

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Institute(OTI)です.
今回は,米国の医学教育についてです.
今の時代,アメリカと日本の医学教育の違いなどは,調べればどこにでものっている内容なので簡単に説明と,実際に見学してみての印象を報告します.
日本の場合,整形外科医になるためには 大学医学部(6年)⇒初期研修医(2年)⇒医局所属/民間病院整形外科所属(4年)⇒整形外科専門医,という流れです.基本的に初期研修医も専門医も同等の責任があります.
アメリカの場合は 一般大学(4年)⇒メディカルスクール(4年)⇒レジデント(4-5年)⇒(フェロー(2-3年))⇒整形外科医です.
メディカルスクールに入学するために,推薦状が必要で,それをもらうためには医療機関でのボランティアなどが必要となるようです.そのため,病院では医師やレジデントの他に学生ボランティアもよくもみかけ,医師や患者さんと接して,診察以外のできる業務を行っています.この制度は医師を目指す前に現場をよく知る意味でも非常に有用だと感じました.
メディカルスクールに入ってからはほぼ休みなしで,1年目が座学,2−3年目には病院実習となり,レジデントとともに診察を行ったりもします.日本の研修医1−2年目のようなことをここで全て行います.4年目はSub I(サブアイ)と呼ばれ,インターンの下,日本でいう研修医と同様のことができ(しないといけない),その間に次年度以降に行きたい希望の科のレジデンシープログラムにマッチングするという流れです.
レジデント1年目はインターンと呼ばれ,日本で行われているスーパーローテートを行います.2−5年目は専門科の研修をみっちり行うシステムです.レジデントの過程が終了すると晴れて専門医試験を受ける資格を得て,試験通過後,専門医としての活動が可能です.希望者はその後,更に専門性の高いフェローシッププログラムにマッチングして1−2年のフェロー研修を行います.
上級医はアテンディングと呼ばれ,その待遇が保証されている一方,責任も大きくなり,レジデントの責任も担保しないといけなくなります.
この立場の違いが変わる日も厳密に決められていて,毎年7月1日から.この日を境に立場と責任が(賠償保険の額も)急激に変わるため,レジデント4-5年目やフェローは死に物狂いで手術に明け暮れる生活だそうです.
よく,日本の学生はアメリカと比べて…,とか,日本の研修医はアメリカと比べて…とかいう批評・批判があったりしますが,システムが違うので一概に比較はできないと思います.ただ,アメリカの医学生やレジデントは非常に優れたコミュニケーション能力と臨床能力を確かに持っていました.日本の学生や研修医ができないという意味では無く,日本より病院の中でやれることが多く,よく訓練されていて,厳しく淘汰されている,という意味です.また,上下ペアにする教育方法が浸透していて,指導する立場と指導される立場が明確です.皆が必ず下の先生を教育するという経験していることはとても重要なことだと思います.
話は少しそれますが,山形大学や兵庫医科大学では整形外科修練医の先生を毎年OTIに短期留学させる試みを行っているようです.言葉の壁はハードですが,ここのレジデントやスタッフはアットホームなのでとても勉強になると思いますし,モチベーションも上がりそうです.ちなみに秋田大学も毎年4月にOTIの外傷コースに若手の先生が約1週間参加し,研鑽を積んでいます.
左が3rd gradeの医学生.この時期から予診を行い,上級医にチェックを受けます.順にレジデント,長尾先生,ロザリオ先生
左から長尾正人先生,兵庫医大吉江先生,山形大学金谷先生,筆者
つづく
秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.
今回はAAOSと五十嵐駿先生,笠間史仁先生訪問
2018年3月6日からアメリカ整形外科学会(AAOS)学術集会がニューオリンズで開催されました.
3月9日に,これから整形外科の仲間に加わって頂く,秋田厚生医療センターで初期研修中の笠間史仁先生,中通総合病院で研修中の五十嵐駿先生のお二人がサンフランシスコを訪問してくれましたのでご報告致します.
長尾正人先生と
研究スタッフや現地のドクターとも交流し,米国留学の雰囲気の一部を味わって頂きました.その後,食事を含め,サンフランシスコ市内を少しだけ観光して頂きました.
