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木島泰明先生留学便り4

留学便り4

今回はパリ第12大学アンリ・モンドール病院のカンファレンスについてご紹介します。

毎朝7時半過ぎ(フランス人は時間にルーズという話もよく聞くが、確かにそうかもしれない。カンファも、全員が集まって「さあ始めましょう」という感じではなく、それなりの時間に、それなりの人数が集まると、なんとなく始まり、徐々に人が増えてくる、つまり学生さんも含め、ほとんどの人が遅れてくる)から、前日の急患と前日の手術症例のプレゼンがある。

シャーカステンでの提示がほとんどだが急患の画像は病院端末の画像を大きなテレビに映している(東芝ビエラ!)。急患は予定手術とは別にすぐに手術が施行されていて、カンファに出されるときにはもう術後である症例も少なくない。そういう意味でも専門以外の手術も普通にこなせる技量が要求されるが、少し困難な例では専門医が呼ばれたり、後日の手術になったり、やり直しになったりすることもあるようです。

カンファでは1例1例終わるたびに、主にPoignard教授(No.3の教授)がレコーダーにカンファの結果を録音している(ここでは手術記録だけでなく、すべての記録をレコーダーに録音する。そうすると誰かがタイプしてくれるらしい。欧米はみんなこうなのでしょうか)。カンファの内容を録音したものは、コンクルジォン・ドゥ・スタッフというカルテのページにしっかり記録される。

夕方のカンファレンスは月曜日と水曜日の16時半過ぎ頃からなんとなく始まる。結構前からインターンの先生がプレゼンの準備をしている。夕のカンファでは術前の症例が提示されるが翌日や翌々日などの症例なので、問題点が指摘されれば準備が間に合わないのではないかという気がするが、結構1例1例、みんなが言いたいことを言って時間をかけて話しているわりに、結局は術者の当初の方針を押し通す!という印象でした。

カンファは、僕が来て最初の1回だけは、Japanese friendがいるからとか言って頂いて英語で行われたものの、やはり大変だったようで、その後はフランス語で行われています。カンファをある程度理解するには、まずはフランス語の数字を聞き取れるといい。アン、ドゥー、トワのその続きを100まで分かれば事足りる。症例提示では患者さんの名前に続いて年齢が示される。その年齢を聞き取れるだけでまずはうれしい。プレゼンでは必ず年齢を最初に言っているのに、議論中に何回も「その患者さん(まらーどぅ)は何歳だっけ(けらーじゅ?)」と聞かれるのは日本のカンファにもよくあることで、整形外科の治療方針決定には、洋の東西を問わず、年齢はかなり重要だということでしょう。

あとはL4/5の4-5は「かとうさん」に聞こえる(きゃとる・さんき)」し、5/Sは「さんき・え・さん」に聞こえる(ほんとは何と言っているのかわからないけど…)。あとは意外と英語よりもローマ字読みに近いし、画像を見ていればなんとなくわかる。たとえば、いんすたびりて、すこりおーす、とらんすばはす、ばはてぃかる、などは意味が分かる。それと、Thereforeは<どんく>、Howeverは<め>、Becauseは<ぱすく>だと思えばだいたいいいようです。街での買い物でもRの発音さえ気を付ければだいたい通じます。Rの発音が英語と違っていて、教科書では「らりるれろ」で表記されますが、「はひふへほ」に聞こえます。なので、舌を下の前歯の裏につけて「はひふへほ」と発音すれば通じるようです。パリに来てよく使うのが「じゅ・ぷ・ぺいえ・ぱは・かふとぅ」(Je peux payer par carte?カードで支払えますか)です。大抵のお店でクレジットカードは使えます。

ちなみにカンファレンスで、固有名詞は「じゅで」と「ますきゅれ」(と聞こえる)以外は出てこない(聞き取れている範囲ですが)。チャンレーもシャンリー(もしかしてチャンレーをそう読んでいたりしてと思ったが)も出てこない。Alexandreはエリクソン、incisionはアンシジォンに聞こえる。執刀時は「お願いします!」ではなく、皮切を入れながら大声で「あんしーじぉん!」と言って手術を始めています。

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前から偉い人順に座る。シャーカステンだけで見えない時は前まで見に行くスタイル。
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左側に東芝ヴィエラ。カンファ内容はテープレコーダーでカセットテープに。
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こちらは手術と手術の合間に使う整形専用控室。ここで手術直前に作図。

