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秋田県骨粗鬆症PTH治療記念講演会(河野 哲也)

2015年2月28日,秋田ビューホテルにて「秋田県骨粗鬆症PTH治療記念講演会」が開催されました.前日のセミナーに引き続き,Osteoporosis Week 第二弾となります.

重症骨粗鬆症や骨折治療への併用など使用する機会が増えているPTHも,最近の外来では卒業する患者も増えてきました.PTHを含め骨粗鬆症治療について,知識を再確認する有意義な会となりました.

特別講演Ⅰでは,日頃からご指導いただいている宮腰尚久准教授より, 「脆弱性・難治性骨折を有する骨粗鬆症患者の薬物療法」と題してご講演いただきました.これまで使用されていたBP製剤やSERM,PTHに加え,抗RANKLモノクローナル抗体製剤であるデノスマブ,静注BP製剤など新しい治療薬について,それぞれの治療薬の使い分けを教えていただきました.

また.仙骨脆弱性骨折,高齢者四肢骨折,非定型大腿骨骨折に対するPTHの有効性についてもご講演いただきました.なかでも,非定型大腿骨骨折はBP製剤との関連性が注目されており,drug holiayや,手術適応についてなど,最新の知見を教えていただきました.

特別講演Ⅱでは,山梨大学大学院総合研究部整形外科学講座教授である波呂浩孝先生より,「骨粗鬆症脊椎疾患の診断と治療選択」と題してご講演いただきました.これまで,新鮮脊椎圧迫骨折には,多くの患者さんに対してコルセットで治療していましたが,体幹ギプスの重要性を再認識しました.また,脊椎変性後側弯症患者に対する変形矯正術の有効性についても勉強になり,実際の術前後での歩容の変化は驚きました.

現在では,多くの患者さんに対して骨粗鬆症治療が行われてきています.しかし,まだまだ未治療骨粗鬆症患者さんが多くいるのが現状です.骨折が起きてから治療を開始するのではなく.骨折予防を目標に,積極的に治療を行っていきたいと思います.

木島泰明先生留学便り5

「自由」の国、フランスの手術2と題して今回は、ここフランスのHôpital Henri Mondorにおける人工股関節置換術Total Hip Arthroplasty (THA) についてご紹介致します。

人工股関節置換術 Prothese Total de Hanche (PTH)

臨床配属みたいな学生さんは、とても熱心なのか義務なのか、いれば必ず手洗いをして手術に入るが、13時ころからは講義があるらしいので、13時以降の手術や、朝の用事で学生さんがいない時には手洗いして手術に入らせてもらっている。

手洗いは水道水とイソジンスクラブで1回洗った後、不潔の紙タオルで拭いて、アルコールを念入りに刷り込むスタイル。指輪を付けたままの人もいる。次にガウンを羽織り、手袋を1枚付けてからガウンの帯を締める。そしてもう1枚、手袋。

さて、ここでのTHAのアプローチはなんと今はposterolateralでした。パリで1番大きな整形外科施設であるコシャン病院はtrans-trochanteric approachだそうで、そこがライバルなので、前方系やHardinge (ハーディンジュと言っていました)などもやっていたが今はこれだそうです。教育がメインの施設のせいもあるかもしれません。それもあって、皮切長にもこだわっていませんし、教わりながらインターンの先生が執刀していて、手術時間は2時間くらいです。ちなみに僕がこのあと回らせていただくもう2施設は前方系のアプローチのはずですし、プライベートクリニックなので、また全然違ったレポートができると思いますので、そちらも楽しみにしていて下さい。(あとでHernigou教授に、アプローチについてお伺いしたところ、フランスでは7割はposterolateral、2割がanterior、1割がtrans-trochantericとおっしゃっていました。)

