栄養,内分泌疾患との関連についてわかりやすい御講演でした.2題目は,当教室大学院生の佐々木研先生による,エコーで診断できるスポーツ外傷と障害について,エコー画像や動画を交えたレクチャーでした.3題目は,当教室リハビリテーション科助教の齊藤英知先生より,スポーツ選手の膝の怪我について,特に外科的治療についてのお話でした.4題目は,秋田大学血液・腎臓・膠原病内科学講座の高橋直人教授より,スポーツ貧血と予防について,実際の秋田県中学生強化選手の血液データを交えた御講演でした.

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続いて,特別レクチャーは2演題でした.1題目は当教室の島田洋一教授より,日本パラプレジア学会で作成された脊損予防のビデオの上映をして頂きました.続く2題目は,当教室大学院生の藤井昌先生がバスケットボールのユニフォームと馬の被り物姿で登場し,会場を大いに沸かせました.藤井先生は現役アスリート整形外科医として,当教室バスケ部ノーザンバイソンズのこれまでの輝かしい成績の数々と,プロバスケチーム秋田ノーザンハピネッツとの関わりについて,ド派手なプレゼンがありました.

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そして最後に,会の目玉である特別講演では,なんと今年はあの大林素子さんが御講演されました.現在もスポーツ番組やバラエティで大活躍の大林さんは,話の巧みさから吉本に最も近いスポーツキャスターと言われています.そんな明るい大林さんも,現役時代は膝の半月板損傷で苦しんでいた時期があったそうです.膝の治療を乗り越える術,メンタルケアの大切さなどについてお話されました.やはり本物の大林さんは近くでみると迫力があり,とてもお綺麗な方でした.

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秋田大学大学院 佐々木研

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会を終えて(木下隼人)

余寒厳しき折柄,皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます.

この度,2015年2月7日に宮城県仙台市で開催された第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会において,今村記念クリニックの田村康樹先生共々優秀演題賞を頂き,私におきましては分不相応なため,恐縮であるとともに,望外な喜びを感じている次第であります.この成果を皆様にご報告致しますとともに,今年度の研究会で諸先生方より学ばせて頂いたことを簡単にではございますがご報告させて頂きます.

演題数は,基礎研究より6題,臨床研究より10題の計16題でした.歯科口腔外科の先生からは,ビスホスホネート関連顎骨壊死(BRONJ),産婦人科の先生からは,骨系統疾患の出生前診断について,外科の先生からは,副甲状腺機能亢進症術後の骨量変化について,その他非常に興味深いお話を拝聴致しました.整形外科領域では,CKD-MBD(Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder)との関連で,田村先生がエルデカルシトール投与患者を腎機能別に血中CaおよびPを比較検討した内容を御報告されました.また,経口ビスホスホネート製剤反応不良例でイバンドロネートに変更した際,骨密度や骨代謝マーカーの改善が期待できるという興味深い研究をされている方もおりました.

一般演題終了後,ミニレクチャー,特別講演と続きました.ミニレクチャーでは,東北大学腎・高血圧・内分泌学の森本先生により,内分泌異常による続発性骨粗鬆症について御講演頂きました.クッシング症候群や下垂体機能低下症などの内分泌疾患は,ともすると診断に到るまで時間を要し,骨代謝に対する視点を欠いてしまう症例があり,骨粗鬆症が重度に進行するまで見逃される危険性があるので,原疾患に対する精査・治療と併行して骨粗鬆症の治療を行わなければならない,という内容でした.特別講演には,長崎大学副学長の伊東昌子先生が演台に立たれ,皮質骨の放射線学的評価法について拝聴致しました.語弊を恐れずに大雑把に述べさせて頂くと,今までは骨に関しては海綿骨の評価が主流であったのに対し,近年では,皮質骨評価も注目されつつあるということでした.皮質骨微細構造の評価をHR-pQCTで行い,皮質骨の層を外側(皮質骨最表面),内側(海綿骨側),中央(皮質骨最表面と海綿骨側の間)に分けて評価.骨孔を各層で確認し,皮質骨内側の骨孔がいくら多くても骨強度には影響しないのに対し,皮質骨中央の骨孔の数が多いほど,骨強度は弱くなるという内容でした.今後,本邦においても次々とHR-pQCTが導入される見込みで,皮質骨微細構造の放射線学的評価が様々な施設で可能になるのではないかと,将来の展望について御教示頂きました.しかし,測定箇所が橈骨・脛骨の遠位部のみであるため,その結果が他の骨に対しても当てはめられるのか,という課題もあるようでした.最後に,このような発表の機会を与えて下さった島田教授ならびに宮腰准教授,粕川講師,その他ご協力を賜りました先生方に,厚く御礼申し上げます.