第2回しらかみ疼痛セミナー(水谷 嵩)

第2回 しらかみ疼痛セミナーの報告(水谷 嵩)

2015年2月12日、秋田ビューホテルで第2回しらかみ疼痛セミナーが開催されました。整形外科医として日常診療でもっとも関わりの多い疼痛に関するセミナーで、第2回となる今回も平日にもかかわらず多くの先生方にお集まりいただきました。

今回は特別講演2題をご講演頂きました。1題目は九州大学病院整形外科講師の播广谷勝三先生から「脊椎腫瘍性疾患に伴う疼痛-診断と治療におけるknack & pitfalls-」の演題でご講演頂きました。播广谷先生は脊椎と腫瘍を専門とされており、今回は脊椎腫瘍について豊富な経験から手術症例、診断に至るまでをご発表していただきました。最近注目されている低リン症誘発性骨軟化症に関する話題や、脊索腫、骨巨細胞腫の手術治療など大変興味深い内容でした。

2題目は大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学の准教授富田哲也先生から「整形外科医のためのNSAIDの使い方」という演題でご講演いただきました。富田先生の専門は関節リウマチで、他にも様々な分野でご活躍されておられます。そのご経験の中で、今回は我々整形外科医には切っても切れないNSAIDsに関する話題でご発表いただきました。NSAIDs潰瘍とその予防、NSAIDsと骨粗鬆症についてなど明日から使える知識を自験例を含めお話ししていただきました。

秋田大学大学院  水谷 嵩

第22回秋田県スポーツ医学研究会の報告(佐々木研)

2015年2月7日,秋田ビューホテルにおいて,第22回秋田県スポーツ医学研究会が行なわれました.この研究会は,整形外科に関わらず内科の先生方も多く御参加される会となっております.今回から,一般演題というこれまでの形式を変え,すべてレクチャー形式となりました.

レクチャーは4演題でした.1題目は,秋田大学内分泌・代謝・老年内科学講座の成田琢磨准教授による,スポーツと栄養,内分泌疾患との関連についてわかりやすい御講演でした.2題目は,当教室大学院生の佐々木研先生による,エコーで診断できるスポーツ外傷と障害について,エコー画像や動画を交えたレクチャーでした.3題目は,当教室リハビリテーション科助教の齊藤英知先生より,スポーツ選手の膝の怪我について,特に外科的治療についてのお話でした.4題目は,秋田大学血液・腎臓・膠原病内科学講座の高橋直人教授より,スポーツ貧血と予防について,実際の秋田県中学生強化選手の血液データを交えた御講演でした.

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続いて,特別レクチャーは2演題でした.1題目は当教室の島田洋一教授より,日本パラプレジア学会で作成された脊損予防のビデオの上映をして頂きました.続く2題目は,当教室大学院生の藤井昌先生がバスケットボールのユニフォームと馬の被り物姿で登場し,会場を大いに沸かせました.藤井先生は現役アスリート整形外科医として,当教室バスケ部ノーザンバイソンズのこれまでの輝かしい成績の数々と,プロバスケチーム秋田ノーザンハピネッツとの関わりについて,ド派手なプレゼンがありました.

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そして最後に,会の目玉である特別講演では,なんと今年はあの大林素子さんが御講演されました.現在もスポーツ番組やバラエティで大活躍の大林さんは,話の巧みさから吉本に最も近いスポーツキャスターと言われています.そんな明るい大林さんも,現役時代は膝の半月板損傷で苦しんでいた時期があったそうです.膝の治療を乗り越える術,メンタルケアの大切さなどについてお話されました.やはり本物の大林さんは近くでみると迫力があり,とてもお綺麗な方でした.

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秋田大学大学院 佐々木研

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会を終えて(木下隼人)

余寒厳しき折柄,皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます.

この度,2015年2月7日に宮城県仙台市で開催された第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会において,今村記念クリニックの田村康樹先生共々優秀演題賞を頂き,私におきましては分不相応なため,恐縮であるとともに,望外な喜びを感じている次第であります.この成果を皆様にご報告致しますとともに,今年度の研究会で諸先生方より学ばせて頂いたことを簡単にではございますがご報告させて頂きます.