体位は側臥位で、いわゆる骨盤支持器は使わず、普通の体側支持器で仙骨と恥骨を挟むようにして固定するのみです。通常は両下肢の間に枕は挟まないので、反対側の下肢も圧布の下に触れるため、両下肢を揃えるようにして両側の膝や踵を触って脚長差を確認しています。やや外転位を保持したいときには滅菌した枕を使っています。実際には滅菌した袋に不潔のタオルを入れているのでやや怪しい感じですが、秋田で使っている大枕をそのまま滅菌できるならそれもありかなと少し思いました。足袋にはストッキネットを使っていますが下腿以遠はそれを二重にしています。ちなみに3時間近いような手術以外はフォーレはいれないようです。

外旋筋群は切離して最後はそれなりに再建(縫合)していますが、術者によっては関節包もなるべく縫合するという先生もいるし、切除している先生もいます。関節包を大事にしている先生はproprioceptorが関節包に存在するから重要視しているのだ、とおっしゃっていました。

機種はTKAと同じCERAVERというフランスメーカーのものを全員が使用。ですが、臼蓋側のリーマーだけはまたもやストライカーを使用していました。これはパワーツールをストライカーで統一しているせいのようですが、つまりはストライカーのツールが使いやすいからのようです。

カップはPoignard教授とヒップ専門で小西先生似のDelambre Jérôme先生はセメント、それ以外はセメントレスがメインだと思われました。セメントレスの時は最終リーミングサイズと本物のカップサイズは同サイズと話していましたが、接触面の構造のためか、楕円カップでなく半球カップにもかかわらず、ほとんどがプレスフィットするためスクリュー固定する例は稀でした。寛骨臼形成不全症例がほとんどないのも一因と思われます(約5%)。

でも、どの先生もリヴィジョンの時はあまり迷わずセメントカップを使っています。臼蓋側セメントのアンカーホールは鋭匙で6-8mmくらいの穴を前方、上方、後方に1か所ずつ、合計3か所だけ穿けると決めているようです。セメントはTKAと同じものでワーキングタイムが長いので、やはりカウントせずにゆっくりカップ設置。体重をかけて圧入するというより、セメントカップでもインパクターをガンガンハンマーで叩きます(ハンマーはフランス語で「まとー」です。マトー・シルヴプレで看護師さんが渡してくれますが、本当は冠詞を付けてル・マトゥだそうです。)臼蓋側の展開には細めのピンレトラクターをたくさん打ち混んでいます(これはフランス語で「ぴんち」のようです。ちなみにガーゼはデ・コンプレイス・シルヴプレで何枚かくれます。”デ”は複数を表わす冠詞だからですね。もう1枚欲しいときは”あんこーふ”-encore-です。そうです、日本語のアンコールはフランス語からきているようです。)

カップの設置位置に関しては横靭帯を重視している先生が多いようで、そこにハサミ(れ・しぞー、あるいは、マイヨ―・ロン「長いメイヨ―」)を入れてぐっと開いて剥離したところにホウマン鈎を入れてからリーミングという先生が多いです。ほとんどがプライマリーOAのような症例ですが、1例だけ寛骨臼形成不全のキアリ骨盤骨切り術後OAという症例だけが僕が経験したdysplasiaのケースでした。この症例には手洗いして入らせていただいた(―手洗いしていいですか―ジュ・プ・スクラビン?で通じました。スクラビングは英語ですが..)のですが、ブロック骨移植にセメントカップ固定していました。(全部で50例近くのTHAを見せてもらいましたが、massiveの骨移植はこの1例のみ、morselizedの骨移植も1例だけ、KTプレートの脇にしているのを見たのみです。) これだけプライマリーOAがあるとやはりそのうちの相当数はいわゆるFAI由来かもと思われる画像所見でした。

ステムは気まぐれに?若いから?1例のみセメントレスを使っているのを目撃しましたが、その1例以外は全員がセメントステムを使用していました。スターターリーマーは使わず、鋭匙で髄腔内の海綿骨を掻き出すようにして髄腔を確認した後は通常通りブローチング。ギチギチに入るまでサイズアップしたらトライアルせずに(トライアルする先生もいます)セメントプラグもブローチを使って押し入れてからセメンティングです。セメントガンは使わず、吸引チュ-ブを髄腔の奥に入れて、50㏄シリンジでセメントを注入。1回だけの注入で足りるようです。

