学会レポート」カテゴリーアーカイブ

第38回日本骨形態計測学会(阿部和伸)

第38回日本骨形態計測学会が6月21日~23日の3日間、大阪国際交流センターにおいて開催されました。近年、分子生物学、細胞生物学において骨代謝の機序、骨粗鬆症を含む代謝性骨疾患の病態の理解は飛躍的に進歩しています。しかし、分子生物学的手法による病態研究でも、その発現を組織レベルや器官レベルで観察し、さらに骨形態計測法による定量的計測によってよりその変化が把握できます。したがって、骨形態計測法は私たち研究者にとって非常に重要かつ必須の研究方法の一つであるといえます。

 

学会に先立ち、「骨形態計測ハンズオンセミナー2018ベーシックコース」が同会場で開催されました。これには私を含む当教室の若手研究者4名が参加し、動物実験の計画から実施、検体の採取、固定、標本作成、骨形態計測による評価まで、一連の流れに沿って基礎から学びました。ハンズオンでは実際に標本を作製する手順を確認したり、標本を観察し、どこで骨が作られ、どこで溶かされているかといった組織レベルの計測を実際に行ったりしました。セミナー終了後には修了証書をいただき、私たちが今後行っていく研究の大きな糧となったと感じた次第です。

 

本学会では、当教室の宮腰尚久准教授が学会2日目のシンポジウム「骨折防止のためのトータルケア-サルコペニア・フレイルの観点から-」の中でご講演されました。「サルコペニアと転倒に対する運動療法」という演題で、転倒の危険因子から転倒予防、骨折予防のための運動療法について当教室の研究を交えて非常にわかりやすくご紹介されていました。会場からも活発な質疑応答が繰り広げられ、全国的な関心の高さを感じました。

 

2日目終了後には全員懇親会が開催され、その会で若手研究者賞の表彰があり、当教室若手のホープである湯浅悠介先生が受賞されました。湯浅先生の行っている研究は、「卵巣摘出ラットにおける選択的エストロゲン受容体モジュレーターと低強度有酸素運動の骨と脂肪に対する効果」というもので、骨粗鬆症治療として薬剤と運動を組み合わせ、骨だけでなく脂肪との関連も観察した大変有用な研究です。受賞おめでとうございます。

 

私たち整形外科医にとって、骨粗鬆症をはじめとする運動器疾患の治療はADLの低下や健康寿命の短縮を防ぐために非常に重要です。そして臨床で用いられる治療はすべて、本学会で報告されているような基礎研究の上に成り立っています。本学会でそのことを再認識し、患者さんのADL向上、健康寿命延伸のため今後も研究に邁進していこうと決意を新たにしました。

APSS 2018 in Taiwan (石川慶紀)

2018年6月8-9日,台湾台北市においてAPSS (Asia Pacific Spine Society)のannual meetingが開かれました.APOA (Asia Pacific Orthopaedic Association)のspine sectionとして発展したこの会では, アジア太平洋地区を中心とした地域のspine surgeon, neurosurgeonにより,脊椎疾患にかかわる基礎研究から臨床研究,手術成績などの発表が行われます.秋田大学からは宮腰尚久准教授が講演依頼を受け,粕川雄司講師と私も演題を登録し参加発表いたしました.

宮腰准教授はシンポジウムSurgical Treatment for Spinel Deformity in Patients with Osteoporosisという演題で,骨粗鬆症に伴う椎体変形の矯正手術とその治療成績,手技につき,ASG (Akita spine group)で開発発展したPAVREC (Posterior-approach vertebral replacement with rectangular parallelepiped cages) という手術手技を交じえわかりやすくご講演され,反響も大きく,多くのご質問が会場からよせられました.粕川講師は骨粗鬆症椎体骨折治療に関して, 私は脊椎アライメントと背筋力や重心動揺を利用したバランス研究について発表討論いたしました.

学会の合間には台湾の歴史や食文化も学び,アジアでの日本の位置付けとこれから担うべき役割りを再考いたしました.世界に目を向けるのはもちろんですが,アジア太平洋地区にもアンテナを張り,その発展のために協力して行く必要性があると感じました.来年は韓国での開催になります.秋田の脊椎,さらにはアジアの脊椎を盛りあげ発展させるべく,当大学からも沢山の演題を出せればと考えております.