演題数は,基礎研究より6題,臨床研究より10題の計16題でした.歯科口腔外科の先生からは,ビスホスホネート関連顎骨壊死(BRONJ),産婦人科の先生からは,骨系統疾患の出生前診断について,外科の先生からは,副甲状腺機能亢進症術後の骨量変化について,その他非常に興味深いお話を拝聴致しました.整形外科領域では,CKD-MBD(Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder)との関連で,田村先生がエルデカルシトール投与患者を腎機能別に血中CaおよびPを比較検討した内容を御報告されました.また,経口ビスホスホネート製剤反応不良例でイバンドロネートに変更した際,骨密度や骨代謝マーカーの改善が期待できるという興味深い研究をされている方もおりました.

一般演題終了後,ミニレクチャー,特別講演と続きました.ミニレクチャーでは,東北大学腎・高血圧・内分泌学の森本先生により,内分泌異常による続発性骨粗鬆症について御講演頂きました.クッシング症候群や下垂体機能低下症などの内分泌疾患は,ともすると診断に到るまで時間を要し,骨代謝に対する視点を欠いてしまう症例があり,骨粗鬆症が重度に進行するまで見逃される危険性があるので,原疾患に対する精査・治療と併行して骨粗鬆症の治療を行わなければならない,という内容でした.特別講演には,長崎大学副学長の伊東昌子先生が演台に立たれ,皮質骨の放射線学的評価法について拝聴致しました.語弊を恐れずに大雑把に述べさせて頂くと,今までは骨に関しては海綿骨の評価が主流であったのに対し,近年では,皮質骨評価も注目されつつあるということでした.皮質骨微細構造の評価をHR-pQCTで行い,皮質骨の層を外側(皮質骨最表面),内側(海綿骨側),中央(皮質骨最表面と海綿骨側の間)に分けて評価.骨孔を各層で確認し,皮質骨内側の骨孔がいくら多くても骨強度には影響しないのに対し,皮質骨中央の骨孔の数が多いほど,骨強度は弱くなるという内容でした.今後,本邦においても次々とHR-pQCTが導入される見込みで,皮質骨微細構造の放射線学的評価が様々な施設で可能になるのではないかと,将来の展望について御教示頂きました.しかし,測定箇所が橈骨・脛骨の遠位部のみであるため,その結果が他の骨に対しても当てはめられるのか,という課題もあるようでした.最後に,このような発表の機会を与えて下さった島田教授ならびに宮腰准教授,粕川講師,その他ご協力を賜りました先生方に,厚く御礼申し上げます.

木島泰明先生留学便り3-2

CERAVERというメーカー。適応はこんな感じ。image002 (640x427) image001 (640x427)

手術室12番。脛骨骨切り後に1回ギャップを確認。image003 (640x427) image004 (640x427)

機械はなんとなくカラフル。ボックス部分はストライカーに似てる。image005 (612x407) image006 (640x427)

本物のインサートを付けてしまってから打ち込む。image007 (640x427)image008 (596x396)

セメントは緑色。看護師さんがインプラントにつけてくれる。image010 (640x427) image009 (640x427)

入れたら伸展位で固まるのを待つ。人数多いときは外から見学させてもらう。image012 (640x427) image011 (640x427)

術後は麻酔科管理でリカバリールームへ。パテラインプラントはエルメス製?image014 (640x427)image013 (601x400)

インサートごと打ち込み。ときどきlépineというメーカーも。image015 (640x427) image016 (640x427)

セメントはゲンタマイシン入り。脛骨も髄内ロッド。image017 (640x427) image018 (640x427)

木島泰明先生留学便り3-1

現在、島田教授のご高配で、順天堂大学の金子教授や本間先生にご紹介頂いたPhillipe Hernigou教授のもと、Hôpital Henri Mondorで研修させて頂いている木島です。今回はTotal Knee Arthroplastyについてご紹介致します。

 

「自由」の国、フランスの手術1

人工膝関節置換術 Prothese Total de Genou (PTG)

フランスが自由の国だからなのか、この施設の特徴かは実際のところわからないのですが、同じ施設内でもみんなが同じように手術をしているわけではなく、かなりの部分が術者の裁量に任されています。そして、大学病院なのですが、上の先生も専門領域の手術だけをするのではなく、秋田で言うと例えばRS病院のように自分が診た患者さんは自分が手術に入るというような体制でやっているようです(でも少し難しい症例では専門医が一緒に入る、あるいは担当を代わるようです。)

