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第29回秋田県スポーツ医学研究会 (木村竜太)

2022年2月19日、第29回秋田県スポーツ医学研究会がオンライン開催されました。

下記、プログラムからの転載になりますが、それぞれがとても興味深い内容ばかりで、スポーツの幅広さを実感いたしました。ご講演いただきましたシンポジストの先生方、誠にありがとうございました。

【シンポジウム1】スペシャリストからの提言

1)「SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体価」

富樫 賢 先生 (あきた 腎・膠原病・リウマチクリニック)

2)「アスリートと生活習慣病」

森井 宰 先生 (秋田大学 糖尿病・内分泌内科)

3)「秋田県医師会「明日はきっといい日になる」ロコモダンスプロジェクト」

高橋 郁子 先生 (秋田大学 小児科)

4)「秋田県女性ジュニアアスリートと女性医学指導の実態」

小野寺 洋平 先生 (秋田大学 産婦科)

【シンポジウム2】障がいを超えた地域スポーツの取り組み

  • 「スポーツを通した子どもたちとの関わり」

佐藤 理枝子 先生 (秋田県立医療療育センター リハリハビリテーション部門)

2)「eスポーツでつくる新たな参加の形」

若狭 利伸 先生 (社会福祉法人北杜 障がい者支援施設ほくと)

3)「義足スポーツサークルAmbeinsについて-スポーツ活動からみる義足の可能性-」

佐藤 陽介 先生 (秋田厚生医療センター リハビリテーション科)

4) 「パラアスリートサポートの最前線 〜 Tokyo 2020 Paralympic Games 活動報告 〜」

藤井 昌 先生 (市立秋田総合病院 整形外科)

特別講演1は、「最期まで自分の脚で歩くためのスポーツ疫学研究~こどもからトップアスリートまで~」と題して、千葉大学大学院国際学術研究院准教授(千葉大学大学院 医学研究院 整形外科学)山口智志先生にご講演いただきました。

山口先生は整形外科医でありながら、教育学部関連のご所属ということで、疫学をもとにしたアプローチを主体にご講演いただきました。ロコモーティブシンドロームへの介入の重要性についてデータを元にご説明いただき、改めて積極的な介入の必要を実感させていただきました。また、ヘルスリテラシーを高めるという点について、インターネット上に誤情報が多くあるからこそ大切な介入点だと思いました。アキレス腱の治療は日本は手術が増加傾向、子供は身体が硬いのが普通、扁平足は痛みの原因でない、アスリートのトランスジェンダーなど多くの話題で、疫学調査から得られる学びをご教授いただきました。

また、東京オリンピック2020で金メダル獲得のスケートボード種目の、裏側のお話も興味深く、テレビ中継の裏ではかなりのご苦労があったことを知ることができました。

スポーツ障害について、疫学調査から介入を始めるというお考え、とても素晴らしくぜひ秋田でも取り組みたいと思います。

特別講演2は、「総合診療と喘息・スポーツ」と題して、秋田大学大学院医学系研究科 総合診療・検査診断学講座 教授 植木 重治先生にご講演いただきました。

喘息の基本的な知識から、IgEが日本で発見された(石坂公成先生)こと、IgEが関係しない喘息(非アトピー型喘息、成人発症)があり、気道の上皮障害などが原因で生じること、整形外科で多用するNSAIDsに関連するアスピリン喘息(N―ERD)について、アスピリンに対するアレルギーではない=アレルギー学的検査では診断不能、問診が重要など、なかなかブラッシュアップできずにいた知識について、とてもわかりやすくご教授いただきました。

アスリートの喘息有症頻度が一般より高いこともあり、プレーへの影響がどうなのか気になっていたのですが、オリンピックのメダリストは参加者の中でも喘息有症率が高いということで、コントロールできているとプレーに影響しないということで、アスリートの支えになる内容でした。

また、総合診療部で行われている渡航外来では、英文診断書・証明書の作成や、ワクチン接種、マラリアや高山病予防薬などに取り組まれていらっしゃり、スポーツ選手にも大切な存在が身近にあることを知りました。

