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第43回臨床バイオメカニクス学会(赤川学)

2016年10月8〜9日、札幌で行われた第43回臨床バイオメカニクス学会に参加してきました。180以上の演題数の中、秋田大学からは、整形外科・リハビリ・理工学部併せて9演題の発表がありました。

初日には、島田教授の特別研修講演があり、「医工連携によるバイオメカニクスの臨床応用」と題して、秋田大学におけるAMAGの活動が紹介され、全国に先駆けた医工連携のシステムと、それによる多くのAMAGの研究成果について御講演いただきました。

一般演題では、ASAKGから骨切り関連のバイオメカニクスの演題を発表し、同様に変形性膝関節症のバイオメカニクスに力を入れている新潟大学と熱いdiscussionができました。

今回は理工学部からも発表があり、収穫は大きかったと思います。バイオメカは、病因や症状、そして日ごろ行っている手術などの治療のメカニズムを知るための非常に良いツールであり、今後ますます研鑽をつんで行かなければならない分野だと強く感じました。2年後の主催に向けて、今後もさらに頑張っていきたいと思います。img_3079 img_3085

European Orthopaedic Research Society (EORS), 24th annual meeting, in Bolognaに参加して(鈴木真純)

2016/9/14〜16、イタリア・ボローニャで開催されましたヨーロッパ整形基礎学会の参加報告です。主催する施設が土江博幸先生の留学されている、Instituto Ortopedico Rizzoli(リッツォーリ整形外科研究所)ということで演題登録の機会を頂き、採択されましたので今回の参加へと至りました。学会ホームペジからモダンなデザインで、会場写真も歴史に満ちあふれた風景で参加がとても楽しみでした。

と、ここまでは良かったのですが、出発当日まず秋田空港で羽田行きの搭乗手続きの際に職員から衝撃の出来事を聞かされました。経由地であるフランスのシャルル・ド・ゴール空港において、ちょうど学会期間中に管制部門でのストライキ発生との知らせでした。同様のことが過去にもあったようで、基本的には全便欠航なんてことにはならないようですが、不安は膨らむ一方でした。トムハンクス主演の、某国の旅行者が諸事情から国に帰れなくなり空港にしばらく住み着くという映画がありましたがそのシーンが頭をよぎりました。各方面に問い合わせてみましたが、行ってみないとどうなるか分からないとのこと。とりあえず出発。羽田国際線の方では特に問題なくフランスには飛ぶよう。そしてフランス着。午前4時着ということもあり空港内は閑散としていました。問題のボローニャに向けての乗り継ぎでしたが、空港職員に訪ねてみましたが全く問題なく予定通りフライトするとのこと。電光掲示板で他の便も見てみるが、ほぼ問題なく運航しているようだ。こんなもんなのだろうか。と、不安だけあおられながら特に影響なく無事ボローニャ空港に到着しました。空港ではすでに、土江先生が迎えに来てくださっており、慣れた感じですぐにバスまで案内してくださりホテルまでの道順まで分かりやすくレクチャーしてくださいました。すっかり伊達男になっておられるのを感じました。ボローニャはフィレンツェ、ローマ等などと比べれば観光地と呼ぶにはマイナーな土地ということもあり、地元の人々の活気と歴史的建造物にあふれた素晴らしい雰囲気でした。しかも夜も至る所にバーのオープンテラスが開かれており、22時過ぎても普通に女子供が闊歩しており、実際治安もまずまず良いとの事でした(もちろん日本よりは悪いです)。昼過ぎについたため、土江先生に昼食をごちそうになりましたが、シンプルなマルゲリータや生ハム、チーズはとても美味でした。「わりと普通だよー」とおっしゃる土江先生、すっかり伊達男だなとまた思いました。その晩は、過去にリッツォーリに短期留学されていたという筑波大学整形外科講師 船山徹 先生、今回の会でoral presentation に採択されているJA茨城 県北医療センター 塚西敏則 先生、そして現在土江先生と同様に留学しておられる奈良県立医大骨軟部腫瘍専門 塚本真治 先生達とお食事する機会を作って頂きました。素晴らしい実績をお持ちの先生達のなかで大変恐縮な思いでしたが、気さくに色々話しを聞いてくださり、留学の話など色々と盛り上がり楽しい会となりました。

