学会レポート」カテゴリーアーカイブ

第48回日本脊椎脊髄病学会 (工藤大輔)

平成31年4月18日〜20日、パシフィコ横浜で開催された第48回日本脊椎脊髄病学会学術集会(波呂浩孝会長)に参加しました。

秋田からは16題の発表があり、手術関連からサルコペニア、ロコモティブシンドローム(ロコモ)、検診など多岐にわたる演題の発表がありました。特にトピックスのLIFやサルコペニア、ロコモに関して議論が活発で、背筋運動、ビタミンDに関する質問も多かったと思います。

講演はいずれも大変興味深く、プログラムの関係上、すべてを拝聴することはかないませんでしたが、私個人としては、札幌医大神経再生医療学、本望教授の「脊髄損傷患者に対する再生医療の実際」がもっとも興味深いご講演の一つでした。会場は立ち見が出るほどの盛況で、日本中の注目の高さがうかがえました。従来、重度の脊髄損傷は治らないという認識でしたが、本望教授がご研究された自家骨髄間葉系幹細胞を経静脈的に投与する方法は、すでに薬価収載されることも発表されている新しい脊髄損傷の治療法です。ご講演では、脊髄損傷および脳梗塞に対する本薬の治療効果を示す数々の動画がご紹介され、比較的投与の直後から手足が動き、喜ばれる患者さんの姿が大変印象的でした。

秋田は日本でもっとも高齢化している地域であり、秋田発の研究が急務であると思います。今後もオール秋田で全国に向けて情報を発信していければと思います。

第62回日本手外科学会学術集会(齋藤光)

2019年4月18、19日に札幌市の札幌コンベンションセンターにて、第62回日本手外科学会学術集会が開催されました。本会の学会長は北海道大学の岩崎倫政教授で、 “Be Ambitious, Be Innovative”のメインテーマのもと、フロンティア精神あふれるシンポジウム、パネルディスカッションが行われました。
Akita Hand Group(AHG)からは6演題が採択され、メンバーがそれぞれ発表してまいりました。千馬誠悦先生からは「陳旧性手指PIP関節側副靭帯損傷に対する装具療法」、伊藤博紀先生からは「秋田大学整形外科関連病院における橈骨遠位端骨折症例数の調査」、白幡毅士先生からは「手指関節拘縮に対する創外固定器による関節受動術」、加賀望先生からは「RA手関節障害に対するSauve-Kapandji法施行後の検討」と「3Dプリンターを用いた手関節装具の作成」、そして私からは「秋田大学整形外科関連病院における橈骨遠位端骨折手術患者の骨粗鬆症治療」について報告させていただきました。手外科分野の手術療法は、手関節鏡の発達とともに進化しており、TFCC損傷や母指CM関節症、リウマチ肘の滑膜切除などは今後、AHG若手メンバーが習得すべき手術手技と思われました。マイクロサージャリーとともに、手関節鏡でも我々はスキルアップする必要があります。

また学会翌日の4月20日には学会主催の春季手外科研修会に市立大森病院の湯浅先生と参加してきました。アドバンスな内容が多く、大変刺激的で最先端の講義を聞くことができました。私事ですが、昨年も本学会に参加しましたがその時は演題発表はありませんでした。次は演題発表できるようにという目標を立てていましたので、それが達成できたことは一つ嬉しく思います。継続して学会で報告できるように、また日整会や将来的には海外学会での発表、英語論文投稿ができるよう、AHGとしてこれからも活動していきたいと思いました。本学会で得られた知識を臨床へ活かせるように、明日からまた精進して参ります。

第31回日本肘関節学会学術集会(齋藤光)

2019年2月8、9日の両日、第31回日本肘関節学会学術集会が小樽において開催されました。会長は肘関節鏡視下手術の世界的なエキスパートである、済生会小樽病院の和田卓郎先生です。学会期間中、北海道は記録的な寒波に覆われ、気温はマイナス13度と凍える寒さでしたが、学会場には肘関節のエキスパートが多数あつまり、熱い議論がかわされました。

秋田大学のAHG(Akita Hand Group)からも6名が参加し、それぞれ演題発表してまいりました。中通総合病院の千馬誠悦先生が「上腕骨通顆骨折後の成績不良例」、成田裕一郎先生が「上腕骨遠位骨端線離開後に上腕骨外側顆骨折を繰り返して内反肘を呈した 1例」、能代厚生医療センターの伊藤博紀先生が「陳旧性Monteggia骨折に対して尺骨骨切り術を行った1例」、由利組合総合病院 白幡毅士先生が「薄筋腱を用いて補強修復した上腕二頭筋筋腹断裂の1例」、秋田大学の湯浅悠介先生が「内反肘に対して矯正骨切り術を行った体操選手の1例」、齋藤が「離断性骨軟骨炎と診断された上腕骨滑車内側骨軟骨骨折偽関節の1例」を発表してまいりました。
本学会では肘関節鏡・テニス肘・野球肘に関する発表が数多くみられました。他にも人工肘関や、エコーによる肘の画像診断、肘周辺の重度外傷に対する治療戦略、小児の肘関節外傷に関する発表等、普段はなかなか得ることができない知識を吸収でき、非常に有意義な2日間でした。

