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整形外科留学だより―イタリア編5:食事 (土江博幸)

前回の留学だよりから気が付けば、はや2か月近く経ってしまった。この間にあった大きなイベントとしては、やはりビザ問題である。当初ビザなし(いわゆる観光ビザ)でイタリアに入国したため、90日以内にEU圏内から脱出しないといけず、9月末に日本に一時帰国。しかしながら苦労の末、学生ビザを入手する事ができ、すぐにイタリアに再入国する事ができたのであった。このイタリアのビザ事情、本当に入手は容易ではない。というか、ぶっちゃけResearchや研修目的ではもはやビザはとれないと思われる。これからイタリアに長期留学を考えているDrがいらっしゃったら少し考え直した方がいいかもしれない。ビザ入手までの戦いの記録は、留学記の最後に記そうかと思うので、ここでは詳細は割愛することに。

日本人が海外留学すると、食事が合わず日本食が恋しくなるとよく聞く。自分も日本に一時帰国する前は若干納豆やトマト味でない和風パスタなどの日本の味が恋しくなった。しかし今回一時帰国後、納豆ごはんを味どうらくとともにどんぶりで食べた後、翌日にはイタリアの食事が恋しくなってしまったのである。特にプロシュートクルード(生ハム)!留学前は家計節約のためトップバリューの生ハムをよく購入していたのだが、イタリアに来てからは現地の生ハムをほぼ毎日食べている。当初はスーパーで買ったものを食べていたが、最近はバルなどでワインとともに生ハム盛り合わせもしょっちゅう頼むようになった。とにかくイタリアの生ハムは安くてうまい。たまたま日本に一時帰国した際にスーパーでPARMAの生ハムが売っていたのだが、ちょっとの量で800円もしたのには驚いた。イタリアのスーパーだと、同じものが3倍くらいの量で4~5ユーロで変えてしまうのである。留学が終わった後やっていけるのかとても心配になった…。

イタリアの食事はチーズなど太りやすそうなイメージがあるのだが、日本に一時帰国した際に体重計に乗ると、3か月で5kgも痩せていた…。確かにズボンのベルトも2穴も変わったし、ジーンズがブカブカになってる気がする。手術でたちっぱなしの時間が多い事や、通勤で毎日計1時間歩くこともあるが、食事も大きく影響している気がする。日本にいるときは、ビール+おかずの後、締めのごはんで満腹になるまで食べていたのだが、こっちに来てからはビールまたはワイン+生ハム、チーズなどでつまむのが主体で、それで満足し、締めのごはんなどはそれほど食べていなかったかもしれない。塩分+アルコールの摂取量は極端に増えたが…。

 

今週で奈良医大の塚本先生が自分と同様にビザ取得のため、日本に一時帰国する事となった。塚本先生はまたしばらくしたら戻ってこられるが、奥様、2人のお子さんはビザが取得できず、3か月しないと再びイタリアに入国できないのである。何度か家族間で食事もし、お近づきになることができたので少し残念。このような機会があるのも留学の良い経験だと感じた。ここで食事風景の写真でも載せようと思ったのだが、いつもワインやビールを飲み、自分はいい気分になるためか写真を撮っておらず、食事写真が1枚も無い事に気が付いた…。今度は是非ご家族で秋田に遊びに来てください!その時は写真も撮りますので…。

 

 

※ハムつながりではあるが、今週末は家の近くのマッジョーレ広場で、年に1度のハム祭りが行われた。ボローニャのご当地ハムはMortadellaという、生ハムというよりは加工ハムみたいなやつである。広場では、たくさんの屋台がでており、Mortadellaのパニーニや焼きハム、ビール、ワインなどが食べれたり、ミスMortadellaみたいな女性が立っていたり、お持ち帰り用販売コーナーでは複数のハム業者が試食を出し、気に入ったものをカウンターで言えば、その場で大きな塊を切って売ってくれるというシステムである。通常ハムは薄切りで食べるので、受付で「Fetta? 」と聞かれ、当然スライスの意味かと思い、それでお願いしたら、結構な厚切りの状態でパックに入れられてしまった…。後で調べたら、Fettaは通常のスライス(日本的には厚切りか)で、Fettinaが薄切りのようである。それまでの客はみなFettinaだったのになんでうちらだけ…。イタリア語の難しさをまた実感したのであった…。