木島泰明先生留学便り3-2

CERAVERというメーカー。適応はこんな感じ。image002 (640x427) image001 (640x427)

手術室12番。脛骨骨切り後に1回ギャップを確認。image003 (640x427) image004 (640x427)

機械はなんとなくカラフル。ボックス部分はストライカーに似てる。image005 (612x407) image006 (640x427)

本物のインサートを付けてしまってから打ち込む。image007 (640x427)image008 (596x396)

セメントは緑色。看護師さんがインプラントにつけてくれる。image010 (640x427) image009 (640x427)

入れたら伸展位で固まるのを待つ。人数多いときは外から見学させてもらう。image012 (640x427) image011 (640x427)

術後は麻酔科管理でリカバリールームへ。パテラインプラントはエルメス製?image014 (640x427)image013 (601x400)

インサートごと打ち込み。ときどきlépineというメーカーも。image015 (640x427) image016 (640x427)

セメントはゲンタマイシン入り。脛骨も髄内ロッド。image017 (640x427) image018 (640x427)

木島泰明先生留学便り3-1

現在、島田教授のご高配で、順天堂大学の金子教授や本間先生にご紹介頂いたPhillipe Hernigou教授のもと、Hôpital Henri Mondorで研修させて頂いている木島です。今回はTotal Knee Arthroplastyについてご紹介致します。

 

「自由」の国、フランスの手術1

人工膝関節置換術 Prothese Total de Genou (PTG)

フランスが自由の国だからなのか、この施設の特徴かは実際のところわからないのですが、同じ施設内でもみんなが同じように手術をしているわけではなく、かなりの部分が術者の裁量に任されています。そして、大学病院なのですが、上の先生も専門領域の手術だけをするのではなく、秋田で言うと例えばRS病院のように自分が診た患者さんは自分が手術に入るというような体制でやっているようです(でも少し難しい症例では専門医が一緒に入る、あるいは担当を代わるようです。)

ですが、この人工膝関節置換術に関しては、基本的には我々の方法と大きな違いはないことが分かりました。仰臥位でほぼ正中の皮膚切開、オーソドックスなメディアル・パラパテラ・アプローチです。ただ、バイオクリーンルームや宇宙服は使用していません。

皮切に使ったメスはその後は使わない、創や創内は手(もちろんグローブはつけています)では触らない、というノータッチ・テクニックを「目指している」というような表現でした。必要な場合は触っています。でもグローブ(フランス語ではレ・ガン。7.5の手袋がほしいときは、レ・ガン、セッ、ドゥミ、シルヴプレで通じました!)は、かなり頻回に替えています。まず、皮切前には替えるし、インプラントを入れる前にも、もちろん替えています。そして替えるときには全員替えています。

この施設ではオールPSでやっているようです。ですが、ほとんどmeasured cutテクニック。全例セメントですがセメントの種類はPalacosR+Gというゲンタマイシン入りの緑色っぽいものを使用しています。これは3-4分で手につかなくなり15分位で固まるのでワーキングタイムが10分以上あるため、タイム・カウントもせずにゆっくり作業しています。

機種はCERAVERというフランスの会社のHiFitという機種、つまりメイド・イン・フランスです(パテラ・コンポーネントはエルメス製?下の写真参照)。パテラは全例置換しています。一度だけ、lepineというやはりメイド・イン・フランスのモバイルベアリングの機種を試しに(?)使っていたこともありました。その辺は自国製にこだわっている風でしたが、なんとボーンソーだけはストライカーのものを使っていました。道具はやはり使いやすいものを選択するということでしょうか(ストライカーも許してくれるのですね)。

脛骨インサートの厚さは決め打ちで、脛骨のメタル・インプラントに装着してしまってから打ち込んでしまい、最後に大腿骨インプラントを打ち込んで終了。洗浄の量は決めていないようですが、インプラント挿入前に50㏄のシリンジで2-3回洗うだけです。ただし、膝がご専門と思われるAlexandre Poignard教授(No.3の偉い先生なのであんまり話しかけられず…)だけはパルス洗浄器を使っていました(しかも、これもストライカー製でした)。

縫合するときの膝の角度は術者によりまちまちで、椅子の生活社会なので、やはりそんなに屈曲可動域にこだわりはないようです。その分、インプラント設置アライメントを重視しているようで、脛骨の骨切りも髄内ロッドで全例行っています。脛骨骨切りからやる先生が多いですが、大腿骨から骨切りする先生もいて、この辺も統一性はありません。

大腿骨はポステリア・リファレンスでやっていますが、ノッチができないようにはとても気にしていました。他の手術もそうですが、ほとんどの定型的な手術はインターンが執刀、シェフ・ドゥ・クリニックと言われる指導医が前立ちで、臨床配属みたいな学生さんか僕が第2助手として入らせてもらうような感じで手術をしています。でも結構、インターンがシェフにお取り上げされている率も高いです。

また、ほかの手術についてもご報告致しますので楽しみにしていてください。