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留学報告㉔Santa clara valley medical center(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回はSanta clara valley medical center見学

サンノゼ近郊にあるサンタクララバレーメディカルセンターという病院を見学させて頂きました.創設100年以上の歴史のある公立病院です.スタンフォード大学に御留学中の前田俊恒先生とご一緒させて頂きました.

つい最近まで以前は100年以上前に建てられた病棟を使用していたようですが,2017年12月から新病院に移転したそうです.今回はその新病棟の見学をしてきました.

 

 

 

 

 

見学の案内をして下さった先生はSham Kazuko先生というSpine injury center(日本でいう脊損センター)のチーフで,日本語が非常に堪能な先生です.

リハビリテーションセンターのリハ医は10人程在籍しており,そのうち4人が脊損専門,5人が脳梗塞系専門とのことでした(もう1人の専門は忘れてしまいました…).また,セラピストはPT,OT,ST合わせ100人を超えているそうですが,女性の比率が高く実際に働いているのはその8割程度とのことでした.それでも十分なスタッフの人数です.

 

 

 

 

 

まだ使用して3ヶ月の新病棟は,1階がリハビリ,2階はICU,3階は脊損リハ病棟,4階は脳梗塞病棟,といった配置です.部屋は個室と2人部屋で,脊損病棟の部屋には前室リフトがあり,風呂場,トイレまでつながっていて早期リハビリの手助けをしています.各病棟に小さな訓練室があり,急性期で移動が大変な時は1階まで降りずにその場所を使うそうです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後,外来棟も見学しました.外来にもリフトがついている部屋が2つあり,褥瘡などの診療の手助けになるそうです.特にこちらの患者さんは大きな人が多いのでリフトがないと辛いようです.

 

 

 

 

 

Sham Kazuko先生は臨床とともに臨床研究も活発に行っている先生で,数々のグラントを取得されています.その中には遠隔リハビリテーションのグラントもあるそうで,実際にipadを使用して指示を出すなどの診療をされていました.スタンフォード大学が近いこともあり,再生治療の治験も行われているそうです.

帰国直前でしたが,見学できて大変勉強になりました.Sham Kazuko先生,御紹介下さった森岡和仁先生にこの場を借りて感謝申し上げます.大変ありがとうございました.

 

 

 

 

 

 

 

 

左から筆者,Sham先生,前田先生.

留学報告㉓シャスタ山とAko先生(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回はシャスタ山観光とAko先生

クリスタルカイザーという水をご存じでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マウントシャスタはサンフランシスコから車で北に約4時間半の場所にある山で,ここの麓にある湧き水がクリスタルカイザーの採水地になっています.

バックの山がシャスタ山です.マウントシャスタの湧水という説明書きまで.

風光明媚な場所として有名で,かつてはネイティブアメリカンの聖地として,現在日本ではパワースポットとして崇められている山です.留学も終わりに近づいてきたので,少しパワーをもらいに行くことにしました.

 

 

 

 

 

 

シャスタ山

 

宿泊地のレディングはシャスタ山から約1時間の街で,以前セットアップ時に大変お世話になったAko先生(留学ブログ①参照)が勤務されており,夕食をご一緒させて頂きました.

日本の外科で勤務されていた先生は10年程前に渡米し,アメリカの医師免許を取得され,現在は入院患者を中心に診療されています.

Ako先生の第一印象は,とにかく生気に満ちあふれている格好良い先生という印象です.いろいろお話を伺うと,ここまで来るのに相当な厳しい御経験をされており,アメリカで医師をする上でのシビアな状況を乗り越え,自立して米国医師としての人生を送られています.しかし,凜とした佇まいからはその大変な状況を微塵も感じさせません.パワースポットに話が及ぶと,「パワーは人や物からもらうモノではなく,自分で捻出するモノ.何かからパワーをもらおうとしている時点でパワーがでる期待は薄い」ときっぱり.その通りです.勉強になります….

秋田ご出身ということもあり,2月にご帰国された際にも秋田大学で御講演されたと伺いました.もしかしたら拝聴された方もいらっしゃるかもしれません.今後また日本にご帰国の際には御講演もあるかもしれませんので,その際には是非とも参加してみて下さい.お名前先のリンクも御参照下さい.

Ako先生,家族ともども大変有意義な時間を過ごさせて頂き大変ありがとうございました.今後ともよろしくお願い申し上げます.