講演中、植木先生が不意に発せられた、「スポーツを通して全人的にみる」という表現が素敵だなと思いました。スポーツが好きな医療者は、スポーツを通してその人そのものをみたいのかもしれません。

最後に、秋田県スポーツ医学研究会では、パラスポーツ推進ワーキンググループを作り、パラスポーツ(障がい者スポーツ)の普及にも取り組んでまいります。

第5回整形外科若手セミナー開催報告  (東海林諒)

2022/2/19に第5回となる整形外科若手セミナーをオンライン開催させていただきました。

今年は学生や研修医の整形外科に対する敷居を下げ、より近い存在になることを目標に、例年とは一味違った「勧誘」をテーマとしました。Covid-19の影響もあり、ハンズオン開催は困難でしたが、整形外科救急を中心に5題の発表をいただきました。

原田先生からは整形外科救急として防ぎえる死をいかに防ぐか、膨大なボリュームで発表いただきました。五十嵐先生からは、よく見る骨折のレントゲン所見についてイメージの湧きやすい発表を、自分は整形外科の呼び方を発表させていただきました。光先生からは外固定の仕方として救急でのシーネの当て方を中心にためになる発表を、笠間先生からは若手に必要な創傷治癒と縫合について詳しく勉強させていただきました。

本会開催にあたって、主幹である我々の学年は2名であるため力不足は否めず、演者として原田先生、笠間先生、五十嵐先生にご協力いただきました。また各病院への声かけは、歴代の大先輩や後輩の皆さんに大変ご尽力いただきました。

結果として最大人数50名、学生さんと研修医の先生で概算25名ほどの皆さんに拝聴頂けました(プロジェクター使用での複数名参加も考慮するとさらに多いかと思われます)。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました。またこのような会を開催する機会をいただけた宮腰尚久教授と本会の立ち上げに携わった木村竜太先生に感謝申し上げます。

この会がきっかけで整形外科に興味を持つ若手が増えること、整形外科のイメージがより明るくなることを心から願っております。

第3回秋田県リウマチ治療講演会 (原田俊太郎)

秋田はまだまだ冬の寒さ厳しく、雪深い中ではありますが2022年2月15日に「第3回秋田県リウマチ治療講演会」がオンライン開催されました。

Lectureでは平鹿総合病院小林志先生から「AORA registryにおけるサリルマブ投与例の調査」を御講演いただきました。サリルマブを用いることでの他剤減量など、他科と併診が多く内服薬の多い高齢者における有用性は大変勉強になりました。超高齢県である秋田県ならではのデータに基づいたAORA groupの先生方の発表は毎回、大変興味深く拝聴させていただいております。

Special Lectureでは岡山大学学術研究院医薬学域准教授の西田圭一郎先生から「関節リウマチに対する外科的治療のピットフォール」をご講演いただきました。Champion症例の発表や教科書は世の中にたくさんありますが、top surgeonが一度うまくいかなかった際にどのようにrecoveryするかという本当に貴重な内容でした。人工肘・手関節から、人工関節周囲骨折に至るまで豊富な画像や手術動画を交えた実臨床に即した明日からの我々の診療に役立つ情報満載のご講演でした。

講演後はフロアからも質問が殺到し、秋田の深い雪を溶かすほどに大変な盛り上がりを見せておりました。私自身も多くのことを学ばせていただき、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。今回学んだ内容を今後の診療、研究に役立て行きたいと思います。

第7回しらかみ疼痛セミナー(五十嵐駿)

2022年2月9日、第7回しらかみ疼痛セミナーがオンラインで開催されました。

一般演題1では大曲厚生医療センター整形外科の岩本陽輔先生から「大転子部痛症候群における鏡視所見と病態の検討」と題してご発表いただきました。近年、股関節周囲の痛みの原因として注目されている大転子部痛症候群に関して、実際の術中の画像所見や、これまでご経験された症例のデータを分かりやすく説明して頂きました。また、大転子部痛症候群主体が大転子部滑液包炎であるといった最新の知見も教えて頂きました。