さて翌日肝心の学会ですが、ASBMR や日整会の規模とはやや小さめな感じで、リッツォーリのresearch center (基礎研究棟みたいなものか)の廊下の一角にポスター展示場所が設けられているという状態でした。(基礎研究学会でしたが、普通に臨床研究の発表も多々ありました(TKA後のopioidの使用頻度の比較〜〜など・・・)。しかし、敷地はとても広く、敷地内で輸送迎バスや車が運行しておりました。研究所含め敷地内の建物もやはり歴史情緒あふれており、発表が終わった後に土江先生に病院内を案内頂きましたが、昔の関節鏡や義肢、側彎用のブレースなど博物館レベルの物が展示されていました。歴史的情緒にあふれた雰囲気だけ見れば、とても現役で最先端レベルの研究を行っている施設には見えませんでしたが、日本にはないギャップでとても興味深かったです。

初イタリアが学会ということで不安しかありませんでしたが、買ったばかりのカメラを紛失した以外は、素晴らしい貴重な経験となりました。発表ご指導頂きました宮腰准教授はじめとするA-BONEメンバーにこの場を御借りして御礼申し上げます。

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第2回なまはげ運動器セミナー(木村竜太)

H28年9月28日、第2回なまはげ運動器セミナーが開催されました。

一般講演では中通総合病院の佐々木香奈先生から「膝関節軟骨損傷に対する自家培養軟骨移植の小経験−自家培養軟骨移植と感染対策−」について、術式の詳細から施行症例の経過をご説明いただきました。秋田県内のJACCを用いた手術件数はこれまで5件となり、初期の例はsecond lookも行われています。整形外科領域でも再生医療は日々進歩しており、今後の治療成績に期待されます。

市立横手病院の冨岡立先生からは「当院に於ける骨粗鬆症骨折及び外傷骨折の治療の現状と問題」と題してお話しいただきました。かなり厳しい人工関節周辺骨折や開放骨折の症例などをご提示いただきましたが、その素晴らしい治療成績から秋田県の骨折治療のレベルの高さを示していただきました。今後は遊離皮弁も組み合わせた治療が秋田県内の整形外科医で完結できる取り組みも始まっており、より一層の治療レベル向上が期待されます。

 

特別講演では京都府立医科大学リハビリテーション医学病院教授の三上靖夫先生に「スポーツによる脊椎脊髄損傷」についてご講演いただきました。三上先生は柔道5段で、現在も柔道の指導に携わられています。講演会に先立って行われた柔道交流会では、華麗な動き、投げ技を見せていただき、また招待選手としてご参加いただいた弘前大学佐々木英嗣先生(5段)とは整形外科医日本トップクラスの試合を披露いただきました。ご講演ではスポーツによる脊髄損傷の疫学データから、ラグビー、柔道などコンタクトスポーツのリスクを説明いただきました。またなかなか一般的には浸透していない、柔道により起こりうる外傷を、実際の受傷時の動画を使用して解説いただきました。これは実地で長年取り組まれている三上先生にしか出来ないご講演で、多くの先生方がその動画に興味を持っておられました。現在柔道においても医科学委員会が本格的に始動しており、三上先生はその中心としてご活躍されています。秋田でも疫学データなどを集め、障害予防含め、医療サイドからのサポートを強化して参りたいと思います。

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第65回東日本整形災害外科学会若手優秀講演賞の報告(渡邉基起)

この度,9月22・23日に箱根で開催された,第65回東日本整形災害外科学会にて若手優秀講演賞を受賞致しました(演題名『リング型創外固定器に対する足底装具の有効性:渡邉基起 野坂光司 畠山和利 高橋裕介 斉藤公男 松永俊樹 島田洋一』).今までいろいろな学会発表をしてきましたが,今回はじめて受賞することができました.