Facebook本社前
LGBTの聖地,カストロ
フルハウスの舞台(もう分からない人も多いかも)
楽しい時間をありがとうございました.4月から一緒に頑張りましょう.
つづく
去る3月17日秋田県脊椎脊髄病研究会が開催されました。
研究会では木村先生と尾野先生に症例提示をしていただき,それに対し秋田大学神経内科 華園先生より脊椎脊髄疾患と神経内科疾患の鑑別のポイントや日常診療におけるテクニックについてレクチャーしていただきました。整形外科医にとって非常に有用なお話であり、明日からの診療に役立てたいと思います。
また、ミニレクチャーとして本会の当番幹事の工藤先生が化膿性脊椎炎の治療に関する最新の知見としてPPSの有用性などをお話していただきました.一般演題では関連病院から4演題あり,秋田労災病院の東海林先生の演題「小児陳旧性頚椎回旋位固定の1例」が優秀賞を受賞されました。おめでとうございます。
待ちに待った特別講演では岡山病院機構岡山医療センター整形外科医長の竹内一裕先生から,「脊椎外科手術 –低侵襲化の歩みとその実際–」と題し,最前線の低侵襲脊椎手術についてご講演いただきました.総論からMED/PEDの違い、胸椎におけるVATSまで様々なMISの手技から歴史,最新の知見まで、幅広く教えていただきました。新潟大学整形外科准教授の平野徹先生から,「小児脊柱変形における治療の進歩と今後の課題」と題し、側弯症の歴史としてScoliScore、日本での遺伝子解析などの研究、手術治療の実際や合併症についてわかりやすくご講演いただきました。平野先生は公私ともに秋田県になじみが深いということも伺い、大変うれしく思いました。
本研究会で拝聴したことを、自分の脊椎外科医としての礎としていきたいと思います。
今後の先生方のご盛栄を心よりお祈り申し上げます。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.
今回はCHINA BASIN見学について
2017年9月1日から9月11日までセットアップのため渡米した際,北海道大学清水智弘先生にホームステイ,銀行口座開設,アパートの契約から野球観戦に至るまで,大変お世話になりました.その清水先生の御高配で,CHINA BASINという施設の見学させて頂きました.
清水先生はこれまで骨粗鬆症,RAと様々な分野に精通しておられる先生で,現在UCSFでは動作解析と画像機器を用いた研究をされております.
CHINA BASINは自分のアパートから徒歩で行ける距離にある研究施設とオフィスの共同ビルで,UCSFのDepartmentはEpidemiology,Biostatistics Radiology,Biomedical Imagingが入っています.
1Fにはイメージセンターがあり,high-resolution peripheral quantitative computed tomography (HR-pQCT)が導入されており,研究も盛んです.
フロアスペースは広大で整然としており,入り口ではタッチパネルの案内板が出迎えてくれました.
左が筆者,右が清水先生
このような機会を与えて頂いた北海道大学 清水智弘先生にこの場を借りて御礼申し上げます.ありがとうございました.
つづく
秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.
今回は臨床研究について
私の留学の目的は米国リハビリテーションの臨床研修です.それとともに,臨床研究も行う必要があり,現在進行中であります.
研究の指導医は,Dr, Saam Morshedです.彼はUCSF整形外科の准教授で,外傷を専門としている先生です.統計学に造詣が深く,M.D(Doctor of Medicine),Ph.D(Doctor of Philosophy; 医学博士)のほか,M.P.H(Master of Public Health; 公衆衛生学修士)も取得されている数少ない医師です.そのため,研究内容は大規模多施設での臨床研究を得意とされています.現在も10以上の多施設共同研究を行っており,そのグラントの総額は数億円を超えているそうです….
Dr, Morshedの下,OTIのClinical research部門にお世話になり,臨床研究の立ち上げ,IRB; Institutional Review Board,日本で言う倫理委員会の承認を経て,臨床試験が始まっています.