本学会で得た知識を、今後の日常診療、臨床研究へと生かしていきたいと思います。

第45回マイクロサージャリー学会に参加して (湯浅悠介)

2018年12月6日7日、大阪国際交流センターにて第45回マイクロサージャリー学会が開催されました。今年は大阪掖済会病院副院長、静岡理工科大学手微小外科先端医工学講座主任教授の五谷寛之会長が「創新と融合」をテーマに掲げ、学会では様々な分野におけるマイクロサージャリーの発表がありました。

教育研修講演「創外固定とマイクロサージャリーの融合」では、島田洋一教授と松下隆教授のお二方がご講演されました。松下教授は、Ilizarov創外固定を用いた仮骨延長法、骨成熟を促すためのダイナマイゼーション、偽関節部・変形癒合部におけるChipping法の有用性について、具体的な症例を提示していただきながらご講演されました。マイクロサージャリー学会に参加しながら、Ilizarov創外固定の有用性を再認識するという有意義な時間を過ごさせていただきました。島田教授は、秋田で取り組んでいるマイクロサージャリーとIlizarov創外固定の融合についてご講演されました。同じ骨欠損であっても、マイクロサージャリーでの治療がBestか、Ilizarov創外固定での治療がBestかは症例ごとに違い、整形外科医はどちらの治療も選択できるように鍛錬を積む必要がある。術者が得意とする技術を用いて治療するのではなく、その患者にとってなにがBestな治療かを考え選択することが重要であると、お話しされました。日々の鍛錬を怠らず、Bestな治療を提供できるよう邁進していこうと改めて感じました。

シンポジウムは四肢重度外傷やReopeによる皮弁救済時の工夫、長管骨骨欠損などをテーマに開かれました。野坂光司先生は「長管骨骨欠損、仮骨延長VS血管柄付き骨移植」のシンポジストとして招かれ、「Ilizarov創外固定によるdistraction osteogenesisの意義」と題しご講演されました。

秋田は今後も、マイクロサージャリーとIlizarov創外固定の融合をテーマに様々な難治外傷例に取り組んでいきます。未熟者ではございますが、私も秋田における外傷学の発展へ貢献できるよう努めていきたいと思います。

第28回日本リウマチ学会北海道・東北支部学術集会に参加して(河野哲也)

H30.11.17〜11.18 北海道大学学術交流会館にて開催されました「第28回日本リウマチ学会北海道・東北支部学術集会」に参加しました.参加者は,市立秋田総合病院:柏倉剛先生,平鹿総合病院:小林志先生,櫻場乾先生,中通総合病院:杉村祐介先生,私の5人で口演1題,ポスター4題でした.
本会より,若手リウマチ医奨励賞が設けられ,杉村祐介先生が見事受賞されました!「生物学的製剤使用関節リウマチ患者における手術後感染の検討」の題でご発表され,AORA registry内の生物学的製剤使用患者において,PSL使用によるさらなる免疫能低下や糖尿病の合併が術後感染に影響を与える可能性があり,注意が必要なことをご発表されました.杉村先生誠におめでとうございます!
抄録集を見ますと,リウマチ関連の発表において,内科・整形外科・リハビリテーション科と多岐に渡る科からの発表があり,やはりリウマチ診療は総合的な視野が必要であり,臨床的な面に限らず基礎的な面に関しても勉強が必要と強く感じました.今後も研鑽を積んでいきたいと思います.

第26回日本腰痛学会(本郷道生)