近年,秋田県では四肢の重度外傷や外傷後の変形治癒・偽関節に対してリング型創外固定器を用いる手術が増え,同様にリハビリテーションを行う機会も増えました.正直に言うと,初めて目にした時は「ワイヤーが刺さってるから,当然痛みがあるだろうな」と恥ずかしながら,あまり考えもせずに思っていました.まさに学会のメインテーマであった『素心深考』をないがしろにしていました.しかし,数例経験していると荷重痛の強さに個人差があり,多くの症例は踵部のワイヤー刺入部に痛みがあることに気づきました.踵のワイヤー刺入部にかかる負荷として,踵部脂肪体の変位によるメカニカルストレスとではないかと考え,この脂肪体を変位させないような装具が作成できれば痛みが軽くなるかもしれないと考えるようになりました.当時,尖足予防用の装具として使用していたものが原型となり,現在の形になるまで2-3年間は研究というよりは,ほぼ趣味のように楽しみながら自分で装具を削ってみたり,義肢装具士と相談して材質を変えてもらったり,簡単に調整できるようにパーツに分けてもらうなどをしてきました.このように,何気なくやってきたことでしたが,振り返ってみると大きな仕事をしてきたのではと受賞して改めて気づかされました.今後もコツコツと小さな積み重ねを続けていきたいと思います.

最後に,このような発表の機会を与えて下さった島田洋一教授ならびに野坂光司先生,その他ご協力を賜りました多くの先生方に,厚く御礼申し上げます.

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第65回東日本整形災害外科学会 フットサル大会(尾野祐一)

平成28年9月22〜23日に箱根で開催された第65回東日本整形災害外科学会スポーツ親善プログラムフットサル大会に秋田大学整形外科サッカー部(エスパニョーレ秋田)として参加しました。参加メンバーは小林孝先生、堀川明先生、嘉川貴之先生、高橋靖博先生、湯浅悠介先生、私に加え、研修医の石橋恭太先生(中通総合病院)、佐々木吉寛先生(秋田厚生医療センター)、西澤光洋先生(横浜労災病院 *10月〜秋田労災病院)の9人です。昨年は一勝もできなかった大会でしたが、今回は若手3人の強力な助っ人を加え、過去最強とも言える布陣でのぞみました。大会はトーナメント形式で、参加チームは8チーム。9月22日の朝7時から1回戦が行われました。

初戦の対戦相手はToyooka Japan。初戦とあって動きは硬めでしたが、なんなく先制に成功。しかし、油断からすぐに失点。そこから相手ペースになりかけましたが、石橋先生、西澤先生が躍動し、次々に点を奪い、気づけば4-1。佐々木先生も交代で出場し、主力を温存できるような余裕の展開にもちこみました。試合終盤には小林先生も出場し、コート脇のバケツに突っ込むという珍プレーが飛び出ましたが、片方しかない健常なアキレス腱を死守したまま試合を終えることができました。

翌9月23日には準決勝が行われました。対戦相手はNCC(国立がん研究センター)。島田教授も見守る中、手堅く試合を進めていき、結果は4-1。この試合では堀川先生も出場し、場を大いに盛り上げました。

そして、初優勝がかかった決勝の相手は日本大学整形外科。フィジカルを活かしたプレーにかなり苦戦し、なかなか点をとれない展開が続きましたが、会場内で誰よりも声(ヤジ?)を出し、試合に出ている選手よりも目立ちがちな湯浅先生の応援をうけ、同学年の高橋先生がついに先制点を奪取!その後は、キーパーの嘉川先生を中心に堅い守りをみせ、1-0で勝利。初優勝となりました!

部の発足以来、負け続けてばかりでしたが初のタイトル獲得となりました。バスケ、駅伝部の陰に隠れて、今大会も周囲の期待は薄かったと思いますが、下馬評を覆す結果を出すことができ、大変満足しております。島田教授はじめ応援に来ていただいた先生方、また関連病院の先生方、誠にありがとうございました。今後もよい結果を届けられるよう精進してまいります。よろしくお願いいたします。%e3%83%95%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b5%e3%83%ab%ef%bc%91 %e3%83%95%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b5%e3%83%ab2 %e3%83%95%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b5%e3%83%ab3 %e3%83%95%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b5%e3%83%ab4 %e3%83%95%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b5%e3%83%ab5

The 55th ISCoS Annual Scientific Meeting inVienna帰朝報告(高橋靖博)