実際には,OTIでPhysiatristとして勤務されているDr, Karina Rosario,長尾正人先生の助力を頂き,臨床研究を行っています.発表前ですので詳細はお知らせできませんが,アナログ機器とデジタル機器を使った臨床研究を行っております.
週1回の研究ミーティングでは,現在進行中の研究の進捗状況や学会発表のスライドなどを逐一チェックし情報を共有していきます.
研究構想から研究チームの立ち上げまでのスピードがとてつもなく速く,データの管理方法や収集方法まで非常にシステマティックで統制されており,勉強になっています.日本との研究体制の違いも多々あり,うらやましかったり勉強になったりしています.
リサーチミーティング 左奥がDr,Saam Morshed,左手前がUCバークレーの学生.優秀です.
左からTgist(研究助手さん),筆者,Poul(ポーランドからのフェロー),Eleni(研究助手さん).いつもお世話になっています.
奥がDr, Karina Rosario,被験者が長尾正人先生 いつもお世話になっております.
つづく
秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.
今回はスポーツ外来見学 その1
いつもお世話になっている長尾正人先生に,UCSFでスポーツドクターとして勤務されているAnthony Luke先生を御紹介頂き,UCSFのスポーツ外来を見学してきました.
Anthony Luke先生はバンクーバー冬季オリンピックにも帯同された先生で,UCSF Orthopedics Instituteのスポーツ外来で診療されています.Luke先生は家庭医をバックグラウンドとしているため手術はされませんが,筋骨格系疾患全体を幅広く診療されて,時には脳振盪の患者も診療されます.
午前中は12人ほどの診療で,神経根性の腰痛,骨頭すべり後の若年性OA,半月板損傷,Hamタイトネス,こむらがえり,凍結肩,腓骨筋腱脱臼,痛脳振盪など部位も年齢も背景も人種も多様で,幅広い知識と気配りが必要となるようです.スポーツ外来ということもあり,患者さんの知識も相当なもので,文献レビューを行ってくる家族もいます.治療についても,他の治療法,どれくらいの効果があって,何%の人が良くなるのかまで細かく聞かれます.Luke先生は1人1人丁寧に診察し,病状・原因・治療について分かりやすい説明を行っていました.
午後は10人ほどの診療で,主にエコーを使った診療で,エコー下の関節内注射や診断目的の注射,膝蓋腱障害に対するPRP治療などを行っていました.HA注射の多用はなく(保険とガイドラインの関係かもしれません),ステロイドを最低3ヶ月以上間隔あけて注射することが多いようです.
診察スタイルはSFGHと同じで,医師が部屋に出向く形をとっており,Luke先生は3-4部屋を行ったり来たりする形です.ここにはSFGHほど多くのレジデントはおらず,レジデントが予診を行ったりはしていませんでした.
また,診療補助を行ってくれる看護師さんもおらず,担当のAthletic Trainerが患者の入れ替えや部屋の整理などを行っている状況で,人件費はできるだけかけないようにしている印象を持ちました.
目新しいこととして,Luke先生はGoogleグラスを用いた診療アシストのTrialを行っているようで,Googleグラスをつけた状態で診療されていました.アシストの内容は,カルテ記述のディクテーションの補助,電話,メモなどです.Luke先生曰く,ペーパーワーク業務の約20%の負担軽減になっている感じがするとのことでした.見た目はそれなりに目立ってしまうものなので,患者さんには診療前に必ず説明を行い,簡単に同意を得ていました.今後,もしかしたらこのような技術がだんだんと流入してくるのかもしれません.
動作解析の部屋を見学させて頂いたり,オリンピック帯同時の裏話などを教えて頂いたりもして,大変興味深く,勉強になる外来見学でした.
Orthopedics Institute ビル1個,全部整形外科用です.
Googleグラスを着用したAnthony Luke先生と
Human Performance Center
秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.
今回はUCSF Medical Center @Parnassusについて
UCSFには4つの中核関連施設があります.私の所属しているZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)の他に,UCSF Medical Center @Parnassus,@Mt. Zion,@Mission Bayがあり,それぞれ日本の大学附属病院のような教育病院的な役割を果たしています.それぞれの病院に特色があります.
