留学便り4
今回はパリ第12大学アンリ・モンドール病院のカンファレンスについてご紹介します。
毎朝7時半過ぎ頃(フランス人は時間にルーズという話もよく聞くが、確かにそうかもしれない。カンファも、全員が集まって「さあ始めましょう」という感じではなく、それなりの時間に、それなりの人数が集まると、なんとなく始まり、徐々に人が増えてくる、つまり学生さんも含め、ほとんどの人が遅れてくる)から、前日の急患と前日の手術症例のプレゼンがある。
シャーカステンでの提示がほとんどだが急患の画像は病院端末の画像を大きなテレビに映している(東芝ビエラ!)。急患は予定手術とは別にすぐに手術が施行されていて、カンファに出されるときにはもう術後である症例も少なくない。そういう意味でも専門以外の手術も普通にこなせる技量が要求されるが、少し困難な例では専門医が呼ばれたり、後日の手術になったり、やり直しになったりすることもあるようです。
カンファでは1例1例終わるたびに、主にPoignard教授(No.3の教授)がレコーダーにカンファの結果を録音している(ここでは手術記録だけでなく、すべての記録をレコーダーに録音する。そうすると誰かがタイプしてくれるらしい。欧米はみんなこうなのでしょうか)。カンファの内容を録音したものは、コンクルジォン・ドゥ・スタッフというカルテのページにしっかり記録される。
夕方のカンファレンスは月曜日と水曜日の16時半過ぎ頃からなんとなく始まる。結構前からインターンの先生がプレゼンの準備をしている。夕のカンファでは術前の症例が提示されるが翌日や翌々日などの症例なので、問題点が指摘されれば準備が間に合わないのではないかという気がするが、結構1例1例、みんなが言いたいことを言って時間をかけて話しているわりに、結局は術者の当初の方針を押し通す!という印象でした。
カンファは、僕が来て最初の1回だけは、Japanese friendがいるからとか言って頂いて英語で行われたものの、やはり大変だったようで、その後はフランス語で行われています。カンファをある程度理解するには、まずはフランス語の数字を聞き取れるといい。アン、ドゥー、トワのその続きを100まで分かれば事足りる。症例提示では患者さんの名前に続いて年齢が示される。その年齢を聞き取れるだけでまずはうれしい。プレゼンでは必ず年齢を最初に言っているのに、議論中に何回も「その患者さん(まらーどぅ)は何歳だっけ(けらーじゅ?)」と聞かれるのは日本のカンファにもよくあることで、整形外科の治療方針決定には、洋の東西を問わず、年齢はかなり重要だということでしょう。
あとはL4/5の4-5は「かとうさん」に聞こえる(きゃとる・さんき)」し、5/Sは「さんき・え・さん」に聞こえる(ほんとは何と言っているのかわからないけど…)。あとは意外と英語よりもローマ字読みに近いし、画像を見ていればなんとなくわかる。たとえば、いんすたびりて、すこりおーす、とらんすばはす、ばはてぃかる、などは意味が分かる。それと、Thereforeは<どんく>、Howeverは<め>、Becauseは<ぱすく>だと思えばだいたいいいようです。街での買い物でもRの発音さえ気を付ければだいたい通じます。Rの発音が英語と違っていて、教科書では「らりるれろ」で表記されますが、「はひふへほ」に聞こえます。なので、舌を下の前歯の裏につけて「はひふへほ」と発音すれば通じるようです。パリに来てよく使うのが「じゅ・ぷ・ぺいえ・ぱは・かふとぅ」(Je peux payer par carte?カードで支払えますか)です。大抵のお店でクレジットカードは使えます。
ちなみにカンファレンスで、固有名詞は「じゅで」と「ますきゅれ」(と聞こえる)以外は出てこない(聞き取れている範囲ですが)。チャンレーもシャンリー(もしかしてチャンレーをそう読んでいたりしてと思ったが)も出てこない。Alexandreはエリクソン、incisionはアンシジォンに聞こえる。執刀時は「お願いします!」ではなく、皮切を入れながら大声で「あんしーじぉん!」と言って手術を始めています。
前から偉い人順に座る。シャーカステンだけで見えない時は前まで見に行くスタイル。
左側に東芝ヴィエラ。カンファ内容はテープレコーダーでカセットテープに。
こちらは手術と手術の合間に使う整形専用控室。ここで手術直前に作図。