2016年のISCoS Annual Scientific Meetingがオーストリアのウィーンにて、9月14日~16日の3日間にわたり開催されました。当科のグループであるAkita Motion Analysis Group(AMAG)からは、水谷先生、木村先生、飯田先生、岩本先生、高橋の計5演題を発表してまいりました。演題内容は、上肢リハビリロボット、超音波ガイド下頚椎神経根ブロック、座位バランス型、FES cycling、髄腔内バクロフェン療法など基礎から臨床まで多岐にわたり、秋田大学整形外科の研究成果を世界にアピールすることができたと思います。このような機会を与えていただいた島田教授・引率してくださった工藤先生にはこの場をお借りして感謝申し上げます。

まず初めに驚いたことは、学会が開催される国際会議場がホーフブルク王宮という王宮にあったことです。会議場内部も王宮の敷地内には国際会議場以外に、オーストリア大統領府、礼拝堂、博物館、乗馬学校といった様々な施設がありました。

学会場の外観です。王宮の庭園はほぼ公園で誰でも敷地内に入れました。conv0019

王宮の周囲も歴史的建築物が多く、朝ランニングがてら名所を訪問しました。

 

学会場の内部です。レッドカーペット・シャンデリアがあり、豪華な造りでした。conv0010

 

大きな学会での機器展示は最新技術を備えた機器に触れることができるので、非常に興味があります。学会では脊髄損傷用の歩行アシストロボットの展示がありました。conv0022

 

総重量は10kg弱で従来よりもかなり軽く、かつスムーズに歩行できます。実際に歩行している様子も見ることができましたが、付き添いも要らないくらい安定した歩容でした。

 

 

ポスターをバックに参加メンバーの集合写真を撮りました。conv0009

 

ポスター発表ではつたない英語で質疑応答しました。英語学習の必要性を痛感させられました。

 

海外学会といえば、日本では味わえない料理を堪能できることも醍醐味の一つです。img_8194

写真はシュニッツェルという洋風カツです。発祥の店で注文したものは直径30cm大のサイズでしたがなんとが全員完食しました。

今回は天候にも恵まれて非常に有意義で刺激的な学会でした。この刺激を今後の基礎・臨床研究のエネルギーに変えて精進していきたいと思います。お世話になった先生方、本当にありがとうございました。

 

第24回日本腰痛学会 (工藤大輔)

2016年9月2日から9月3日の日程で甲府にて第24回日本腰痛学会(会長:波呂浩孝教授)が開催されました。椎間板や痛みに関する基礎研究から疫学、診断、保存療法、手術まで幅広い分野の発表があり、現在の日本における最新の腰痛研究について聴講できたと思います。特に今回はサルコペニアに関する研究が多く発表され、最近特に関心が集まってきている分野だと思われました。

秋田からは一般演題として本郷講師から職業歴と脊柱変形・腰痛の関連、菊池先生から多椎間PLIFとLLIFの比較、鵜木先生から固定下端レベルによる仙腸関節障害発生頻度、そして私からは下肢を含めた姿勢・筋力とQOL・腰痛の関連について発表させていただきました。2日目は島田洋一教授より高齢者腰痛への総合的取り組みと題してモーニングセミナーが開催されました。運動療法、特に背筋運動の重要性、さらに成人脊柱変形手術に伴って得られるQOL、逆に失うADL動作も多いことなど大変印象深い内容のご講演でした。また同じ日には宮腰准教授からも骨折予防のための骨粗鬆症対策-運動療法と薬物療法のエビデンス-と題して以前から秋田大学で推奨してきた背筋運動の効果についてエビデンスとともに大変分かりやすくご講演いただきました。治療手段としての手術療法ももちろん大切ですが、運動療法がいかに重要かということが聴講されていた先生方に伝わったのではないでしょうか。

シンポジウムでは疼痛は脳にも変化をもたらし、痛みの慢性化やうつ病との関連性も科学的に証明されてきていることなど、最新の研究について紹介されていました。しかし、腰痛の診断、治療は現在もなお未解決の問題が山積みです。今後もよりいっそう運動療法、手術ほか様々な観点から腰痛診療、研究を発展させていきたいと考えさせられた会でした。

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第2回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会    木島泰明