ですが、この人工膝関節置換術に関しては、基本的には我々の方法と大きな違いはないことが分かりました。仰臥位でほぼ正中の皮膚切開、オーソドックスなメディアル・パラパテラ・アプローチです。ただ、バイオクリーンルームや宇宙服は使用していません。

皮切に使ったメスはその後は使わない、創や創内は手(もちろんグローブはつけています)では触らない、というノータッチ・テクニックを「目指している」というような表現でした。必要な場合は触っています。でもグローブ(フランス語ではレ・ガン。7.5の手袋がほしいときは、レ・ガン、セッ、ドゥミ、シルヴプレで通じました!)は、かなり頻回に替えています。まず、皮切前には替えるし、インプラントを入れる前にも、もちろん替えています。そして替えるときには全員替えています。

この施設ではオールPSでやっているようです。ですが、ほとんどmeasured cutテクニック。全例セメントですがセメントの種類はPalacosR+Gというゲンタマイシン入りの緑色っぽいものを使用しています。これは3-4分で手につかなくなり15分位で固まるのでワーキングタイムが10分以上あるため、タイム・カウントもせずにゆっくり作業しています。

機種はCERAVERというフランスの会社のHiFitという機種、つまりメイド・イン・フランスです(パテラ・コンポーネントはエルメス製?下の写真参照)。パテラは全例置換しています。一度だけ、lepineというやはりメイド・イン・フランスのモバイルベアリングの機種を試しに(?)使っていたこともありました。その辺は自国製にこだわっている風でしたが、なんとボーンソーだけはストライカーのものを使っていました。道具はやはり使いやすいものを選択するということでしょうか(ストライカーも許してくれるのですね)。

脛骨インサートの厚さは決め打ちで、脛骨のメタル・インプラントに装着してしまってから打ち込んでしまい、最後に大腿骨インプラントを打ち込んで終了。洗浄の量は決めていないようですが、インプラント挿入前に50㏄のシリンジで2-3回洗うだけです。ただし、膝がご専門と思われるAlexandre Poignard教授(No.3の偉い先生なのであんまり話しかけられず…)だけはパルス洗浄器を使っていました(しかも、これもストライカー製でした)。

縫合するときの膝の角度は術者によりまちまちで、椅子の生活社会なので、やはりそんなに屈曲可動域にこだわりはないようです。その分、インプラント設置アライメントを重視しているようで、脛骨の骨切りも髄内ロッドで全例行っています。脛骨骨切りからやる先生が多いですが、大腿骨から骨切りする先生もいて、この辺も統一性はありません。

大腿骨はポステリア・リファレンスでやっていますが、ノッチができないようにはとても気にしていました。他の手術もそうですが、ほとんどの定型的な手術はインターンが執刀、シェフ・ドゥ・クリニックと言われる指導医が前立ちで、臨床配属みたいな学生さんか僕が第2助手として入らせてもらうような感じで手術をしています。でも結構、インターンがシェフにお取り上げされている率も高いです。

また、ほかの手術についてもご報告致しますので楽しみにしていてください。

木島泰明先生留学便り2-1

この度、フランスに留学させて頂いている木島泰明です。現在、パリ大学付属アンリ・モンドール病院の整形外科で研修中です。前回の留学便りでは、渡仏後1週間の生活立ち上げ段階の記録をお送りしましたので、今回は研修初日の模様をお送りいたします。