ステムはブローチとほぼ同じ大きさなのですごく薄いセメントマントルです(いわゆるフレンチ・パラドクスっていうやつですよね)。ポリッシュですがカラー付きのステムなので、どこで荷重を受けていると思いますか?でもフランスではずっとこうやってきて、長期の成績も良いとのこと。ちなみにステムもセメントですがガンガン叩きます。そのあとにトライアルをやってネックの長さを決定してヘッドを付けています。このトライアルもしないという先生もいます。トライアルも70度くらい屈曲位で30度くらい内旋しても脱臼しなければまあ大丈夫でしょうという感覚のようです。ちなみにここで使っているCERAVERのセメントカップには内部に可動性のOリングみたいなものがついていてそれも脱臼の抑制に有利みたいな話だったのですが、どういうメカニズムなのかもう一つ理解できずにいます。結構前からのシステムのようです。ちなみに術前プランニング用のCTは撮っていないようですが、カップトライアル設置後など、少しでも不安要素があれば術中写真は結構ためらわずに撮っています。

ということで摺動面はセメント派はCoP、ハイブリッド派はCoCです。ヘッドサイズは基本32mmのようです。フランスといえばdual mobility cupでも有名ですが、ここでは現在は、ほとんど使われていません。ある先生は、dualにしても外れるときは外れるし、誰かのデータでは脱臼率が変わらなかったみたいだよ、こんなトラブルもあるしね(ちょうどdualのアウターカップとインナーカップの間で外れた症例のリヴィジョンの手術の時でした)、だから今、うちでは積極的には使っていない、とのことでした。あとでHernigou教授に個人的に伺ったところでは、高齢者にはとても良いと思う、でも若年者にはちょっとね、ということでした。ちなみにフランスでは高齢者でもひどい骨盤後傾の患者さんは見かけません。脊椎の変形も日本のような全後弯になることはあまりなく、胸椎だけ後弯する円背や、胸椎後弯・腰椎前弯の凹円背がほとんどのためのようです。

誤解を恐れずに言えば、ここの先生たちはあまり脱臼を、もしくはリヴィジョンを我々ほどには“恐れていない”のかもしれません(リヴィジョン-フランス語ではReprise-もしょっちゅうやっているし!?)。もしかしたら、数多くやっている先生あるいは施設は日本でもそうなのかもしれません。ただフランスは結構、患者さんにも受容されやすいのかもしれません。おそらくアメリカのような訴訟社会でもなく、日本ほどにもインフォームド・コンセントも厳しくなく、合併症があってもそういうものかなとみんなが感じちゃう土壌があるのかもしれません。役場の事務手続きが全然進まなかったり、手続きの方法までが担当者によって言うことが全然違ったりするのもフランスなら当然らしく、みんなそれをしょうがないことだと受け入れているらしいのですが、それと関係があるかどうかはもちろん不明ですが。

ちなみにリヴィジョン時の感染の有無の確認は血液検査(主にCRP)とリヴィジョン手術時の関節液などの組織培養くらいのようです。それとリヴィジョンの手術で驚いたのは、前に入っていたセメントやセメントプラグを除去するのに、外傷に使うストライカーの髄内釘用のドリルやガイドワイヤーや髄腔リーマーを使用していることです。ストライカーが許してくれるのであれば使えるかもと思いました。

(追伸:人工骨頭症例は結局1例も見ませんでした。頸部骨折症例には全例THAをやっておりました。寛骨臼骨折も保存治療がメインで1-2年後にOAの診断でTHAという症例が多いようです。)

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(写真1) ↑体重かけたリーミング!