このたび,浜松において10月26日・27日の2日間行われた第26回日本腰痛学会に参加しました.浜松医科大学整形外科の松山幸弘教授が会長をされ,「腰痛の真理追究と明るい未来へ」をテーマとし,指定演題27題と公募演題212題の発表がありました.日程が日本骨粗鬆症学会と重なったこともあり,秋田からは平鹿総合病院の櫻場乾先生と私の2名が参加しました.
浜松医大整形といえば脊柱変形の印象が強いのですが,シンポジウムでは慢性腰痛,非特異的腰痛などに関する4つのテーマが取り上げられていました.文化講演では,ハンマー投げの元オリンピック選手である室伏由佳さんが登壇され,腰痛の苦しみを乗り越え,良き主治医に出会い,手術も経験しつつ選手生活を全うした大変印象に残るお話を拝聴しました.腰下肢痛に対する超音波解剖学のハンズオンセミナーが,同じテーマで二日にわたり開催され,学会前に既に満員で私は参加できませんでしたが,注目の分野であると感じました.ランチョンセミナーも二回拝聴しましたが,さすが浜松だけに二日ともうなぎ弁当でした.腰痛に対する運動療法のディベートでは,聴衆も参加するシステムにより,第一人者である東大の松平浩先生と神戸大の松原貴子先生が,それぞれの主張を時間内でプレゼンして勝ち負けを判定しますが,その結果が刻々と変化し,目が離せないセッションでした.私自身の発表は,高齢女性の職歴と腰痛,脊柱変形との関連についてでしたが,3名のご高名な先生から今後の研究に役立つようなご質問やコメントをいただきました.また運動療法のセッションで座長を務めさせていただきましたが,この分野は理学療法士など多方面の先生も参加されて活発な議論が行われました.運動療法はエビデンスのさらなる蓄積が必要であることを再認識させられました.今後の腰痛学会は,来年は杏林大学の市村正一教授が,2020年は札幌医大の山下敏彦教授が会長をされるとのことです.今後またこの学会で発表できるように研鑽を深めたいと思います.

International Congress of Osteoporosis(ICO)2018 Seoulに参加して (長幡樹)

2018年10月13日、14日にソウル中心部から少し南の龍山地区でICO2018が開催され宮腰尚久准教授、粕川雄司先生と3人で参加してきました。龍山地区は観光地というよりも電化製品街であり、日本でいう所に秋葉原のような場所でした(メイド喫茶などはありません)。あまり日本語、英語が伝わらない飲食店も多く会話に苦労することも多々ありましたが大変貴重な国際交流ができたと思います。日が落ちるとやや肌寒さを感じましたが、天気には恵まれ秋晴れの綺麗な2日間を過ごしました。

学会では宮腰准教授はシンポジウムの演者、また座長を、粕川先生は口演発表、そして自分はポスター発表を行いました。この学会はアジア圏を中心とした骨粗鬆症の学会であり、ASBMRのような英語に慣れた発表だけでなく、英語をお互いに積極的に聞こう話そうとしており、とてもアットホームな学会でした。とはいえ、その中でも自分の英語の拙さをひしひしと感じさせられました。宮腰先生は脆弱性椎体骨折と骨粗鬆症について講演され、ディスカッションでも最も盛り上がった内容でした。また粕川先生は骨粗鬆症と椎体骨折、骨代謝マーカーの関係について発表しました。会の最後には日本人で唯一最優秀演題賞を受賞されました。おめでとうございます。
あまり国際的な交流を持っていない自分にとってはとても刺激的で勉強になる学会でした。懇親会でも、香港の外傷を専門にされている先生に外傷センターの状況や、治療などの話をしていただいたり、宮腰先生・粕川先生の知り合いである先生がたとも話をさせてもらう機会があり、大変有意義に過ごせた学会でした。今回参加の機会を下さった島田洋一教授・宮腰尚久准教授、また大学の留守中に工面して下さった先生がた大変ありがとうございました。

 

左から宮腰尚久准教授、Dr. Yoon-Sok Chung、粕川雄司先生

国際人工関節学会 International Society for Technology in Arthroplasty(ISTA)参加報告 (河野哲也)

H30.10.11〜10.13 ロンドンにて開催されました,International Society for Technology in Arthroplasty(ISTA)に,AHRGから秋田厚生医療センターの小西奈津雄先生,秋田大学の木島泰明先生と私の3名で参加しました.
3名ともoralでの発表です.
小西先生は「Clinical Results of Total Hip Arthroplasty for the Rheumatoid Arthritis Patients.」の題で,RA患者に対する豊富なTHAのご経験から,THA成績および注意点についてご発表されました.
私は「Comparison of the Incidence of Venous Thromboembolism Following Total Hip Arthroplasty With Tendon-Preserving Approaches and a Direct Lateral Approach」の題で,MISであるDAAにおいても導入初期にはVTEの発生に留意する必要がある可能性について発表させていただきました.
木島先生は「Changes in Invasiveness and Latent Infection Rate Associated With Switching in Approach of Total Hip Replacement」の題で,側方・後方アプローチからDAA・OCMアプローチに変更した際の手術侵襲等の変化についてご発表されました.また,「Risk Factors for Infection After Total Knee Replacement: Analysis of Patients Who Received Surgery on Same Day by Same Surgeons at a Single Institution」として,TKAにおける両側同時手術や手術順番での感染の危険性についてご発表されました.特に後者はメイン会場での発表であり,外国人医師と肩を並べて発表される姿は輝いて見えました.

我々以外にも日本からの演題も多く,他大学の先生とも交流することができ,大変いい機会となりました.また,トラベリングフェローでロンドンにいらした工藤大輔先生に会うことができ,プチ同門会@ロンドンも開催しました.