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盛り合わせの1例。ワインがよく合う。

 

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スーパーで買った安い生ハムとプチトマト。少し暗く映ってしまいおいしそうに見えないかもしれないが実際はうまいです。1パックにこの倍以上の量の生ハムが入って2.5ユーロ程。安すぎ。

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マッジョーレ広場の会場、屋台が色々出てます。この日は最終日のため、もはや商品が無くなった屋台もあり、ちょっと寂しめ。

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ハム販売エリア。たまたま人が少ない時に撮影したが、試食が出た時は人がうじゃうじゃとなり道が通れなくなる。

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注文すると各業者のでかい塊ハムを取り出し、おじさんがその場でスライスしてくれる。レジに並んでいるときに、妻とともに奥のおじさんを見ていたら、笑顔でナイフを研ぐポーズをサービスしてくれた。やるぜ、おじさん。

韓国St Marry Hospital (齊藤英知)

Thank you professor In for inviting us to Early osteoarthritis symposium in Catholic University Medical College 2016 in Seoul. I could present our works on knee joint preserving surgery for advanced knee osteoarthritis in Akita University. Professor Nakamura from Yawata medical center also presented ” Various osteotomy around the knee” . I hope the joint preserving surgery will be accepted all over the world at least in young active age.

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整形外科留学だより―イタリア編4:バカンス  土江博幸

 

気が付けばもう8月末、早いもので留学して2か月近く経ってしまった。8月はイタリアはバカンスシーズンであり、病院もバカンス体制となり、スタッフの先生方は3週間の休暇で多くがいなくなってしまった。手術数もいつもの1/3程に減るが、待たせるわけにはいかない患者もいるためゼロにはならないようである。膝など他のグループはほとんど手術がないので、この期間は腫瘍班と外傷班、小児整形班が手術をやっているようであった。ちなみにレジデントの先生方に聞くとバカンスは全くないとの事。イタリアは医師が過剰なようなのでその影響なのだろうか。かわいそうに…。そのバカンス体制でゆったりになった中、今月初めから奈良医科大学の塚本先生が3か月間研修にいらっしゃった。大学院なども腫瘍をやってこられた先生なので、自分なんかよりも知識が遥かに豊富であり、教えてもらってばかりでかっこわるいがとても勉強になる。塚本先生がこられて気が付いたのだが、他の留学生と自分は手続きが違っていたようで、色々対応が異なっていた。通常はResearch centerに手続きをして留学することになるようなのだが、私は直接コネでProfessorにお願いだけしてくることになったので、その手続きをしていなかった(というか秘書さん、何度もメールでやりとりしたのに、何故その事教えてくれないんだ…)。Research center をちゃんと通していると、あまりきれいではないが寝泊りできる部屋が与えられ、無限に使える食券が与えられ、名札も提供されるのである。しかしながら、私は最初に1万円近く払わせられ(未だに理由が良く分からず…)、採血を受けさせられ、部屋も食券も名札もない…。幸いレジデントの先生が、食券割引券をめぐんでくれたので、1食1ユーロくらいで食べれていた(通常8ユーロくらいするのを)。しかしその券も尽きてしまい、どうしようかと思っていたが、塚本先生がタダ券をめぐんで下さり昼食代を節約する事ができた。ほんと助かります。