2016年8月27日、第2回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会が行われました。これはISAKOSやJOSKASの秋田県版の研究会で、まだ第2回という若い研究会ですが、テーマも多岐に渡り、非常に盛り上がる研究会です。

前半の約2時間は一般演題とミニレクチャーでした。今年もASAKGメンバーの若手を中心にたくさんの演題が集まりました。上から与えられたテーマでなく、演者自身が日ごろの疑問を自分自身で調査して明らかにした内容ばかりで大変勉強になりました。塚本泰朗先生は膝10度屈曲位でAP像を撮るべきというご発表、佐藤千恵先生は脛骨後方皮質をリファレンスに統一してレントゲン計測をすべきというご発表、冨手貴教先生はNewKSSという新しい尺度で評価した100例のTKAのご発表、佐々木香奈先生はACL再建は受傷後3週以降6週以内にすべきというご発表、嘉川貴之先生はMRIでGapサインがあれば肩甲下筋腱断裂を念頭に置くべきというご発表、那波康隆先生は新しい貼付剤は有効成分の血中濃度以外の効果もありそうだというご発表、冨岡立先生は半月板単独損傷は変性が基盤にありそうだけれどもやはり縫うべきだというご発表をしてくれました。さらに、関展寿先生のご発表のおかげで、円盤状半月のMRIではその半月内の輝度変化の有無を確認すべきであり、輝度変化のない場合は円盤状半月であってもしっかり温存することが離断性骨軟骨炎の予防にも役立つかもしれないということが改めて認識できました。そして、最優秀演題賞を獲得したのは藤井昌先生でした。藤井先生は膝周囲Bone Marrow Lesionsと骨強度パラメーターとの関連を調べられ、膝OAの進行や痛みの発現などと骨粗しょう症との関連を見出す発表で、このご研究が進めば全く新しい膝OAの治療にもつながる素晴らしい内容でした。一般演題の後は斉藤公男先生がミニレクチャーをしてくださいました。膝OAに対する保存治療のひとつであるヒアルロン酸注射の日常診療における疑問点を英文雑誌のレビューから解明してくださり、最後には得意の動作解析でわずか3°のスラストを定量化することで膝周囲骨切りの痛みや不安定性に対する効果を定量化できるという内容で、今後の膝診療が大きく変わってくるということも実感できる内容でした。

後半はすばらしい特別講演を2つも拝聴することができました。特別講演Ⅰは全国からスポーツ傷害の患者さんが集まる行岡病院のスポーツ整形外科部長でいらっしゃる中川滋人先生が「コンタクトスポーツ選手の肩関節脱臼の診断と治療」というタイトルでご講演下さいました。ものすごい症例数のご経験から、肩関節脱臼症例では早期に3DCTを撮影し、関節窩骨欠損やHill-Sachs損傷の有無・大きさをしっかりチェックすることで手術適応や術式決定に役立つということをご自身が書かれたたくさんのAmerican Journal of Sports Medicineという非常にIFも高い論文の内容を含めて教えて頂き、明日からの臨床に役立つ内容でした。そして、メインイベントの特別講演Ⅱは世界が認める世界一のKnee Surgeonの史野根生先生が「スポーツ膝臨床2016」と題して感動的なご講演をして下さりました。その内容はもちろん一言ではまとめられませんが、Ligament surgeryはMechanical instabilityを完璧に治した上で、当然full ROMを獲得すべきで、そのためには真に正常の位置にligamentを再建することが必要である、そしてそのことがいかに大事で難しいかということだけでなく、それがどれだけ難しかったとしてもそれを達成することこそが患者さんに対して我々が行うべき当然のことであるから、それを最後まで追求すべきだという、本当に史野先生の哲学が聴衆全員に伝わった瞬間でした!

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大曲工業高校甲子園帯同(河野哲也)

夏本番!甲子園の季節がやって参りました!

