2017人工関節学会で膝周囲骨切り術のハンズオンセミナー講師を担当して
変形性膝関節症に対する手術治療として、関節温存手術である高位脛骨骨切り術などの膝周囲骨切り術や人工膝関節置換術がある。膝周囲骨切り術の特徴として、術後可動域や深部感覚が保たれる。一方、人工膝関節置換術では、可動域は失われるものの除痛効果が高いという特徴がある。人工関節置換術は、関節軟骨を金属とポリエチレンで表面置換する、いわば、最終手段であり、若年で活動性が高いほど術後の満足度が低く、ポリエチレンの磨耗も生じやすい。現在に日本では、人工膝関節置換術は、年間10万件以上が施行されている一方、膝周囲骨切り術は年間、7000件しか行われておらず、日本に2530万人の患者さんがいると推定される変形性膝関節症の進行度の分布や医療経済の側面から考えても、膝周囲骨切り術の手術件数はもっと多くてしかるべきである。
今回、第47回人工関節学会において、高位脛骨骨切り術ハンズオンセミナーが主催された。「なぜ人工関節学会で骨切り術のハンズオンやるの?」と多くの声を聞いた。この企画は、非常に画期的であり、従来、人工膝関節置換術を専門として行ってきた整形外科医で会場は、立ち見が出るほどであった。今回、私に与えられたテーマは、surgical technique of OWHTO(高位脛骨骨切り術の手術技術)ということで、手術適応、プランニング、コツとそのエビデンス、合併症、後療法などについて、ドイツ仕込みのテクニックを豊富な手術ビデオとともに概説した。特に驚いたのは大学病院からの参加された先生方の多さである。このことは、今後の膝周囲骨切り術が、より日本中に浸透していくであろうことが予想される。模擬骨を用いたワークショップでは、細かなポイントを参加者の皆様にお伝えした。幸い、秋田県では、我々Akita Sports Knee and Arthroscopy Group内で、変形性膝関節症に対する手術適応および手術技術が一貫教育されており、すでに知識や技術が若手整形外科医に渡るまで維持されている。このような体制で膝周囲骨切り術と人工関節置換術の適応をバランスよく、大学主導で教育できている都道府県は少ない。これも、ひとえに島田洋一教授の指導力の賜物であり、秋田県民にとって、非常に有難い環境を作って下さっていると感じる。先日も、福島からわざわざ秋田まで膝周囲骨切り術を受けに下さった患者さんがいらっしゃった。あくまで人工関節置換術は、最終手段であり、侵襲の少ない膝周囲骨切り術がもっと日本中に浸透していくことを切に願う。
「死ぬまで自分の膝で!」