一般演題2では当教室の工藤大輔先生から「四肢体幹筋肉量が脊椎矢状面アライメントに与える影響」と題してご発表いただきました。脊椎のアライメントに与える因子や、サルコペニアと腰痛の関連などに関して自験例での検討結果や過去の報告などを詳細に報告して頂きました。脊椎のアライメントにおいては筋量よりも背筋力が重要な因子となりうることをお示し頂きました。

特別講演では秋田大学大学院麻酔・蘇生・疼痛管理学講座准教授の木村哲先生から「慢性疼痛診療における多職種連携」と題してご講演頂きました。

初めに痛みの概念、定義、種類、生理学的な仕組みといった基礎的なことから詳細に解説して頂きました。その中で、以前は心因性疼痛と呼ばれていた疼痛が、近年Nociplasticな疼痛(痛覚変調性疼痛)と名称が変更になったという最新のトピックスがありました。Nociplasticな疼痛とは痛覚伝導路の可塑的変化で生じる痛み、痛覚の機能的異常による痛みを指し、整形外科医にも必須な知識と思われました。薬物治療に関しては抗うつ薬、抗てんかん薬、オピオイドの生理学といった基礎的な内容から実際の適応症例などについて、また、神経ブロックに関しては、その利点や注意点、使い分け、適応の限界について詳細にご説明頂きました。最後に慢性化する疼痛に対しては生物学的要因のみではなく社会的要因、心理的要因も視野に入れることが重要であること、多職種が連携をとりあう集学的治療が今後必要になることを解説して頂きました。疼痛を訴える患者を診ることが多い整形外科医にとっても大変ためになるご講演でした。

今後、痛みで困っている患者さんに対しては、整形外科医で適切に治療していくことはもちろんのこと、治療に難渋する場合には麻酔科をはじめ多職種と連携し、より効果的な治療を行なっていけるように心がけることが重要と思います。

第43回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会 基礎部門優秀賞選出の喜び(五十嵐駿)

東北骨代謝・骨粗鬆症研究会は昨年より昨今の新型コロナウイルスの情勢を踏まえ完全オンライン開催となっておりましたが、今年の参加者は100人を超え、専門の科を跨いだ質疑応答や議論によりオンラインにも関わらず例年以上の盛り上がりとなりました。

当教室では自分と原田俊太郎先生と野坂光司講師から、関連病院では秋田労災病院の奥山幸一郎院長、中通総合病院の湯浅悠介先生、由利組合総合病院の三田基樹先生からの発表がありました。

ミニレクチャーでは、新潟リハビリテーション病院整形外科の山本智章先生から、日本における骨形態計測学の歴史と基礎についてご講演頂き、私を含めた大学院生には特にためになるレクチャーとなりました。

特別講演では、りんくう総合医療センター腎臓内科主任部長兼血液浄化センター長の重松 隆先生から「慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常と骨粗鬆症の接点」という題でご講演頂きました。慢性腎臓病患者に対する骨粗鬆症治療で注意すべき点や、今後の展望などについて詳細にご講演頂き大変勉強させて頂きました。

また、私個人としては現在大学院で研究している内容に直接的にリンクすることであり大変有意義な時間でした。

そして今回、私の演題である「アデニン誘発型慢性腎臓病モデルラットにおけるエテルカルセチドとテリパラチドの骨に対する効果」が一般演題基礎部門で優秀賞に選出されました。

近年、高齢化とともに慢性腎臓病患者や透析患者は増加しています。本研究では、慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)や二次性副甲状腺機能亢進症に対する治療薬であるカルシウム受容体作動薬のエテルカルセチドと、骨粗鬆症治療薬であるテリパラチドとの併用効果を、ラットを用いた動物実験で検討しました。慢性腎臓病患者では、ステージが進行期に至ると骨粗鬆症治療に使用できる薬剤が制限されるといった問題点があり、高齢者に多く骨折リスクの高い慢性腎臓病患者に対して十分な骨粗鬆症治療ができないこと、治療の選択肢が限定されていることは今後の課題と言えます。