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左から、奈良医大の塚本先生、私、Dr. Marco

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ある日の昼食。よく見ると野菜が一つもない…。

※私もバカンス

自分も1週間ちょっとのプチバカンスを頂く事ができたため、遠くに旅に出ることにした。イタリアに来てからヨーロッパ的建築物などばかり見ていて少し飽きが来ていたのと、自然に触れていない事にストレスを感じていたのもあり、ヨーロッパを離れて北アフリカのモロッコに旅に出ることにした。モロッコはボローニャ空港からロイヤルエアモロッコという、今後一生乗ることはないであろう航空会社からの直通便もでており、わずか3時間でカサブランカについてしまうのである。やはりアフリカ大陸であるため、めちゃくちゃ暑い…。あとは食事の度にハエがたくさん飛んでいる。しかし料理はタジンやモロカンサラダなど色々おいしいものがあり、慣れてハエなど気にならなくなってしまう。外の景色も自然の中を移動するので、とても新鮮であった。そしてモロッコといえばやはりサハラ砂漠である。サハラ砂漠では、あえてシャワーなども無い砂漠の中のキャンプに泊まることをチョイス、夕方ラクダに揺られて砂漠の中へ移動。キャンプ地では寝床のテントが与えられるが、中はサウナのようにめちゃくちゃ暑く、とても寝れないため、屋外にマットを敷き、夜空を見ながら寝ることにした。砂漠の中で星空を見て、と言えばすごい星が見えるのか、と想像するかもしれないが、結構雲が多く、星もそれほど見えず、秋田の羽後町近辺の方がよっぽど星が見えたのであった(朝日も同様)…。その後もフェズやマラケシュなどの都市で、メディナと呼ばれる雑多だが雰囲気のある世界遺産な町を散策したり、屋台で食事したりなど旅を満喫するのだが、おなかが強くない私は、イタリアに帰国する頃から案の定下痢になり、1日横になるのであった…。

土3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂漠とおじさんとラクダ

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朝日を見ようと早起きして砂丘に登るも、雲が多くて朝日は見えず…

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青と白に塗られた家が並ぶシャフシャウエン

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フェズのメディナ内。人が多く道が狭いので、すぐに迷子になります。ガイドさんから夜は治安が悪いので出歩かないように言われたため、明るいうちのみウロウロ。

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マラケシュ・フナ広場の屋台の一つ、エスカルゴ屋台。鍋の中には煮込まれた大量のエスカルゴが。

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カタツムリのツノもリアルにあるので若干抵抗が…。感触は貝と一緒で出汁はスパイスが効いてうまい。汁まで飲み干した。1杯約100円。

整形外科留学だより―イタリア編3(土江 博幸)

整形外科留学だより―イタリア編3:手術室

私が研修させて頂いている第3整形外科チームでは、手術は火曜日以外の月・水・木・金と週4日行われており、毎日朝7時半頃~夜7時半頃まで、1つの部屋(9番ルーム)で直列に行われている。縦で5~6件組まれているので、骨軟部腫瘍の手術が週に20件以上あるという計算になる。さすが世界的に有名な病院であり、よくそんなに患者がいるなあ、と感心してしまう。研修を初めてもう1ヵ月を過ぎてしまったのだが、この1か月では、腫瘍用人工関節の手術は週2~3件、骨盤の手術は1~2週に1件はあり、患者数がやはりちがう。しかも手術が早い。これらの手術は長くても1件当たり3時間以内には大概終わってしまう。2時間以内に終わる事もざらである。なんだか見ていると自分も簡単にできそうな気持になってくるが、多分勘違いなのだろう、と思い直す。

看護師さんの多くは英語が話せず、なかなかコミュニケーションがとれない所が少し不便である事を感じる。しかし、陽気な人が多く、結構やさしい人が多い。言葉が通じないが、笑顔で「Buongiorno!」と挨拶をする事を心がけていると、マッチョな看護師さんが無影灯についたカメラのモニターを自分の為に見やすいように調節してくれたり、威勢のいいおばちゃん看護師さんが「寒いでしょう(たぶんそんな事を言ってたと思われる)?」と手術着の上から着るディスポの服を持ってきてくれたりなど、ちょこちょこ人の温かさを感じる事ができる。特に南イタリア出身の人はFriendlyな人が多い印象であり、新潟に友人がいるというルイージさんは、自ら「任天堂のブラザースの弟と一緒の名前だよ!」と英語で自己紹介してくれるなど、ユーモアもある。イタリア語が話せたら楽しいだろうなぁ、と本当に思った…。

こういった陽気な雰囲気は手術全体にも現れており、Prof.Donattiはたまに手術中に大きな声で歌いだしたり、ベテランおばちゃん機械出し看護師さんは手術中でもDrたちと大きな声で談笑する。例え患者さんがルンバールでAwakeであったとしても全く関係ない。麻酔科の先生が足台を持って来てくれて、頭側から覗いて術野を見せてくれる事もあるのだが、ふと下を見るとAwakeの患者さんと目があって気まずい気持ちになった事もあった…。恐らく患者さんもあまり気にしないのだろう…。日本だと後で問題とかなるんだろうな、とお国柄の違いを実感した。

