Ramathibodi病院(タイ)研修(整形災害外科学研究助成財団トラベリングフェローシップ) (木村竜太)

2023年12月18日から22日の1週間、タイのマヒドン大学ラマチボディ病院で、脊椎外科の研修を行いました。秋田大学整形外科では宮腰尚久教授が日本脊椎脊髄病学会トラベリングフェローでラマチボディ病院を訪問して以来の交流が続いており、現在のchairmanのProf. Pongsthor Chanplakornの秋田研修以来、ここ数年で3名の脊椎フェローの先生が秋田に研修に来られていました。今回秋田からの独自フェロー訪問は初となりました。

ラマチボディ病院は、1023床のとても大きな病院で、さらに周囲の複数の病院と歩行者デッキで繋がっており、巨大な病院網が形成されていました。デッキ間を患者さんがゴルフカートで移動・搬送されているのは日本では見ることのない文化でした。うち整形外科は40床で実情全くベッドが足りていないため、現在は少し離れた分院として、 Chakri Naruebodindra Medical Institute (CNMI)が2017年から一般的な整形外科手術を担当しながら機能を分離しているそうです。今後もバンコク周囲に複数のラマチボディ病院の関連病院がオープン予定であり、バンコクの医療供給が全く間に合っていないことを実感いたしました(待機的脊椎手術は半年〜数年の待機になるそうです)。

外来見学では、日本と同様のシステムで診察を行なっていました。薬剤についても保険でのカバー比率が大きいため、基本的には適切な薬剤選択が可能とのことでした。始まりと終わりに「サワディークラップ」「コップンクラップ」と合掌しながら挨拶される様子は、どこか日本にも通じるものを感じました。

3年前に秋田に研修に来てくれたDr. PilanのCNMIへ訪問し手術を見学することもできました。Dr. Pilanがスタッフドクターとして独り立ちし、秋田の手術技術を取り入れながら治療をしていることを伺い、とても嬉しく思いました。手術はFED-IL(全内視鏡下椎間板摘出術 椎弓間アプローチ)とXLIF(腰椎側方進入椎体間固定術)の見学をしました。XLIFはDr. Pilanにとって初めての一人手術ということで、サポートに入ったことをとても喜んでくれました。無事終えることができ、海外でこのように協力して手術を行うという貴重な経験をすることができました。

Pilanの初めてのXLIFを一緒に終えて。

その夜はDr.Plianの実家に泊まらせていただきました。素晴らしい豪邸で、建築コンサルティング業をしていらっしゃるお父さんから日本としてきた仕事についてのお話をいただけたのもとても楽しかったです。

また5月に来てくれたDr.Issaraも秋田での経験をもとに、現在治療にあたっていることを伝えに来てくれました。秋田に行って本当によかったと言ってくれたことが、何よりのお返しでした。

ディープなタイを案内してもらいました。

転移性脊椎腫瘍に対する除圧固定では、透視なしでスクリュー刺入が行われていました。私達は当然のように透視を使っていることを見つめ直す機会となりました。現在は使われていないものの、Rama spine system(RSS)という独自の脊椎手術システムの抜釘の機会があり、ロングプレートを用いた整復は矢状面、環状面ともに素晴らしい成績でした。またシニアドクターのDr.Ganはタイで初めてFESS(全内視鏡下脊椎手術)を導入され、その多くの経験をもとに、FED ILとendo-TLIF(全内視鏡下腰椎経椎間孔椎体間固定術)の手術を見せていただきました。とても丁寧な手術で、多くの学びを得ることができました。

正面法のみで腰椎ブロックを行っていたので、斜位法を伝えてきました。

脊椎のインプラントとして、通常の医療保険で賄えるのが一世代前のインプラントになる、椎体間ケージは1椎間1つまで、神経モニタリング使用できない(追加の支払いが発生)などの制限があるなか行われている手術を拝見し、我々が国民健康保険によって大きな利点を得られていること改めて実感しました。

また、整形外科には常に30名ほどのレジデントと、10名前後のフェローがいてとても活気がありました。

送別会にて。
トゥクトゥクも初体験。現地人はしっかり値引き交渉してから乗っていました。

マヒドン大学とは、今後も相互交流を継続していきたいと考えます。そして、2024年3月には今回多くの案内をしてくれたDr. Sorasekが秋田に来てくれる予定です。実りの多い研修となるよう準備して参ります。

最後にこのような機会をいただき、誠にありがとうございました。この経験をもとに今後も一層精進してまいります。