本研究は現在使用の制限のあるCKD患者に対するテリパラチドの効果を検討し、今後の慢性腎臓病患者や透析患者に対する骨粗鬆症治療の選択肢に新しい可能性を提案することを目的としております。

そのような背景のもと本研究を開始し、その成果が由緒ある本学会において評価されたことは至上の喜びです。

また、今回本教室の野坂光司講師も臨床部門で優秀賞に選出されております。大変おめでとうございます。骨代謝を専門とされる宮腰尚久教授の新体制が始まったばかりの当教室において、大変喜ばしいニュースとなったのではないでしょうか。

今回受賞できたのは、宮腰教授をはじめ、骨代謝グループの先生方のご指導と、大学院生、実験助手の工藤さん、実験に関わる全ての方々のご協力のおかげであります。皆様を代表して頂いた賞であり、この場をお借りして改めて皆様に深く感謝申し上げます。今後はさらに研究を続け、その成果を国内外での学会発表や、論文として世に送り出すために今後も精進して参ります。今後ともご指導の程何卒よろしくお願い申し上げます。

整形外科書道部部長、齊藤英知先生の作品が「第44回瀾の会書展」に展示されました(2022年1月21―23日アトリオン2F美術展示室)

2021年10月から宮腰尚久先生が秋田大学大学院整形外科学教室の教授にご就任され、秋田大学整形外科学教室開闢以来、初の文化部である「書道部」が設立されることになりました。この度、初代部長に選出されました齊藤英知です。書道部の活動指針として「本書道部の目的は、文化的な活動「書」を通じて人間の尊重と人格の形成を育み、整形外科への学生の勧誘とその育成すること」と定めました。

なぜ、書道を始めようと決心したかといえば、現在47歳となるまでスポーツと運動器疾患に関わる診療を行って参りましたが、何か芸術的素養も研鑽したいという思いを以前からずっと抱いておりました。そこで、以前からご縁がありました長沼雅彦先生(秋田大学名誉教授、書道、現秋田県書道連盟理事長)に2021年9月より師事することに致しました。

書の練習は、週1回、お手本を頂き、週末の時間のある時に集中して書くことしかできませんでしたが、この度、初めての作品を本書展に展示して頂けたということで非常に嬉しく、また、普段とは違った達成感を得ることができました。

展示していただいた作品は2点です。いずれも長沼雅彦名誉教授にお手本を頂き書き上げました。

作品解説

作品1 「池春芳竹合庭午落花閑」いけはるにしてほうそうがっしていごにしてらっかかんなり(池のほとりは春めいて芳しい草葉は繁り、ちょうど昼下がりに花が静かに散り落ちている)

明代の易恒という詩人の作品のようです。フォントは隷書といって後漢の時代に形作られた書体で、波磔 (はたく)と言って、波のようにうねって見える線が特徴で、一文字一波磔というルールがあります。

作品2 「人盡楽」ひとたのしみをつくす(この3文字の意味は、人それぞれ感じることは異なると思いましたが、私は、コロナ禍の閉塞した世の中で、この2年間、いろいろと不自由で我慢する生活を強いられてきた中で、唯一、自分が楽しいと思えることを行い盡すことで、自らの魂が自ずと救われる、という意味に捉えました。)

