東北骨代謝骨粗鬆症研究会優秀演題賞を受賞して(田村康樹)

優秀演題賞を受賞して

この度、2/7(土)に仙台で行われた第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会の臨床部門にて優秀演題賞をいただきました。この会は、今年で36回目ということで歴史があり、佐藤光三名誉教授が会の立ち上げから今でも元気に参加されているという由緒ある会でもあるため、その恩師の前でこういう賞をいただけたことを大変うれしく思います。

元々この会はビタミンD研究会、であったこともあり、4年前に新たに発売された活性型ビタミンD製剤であるエディロールを頻用する私としては、一度症例をまとめて報告してみよう、というのが発表に至るきっかけです。昨年は、「エディロール投与例における血中および尿中Ca値の変動について」という演題を発表しました。エディロールを投与した143例(平均年齢78.3歳)について、血中および尿中Ca値を測定し投与前の値と比較すると、ともに有意に増加(正常範囲内)しており、結果エディロールは腸管からのCa吸収率を確実に上昇させていることが示唆されるため、骨粗鬆症治療薬として有用である、という内容です。しかしながら、一方でCaが高値となることが血管の石灰化につながらないのか、特に腎機能の低下した高齢者ではどうなのか、という疑問が残ったため、今年は長期(2年)にわたりフォローし得た患者のCa値に加え、リン値、および腎機能(eGFR)について調査しました。演題名は、「エディロール投与例における血中Ca/P値およびeGFRの変動について」です。エディロールを投与し2年以上経過した74例(平均年齢78.5歳)について、6ヵ月ごとに血中Ca値、P値及びeGFRを測定すると、血中Ca値は投与前と比べ有意に増加しそのまま高値を保っており、血中P値は内服前後で大きな変動はありませんでした。eGFRは6ヵ月時で有意に低下しましたが(正常範囲内)、その後大きな変動はなく経過とともに漸減しました。また、経過中一度でもeGFR 60未満を示したのが74例中36例(48.6%)あり、36例の血中Ca値は正常群と比較し安定せず高値を示す傾向にあった、という内容です。

近年CKD-MBD (Chronic Kidney Disease – Mineral and Bone Disorder.慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)という概念が提唱されています。Ca/P値などの異常がやがて血管の石灰化など生命予後に関わるというものです。今後も漫然とエディロールの投与を続けるのではなく、調査を続け、骨粗鬆症の治療につなげていきたいと思っています。最後になりますが、骨グループをまとめ、いつも御指導いただく宮腰准教授、そして、自分に活躍の場をくださる島田教授に感謝し、受賞の言葉とさせていただきます。今後ともよろしくお願いします。

今村記念クリニック 田村康樹