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(写真2)↑ステムも緑でおしゃれ。

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(写真3)↑骨頭は軟骨をボーンソーで除去して移植。   ↑ジェローム小西先生!?

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(写真4)(写真5)(写真6)↑商品化された同種骨

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(写真7)↑KTプレートはこのように把持していました。

第6回日本ニューロリハビリテーション学会・The 4th Japan-Korea NeuroRehabilitation Conference報告(柴田暢介)

2015年2月21日と22日の2日間に渡って, 秋田ビューホテルにおいて第6回日本ニューロリハビリテーション学会及びThe 4th Japan-Korea NeuroRehabilitation Conferenceが開催されました. 今回は秋田開催ということで, 医局員・スタッフ一同一丸となり準備にあたりました.

初日の日本ニューロリハビリテーション学会の特別講演1では, 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座准教授の加賀谷斉先生が, 「摂食嚥下の生理と治療成績」の演題でご講演をしていただきました. 豊富な動画で詳細に解説していただき, 普段嚥下にあまり関わらない整形外科医としては新鮮なご講演でした. なかでも, 選択的に嚥下に関わる筋(舌骨上筋など)を電気刺激して嚥下機能を改善させるという治療は, このようなFESもあるのかと大きな感銘を受けました.

加賀谷斉先生

特別講演2はUniversity of Maryland School of MedicineのProf. Keith McBrideに, “Contemporary Functional Electrical Stimulation in Persons with Stroke” の演題でご講演をいただきました. FESの歴史から学会当日(!)にFDAに認可された新しい機器の紹介まで, 多岐に渡る話をしていただきました.

Prof. Keith McBride;
ランチョンセミナーでは, 札幌医科大学附属病院神経再生医療科教授の本望修先生より「脳梗塞と脊髄損傷の再生医療-医師主導治験による実用化-」の演題でご講演をしていただきました. これは脳梗塞や脊損患者に対して, 腸骨から採取した骨髄から間葉系幹細胞を分離して培養し, 静脈投与することで麻痺が改善していくというものでした. 紹介された症例では投与後わずか3日目より上肢機能の劇的な改善を認めていて, 非常に興味深い内容でした.
本望修先生
シンポジウムでは, 東北大学大学院医学系研究科肢体不自由学分野准教授の田中尚文先生に「骨格筋パルス磁気刺激装置」の演題で, 骨格筋用の安価でコンパクトな磁気刺激装置を紹介していただきました. 当科でも奥寺良弥先生が末梢への磁気刺激を研究されていて, 今後研究を発展させていく際にこの機械があればベッドサイドで磁気刺激が行えるので非常に有用と思いました. また, 国際医療福祉大学病院リハビリテーション科部長の太田喜久夫先生からは, 「同名半盲に対する反復視覚刺激の効果-ニューロモデュレーションの可能性-」の演題で, コンピューターで視野を計測し, その辺縁に反復視覚刺激を加えることで, 視野が広がる症例があったことをご報告されていました. 滋賀県立成人病センターリハビリテーションセンター医療部長の中馬孝容先生からは「脳卒中に対するボツリヌス療法」の演題で, ボツリヌス療法をする際の注意点について詳細なご講演をしていただきました. 解剖学的な知識, 正確な注射はもちろんのこと, 患者へ注射の効果を十分に説明し, 理解してもらうことがいい結果につながるとお話しされていました. 最後に, 藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座助教の平野哲先生からは,「脳卒中片麻痺患者の歩行練習における歩行練習アシストの有用性」の演題で, 歩行練習アシストロボット, Gait Exercise Assist Robot (GEAR)を紹介されていました. 今までは脳卒中片麻痺患者のトレッドミルを用いた歩行訓練は主に長下肢装具を装用していました. しかしこのロボットでは膝関節部にモータを搭載していて,膝伸展や振り出しの補助をすることができます. さらに麻痺肢の荷重を計測する圧センサー, 関節のトルクセンサー, 患者自身が歩きながら歩容を確認できる前面モニタ, など多くのフィードバックを得ることができ, それをもとに補助量を個々の患者に応じて設定することができるというものでした.
また一般演題では当院及び関連施設からも多くの発表があり, 非常に有意義な会となりました.