※おまけ

自分が滞在しているボローニャは北イタリアなのだが、かなり交通の便が良く観光に便利な場所である。イタリアの観光地といえば、ローマ・ヴェネチア・フィレンツェ・ミラノ・ナポリなどが有名であるが、特急電車に乗ると、ローマまで2時間15分くらい、ヴェネチアまで1時間10分くらい、フィレンツェまで35分、ミラノまで2時間くらい、ナポリまで3時間30分(ここは南イタリアなのでちょっと遠い)と、週末に1泊2日で有名観光地に簡単に行けてしまうのである。しかも電車代も割引など色々あり、それ程高くない。ホテルも三ツ星レベルでも設備・サービスは十分であり、ローマの駅前でも1泊2人で6千円くらいで泊まれてしまう。さらに経費削減ができるのではないかと思い、先日2つ星ホテルにチャレンジしたら、シャワーの根元が簡単に外れてしまい、壁から真横に垂直に水が出るという事態が発生したため、やはり3つ星クラスにしようかと思った…。

Figure 1: 手術室更衣室。日本と同じように狭く、脱ぎ散らかった術衣が落ちている…。

Figure 2: いつも手術が行われる9番手術室。イタリア語で「Sala Nove(9)」。

Figure 3: 手術室内部。患者さんがいない時。

Figure 4: Vatican Museumのらせん階段。

Figure 5: Vatican市国のサン・ピエトロ大聖堂クーポラ(展望できるところ)からの景色。

Figure 6: 夏の夜(21時開始)には、ローマ市内にあるカラカラ浴場(遺跡)内で野外オペラが行われる。開始前の舞台と会場。前の方の席を購入し、自分のキャラには似合わないリッチな気分に。

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整形外科留学だより―イタリア編2:病院にて研修開始(土江博幸)

研修初日、病院に着いたら教授室に直接来るか、分からなければ電話を頂戴、と秘書さんから連絡を受けていたので、まず受付に聞いてみるか、と考えていたのだが、入口を入っても受付らしき所が無い…。歴史的な建物で趣があるのだが、売店と奥には庭がある。仕方がないので秘書さんに電話してみる事に。「今どこにいるの?」と聞かれるも、なんて表現したらよいか分からず、「正面玄関で、売店と、奥に庭があります」と言うも、伝わってないのか、そんなんじゃわかんねえよ、といった感じなのか、ちょっと困った感じの雰囲気を漂わせ「今行くからそこで待ってて」と言われる。あとからわかったのだが、入口真正面の建物は教授室や事務的な事がメインの建物で、向かって左にあるのが病院であり、どっちの入口なのか、を聞きたかったようだ。程なく秘書さんが登場。そのまま教授室へ。色々と事務的な書類のサインなどのやりとりをしているところにprof. Donattiが登場しご挨拶をする。しかし、予定があるのかすぐにいなくなる。秘書さんからも「今日はこれでおしまい。明日Medical checkにきてね」と言われる。緊張して来たのだが、なんともあっけない初日であった…。

後日、medical checkなども終えて、ついにカンファに初参戦の日となる。毎週火曜日がカンファレンスの日で、カンファレンスは朝8時から病棟にある小さい部屋で行われ、prof.Donattiの率いる第3整形外科にはレジデント達も含めて、大体15~18人くらい所属しており(まだ把握できず)、全員骨軟部腫瘍をやっている。カンファは1週間の間に行われる患者の紹介がメインなのだが、容赦なく完全にイタリア語なため、内容の理解は難しい…。しかもスライドなどのプレゼンテーションは作成しておらず文字が無い。電子カルテ上の写真を画面に出して、みんなで討論するという、事前準備ほとんどなさそうなカンファである。なんだか一般病院と似た雰囲気を感じた。これを大体2時間弱やった後に教授回診、という流れであった。入院患者さんはほとんど3人部屋で、総回診も日本と似た雰囲気で、なんだか違和感がない。人種と外の景色が違うだけのようだ。教授回診が終わると、後は各自仕事に戻り、午後に、放射線科や化学療法の先生達との、治療方針を決定するための合同カンファがある。この日、実は自己紹介があるだろうと思い、あらかじめイタリア語でいくらか準備していて、挨拶のカンニングペーパーを前日の夜など何度も見返していたのだが、全くそんなイベントは無くすべてのカンファレンスが終わってしまった…。うーん、イタリア人はドライだ。