正面玄関
浜松医科大学整形外科で脊椎がご専門の小林祥先生の御高配の下,UCSF Medical Center @Parnassusを見学しました.小林先生はUCSF Medical Center @Parnassus でDr. Vedat Devirenに従事され,研修,臨床研究をされています.データベースの作成などに携わっておられ,既に論文も投稿されているそうです.
UCSF Medical Center @Parnassusには多数の施設があり,規模が大きく,素晴らしい眺望で,図書館の蔵書も豊富です.病院は,手術室と基礎研究の教室が同じ棟にある,研究に有利な構造をしていました.
外来からの風景 天気が良ければゴールデンゲートブリッジも見えます
小高い丘の上に建てられた外来棟からはゴールデンゲートブリッジを望むことができます. ちなみに,ここの外来診療はアメリカでよくある,ジーンズなどのラフな格好は禁止されているそうです.
また,脊椎外科は脳外科と整形外科の医師合わせて24人で,手術も一緒に組むことも多いそうです.これはアメリカでもよくあることではなく,珍しいそうです.
このような機会を与えて頂いた浜松医科大学 小林祥先生にこの場を借りて御礼申し上げます.ありがとうございました.
筆者と小林先生
つづく
本講習会は障がい者スポーツの発展のため、年1回、埼玉県所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンターで行われています。
今回は2月23日〜25日に行われ、秋田県からつつみ整形外科の堤祥浩先生と木村の2名が参加しました。
障がい者スポーツといえば、メディアで取り扱われる肢体不自由(脊髄損傷や肢体切断)のイメージが強いですが、他にも視覚障がい・聴覚障がい・内部障がい(心機能・呼吸機能・腎機能障がいなど)、知的障がい、精神障がいがあります。
本講習会ではパラリンピックのような競技スポーツだけでなく、病院内で行われるリハビリテーションスポーツ、在宅・施設内で行われる生涯スポーツについても学ぶことができました。
知的障がいのある人たちの大会を、スペシャルオリンピックスと呼びますが、知的障がいのマラソン世界記録保持者は日本人だとご存知でしょうか?時間は2時間23分09秒と素晴らしく、世界選手権ではこのような選手が、サインを求められているそうです。日本もいつかそんな雰囲気になって欲しいです。
実技では車椅子バスケとゴールボールを体験しました。ゴールボールでは、ロンロンパラ金メダリストの女子選手など、ナショナルチーム選手から直接指導頂きながら行いました。アイシェイドという、光も一切通さないマスクをつけ、何も見えない中で行うスポーツの経験は貴重でした。車椅子バスケは、下肢を使えない難しさがありますが、障がい者の方と同じ目線で一緒に楽しむことができるスポーツだと思います。初めてのブザービートも経験でき大満足でした。
パラスポーツはまだまだ知られていないだけで、オリンピックスポーツと同じくらい楽しめます。ぜひ盛り上がっている平昌でも、パラスポーツも注目してみてください!今年はNHKでも初の実況つきです。
懇親会では他県の整形外科の先生と、切断術の是非について議論できました。重度四肢外傷において、四肢を温存することが理想と考えていますが、機能としては切断し義肢や車椅子などを使うことで世界で活躍するアスリートになれる可能性もあります。このようなパラアスリートの活躍が、今後の治療方針にも大きく影響してくるかもしれないと考えさせられました。
今回の講習会を終えた69名を合わせ、全国で計524名が障がい者スポーツ医として登録されます。年々講習会の人気は上がっており、倍率は1.5倍ほど、受講資格を得るのも大変になってきたようです。ご興味のある方はお早めに!
秋田県内の障がい者スポーツ医は当科の藤井昌先生を含め、4名になりました。IPC(国際パラリンピック委員会)のmottoである「To enable Para athletes to achieve sporting excellence and inspire and excite the world」のように、秋田でも障がい者がスポーツを楽しむことができる環境、活躍できる環境を作り、さらにそれが健常者のスポーツ環境改善、意欲向上につながることを信じ、サポートしていきたいと思います。