今年は秋田県代表校である大曲工業高校に帯同させていただきました。

(8/5〜8/8 木村竜太先生、8/8〜8/11 河野)

甲子園遠征前、理学療法士の先生方と共にベンチ入りメンバーのメディカルチェックを行い、その結果のフィードバック、遠征期間中のケアを目的とした、医師1名、理学療法士2名での帯同となります。

発火しそうな炎天下の中、現地でも幸い大きな怪我をする選手はおらず、試合に臨めました。初戦はプロ注目の好投手を要する埼玉県代表花咲徳栄との試合でした。残念ながら初戦敗退となりましたが、ホームランが飛び出すなど日本中を驚かせた素晴らしい試合だったと思います。選手の皆さん大変お疲れ様でした。より質の高いサポートを行えるよう、理学療法士の先生方との連携を密にし、スポーツ整形分野の知識を深めたいと感じました。

頑張れ、秋田県勢!!

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第5回野球肘研究会夏合宿 in 秋田(大内賢太郎)

2016年7月23日、秋田拠点センターアルヴェにて野球肘研究会夏合宿in秋田が開催されました。今年で第5回を数えるこの研究会は、野球シーズン真っ盛りである夏の時期に朝から晩まで野球肘について語り尽くすという、野球に携わる者にとって正に垂涎の研究会となっています。症例検討やミニレクチャーに、野球界各方面から講師を招いての特別講演など、1日で野球肘についての知識や最新のトピックを学ぶことができます。今年は秋田開催ということで、ASAKG会長齊藤英知先生の先導のもとで様々な趣向をこらして会を盛り上げるべく臨みました。一体感を演出する2016野球肘ポロシャツの配布により会場は爽やかなブルーに染まりながら、終始アツい議論が展開され非常に盛り上がりました。

第一部は研究発表のセッションで、野球肘に限らずスポーツ全般に対する取り組みについて報告し、発表後は全演者がシンポジストとなり質疑応答する形式で進められました。ここではASAKGから半数近くの演題が発表され、メディカルチェックや高校野球甲子園大会への帯同、さらに秋田ノーザンハピネッツやモーグルワールドカップへのサポート体制など、秋田大学整形外科のスポーツに関わる活動について存分にアピールすることができました。

ランチョンセミナーはアスリートにおける腰下肢痛の診断とリハビリテーションというテーマで、福島医大の加藤欽志先生、健康科学大学の成田崇矢先生にご講演頂きました。アスリートにとって腰痛は切っても切り離せない問題であり、痛みのメカニズムから診察・画像診断時のポイント、各種ブロック治療の選択根拠や機能評価に基づくリハビリアプローチなど、明日の診療から役立てることができる内容が満載で、たいへん勉強になりました。

第二部からは野球肘にフォーカスをあてた講演のセッションで、早期発見と保存治療を福島医大の大歳憲一先生と京都府立医大の森原徹先生に、超音波診断とリハビリテーションを城東整形の皆川洋至先生と丸太町リハビリクリニックの松井知之先生に、OCDの手術治療を昭和大学の西中直也先生と北海道大の船越忠直先生に、それぞれご講演頂きました。野球肘は小中学生のように野球を始めたころから生じる可能性があり、適切な対応がなされないと後の障害へと進行し、野球をプレーすることを断念せざるを得ないこともあります。そのようなケースを防ぐためにも、医療に携わる側だけでなく実際に野球をする選手や関係者も含めて、正しい知識を学んでおくことは非常に重要です。一連の講演を通して、早期発見のためのシステマティックな方法や適切な初期対応、リハビリの経過、手術の実際など、野球に関わるすべての方にとって十分な知識を学ぶことができたのではないかと思います。

また特別講演として、慶友整形外科病院の伊藤恵康先生に重度のOCDに対する治療についてご講演頂きました。ここでは最も悲惨な野球肘というテーマで、伊藤先生の豊富な経験症例の中から一筋縄ではいかない症例を厳選し紹介して頂き、OCD治療の難しさと奥深さを学ぶことができました。

特別講演の余韻も冷めないまま、研究会終了後には全体懇親会が行われ、秋田が誇る名酒がふるまわれる中、参加者同士で活発な交流が行われ、非常にいい刺激を受けました。翌日には炎天下の中、親善野球大会と今回からの試みであるテニス大会が開催され、けが人もでずに無事に親睦を深めることができました。

今回の研究会を通して学んだ知識を糧に、日々の診療に生かしていきたいと思います。