レジデントの先生に聞いたのだが、イタリアも日本と同じように、大学が6年あり、その後専門医の資格をとるため、5年間レジデントとして働くようである。ただ日本とは違い、すぐに専門をやるとの事。なんとなくレジデントの先生が誰かはわかってきたが、やはり欧米人なので日本人より年を取っているように見える。レジデントの先生に年齢を何度か聞かれたが、37歳というと、一瞬間が空くのはそういう事だろう。イタリア人は、髭を生やしている人が多く、若い人でのメジャーな生え方は、もみあげからあご、あと頬に無精ひげが伸びたような感じの髭が多いようだ。これは白人であるからカッコよくなるのであり、また、日本人でもイケメンならいいのだろうが、ブサメンの私には到底不可能である。遭難から帰ってきた汚らしいおじさんになってしまう。もう少し大人に見えるように、自分も良い髭の生やし方を考えてみようか、と思うのであった。

※写真説明

Fig.1: 正面玄関

Fig.2: 正面玄関の向かって左にある、病院の正面玄関

Fig.3: 正面玄関を入った建物。趣がある。

Fig.4: 中庭Fig.1 %28800x600%29 Fig.2 %28800x600%29 Fig.3 %28800x600%29 Fig.4 %28800x600%29

 

 

整形外科留学だより―イタリア編1:生活環境(土江 博幸)

整形外科留学だより―イタリア編1:生活環境

 

ついにイタリアへの留学の旅が始まった。思えば、昨年後半から準備に追われ、特にビザの取得には泣かされ続けた半年だった…。ビザ事情に関してはまた時期を見て書くとして今は置いとくとします。

さて、嫁と2人ドバイで乗り継ぎボローニャに無事に到着。スーツケースが多いため賃貸アパート会社に依頼した送迎車でアパート前に到着。しかしこの運転手、英語がほとんど話せなく、更に、アパート入居に関しても全く知らない…。「ここが知らされてる住所だよ」といった感じで降ろされるも、家の中に案内してくれそうな人はいない…。ボローニャ中心地のど真ん中で、車・人が多く、町のシンボルの塔が目の前にそびえたっている。しかも暑い!うーむ、とたたずんでいると、10分ほどして短パン・髭の生えたあんちゃんが現れ、アパートに案内してくれた。この兄ちゃんから家の簡単な説明を受けた後、すぐに嫁の現地滞在証明書申請アシストサービス(私はビザが下りなかったので不要…)のお姉さんが来て、郵便局に行き一緒に手続きを済ます。ここらへんの仕事の人は英語話してくれたので助かった…。病院研修などをはじめてよりわかったのだが、イタリア人は英語が話せない人が多いようで、病院食堂のおばちゃんやマクドナルドでは英語が通じにくく、身振り手振りでなんとかなる感じ。どうもヨーロッパの中でも、英語が通じにくい国のようである。ちなみに若いレジデントの先生にも英語で質問すると、見当違いの返事が返ってきて「英語苦手で…」と言われてしまった…。

ようやく落ち着き、町の探索+買い物へ。町は歴史地区の中心だけあって、教会など古い建物が多く、ヨーロッパ的な雰囲気むんむんでテンションが上がる。だが、町の中心でもあるので、少し裏に行くとRistranteなどが多く、人が多くにぎやか。週末になると家の目の前の通りで野外バンドが行われめちゃくちゃうるさい…。しかもアパートの冷房がほとんど機能せず、窓を開けて寝るしかないのだがよりやかましい…。うーむ、家選びを失敗したか。だが、めげずにがんばろう。

 

次回病院編に続く…。

 