 

2日目のJapan-Korea NeuroRehabilitation Conferenceでは, 始めに藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅰ講座教授の才藤栄一先生より, “Exercise and robotics in neurorehabilitation”の演題で, Balance exercise assist robot (BEAR)や, 前述のGEARの紹介をされました. 招待講演では, 慶應義塾大学医学部整形外科学教授の中村雅也先生より, “Regenerative medicine for spinal cord injury”の演題で肝細胞増殖因子(HGF)やiPS細胞を用いた脊髄損傷に対する再生医療についてご講演いただきました. シンポジウムでは兵庫医科大学リハビリテーション医学教授の道免和久先生よりconstraint-induced movement therapy (CIMT)について, 東京慈恵医科大学附属第三病院リハビリテーション科准教授の角田亘先生からは反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)について, Kyungpook National University Hospital リハビリテーション科教授のYang-Soo Lee先生からは”task-oriented gait training”について, Asan Medical Centerリハビリテーション科教授のCenter Chun Minho先生からは脳梗塞患者に対しての歩行訓練ロボットに関してのご発表をしていただきました. その後の討論でも活発な討論を聞かせていただきました.
ポスター会場では昨日に引き続き多くの発表があり, 2日目も大成功で終えることができました.リハビリテーションは整形外科とは切っても切れない関係にあり, 非常に勉強になった素晴らしい会でした. 整形外科だけでなく, リハビリテーションにも深く関わっていきたいと改めて感じました.
才藤栄一先生

 

 

 

 

中村雅也先生シンポジストの先生方

今回の2日間の学会の成功は学会運営に関わった先生方, スタッフの方々. ご支援いただいた同門の先生方のおかげです, 誠にありがとうございました.

集合写真

お疲れ様でした!

木島泰明先生留学便り4

留学便り4

今回はパリ第12大学アンリ・モンドール病院のカンファレンスについてご紹介します。

毎朝7時半過ぎ(フランス人は時間にルーズという話もよく聞くが、確かにそうかもしれない。カンファも、全員が集まって「さあ始めましょう」という感じではなく、それなりの時間に、それなりの人数が集まると、なんとなく始まり、徐々に人が増えてくる、つまり学生さんも含め、ほとんどの人が遅れてくる)から、前日の急患と前日の手術症例のプレゼンがある。

シャーカステンでの提示がほとんどだが急患の画像は病院端末の画像を大きなテレビに映している(東芝ビエラ!)。急患は予定手術とは別にすぐに手術が施行されていて、カンファに出されるときにはもう術後である症例も少なくない。そういう意味でも専門以外の手術も普通にこなせる技量が要求されるが、少し困難な例では専門医が呼ばれたり、後日の手術になったり、やり直しになったりすることもあるようです。

カンファでは1例1例終わるたびに、主にPoignard教授(No.3の教授)がレコーダーにカンファの結果を録音している(ここでは手術記録だけでなく、すべての記録をレコーダーに録音する。そうすると誰かがタイプしてくれるらしい。欧米はみんなこうなのでしょうか)。カンファの内容を録音したものは、コンクルジォン・ドゥ・スタッフというカルテのページにしっかり記録される。

夕方のカンファレンスは月曜日と水曜日の16時半過ぎ頃からなんとなく始まる。結構前からインターンの先生がプレゼンの準備をしている。夕のカンファでは術前の症例が提示されるが翌日や翌々日などの症例なので、問題点が指摘されれば準備が間に合わないのではないかという気がするが、結構1例1例、みんなが言いたいことを言って時間をかけて話しているわりに、結局は術者の当初の方針を押し通す!という印象でした。