留学報告㉒医療職の種類(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.

ZSFGHで病院見学しているといろいろな職業の名札を見かけます.「DOCTOR」という名札の人が診察している風景は日本と変わりありませんが,「NP」という名札の人が同じように診察して処方したり,専門医と治療方針についてディスカッションしているところを見かけます.

彼女(見学しているときにいたのが女性だったので)の職業はNurse Practitioner;NPで,日本語では診療看護師と略されます.看護師なのですが,外来でやっていることはほぼ医者そのもので,診察し,診断し,処方します.手術はできません.NPは開業権を持ち,その給与は平均時給で約45$と報告されています.レジデントの職務範囲と重なるため,外来や病棟に数名配置されているようです.

歴史をたどると,第二次世界大戦後の医師不足から始まっているようで,時代を変遷する毎にそのニーズと職務範囲が拡大してきた背景があります.近年では医療費抑制という政策や,医師の専門化の促進,レジデントの勤務時間の抑制による人手不足で,プライマリケアを担うNPの存在感が更に高まってきているという流れです.

この流れを見ると,日本でもこの制度が導入されてもおかしくはなく,実際に看護協会でもその働きかけをしています.

もしこのような制度が導入されると,外来診療も病棟業務も少し楽になるかもしれません,そのかわり,整形外科医として,より専門的な知識と技術,手術手技を持たないと働けないという時代になってくると考えられます.われわれ医師は,常にアップデートを繰り返す必要があり,身が引き締まる思いです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NPさんと.やっていることはがっつり医者です.

つづく

留学報告⑳Day surgery center(斉藤公男)

長崎大学 千葉恒先生の御高配により,モントレーにあるDay surgery centerを見学してきました.

モントレーはサンフランシスコから南に車で約2時間半ほどのところにある海辺の綺麗な街です.ゴルフをされる方は,ペブルビーチという海岸沿いの綺麗なコースがあることでご存じかもしれません.2019年は全米オープンが開催されるそうです.

今回お世話になったのはRichard Dauphine先生です.御年75歳,モントレーの海に魅せられて,30歳代で東海岸から移住したそうです. 趣味はスキューバダイビングで,今でも夏場には週3回くらい潜っていらっしゃいます.

Day surgery centerは,現在周辺に5施設あるそうで,年間合計20000件を超える手術を行っています.今回見学した施設だけでも整形外科以外を合わせて4000件以上の手術を行っているそうです.患者アンケートを必ず行っており,9割以上の人から非常に満足しているという回答を得ているそうです.逆に,この回答を得られない医師はこの施設を使えないという面もあるようで….

手術の内容は,肩や膝の関節鏡手術の他に,TKA,THAもDay surgeryで行っているとのことでした.手術手技自体はこれといって目新しいことはなかったのですが,術前投薬から,術中カクテル,術後ブロック,術後オピオイドの処方など,疼痛対策にかなり気を遣っていたのが印象的でした.また,手術の入れ替えが早く,5〜10分程度で入れ替えを行います.手術件数の分だけボーナスが出る仕組みのようで,スタッフもキビキビ動いていました.

手術見学の後,17マイルドライブの中にあるクラブ会員限定のようなレストランで昼食をごちそうになり,日米の医療の違いや趣味などざっくばらんに会話して下さり,楽しい時間を過ごさせて頂きました.75歳を超えてなお,仕事も人生も楽しまれている先生の姿が印象的でした.

Richard先生を御紹介頂きました長崎大学 千葉恒先生にこの場を借りて御礼申し上げます.ありがとうございました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手術所見をディクテーションで記載するRichard先生

 

 

 

 

 

 

 

Richard先生と.

 

留学報告⑲ スポーツ外来2(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

今回はスポーツ外来見学 その2

いつもお世話になっている長尾正人先生に,UCSFでスポーツドクターとして勤務されているCarlin Senter先生を御紹介頂き,UCSFのスポーツ外来を見学してきました.

Carlin Senter先生は内科医をバックグラウンドとしている先生でsubspecialityとしてスポーツ医学を専攻され,現在USCFのスポーツ外来をされている先生です.筋骨格系疾患全体を幅広く診療されており,脳振盪回復プログラムのチーフを務められています.

詳細に問診を行った後に診察を行うというスタイルで,必ず最初はオープンクエッションで行っていました.この方が,患者さんからの症状・情報を引き出し易いと仰っていました.また,普段自分が診察する際にはほとんど質問することが無い,食事や睡眠時間などの問診を頻回にされていたのが印象的でした.