研修初日!!朝5時半に起床し、6時半に家を出る。8時に病院で、という約束だが、トラムとメトロを乗り継いで1時間のところなので、早めに出発。次の病院や幼稚園の関係、また、値段の関係でアパルトマンを決めたのでしかたない。1時間弱で到着。到着してもまだ暗い。今のパリの日の出は8時半過ぎだ。整形外科の病棟も外来も6階にあり、その6階に来るように言われていたが、6階のどこかがわからない。(ちなみにフランスの6階は日本でいう7階です。)受付に聞けばいいかと思っていたが、まだ受付も開いていない。うろうろしていると守衛さんっぽい人が「留学生か」的なことを聞いてくれたので、「日本人で整形外科医です」と練習してきたフランス語でいうとカンファレンスルームに案内してくれた。カンファは7時半過ぎからすでに始まっていたが教授はまだ来ていないらしい。だまって聞いているとやがて教授が登場。カンファの最後に僕に自己紹介をさせてくれた。途中までフランス語、途中から英語で、練習通り終了。若手の一人が助手部屋的なところに案内してくれる。5人ぐらいで使っていそうな部屋だがPC付きのデスクが2つに、ソファ1つとローテーブル1つのみ。この部屋もマクドナルドのトイレと同じでコードナンバーを知らないと入れない。初日だからとスーツを着て行ったが、その部屋で白衣を羽織ったところで、手術室に案内してくれる。6階から地下2階まで降りてpharmacyと書いてある方向にしばらく歩いて左に曲がって、またコードナンバー付きのドアを開けると更衣室のドアが1ダースほど並んでいる!このうちのNo.4が整形のロッカールームらしい。ちなみにフランスでは「No.4.」は「N°4」と書くらしい。そしてこのロッカールームに入るにもコードナンバーが要る。いちいちドアを開けるためのコードナンバーをメモしながら歩いていたが、どれがどのドアの番号かわからなくなる。おまけにこのロッカーそのものの鍵が難しい。いわゆる昔の金庫みたいに右に27、左2回転して31、最後にもう一度右に回して3で開く、みたいなやつ。それもメモしたもののメモした紙をロッカーに入れてしまった!まずしょうがない。術衣は秋田のUG病院で人工物の時に着ていたようなディスポのやつ。それを着て、ロッカールームの反対側のドアから出るとシャワーやトイレに面する廊下に出る。廊下の先の出口から出たところに帽子と靴カバーがあるのでそれを装着。靴は外履きのままでいいらしいが術場用のサンダルを用意している先生が多い。そのあたりに食事をするスペースがあり、主に看護師さんたちが弁当やサンドイッチを持ってきて昼食をとっていることが多い。その場所から階段を上がってドア(このドアには鍵がない!)を開けると手術棟に入れる。左に行くとICU的なところ、右に行くと手術室が並んでいる。ちなみにここまで自動ドアは一つもなかったが、手術室のドアも木製の手動ドア。歴史を感じます。ここで、ここまで案内してくれたマーク先生が「僕は今日は手根管とかのデイサージェリーの担当だからあっち行くね。TKAが12番の部屋であるはずだよ」と言って、去ってしまう。しかたないので「N°12」の部屋に行くと患者さんがベッド上に座位にさせられてルンバールを受けている(座位でやっていました)。整形外科医はいない。ここでは麻酔がかかったころに整形外科医が来て体位を取って手術をしたらまた麻酔科医がそのままICU的なところで見てくれるようなのでひたすら手術だけしていればいいらしい。整形外科の手術室は基本的には10番の部屋と12番の部屋の2つで(感染症例などは別の特別なところでやるらしい)、1日5-6件をこの2部屋でこなしている。この日は6件あったので縦に3件ずつ。はじめ12番の部屋でTKAを見させてもらい、次にそのチームは脊椎の手術だったので、10番の部屋に移動してACL再建を見学。最後に大腿骨遠位の開放骨折後の拘縮膝の受動術をジュデのアプローチでやっているのを見させてもらいました。2件目が終わったところで昼食に行こうとしたものの例のロッカーが開けられず、手術場の師長さんにお願いしたら、ロッカーの暗号リストを持ってきてくれたもののその番号でもなぜか開かず、鍵マスターが登場し、ジャラジャラ大量の鍵を試したもののそれでも開かず、結局その鍵マスターがロッカーをぶち壊して終了しました。そのカギ騒動のおかげで初日は昼食を取り逃しました。どこかの医局と同じで、本日、月曜日は17時からカンファレンス。でも違うのは、一通り症例の検討が終わったところで、「ほかにプレゼンしたい人いない?」みたいなことを誰かが言ったら、最初からずっと後方の席に大人しく座っていた、スラッとしたジーンズを履いた美女が手を挙げておもむろに人工椎間板の紹介を始めました。メーカーの人だったようです。プレゼンもPCプレゼンテーションではなく、模型を回して身振り手振りのプレゼンでした。19時前にカンファは終了し、アパルトマンには20時前に着きました。手術についてのあれこれはまたご報告致します!