※おまけ

研修が始まった初日の夜、気が付くと自分の携帯電話の液晶が割れており、携帯が全く使えなくなってしまう…。何故こんなタイミングで…。なんてこったい。仕方がないので、ネットで調査し、現地の携帯電話会社へ。イタリアではSIMロックフリーが当たり前であり、本体購入後、SIMカードとともに携帯電話会社のプランに入り毎月チャージするか、Tabacci(コンビニみたいな感じのとこだがタバコ屋さん)で購入して無くなった分だけそこで補充するシステムのようである。経費削減のため、店で安いスマホ本体を購入後(95ユーロ程)、面倒なのでそのままイタリアで大手のTIMという会社でSIMカードを購入し、1か月分のプリペイドを購入。よってこれからは毎月10ユーロを支払いにこなければいけなくなってしまった。ちなみにこの携帯電話会社のあんちゃんも英語はそこそこレベルであり、お互いシンプルな英語のみでやりとりし、購入にこぎつけたがえらい疲れた…。しかしながらこの携帯、アプリで日本語を入力することはできるようになるも、基本の表示は英語など海外の言語しか使えず…。嫁からは日本に帰っても使えるならこの携帯を使うように、と命じられてしまうも、まぁ、おしゃれな感じもするのでよいか、と自分を納得させるのであった…。
家の前

イギリス留学記 ~その8~ (工藤大輔)

渡英して3ヵ月,ちょうど折り返しを迎えた.シュート練習(自分にとっては素振り!?)のように側弯症の手術を見学している.今週末は4月6日から8日の日程でBrit Spine (Nottingham Conference Centre)があり参加してきた.入り口は日本脊椎脊髄病学会のようにテーマを掲げた看板で彩られることもなく、学会の名前が書いたのぼり旗が置いてあるだけでちょっと寂しい.口演が約80題,ポスターが約60題であった.側弯症の演題を主に聴講したが,特に興味をひいたのはMagnetic controlled growing rodいわゆるMAGEC®Rodに関するdebateであった.通常のConventional Growing RodではRodを伸張するために半年に1回の再手術が必要であるが,MAGEC® Rodでは体外から磁気を利用して伸張するため,伸張に伴う再手術を減らすことができるというのが利点である.しかし,実際は感染はゼロではないし,Rodの破損やMetallosis の問題 (特にMetallosisの問題を強調していた),コスト,うまく伸張しない症例があるなどの問題もあり,個人的には否定派の方が説得力があったと感じた.最新の論文にも同様の報告がされるようになってきており,反省の時期に入っているのかもしれない.いっぽう,日本では最近LLIFに関関する演題が飛ぶ鳥を落とす勢いで盛り上がっているが,今回はLLIFに関する演題は少なく,逆に成人脊柱変形の矯正ではPSOなどの3 column osteotomyに関する演題が多かったように思われる.いずれにせよ,Pelvic incidenceとLumbar lordosisのmatchが重要という意見は共通であった.(写真15)

写真15

イギリス留学記 ~その6~ (工藤大輔)  

毎朝8:15 (金曜は7:30)から症例検討のカンファレンスがあり,以前から気になっていたが,馬からの転落による脊椎外傷が意外と多い.乗馬という文化の違いと思われるが,逆に秋田の冬場の屋根からの転落による脊椎外傷はこちらでは珍しいに違いない.(というか雪自体があまりないので,雪下ろし作業というものが伝わらない気がするが・・・)また,よく言われるように頚椎椎弓形成術はほとんど行われていない.たいていは前方固定で,後方手術は椎弓切除(+固定)のようだった.前方固定は,DepuyのZero-P stand alone spacerが多く使われているようだった.たしかにプレートを当てないぶん非常にすっきりしていて良い.日本ではよく遭遇する広範囲の頚椎後縦靱帯骨化症は椎弓切除かそれ意外かで議論が白熱していた.特に椎弓切除後の後弯変形について議論となっていた.一応,椎弓形成術の話も出るが,最終的には術者の判断になり,今回は椎弓切除術が行われていた.頚髄症の評価は日整会のJOA(ジョアと呼んでいた) スコアが用いられていた.頚髄症の論文は日本から多数publishされており,この分野においては現在JOAスコアが世界標準なのかもしれない.

先日は,午前のグレビット先生の側弯外来の後,午後にメディアン先生の側弯外来を見学させていただいた.術後の患者さんは皆,真っすぐになった背骨に満足し,大変喜んでいたのが印象的だった.特にGrowing rod術後に大変良好な経過で,執筆された本の症例にもなった患者さんが家族とともに来院され,患者さん本人よりもむしろご家族が術前の我が子の写真の懐かしさと術後の経過に大喜びして携帯のデジカメでスライドの写真を撮る姿や,別の患者さんでは母親が喜びのあまり先生に抱きつく姿が印象的であった.忙しい外来であったが,いろいろ丁寧に教えていただき,modified Shilla法についても教えていただいた.まだ最近始められた術式で,中長期成績や論文はこれから発表されると思われるが,今のところトラブルは皆無とのことである.