Luke先生の時はGoogleグラスでのディクテーション記載補助でしたが,Senter先生の場合は補助の人が一緒に入って直接タイピングするというスタイルでした.しかし,Senter先生のタイピングが尋常じゃないほど早いので,自分で打った方が早そうな雰囲気(すこしイライラ?)でした.

全患者でスポーツ選手を診る割合は約2−3割ということで,スポーツ以外の患者さんも相当数診察・治療されているようです.今はスポーツの帯同は行っていないようですが,以前は行っていたようで,診察室の至る所に選手からのサイン入り写真などが飾られていました.スポーツの帯同にはGeneralistとしての知識も必要であると実感させられました.

PTルーム見学やスポーツグループカンファレンスなどにも参加させて頂き,充実した見学をさせて頂きました.

 

 

 

 

 

 

Orthopedics Institute ビル1個整形外科です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタンディング対応のPCデスク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外来診察室にはサッカー女子代表のサイン入りシャツも.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Carlin先生と.

 

 

 

 

留学報告⑱ 医学教育について(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Institute(OTI)です.

今回は,米国の医学教育についてです.

今の時代,アメリカと日本の医学教育の違いなどは,調べればどこにでものっている内容なので簡単に説明と,実際に見学してみての印象を報告します.

日本の場合,整形外科医になるためには 大学医学部(6年)⇒初期研修医(2年)⇒医局所属/民間病院整形外科所属(4年)⇒整形外科専門医,という流れです.基本的に初期研修医も専門医も同等の責任があります.

アメリカの場合は 一般大学(4年)⇒メディカルスクール(4年)⇒レジデント(4-5年)⇒(フェロー(2-3年))⇒整形外科医です.

メディカルスクールに入学するために,推薦状が必要で,それをもらうためには医療機関でのボランティアなどが必要となるようです.そのため,病院では医師やレジデントの他に学生ボランティアもよくもみかけ,医師や患者さんと接して,診察以外のできる業務を行っています.この制度は医師を目指す前に現場をよく知る意味でも非常に有用だと感じました.

メディカルスクールに入ってからはほぼ休みなしで,1年目が座学,2−3年目には病院実習となり,レジデントとともに診察を行ったりもします.日本の研修医1−2年目のようなことをここで全て行います.4年目はSub I(サブアイ)と呼ばれ,インターンの下,日本でいう研修医と同様のことができ(しないといけない),その間に次年度以降に行きたい希望の科のレジデンシープログラムにマッチングするという流れです.

レジデント1年目はインターンと呼ばれ,日本で行われているスーパーローテートを行います.2−5年目は専門科の研修をみっちり行うシステムです.レジデントの過程が終了すると晴れて専門医試験を受ける資格を得て,試験通過後,専門医としての活動が可能です.希望者はその後,更に専門性の高いフェローシッププログラムにマッチングして1−2年のフェロー研修を行います.

上級医はアテンディングと呼ばれ,その待遇が保証されている一方,責任も大きくなり,レジデントの責任も担保しないといけなくなります.

この立場の違いが変わる日も厳密に決められていて,毎年7月1日から.この日を境に立場と責任が(賠償保険の額も)急激に変わるため,レジデント4-5年目やフェローは死に物狂いで手術に明け暮れる生活だそうです.

よく,日本の学生はアメリカと比べて…,とか,日本の研修医はアメリカと比べて…とかいう批評・批判があったりしますが,システムが違うので一概に比較はできないと思います.ただ,アメリカの医学生やレジデントは非常に優れたコミュニケーション能力と臨床能力を確かに持っていました.日本の学生や研修医ができないという意味では無く,日本より病院の中でやれることが多く,よく訓練されていて,厳しく淘汰されている,という意味です.また,上下ペアにする教育方法が浸透していて,指導する立場と指導される立場が明確です.皆が必ず下の先生を教育するという経験していることはとても重要なことだと思います.

話は少しそれますが,山形大学や兵庫医科大学では整形外科修練医の先生を毎年OTIに短期留学させる試みを行っているようです.言葉の壁はハードですが,ここのレジデントやスタッフはアットホームなのでとても勉強になると思いますし,モチベーションも上がりそうです.ちなみに秋田大学も毎年4月にOTIの外傷コースに若手の先生が約1週間参加し,研鑽を積んでいます.