作品の制作・出展後の感想

何か作品を作るにはある一定の情熱(エネルギー)が必要でした。書にむかっている間は、たとえ数時間でも集中し無になることができました。多忙ではありましたが、生活に一定の潤いや豊かさを与えてくれました。そのことがまた周囲に人々に活力をあたえたように思えました。書展をわざわざ見に来てくれた医学部の学生さんもいたと伺いました。ぜひ整形外科(書道部)を選択して欲しいところです。次回の出品は4月と10月を予定しております。部員はいつも募集中です。最後に、一言付け加えますと、秋田県の習字教育では、書友社という会社から毎月出版されている「書友」という雑誌があり、退職された教職員の先生方が制作し、この本を元に現役の教員が小・中学生に教育されてきました。自分もよくこの雑誌をみて育ちました。雑誌「書友」では、優秀作品が写真付きで掲載され、同級生なのにすごく上手な字を書く人がいるんだなと思った記憶があります。10級からはじまり、昇段していきます。10段まで昇段すると最後は「天」「地」「人」の位があり、「天」は最上級者のみが与えられる「書友」誌上最優秀の証でもあります。宮腰尚久教授は「天」まで至ったと伺い知りました。宮腰尚久教授は、秋田大学整形外科書道部の顧問でもあります。年末の書道練習会では、40年ぶりに筆をとり、一発勝負の書とのことでしたが、その運筆を見てシビれました。(齊藤英知)

第31回日本リウマチ学会北海道・東北支部学術集会 若手リウマチ医奨励賞受賞者セッション 優秀賞受賞報告 (五十嵐駿)

2022年1月15日に行われた第31回日本リウマチ学会北海道・東北支部学術集会の若手リウマチ医奨励賞受賞者セッションで私の演題が優秀賞に選出されました。

私の演題は「関節リウマチ患者における残存症状とロコモ25スコアおよびロコモ度との関連」であり、近年のトピックスである関節リウマチ患者の残存症状(薬剤による治療が十分行われているのにも関わらず残存してしまう痛みや倦怠感など)と、ロコモティブシンドロームの評価方法であるロコも25の点数や進行度との関連を調査したものです。

関節リウマチ患者はロコモティブシンドロームの原因疾患の一つでありますが、今回の研究により残存症状を認めるリウマチ患者はロコモティブシンドロームの合併が多く、リハビリテーションの介入が効果的となる可能性を提示致しました。

今後高齢化により高齢リウマチ患者に対する治療方針や、ロコモティブシンドロームへの取り組みの必要性は増していくと考えられます。そのような背景のもと本研究を開始し、その成果が由緒ある本学会において評価されたことは至上の喜びです。

宮腰教授をはじめ、AORAの先生方のご指導とご協力により私が代表して受賞できた賞だと思います。この場を借り、改めて皆様に感謝申し上げます。

今後はさらに研究を続け、その成果を論文として世に送り出すために今後も頑張ります。今後ともご指導何卒よろしくお願いいたします。

第15回東北MISt研究会 Best Discusser Award受賞報告 (木村竜太)

2022年1月23日、第15回東北MIST研究会が、当番世話人である福島県立医科大学ふたば救急総合医療支援センター兼整形外科学講座 渡邉和之先生のもとWeb開催されました。

前日の東北脊椎外科研究会に続いて、web開催です。

MIStという単語は、「Minimally Invasive Spinal Treatment」の略で、日本語では「最小侵襲脊椎治療」と言われます。

脊椎治療を、患者さんに、医療者に、そして社会にやさしい治療にできるよう考える場となっています。

秋田からは工藤大輔先生が「経皮的 self-tapping 椎弓根スクリューの安全性の検討 」を、私が「若手整形外科医の超音波ガイド下頚椎神経根ブロック習得の取り組み 」を発表いたしました。本演題は当大学の笠間史仁先生が企画してくれたものを、一緒にまとめたものになります。頚椎神経根ブロックも超音波ガイド下に行うことで、多くの患者さんに対して、安全で有益な治療を提供できていると感じています。超音波ガイド下神経ブロックを、整形外科医全員が行える安全で有効な手技に昇華させていけるよう、今後もハンズオンセミナーなどを定期的に継続してまいります。

特別講演は香川県立中央病院 整形外科 部長 生熊 久敬 先生から『 脊椎側臥位手術(single position surgery)の適応とコツ そして落とし穴について ( 骨粗鬆症例を含めて)』 と題してご講演いただきました。