通勤に使用しているメトロの掲示。右から三番目のクレテイユ・レシャ駅で下車。

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病院全体の案内図。

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病院の全景と、病院玄関前のヘリポート。ちなみにここはパリ第12大学の付属病院です。パリ大は第1から第13まであり、第12大学はパリ東大学とも呼ばれているようです。image006 (640x427) image005 (640x427)

第60回秋田県整形外科医会(三澤晶子)

2014年11月22日に開催されました第60回秋田県整形外科医会において最優秀演題賞をいただきました。並み居る先輩、後輩、計6題の中から選ばれましたことを大変うれしく存じます。

賞をいただきました「受診契機からみた側弯症学校検診の有用性」は島田洋一教授からモアレ検診の読影を引き継いだ2007年からの結果をまとめたものです。今回は大学、当センターの初診例をまとめましたが、データ収集におきましては、本郷道生講師に大変お手数をかけしました。この場をお借りして御礼申し上げます。

今まで、県医会の発表はほとんどなかったのに、満を持して、なぜ、今回演題を発表しようと思ったか?それは60回というキリのよい回数だったこと、地味な活動をお知らせしたいという思い、早期発見の重要性について先生方にご理解いただきたいという思い、などなどありますが、本音を申しますと、チーム側弯のお食事代を手に入れようという非常に高い(?)モチベーションがありました。ご評価くださる先生方にも気合が伝わっての受賞ではないかと内心思っております。

今後も高いモチベーション(学術的に)を持ち続けるよう、今回の受賞を糧に頑張ります。

ありがとうございました。

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秋田県立医療療育センター 三澤晶子

東北骨代謝骨粗鬆症研究会優秀演題賞を受賞して(田村康樹)

優秀演題賞を受賞して

この度、2/7(土)に仙台で行われた第36回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会の臨床部門にて優秀演題賞をいただきました。この会は、今年で36回目ということで歴史があり、佐藤光三名誉教授が会の立ち上げから今でも元気に参加されているという由緒ある会でもあるため、その恩師の前でこういう賞をいただけたことを大変うれしく思います。

元々この会はビタミンD研究会、であったこともあり、4年前に新たに発売された活性型ビタミンD製剤であるエディロールを頻用する私としては、一度症例をまとめて報告してみよう、というのが発表に至るきっかけです。昨年は、「エディロール投与例における血中および尿中Ca値の変動について」という演題を発表しました。エディロールを投与した143例(平均年齢78.3歳)について、血中および尿中Ca値を測定し投与前の値と比較すると、ともに有意に増加(正常範囲内)しており、結果エディロールは腸管からのCa吸収率を確実に上昇させていることが示唆されるため、骨粗鬆症治療薬として有用である、という内容です。しかしながら、一方でCaが高値となることが血管の石灰化につながらないのか、特に腎機能の低下した高齢者ではどうなのか、という疑問が残ったため、今年は長期(2年)にわたりフォローし得た患者のCa値に加え、リン値、および腎機能(eGFR)について調査しました。演題名は、「エディロール投与例における血中Ca/P値およびeGFRの変動について」です。エディロールを投与し2年以上経過した74例(平均年齢78.5歳)について、6ヵ月ごとに血中Ca値、P値及びeGFRを測定すると、血中Ca値は投与前と比べ有意に増加しそのまま高値を保っており、血中P値は内服前後で大きな変動はありませんでした。eGFRは6ヵ月時で有意に低下しましたが(正常範囲内)、その後大きな変動はなく経過とともに漸減しました。また、経過中一度でもeGFR 60未満を示したのが74例中36例(48.6%)あり、36例の血中Ca値は正常群と比較し安定せず高値を示す傾向にあった、という内容です。

近年CKD-MBD (Chronic Kidney Disease – Mineral and Bone Disorder.慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)という概念が提唱されています。Ca/P値などの異常がやがて血管の石灰化など生命予後に関わるというものです。今後も漫然とエディロールの投与を続けるのではなく、調査を続け、骨粗鬆症の治療につなげていきたいと思っています。最後になりますが、骨グループをまとめ、いつも御指導いただく宮腰准教授、そして、自分に活躍の場をくださる島田教授に感謝し、受賞の言葉とさせていただきます。今後ともよろしくお願いします。

今村記念クリニック 田村康樹