カンファは、僕が来て最初の1回だけは、Japanese friendがいるからとか言って頂いて英語で行われたものの、やはり大変だったようで、その後はフランス語で行われています。カンファをある程度理解するには、まずはフランス語の数字を聞き取れるといい。アン、ドゥー、トワのその続きを100まで分かれば事足りる。症例提示では患者さんの名前に続いて年齢が示される。その年齢を聞き取れるだけでまずはうれしい。プレゼンでは必ず年齢を最初に言っているのに、議論中に何回も「その患者さん(まらーどぅ)は何歳だっけ(けらーじゅ?)」と聞かれるのは日本のカンファにもよくあることで、整形外科の治療方針決定には、洋の東西を問わず、年齢はかなり重要だということでしょう。

あとはL4/5の4-5は「かとうさん」に聞こえる(きゃとる・さんき)」し、5/Sは「さんき・え・さん」に聞こえる(ほんとは何と言っているのかわからないけど…)。あとは意外と英語よりもローマ字読みに近いし、画像を見ていればなんとなくわかる。たとえば、いんすたびりて、すこりおーす、とらんすばはす、ばはてぃかる、などは意味が分かる。それと、Thereforeは<どんく>、Howeverは<め>、Becauseは<ぱすく>だと思えばだいたいいいようです。街での買い物でもRの発音さえ気を付ければだいたい通じます。Rの発音が英語と違っていて、教科書では「らりるれろ」で表記されますが、「はひふへほ」に聞こえます。なので、舌を下の前歯の裏につけて「はひふへほ」と発音すれば通じるようです。パリに来てよく使うのが「じゅ・ぷ・ぺいえ・ぱは・かふとぅ」(Je peux payer par carte?カードで支払えますか)です。大抵のお店でクレジットカードは使えます。

ちなみにカンファレンスで、固有名詞は「じゅで」と「ますきゅれ」(と聞こえる)以外は出てこない(聞き取れている範囲ですが)。チャンレーもシャンリー(もしかしてチャンレーをそう読んでいたりしてと思ったが)も出てこない。Alexandreはエリクソン、incisionはアンシジォンに聞こえる。執刀時は「お願いします!」ではなく、皮切を入れながら大声で「あんしーじぉん!」と言って手術を始めています。

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前から偉い人順に座る。シャーカステンだけで見えない時は前まで見に行くスタイル。
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左側に東芝ヴィエラ。カンファ内容はテープレコーダーでカセットテープに。
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こちらは手術と手術の合間に使う整形専用控室。ここで手術直前に作図。

第60回秋田県整形外科医会(三澤晶子)

2014年11月22日に開催されました第60回秋田県整形外科医会において最優秀演題賞をいただきました。並み居る先輩、後輩、計6題の中から選ばれましたことを大変うれしく存じます。

賞をいただきました「受診契機からみた側弯症学校検診の有用性」は島田洋一教授からモアレ検診の読影を引き継いだ2007年からの結果をまとめたものです。今回は大学、当センターの初診例をまとめましたが、データ収集におきましては、本郷道生講師に大変お手数をかけしました。この場をお借りして御礼申し上げます。

今まで、県医会の発表はほとんどなかったのに、満を持して、なぜ、今回演題を発表しようと思ったか?それは60回というキリのよい回数だったこと、地味な活動をお知らせしたいという思い、早期発見の重要性について先生方にご理解いただきたいという思い、などなどありますが、本音を申しますと、チーム側弯のお食事代を手に入れようという非常に高い(?)モチベーションがありました。ご評価くださる先生方にも気合が伝わっての受賞ではないかと内心思っております。

今後も高いモチベーション(学術的に)を持ち続けるよう、今回の受賞を糧に頑張ります。

ありがとうございました。

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秋田県立医療療育センター 三澤晶子

平成26年度大忘年会(益谷法光)