手術は,今週も側弯症手術を多く見学させていただいた.一番大変だったのは,年齢がやや高い若年者の固い側弯であった.体格も日本ではなかなか出会えないほど立派であったため展開からすでに大変だった.Bendingで10°ほどしか矯正されない固い側弯で,凹側はほとんど骨癒合していたが,いつものように上下端と頂椎は凸側のみのPS設置を行い,ノミ-ノミ-リュエルの3ステップで骨切りを行い,椎弓下半分は一瞬で無くなった.ノミをハンマーで叩くと刺激で下肢が跳ねたり,いきなり硬膜外脂肪まで見えたりすることがあるので,見ているほうは時にヒヤヒヤするが,手慣れた作業であっという間に終了した.術前にどのように手術をされるのか尋ねたときは,固いからバランスを保つように・・・などとおっしゃっていたが,手術が終わってみるとほとんど真っすぐになっていた.感動!

渡英前に理容室に行ったが、さすがに髪がずいぶん伸びてきたので、最寄りの床屋に行ってみた.事前に島田教授から髪に水もつけずにカットする話やネットの情報も見ていたので不安だったが,背に腹は変えられない.ネット情報では洗髪はないことが多いようだったので、ちょうど手術見学後ということもありシャワーを浴びて、生乾きの髪で行ってみた.予約はとらずに突撃したが幸い店は空いていた.お客さんは一人でなぜかスキンヘッドだった.床屋に来る必要があるのだろうか・・・ すごく不安になった.お店のお兄さんも両腕に見事なタトゥーで怖かったが,引き返すこともできず,Next Please!と声をかけられると,言われるがままに座った.どうしますか?と聞かれたので,スマホの写真を見せて,こんな感じで・・とお願いした.日本の同僚に合わないので,10年ぶりくらいに短くしてもらった.ネット情報ではバリカンを多用するらしい情報があったが,いきなりバリカンで豪快に刈り上げられた.日本と違い,棚に無造作に置かれたハサミ(多分消毒洗浄があまりされていなそう)で豪快に切られた.ただ一応スプレーで水をつけてくれたので,もしかしたらいい店だったのかもしれない.ネット情報では10分くらいで終わると書いてあったが,13分くらいで終了した.お礼を行って8ポンド(1ポンド=169円 5/2/2016現在)支払って店を出た.

QMCのすぐ近くにWollaton Hall (写真12)というところがあり,なんとバットマン ダークナイトライジングでバットマンハウスとして撮影に使われたらしい.ノッティンガムではところどころ桜(?)が咲き始めてきた.(写真13)

(写真12)

写真12

 

 

 

 

(写真13)写真13

イギリス留学記 ~その5~ (工藤大輔)

ノッティンガム留学へ留学し,ちょうど1ヵ月経った.ノッティンガムはロビンフッドの伝説で有名ということで,いたるところにロビンフッドの像や絵が飾ってある(写真9).

写真9

(写真9)

中心街やノッティンガム城(写真10)周辺もバスでほとんど行けるので,車が無くても困らない.

写真10

(写真10)

グレビット先 生には、本当に良くしていただいており,側弯手術だけでなく,腰椎人工椎間板置換術なども見せてもらうことができ,手術は毎回楽しみにしている.先日,たまたま病院の玄関先でメディアン先生にお会いし,日曜日に側弯の手術を予定しているとのことで,それも見学させていただいた.AISの後方矯正固定術であったが,グレビット先生の手術法とは異なり,どちらかというと我々の方法に近かった.全椎体にフリーハンドでスクリューを設置後,rod rotationで矯正していた.術前にはメディアン先生が考えるLIVの決め方について教えていただいた.また,前回聞けなかったGrowing rod法(modified Shilla法)を行っている理由なども教えていただいた.先週はUniversity Hospitals of Leicesterのセル先生の側弯症手術も見せていただいた.というわけで1月後半もたくさんの側弯症手術を見学することができた.また何例かTLIFも見学する機会があったのだが,使われていたcageがT-palで約1万km離れた異国の地でいつも見慣れた器械を見ることができ,なんだか懐かしい気持ちになってしまった.

