現在、島田教授のご高配で、順天堂大学の金子教授や本間先生にご紹介頂いたPhillipe Hernigou教授のもと、Hôpital Henri Mondorで研修させて頂いている木島です。今回はTotal Knee Arthroplastyについてご紹介致します。
「自由」の国、フランスの手術1
人工膝関節置換術 Prothese Total de Genou (PTG)
フランスが自由の国だからなのか、この施設の特徴かは実際のところわからないのですが、同じ施設内でもみんなが同じように手術をしているわけではなく、かなりの部分が術者の裁量に任されています。そして、大学病院なのですが、上の先生も専門領域の手術だけをするのではなく、秋田で言うと例えばRS病院のように自分が診た患者さんは自分が手術に入るというような体制でやっているようです(でも少し難しい症例では専門医が一緒に入る、あるいは担当を代わるようです。)
ですが、この人工膝関節置換術に関しては、基本的には我々の方法と大きな違いはないことが分かりました。仰臥位でほぼ正中の皮膚切開、オーソドックスなメディアル・パラパテラ・アプローチです。ただ、バイオクリーンルームや宇宙服は使用していません。
皮切に使ったメスはその後は使わない、創や創内は手(もちろんグローブはつけています)では触らない、というノータッチ・テクニックを「目指している」というような表現でした。必要な場合は触っています。でもグローブ(フランス語ではレ・ガン。7.5の手袋がほしいときは、レ・ガン、セッ、ドゥミ、シルヴプレで通じました!)は、かなり頻回に替えています。まず、皮切前には替えるし、インプラントを入れる前にも、もちろん替えています。そして替えるときには全員替えています。
この施設ではオールPSでやっているようです。ですが、ほとんどmeasured cutテクニック。全例セメントですがセメントの種類はPalacosR+Gというゲンタマイシン入りの緑色っぽいものを使用しています。これは3-4分で手につかなくなり15分位で固まるのでワーキングタイムが10分以上あるため、タイム・カウントもせずにゆっくり作業しています。
機種はCERAVERというフランスの会社のHiFitという機種、つまりメイド・イン・フランスです(パテラ・コンポーネントはエルメス製?下の写真参照)。パテラは全例置換しています。一度だけ、lepineというやはりメイド・イン・フランスのモバイルベアリングの機種を試しに(?)使っていたこともありました。その辺は自国製にこだわっている風でしたが、なんとボーンソーだけはストライカーのものを使っていました。道具はやはり使いやすいものを選択するということでしょうか(ストライカーも許してくれるのですね)。
脛骨インサートの厚さは決め打ちで、脛骨のメタル・インプラントに装着してしまってから打ち込んでしまい、最後に大腿骨インプラントを打ち込んで終了。洗浄の量は決めていないようですが、インプラント挿入前に50㏄のシリンジで2-3回洗うだけです。ただし、膝がご専門と思われるAlexandre Poignard教授(No.3の偉い先生なのであんまり話しかけられず…)だけはパルス洗浄器を使っていました(しかも、これもストライカー製でした)。
縫合するときの膝の角度は術者によりまちまちで、椅子の生活社会なので、やはりそんなに屈曲可動域にこだわりはないようです。その分、インプラント設置アライメントを重視しているようで、脛骨の骨切りも髄内ロッドで全例行っています。脛骨骨切りからやる先生が多いですが、大腿骨から骨切りする先生もいて、この辺も統一性はありません。
大腿骨はポステリア・リファレンスでやっていますが、ノッチができないようにはとても気にしていました。他の手術もそうですが、ほとんどの定型的な手術はインターンが執刀、シェフ・ドゥ・クリニックと言われる指導医が前立ちで、臨床配属みたいな学生さんか僕が第2助手として入らせてもらうような感じで手術をしています。でも結構、インターンがシェフにお取り上げされている率も高いです。
また、ほかの手術についてもご報告致しますので楽しみにしていてください。