 

 

 

 

 

 

 

 

左が3rd gradeの医学生.この時期から予診を行い,上級医にチェックを受けます.順にレジデント,長尾先生,ロザリオ先生

 

 

 

 

 

 

 

 

左から長尾正人先生,兵庫医大吉江先生,山形大学金谷先生,筆者

つづく

留学報告⑰ 五十嵐先生,笠間先生 訪問(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

今回はAAOSと五十嵐駿先生,笠間史仁先生訪問

2018年3月6日からアメリカ整形外科学会(AAOS)学術集会がニューオリンズで開催されました.

3月9日に,これから整形外科の仲間に加わって頂く,秋田厚生医療センターで初期研修中の笠間史仁先生,中通総合病院で研修中の五十嵐駿先生のお二人がサンフランシスコを訪問してくれましたのでご報告致します.

 

 

 

 

 

 

 

 

長尾正人先生と

研究スタッフや現地のドクターとも交流し,米国留学の雰囲気の一部を味わって頂きました.その後,食事を含め,サンフランシスコ市内を少しだけ観光して頂きました.

 

 

 

 

 

 

 

 

Facebook本社前

 

 

 

 

 

 

LGBTの聖地,カストロ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フルハウスの舞台(もう分からない人も多いかも)

楽しい時間をありがとうございました.4月から一緒に頑張りましょう.

つづく

留学報告⑯ 清水智弘先生とCHINABASIN(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回はCHINA BASIN見学について

2017年9月1日から9月11日までセットアップのため渡米した際,北海道大学清水智弘先生にホームステイ,銀行口座開設,アパートの契約から野球観戦に至るまで,大変お世話になりました.その清水先生の御高配で,CHINA BASINという施設の見学させて頂きました.

清水先生はこれまで骨粗鬆症,RAと様々な分野に精通しておられる先生で,現在UCSFでは動作解析と画像機器を用いた研究をされております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CHINA BASINは自分のアパートから徒歩で行ける距離にある研究施設とオフィスの共同ビルで,UCSFのDepartmentはEpidemiology,Biostatistics Radiology,Biomedical Imagingが入っています.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1Fにはイメージセンターがあり,high-resolution peripheral quantitative computed tomography (HR-pQCT)が導入されており,研究も盛んです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フロアスペースは広大で整然としており,入り口ではタッチパネルの案内板が出迎えてくれました.

 

 

 

 

 

 

 

 

左が筆者,右が清水先生

 

このような機会を与えて頂いた北海道大学 清水智弘先生にこの場を借りて御礼申し上げます.ありがとうございました.

 

つづく

留学報告⑮  臨床研究について(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回は臨床研究について

私の留学の目的は米国リハビリテーションの臨床研修です.それとともに,臨床研究も行う必要があり,現在進行中であります.

研究の指導医は,Dr, Saam Morshedです.彼はUCSF整形外科の准教授で,外傷を専門としている先生です.統計学に造詣が深く,M.D(Doctor of Medicine),Ph.D(Doctor of Philosophy; 医学博士)のほか,M.P.H(Master of Public Health; 公衆衛生学修士)も取得されている数少ない医師です.そのため,研究内容は大規模多施設での臨床研究を得意とされています.現在も10以上の多施設共同研究を行っており,そのグラントの総額は数億円を超えているそうです….

Dr, Morshedの下,OTIのClinical research部門にお世話になり,臨床研究の立ち上げ,IRB; Institutional Review Board,日本で言う倫理委員会の承認を経て,臨床試験が始まっています.

実際には,OTIでPhysiatristとして勤務されているDr, Karina Rosario,長尾正人先生の助力を頂き,臨床研究を行っています.発表前ですので詳細はお知らせできませんが,アナログ機器とデジタル機器を使った臨床研究を行っております.

週1回の研究ミーティングでは,現在進行中の研究の進捗状況や学会発表のスライドなどを逐一チェックし情報を共有していきます.

研究構想から研究チームの立ち上げまでのスピードがとてつもなく速く,データの管理方法や収集方法まで非常にシステマティックで統制されており,勉強になっています.日本との研究体制の違いも多々あり,うらやましかったり勉強になったりしています.

 

 

 

 

 

 

 

 

リサーチミーティング 左奥がDr,Saam Morshed,左手前がUCバークレーの学生.優秀です.

