第3回秋田県骨と腫瘍セミナー(井上純一)  

 

2020年2月22日第3回秋田県骨と腫瘍セミナーが秋田温泉さとみコンベンションホールで開催されました。

一般演題では、秋田大学大学院医学系研究科整形外科学講座の村田昇平先生より、「診断に難渋するデスモイド型線維腫症の検討」と題してご講演いただきました。デスモイド型線維腫症はEnigma(謎)の腫瘍と言われており、自然停止・退縮する性質や広範切除術後の高い再発率などの特徴があり、慎重な経過観察が必要です。症例を提示しながら、デスモイド型線維腫症の診断から治療についてご講演いただきました。

基調講演では、秋田大学医学部附属病院整形外科土江博幸先生より「高齢化社会における骨軟部腫瘍」と題しましてご講演いただきました。全国平均を10年先取りした高齢化率の上昇傾向がある秋田県における骨軟部腫瘍の現状をご講演いただきました。秋田県内の骨軟部腫瘍のデータの解析から、1番の予後不良因子として手術を行わないことが挙げられており、非常に感銘を受けました。高齢でも合併症をしっかり管理して手術を行うことで、確実に救命、QOL、ADLを上昇させることができ、その重要性を再認識しました。

特別講演として、名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション科西田佳弘先生をお招きし、「希少がんである軟部肉腫に対する集学的診療と学術的研究」と題してご講演いただきました。神経線維腫症1型(NF1:Type 1 neurofibromatosis)に合併する悪性末梢神経鞘腫(MPNST:malignant peripheral nerve sheath tumor)、デスモイド型線維腫、横紋筋肉腫に関して適切な診断、治療に対する取り組みを中心にご講演いただきました。名古屋大学病院では院内でNF1の臨床ネットワークを構築し、多科・多職種で連携してMPNSTの早期発見・早期治療へつなげているとのことでした。また、デスモイド型線維腫症の診療ガイドラインを構築し、患者さんの特徴や遺伝子解析によって治療法を選択しているとのことでした。リハビリテーションや包括的ケアも生活機能の回復に重要とおっしゃっていました。

どのご講演も明日からの診療に活かすことのできる内容ばかりで非常に有意義な機会となりました。今後の診療に積極的に活かしていきたいと思います。最後になりましたが、ご講演いただきました先生方、ご参加いただきました先生方、大変ありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。