側臥位手術は、LLIFと呼ばれる側方進入手術や、びまん性特発性骨増殖症(DISH)の椎体骨折などに有用と聞いていましたが、生熊先生の取り組みは、そのさらに何歩も先を行かれるような内容でした。安全に行うため、ナビゲーションの必要性もあると思いますが、ぜひ秋田でも取り組んでいきたい手術です。

また本会では優秀演題としてBest Presentation Awardがあり、今回「テリパラチドの椎弓根皮質骨・椎体皮質骨に対する影響 : 腰椎固定術患者における縦断的 CT 解析」 新潟大学の田中裕貴先生と、「DISHを伴う椎体骨折における、メイフィールド三点固定器を用いた体位の工夫 -前方開大予防、整復の試み-」 福島県立医科大学の小林洋先生が受賞されました。おめでとうございます。

もう1つの賞として、会で一番質問をした人に贈られるBest Discusser Awardがあり、今回私が頂戴することができました。本研究会は、脊椎外科医を志したきっかけの会であり、このような賞を頂戴できたことをとても嬉しく思います。

大変な状況で、中止される地方MISt研究会もある中、開催いただきました渡邉先生はじめ、関係の皆様に御礼申し上げます。

令和3年度整佑会総会・第17回整佑会特別講演会(佐藤貴洋)

2021年12月11日に秋田大学整形外科学講座同門会であります、令和3年度整佑会総会および第17回整佑会特別講演会がオンラインで開催されました.毎年この後に大忘年会が開かれているのですが,昨今のコロナ渦で2年連続のオンライン開催となりました.

早く収束し盛大に開かれる日を心待ちにしております.

今回は総会の中で新入会員お二人の御挨拶がありました.

現在整形外科1年で町立羽後病院での後期研修を頑張っている中西真奈美先生と,現在市立秋田総合病院で研修されている久田朱里先生でした.久田先生はすでに整佑会への入会をしている石垣先生と同期で来年度から整形外科1年目となります.今後もより一層の活躍を期待しております.お二人から今後の抱負を聞かせて頂きました.

これからも一緒に頑張っていきましょう!

第21回整佑会奨励賞は秋田労災病院佐藤千晶先生と,市立角館総合病院三浦隆徳先生が受賞されました.

佐藤千晶先生からは「卵巣摘出,尾部懸垂ラットにおけるテリパラチドと有酸素運動の骨,筋肉と,脂肪に対する効果」,三浦隆徳先生からは「Association between global sagittal malalignment and increasing hip joint contact force, analyzed by a novel musculoskeletal modeling system」という内容で御講演頂き,いずれも臨床へと直結しうる研究内容でした.お二人とも大学院で御研究された内容が実を結んだ結果で,素晴らしい御発表でした.大学院の後輩として先輩方の御活躍はとても誇らしく思い,また自分達の研究の励みにもなります.本当におめでとうございます.

そして,特別講演会では秋田大学整形外科木島泰明先生と,大曲厚生医療センター阿部利樹先生からご講演をいただきました.

 まず,木島泰明先生のプレゼンテーションは「シン・察所見から考えるコ(゛)関節の痛みーPain-demicに備えてー」という題名で,題名からキャッチーな印象ですが,内容構成もキャッチ―で,ウィットに富んだ引き込まれるプレゼンテーションでした.内容も木島先生が専門にされている股関節以外に,肩痛,膝痛,腰痛まで痛みの原因に関する御研究の足跡を披露頂きました.AHRGを代表する研究であるAkita Area分類や,さらにはシン・Area分類に関してはその研究に行き着くまでの経緯も披露頂きました.ご自分の研究だけでなくAHRGメンバーの研究もご紹介頂き,木島先生のプレゼンテーション約20分に先生自身の足跡だけでなくAHRGメンバーの功績も詰め込まれており非常に有意義な内容でした.そして,来るPain-demicに備えて我々も身を引き締めて準備していきたいと思います.木島先生,流石です!!