 

 

 

 

 

 

 

 

左からTgist(研究助手さん),筆者,Poul(ポーランドからのフェロー),Eleni(研究助手さん).いつもお世話になっています.

 

 

 

 

 

 

奥がDr, Karina Rosario,被験者が長尾正人先生 いつもお世話になっております.

 

つづく

留学報告⑧(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回は外来について

長尾正人先生を通じて,整形外科の外来見学を定期的に行っています.

ZSFGHは教育病院でもあるので,ここ独特の診察スタイルがあります.レジデントと医学生が8人くらい,指導医が3−4人いて,最初にレジデントや医学生が問診・診察・所見をとり,指導医に確認後,一緒に診察し説明する,というスタイルです.時間はかかりますが,患者さんも納得されているようなので,教育病院としてしっかりした体制と感じました.1日の外来患者数は新患・再来を合わせて60人前後とのことですので,そこまで多くはありません.そのため,しっかり時間をかけて診察し,説明できている印象です.

日本との違いなどについて,気になったところ,印象を書き出してみます.

 

・Orthopedic doctorとPhysiatrist,PT,OT,NPその他沢山の業種が一緒に外来にいます.チームで動いているということがとても分かりやすい状況ですし,情報の共有やタイムラグも少なくて良いと思います.が,そのまま日本に取り入れるのはかなり厳しそうです….

 

・スタイル:外来は医師が所見を書いたり話し合ったりする狭い小部屋が2つあり,それを囲むように個室の診察室が15以上配置され,医療従事者がその個室を訪れて診察や処置するというスタイルです.

 

 

 

 

 

 

 

上級医が待機する部屋.結構狭いです.この部屋を中心に20室くらいの診察室が取り囲んでいます

 

・一般的な外来の雰囲気:服装は至ってラフです.レジデントは必ずスクラブを着用していますが,白衣やスクラブを着用しない医療従事者も少なくありません.なので,名札がないと患者か医療従事者か分からないことが多々あります.帽子を被っている人もいますし,ネコ耳のカチューシャをつけている人もいます.ハロウィンのときは仮装している人もいますが,特に誰も気にとめていません.入れ墨率も高いです.このあたりはかなり自由で す.

 

・囚人患者:囚人の患者さんも結構きます.映画で見るような上下オレンジ色のジャージを着て足と手に手錠をはめられた患者さんをみて妙に感動しました.訴えは至って普通で,喧嘩して腰が痛い,などです.

 

 

 

 

 

 

 

写真はイメージです.でも本当にこんな感じです.

 

・外来中のアシストは少なく,トリガーポイントなどの注射も準備してくれません.しかし,カルテ記載以外の事務的な業務に関してはクラークさんが行ってくれます.看護師はNP(Nurse practitioner)という診察も処方もできる人が,医師と同様に診療しています.名札が無ければ普通に医者です.

 

・レジデント:概して上級医に対して,レジデントの聞く態度は悪いです(足組んだりはまだしも,足を机に上げたり,普通にご飯を食べたりコーヒー飲んだり…)が,いつも真剣に?聞いています.

 

 

 

 

 

 

 

 

右が指導している長尾正人先生,左がレジデント…

 

・英語が通じないとき(トランスレーター):サンフランシスコは移民率が高く,英語が話せない・通じない人もかなりいます.そんなとき,トランスレーターを通じて診察を行います.主に中国語,スペイン語ですが,いろいろな言語に対応しています.ちなみに日本語はありません.いろんな言語が飛び交っているので,ここは何処の国だろうと分からなくなるときがあります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前のブログにも登場した翻訳機.実際はこの機械よりも電話のスピーカー機能がよく使われています.

 

・長尾正人先生:Physiatristとして勤務されています.Physiatristはリハビリテーション専門医と訳されますが,実情は幅広く,意味合いが異なると思います.長尾先生は筋骨格系を中心とした診療をされていますので,日本での整形外科に近く,EMGや,needle specialistとしてブロックや関節内注射を専門にされています.また,ブロックや関節内注射は別日に手術室で行われており,外来診療中は行っていません.患者さんに対する態度は至って物腰柔らかであり,かつ問題点を明確に提示し,それに対しての解決方法を明快に説明されます.また,レジデントや学生への説明も非常に論理的で分かりやすく,大変勉強になりました.レジデントや同僚ドクターからの信頼も厚く,コンサルテーションが耐えず常に御多忙の様子でした.いつも大変ありがとうございます.

 

つづく