平成26年度整佑会総会・特別講演会ならびに整形外科大忘年会が12月13日に開催されました。

特別講演会では宮腰准教授よりA-boneの歴史についてご講演を頂きました。A-bone設立以前の歴史も交えて、現在の研究が行われている背景等、非常に貴重なお話が聞けたと思います。私も今年度からA-boneへ参加させて頂いていることもあり、これまでの研究業績の積み重ねの系譜に連なることへ身が引き締まる思いでした。また、奨励賞の発表や新入局員の紹介もあり今後の教室の発展に繋がっていくものと感じました。各受賞者の先生方には改めてお祝いを述べさせて頂くとともに、自分もいつかその輪に加わることが出来るよう精進して行く気持ちが強くなりました。

 

引き続き行われた大忘年会では、今回の大きな目玉としては各部活紹介のビデオを作成し、みなさまへご紹介させて頂いた点があります。現在、島田教授を筆頭として大学院生を中心としたスポーツ活動が盛んに行われています。それらの部活の各責任者の先生に1年を振り返ってのビデオを作成して頂き、みなさまへご紹介させて頂きました。駅伝部やバスケットボールチームであるノーザンバイソンズなど、各種大会で上位の成績をおさめている部活もあり、競技レベルは趣味の範囲を超えたものとなっているものもあります。そういった活動について関連病院の先生方にもご紹介、さらにはご参加頂けるきっかけとなれば幸いです。

 

二次会にも(三次会・四次会も行われていたようです)多くの先生方にご出席頂きまして、大変盛況のなか大忘年会の幹事を執り行うことが出来ました。各方面において失礼も多々あったこととは思いますが、みなさまのご助力のお陰で無事開催となりましたことをこの場を借りて御礼申し上げます。

 

 

 

 

2014年度整佑会総会(永澤博幸)

秋田大学整形外科の同門会である整佑会の総会が、2014年12月13日に開催されました。

湊昭策会長、島田洋一理事長のご挨拶のあと、宮腰尚久常任理事より事業報告がありました。新入会員の、塚本泰明、阿部和伸、齊藤光、三田基樹、村田昇平の各先生方および入局予定者として秋田大学医学科6年の東海林諒さんよりご挨拶をいただきました。これで会員数は161名になりました。1997年に100名を超えてから順調に会員数を伸ばしております。今回の総会では102名の先生方にご出席頂きました。

 

国内外の学会からの受賞者についての報告がありました。宮腰尚久准教授(米国骨代謝学会)、本郷道生講師(日本腰痛学会)、木島泰明先生(日仏整形外科学会)、木下隼人先生(米国骨代謝学会)、柴田暢介先生(国際FES学会)、田村康樹先生(東北骨代謝・骨粗鬆症研究会)、土江博幸先生(日本骨代謝学会)です。おめでとうございます。

一任期2年の理事改選では、渡部亘先生、山田晋講師、関展寿先生、千田秀一先生および筆者の5名の理事が退任されました。整佑会の発展にご尽力頂きましてありがとうございました。新任の理事として、奥山幸一郎先生、今野則和先生、浦山雅和先生、前川重人先生、竹島正晃先生が承認されました。よろしくお願いします。

2001年より始まった整佑会奨励賞ですが、今回は市立角館総合病院の青沼浩先生と斉藤公男先生の2名が受賞され、授賞式および記念講演が行われました。青沼先生は、骨吸収抑制剤であるアレンドロネートと低出力超音波骨折治療器の併用効果についてラット脛骨の骨切りモデルを用いた研究が、Journal of Bone and Mineral Metabolism誌に掲載されました。斉藤先生は、従来使用されてきた立位でのバランス測定器にかえて、新たな座位バランス装置を開発することにより下肢の影響を排除した体幹バランス測定に関する研究が、Biomedical Research誌に掲載されました。また、整佑会特別賞が湯沢医院の堀川明先生と平鹿総合病院の奥寺良弥先生に授与されました。各先生方おめでとうございます。今後のますますの発展を期待します。