初めてのロンドンでしたが,秋田よりもカラッとして過しやすく,多くの歴史的な建物が並んだ美しい街並みでした.残念ながら有名なビッグベンは改築中だったため,その姿を拝むことができませんでしたが,次の機会の楽しみにしたいと思います.
毎度ながら英語能力の向上を誓った帰路,この情熱が消えないうちに,努力していきたいと思います.
最後に,日常業務でご多忙の中,海外学会に参加させていただきました各病院の先生に,この場をお借りして深謝申し上げます.

12th Asia Pacific Musculo Skeletal Tumor Society(APMSTS) (土江博幸)

この度、10月4日~7日にかけて、インドのジャイプールで行われた、第12回APMSTSに単身参加してきました。この学会は2年に1回行われる、アジア・環太平洋地域の骨軟部腫瘍の学会であり、今回初めて演題を出してみました。メイン会場では、各国から一流どころの先生が自身の経験を発表され、日本からも金沢大学の土屋教授や山本教授などが発表されており、自身のやっている事がまだまだだな、といつもながら思い知らされました。自身は2演題出してみましたが、どちらe-posterでの採択でした。次回はeではなく普通のポスターくらいにはならねば、と刺激を受けました。
今回、学会場がジャイプールの町の中心から18kmも離れた超高級ホテルで行われたのですが、一泊2万円程する(インドの中級ホテルで通常一泊4000円くらい…)ため、町のホテルに宿泊し通う事に。ホテルのフロントにタクシーを御願いしようとすると、「タクシーは高いからオートリキシャをそこらで捕まえた方がいい」と勧められたため、そうしてみる。ちなみにオートリキシャとは、オート3輪のタクシーで、庶民のタクシーのようなやつである。メーターはついているが全く使っておらず、初めに値段交渉をして乗るというスタイル。服装、目的地から多少ふっかけられているのを感じながらも相場からは200円程度の割り増しくらいだからまあいいかと思い会場へ(それでもタクシーの1/2~2/3くらいの料金)。しかしこのオートリキシャ、スピードがあまり出ず、到着まで結構時間がかかってしまう…。
今まで趣味でアフリカや南米など色々な国に行き、健康には特に問題はなかったのだが、実はインド滞在中、体調がイマイチで、学会も休み休みという感じに…。ちなみに、日本に帰ってから体調が増悪したので採血をしてみたらCRPが16まで上がっていた…。肝機能も少し上がっており、この記事を書いている現在、A型肝炎の検査結果待ちである(A型肝炎にしては潜伏期が短いので違う事を期待しているのだが)。国によってはホテル代をケチらない事も大事だという事を学ばせて頂いた…。

学会場のホテル入口

e-posterは展示されたモニターで表示されており、クリックすると内容を見る事が出来る

会場入り口。自分1人なので一緒に写った写真は撮影できず…。

学会場に向かうオートリキシャからの風景

第33回 日本整形外科学会基礎学術総会 (飯田純平)

10月11日・12日の2日間、第33回 日本整形外科学会基礎学術総会に参加・発表して参りました
本学会は奈良県立医科大学整形外科学教室の田中康仁教授を会長とし「知の集結 やまとぢから」をテーマとしております。
歌手の歌枕直美さんの国歌斉唱、会長の田中教授の会長講演を皮きりに学会はスタートしました。

当科からは島田洋一教授、粕川講師、岩本先生、長幡先生、湯浅

先生、私の6名で参加し、それぞれが自らの臨床・基礎研究について発表し、活発な討議を行いました。特に長幡先生の演題である「povidone-iodineまたはethanol処置後の卵巣摘出ラット脛骨骨切りへのハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体の骨形成の効果」は口演で採択され、堂々と発表・質疑応答に対応しており「知の集結 あきたぢから」を実感しました。

また、私自身は自らの研究課題である「脊椎外科における医工連携」のセッションを拝聴することもでき、他大学でのバイオメカニクス研究や若手の先生方ががんばっている姿を見て感銘を受けました。
招待講演では東大総合研究博物館、遠藤秀紀教授のご講演「からだの歴史を読む-5億年の進化史から家畜の人為淘汰まで-」が教科書的な整形外科学ではなく、人類の進化やさまざまな自然史からみた「からだ」の本質に迫っており、大変興味深かったです。この講演が行われた第1会場は奈良春日野国際フォーラム 甍 内にある能楽ホールを使用しておりました。舞台は、尾州檜と台湾檜で作られた格式高いものであり奈良県が能楽発症の地であることを実感しました。

今回学会に参加して得た知識・経験を礎にさらに精進して参りたいと思います。

学会移動中に遭遇した鹿

口演で発表する長幡先生