 

続いて,阿部利樹先生からは「脊椎外科医として思うこと」と題して経験豊富な利樹先生が,これまでどういったことを考えて臨床をなされ,現在どういったことをお考えなのかお話頂きました.まず,PLIFという脊椎外科医以外では尻込みしてしまうような手術も,実は脊椎外科の基本であり,むしろPLIFをできる〇〇外科医を目指そうという画期的な考え方でした.実際阿部利樹先生とともに働いている脊椎外科以外の先生方でもPLIFを執刀されており,非常に教育的な姿勢がわかりました.また骨粗鬆症性椎体骨折に対する手術に関しては,これまで先生が数々のご経験をされ様々お考えになられていたことから,現在のBKPという手術に辿り着いたその道筋をお話頂きました.BKPはそれだけ価値のある手術であることを再確認できました.最後に先生が大曲厚生医療センター整形外科の新体制として赴任され,その手腕から現在は県内屈指の整形外科チームへと成長させた,その素晴らしいご功績の裏側をご教示頂きました.今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます.

 オンライン開催ではありましたが出席者は100人を超え,素晴らしい会となりました.次回こそは,現地ができることを祈っております.

第12回秋田県足の外科創外固定研究会 (岡本憲人)

2021年12月4日に第12回秋田県足の外科・創外固定研究会がオンライン開催されました。

一般演題はそれぞれ,秋田労災病院浅香康人先生,秋田大学原田俊太郎先生,秋田県立医療療育センター大屋敬太先生,由利組合総合病院三田基樹先生,男鹿みなと市民病院柴田暢介先生よりご発表いただきました。

特に骨盤骨折や創外固定に関する演題では,後ほどご講演頂く新潟大学の普久原朝海先生からもご質問があり,非常に有意義なディスカッションとなりました。

ミニレクチャーでは秋田大学野坂光司先生より『関節リウマチ合併骨粗鬆症における薬物療法と手術療法』についてご講演頂きました。

ステロイド骨粗鬆症に対する治療から,人工関節周囲骨折に対するイリザロフを用いた手術治療まで,野坂先生の豊富なご経験を基に解説頂きました。併存症の多い高齢者手術にはより一層の注意を払って臨んでいきたいと思います。

特別講演Ⅰでは新潟大学医歯学病院高次救命災害治療センター助教の普久原朝海先生より『大学病院で整形外傷を専門として10年、新潟の整形外傷治療は変わったのか?』と題し,「運と縁」をテーマに先生の整形外傷医としてのこれまでの経験をご講演頂きました。

大学の救命センターで整形外傷医として勤務されるにあたって苦労されたことや,整形外傷を若手整形外科医へ普及するために尽力された内容など,非常に興味深く拝聴させて頂きました。個人的には普久原先生が若手に向けて主催されている外傷合宿は非常に魅力的でした。秋田県においても,外傷という分野を全員が勉強し,若手に向けて教育できる体制を構築することが必要と痛感しました。自分も今後の外傷診療に貢献できるよう研鑽を積んでいきたいです。今回の講演は専門を問わず,録画して何度も見たくなるような内容でした。

特別講演Ⅱでは聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院整形外科病院教授の原口直樹先生より『変形性足関節症に対する関節温存手術』についてご講演頂きました。

足関節の解剖や変形性足関節症の病態なども踏まえて解説してくださり,変形性足関節症の診療経験がまだ少ない自分でも理解しやすいご講演内容でした。後半では果部骨折やピロン骨折の変形治癒に対するサルベージ手術についても紹介して頂きました。中でも原口先生の「受傷から時間が経過していても関節温存しながら患者満足度を向上できる」という言葉は,多くの患者さんを勇気づける一言であり,とても感銘を受けました。今後も原口先生にご指導頂きながら多くの患者さんを救えるように精進していきたいと思います。

一般演題から特別講演まで,非常に刺激を受けた研究会となりました。本日得た知識を患者さんへフィードバックしていきたいと思います。研究会の運営に携わった先生方,この場をお借りして感謝申し上げます。誠にありがとうございました。