話は変わり,日本とイギリスの違いをいくつか.イギリスの医師は白衣を着ない.イギリスの国営の病院(NHS; National Health Service)では2007年から感染対策のため,白衣の着用を禁止したらしい.またネクタイも禁止.というわけで服装はいつも長袖のワイシャツの袖をまくり,スラックス,革靴というスタイル.島田教授より渡英前に服装の違いで医師の位が分かると教えていただいたが,もちろんグレビット先生はカフスを使用していた.おそらくスーツもオーダーメードの上等のものだと思われる.そしてDr.ではなくMr.と呼ぶ.専門医の受診は,日本のように紹介状なしでいきなり大学病院を受診することはできず,まずは家庭医(GP; General Practitioner)を受診し,必要に応じて専門医を紹介されるというシステム.専門の診療に集中できるので,仕事の高率が良いと思われた.最後に,これは個人差があるかもしれないが,わりと皆昼食はあっさりしていて,最近は自分も合わせて軽く済ませている.写真はある日の昼食で,パンとコーヒーとチップス(写真11).

 

写真11

 

(写真11)

イギリスの食事はおいしくないと聞いていたが,今のところそんなことはないと思う.

 

イギリス留学記 ~その4~ (工藤大輔)

英国へ留学し、約2週経った。こちらに来てから日中ずっと晴れていたのは2日くらいだろうか。毎日数時間おきに雨が降ったり、やんだりしている。年間降水量は東京より少ないようであるが、毎日しとしと降っている感じ。感覚としては秋田より天気が悪い気がする。写真は奇跡的に終日晴れていた週末の宿舎の裏のあたりで、シティホスピタルの敷地内で撮影したもの。

写真6 先日テレビが欲しくなり、近くのホームセンターに買いに行った。英国でテレビを見るためにはTV licenceなるものを購入しないと見られないので(厳密には見られるが、ちゃんとお金を払わずにこっそり見ると罰金を請求される)、さっそくOnlineで購入した。しかし、残念ながら宿舎の電波が弱いためか?見られなかった。ブースターをつなげば映るかもしれなかったが、あいにくどこに売っているのか分からないし、日本の家電量販店のような店も近くにはない。仕方なく、届くか不安であったがAmazon.ukで注文してみた。結果は・・・ちゃんと届いたが、玄関先に荷物が置かれていた。

写真7

もちろん受け取りのサインもなし。事前にメールが来ていつ届くとか、不在時の対応(玄関先に置いてもらう、ガレージに置いてもらうなどいくつか選択できる)が記載されていたのだが、予定より早く届き、しかも不在時の対応を選択する前に玄関先にそっと置かれていた。たぶん高価なものはamazon.ukで頼まないほうが無難かもしれない。幸いテレビは見ることができた。イギリスではほとんどの番組が英語の字幕付きで見られるのだが、逆に字幕がないと英語が速すぎてさっぱり聞き取れない。でも字幕を見ながらだとけっこうリスニングの勉強になることに気付いた。朝のカンファレンスは骨粗鬆症性を含む椎体骨折(何となく、階段からの転落症例が多いような気がする)、と脊椎転移が圧倒的に多い。骨粗鬆症性椎体骨折ではほぼルーチンに多発性骨髄腫のスクリーニングを行っているようだ。また脊椎転移では不安定性がない場合にはVertebroplasty (cement augmentation)も積極的に行っているようだった。

今週見学させていただいた手術は全部側弯であった。並列で別の手術が行われていることもあるが、側弯の手術がある日は側弯を希望している。今週はグレビット先生のAISの手術の他、メディアン先生のEOSに対するGrowing rod法の手術を見せていただいた。印象はAmazing!の一言に尽きる。スクリューは凹側凸側全椎体フリーハンドで、あっという間に設置し(四肢の骨折の手術より早いかもしれない)、矯正ももちろんすばらしかった。個人情報なので、詳しいことはここに書けないが術式としてはShilla法をmodifyした感じの手術であった。通常Growing rod法では全部展開しないが、本法では全部展開しており、フェローの先生に聞いたらSemi Growing rodと言っていた。またFinal fusionの手術もしないと言っていた。メディアン先生は閉創前に退室されてしまい、あまり質問できなかったので、今度いろいろ聞いてみたいと思う(写真:病院の正面)。

写真8