今回の整佑会特別講演ですが、宮腰尚久准教授により「秋田から発信する近年の骨代謝研究 -基礎研究の変遷からA-Boneの設立まで」と題したご講演をして頂きました。宮腰准教授自身が大学院生であった頃の基礎研究から、近年のA-Bone設立および関連病院での多施設共同研究の方向性についてのご講演でした。

次回の整佑会総会は2015年12月13日です。会員の先生方には、秋田大学整形外科の日々の活動にご理解ご協力をいただきまして誠にありがとうございます。次回の総会で多くの先生方を新入会員として迎えるべく、大学の事務局としても頑張ってまいります。

 

第60回秋田県整形外科医会報告(木村竜太)

第60回秋田県整形外科医会報告

秋田赤十字病院整形外科 木村竜太

 

11月22日に第60回秋田県整形外科医会が開かれました。毎回、最優秀演題賞目指して一般演題とYoung Doctors Session(10年目以下)で熾烈な争いが繰り広げられています。さらに今回は秋田大学整形外科の各グループからこれまでの成果、ならびにこれからの展望をシンポジウム形式でご講演いただき、さらに特別講演2題と盛り沢山の内容でした。私はYoung Doctors Sessionとシンポジウムについて報告させていただきます。

 

今回、Young Doctors Sessionは10演題の発表がありました。

 

「初診時 MRI で異常所見を認めなかった化膿性脊椎炎の 1 例」

秋田厚生医療センター 佐藤千晶先生

「診断に難渋した下垂足の 1 例」

雄勝中央病院 長幡樹先生

「血栓溶解療法が奏功した急性上腕動脈閉塞の 1 例」

秋田労災病院 飯田純平先生

「転位のない橈骨骨幹部骨折 2 例の治療経験」

市立横手病院 湯浅悠介先生

「観血的整復固定を行った肩上方懸垂複合体(SSSC)損傷の症例検討」

由利組合総合病院 高橋靖博先生

「CT を用いた Garden stage 読影法の検討」

山本組合総合病院 岩本陽輔先生

「TKA の出血対策としてトラネキサム酸の投与方法で差があるのか」

市立大森病院 塚本泰朗先生

「下肢手術における超音波ガイド下ブロック持続時間の検討」

市立秋田総合病院 尾野祐一先生

「脳原性疾患の痙性尖足に対する治療経験」

秋田県立医療療育センター 河野哲也先生

 

その中で最優秀演題賞をいただくことができました。演題名は「超音波ガイド下頚椎神経根ブロック」です。これは「X線透視下に頚椎椎間板造影をした時に欲しかった安心感」+「腰椎神経根ブロックで痛みが治まったという患者さんの笑顔(ブロック直後には一時嫌われます)」+「斜角筋間でC5、C6ブロックをしていた時の『あれ?他の神経根も見えるからそれぞれブロックしてみればいいんじゃない?』という興味」から生まれました。少しコツをつかめば神経や血管が見えて、効果も得られます。今後整形外科の治療において有用な方法になっていくと考えます。今後はより簡便な手技の確立と、腰椎神経根ブロックへの応用を目標にして参ります。

発表の指導をいただきました秋田赤十字病院の先生方、本法の試案を検討いただきました秋田労災病院の先生方、超音波ガイド下ブロックの基本を教えていただきました市立秋田総合病院の先生方にこの場をお借りして感謝を申し上げます。シンポジウムではAORA(関節リウマチ)、A-BONE(骨粗鬆症)、AHG(手)、AHRG(股関節)、AFG(足)、AIMG(イリザロフ)、AMAG(動作解析)、ASG(脊椎)の8グループの各Directorから御講演いただきました。各グループの詳細は秋田大学整形外科学講座ホームページのトップページからアクセスできますので、そちらに譲らさせていただきます。これだけsystematicなグループ化は全国的にみても稀だと思います。さらに、それぞれのグループが共同でも研究を行っており、これから秋田県の整形外科はもっともっと発展していくこと間違いなしと感じさせていただいたシンポジウムでした。