第61回日本手外科学会参加報告(齋藤光)

平成30年4月26、27日の両日、東京都の京王プラザホテルで第61回日本手外科学会学術集会が開催されました。本会の学会長は、昭和大学の稲垣克記教授で、テーマは「サイエンスとアート」の調和でした。Akita Hand Group(AHG)からは9人が参加し、最新トピックスについて学んできました。AHGからは合計5演題が採択され、千馬誠悦先生が「手指変形性関節症に対する装具療法」、成田裕一郎先生が「ばね指に対するトリアムシノロン腱鞘内初回1回投与の効果持続期間」、伊藤博紀先生が「背側天蓋状骨片を伴う橈骨遠位端骨折の検討」、白幡毅士先生が「変形性PIP関節症に対する掌側アプローチによる表面置換型人工指関節置換術の治療成績」、冨岡立先生が「コンバインによる上肢外傷〜手こぎ作業の危険性〜」という内容で発表しております。

私は今回、橈骨遠位端骨折のセッションを中心に聴講してきました。その中で、橈骨遠位端骨折後の二次骨折予防にむけた骨粗鬆症治療の取り組み、掌側転位型橈骨遠位端骨折の手術治療、尺骨骨折合併例の手術治療などの演題は、大変興味深く、勉強になりました。本学会で得られた知識を臨床へ活かせるように、明日からまた精進してまいります。来年はこの学会で発表できるようにと決意を新たにしているところです。
現在AHGは、日常診療から得られたクリニカルクエスチョンを研究テーマとし、新たに調査を計画中です。まずは来年の日本手外科学会、日本整形外科学会での演題発表を目標とし、最終的には国際学会での発表、英語論文執筆を目指して参ります。私自身、AHGメンバーとして、リサーチマインドを持ちながら臨床、研究、論文執筆に取り組んでいこうと思います。

齋藤光

AAOS2018米国整形外科学会参加報告(笠間史仁)

この度、36日~10日まで行われたニューオーリンズでの米国 整形外科学会(AAOS)に参加させて頂きました。
参加メンバーは、島田洋一教授をはじめとし、 大学から本郷道生講師、齊藤英知先生、木島泰明先生、 藤井昌先生、秋田労災病院から加茂啓志先生、 秋田厚生医療センターから木下隼人先生、UCSF留学中の斉藤公 男先生、そして若手医師として佐藤光先生(北秋田市民病院)、 五十嵐駿先生(中通総合病院)、笠間(秋田厚生医療センター) の総勢11名で行って参りました。
 私にとって初めての海外学会参加であり、 程よい緊張の中アメリカへ入国しようとしました。が、 アメリカ到着後の入国審査で審査官に「YOU HAVE NO ESTA」と言われ、 旅行会社に代行で申請してもらったことなどをカタコトの英語で伝えましたが叶わず、バックヤードへと連行されてしまいました。 その場で携帯での申請を求められましたが携帯の不調によりWifiが繋がらず、日本語の話せる黒人のiPhoneを借りて申請し 、何とか入国を認めてもらえました。 申請の間に乗継便を逃してしまいましたが、 私のことを待ってくださった本郷講師と日本人空港職員の計らいで 3時間後の便を確保していただき、 無事ニューオーリンズへと到着することができました。 旅行会社に確認しましたが、 なぜESTA申請ができていなかったのかは原因不明であり、 自分でできることは自分で確実に行うべきだという良い教訓になり ました。本郷先生、本当にありがとうございました。
 さて学会では、私は股関節と脊椎の講演を拝聴してきました。 最新の知見に基づいた報告を聞くことができ勉強になった一方、 英語力が足りないために内容のほとんどが分からなかったものもあ り、帰国後も継続した英語学習が必須だと痛感しました。
 また世界最大規模といわれる機械展示会場は圧巻でした。 大手メーカーの巨大ブースはもちろんですが、 日本企業も会場に点々とあることが印象的でした。
 AAOS参加後に五十嵐駿先生と私でサンフランシスコへと移動し 、23日でUCSF留学中の斉藤公男先生にサンフランシスコお よび留学先の案内をしていただきました。 サンフランシスコの多様な文化や現地での生活、医療事情等、 様々なことをご教示いただき、いずれは自分も留学を…! と大変刺激を受けました。公男先生、 何から何まで本当にありがとうございました。
 この度はこのように大変貴重な経験を得る機会を我々に与えてくだ さいました島田教授をはじめ、引率していただいた先生方、 並びに整祐会員の皆様方ににこの場を借りて御礼を申し上げたいと 思います。本当にありがとうございました。 この渡航期間に受けた刺激を大事にし、AAOS演題採択と留学を目標に来年度からの後期研修に臨みたいと思います。

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第48回人工関節学会に参加して(岩本陽輔)

2/23-24に東京で開催された第48回人工関節学会に参加してきました。

今回の人工関節学会には秋田の同門からはAHRG、ASAKGのメンバーを中心に多くの先生方が参加されました。AHRGからは小西先生、田澤先生、木島先生、佐々木研先生、鈴木紀夫先生、長幡先生、三浦先生からの発表がありました。

学会ではステム選択の考え方や脊椎、骨盤アライメントに対するカップ設置の考え方など多岐にわたり勉強することができました。この学会で得た知識を日々の診療・研究に活かしていきたいと思います。

発表をするAHRG若手と小西副会長、田澤人工関節センター長

 

第42回日本足の外科学会・学術集会に参加して(高橋靖博)

平成29年11月9日~10日に名古屋で開催された第42回日本足の外科学会・学術集会に参加して参りました。秋田からは柏倉剛先生、野坂光司先生、千田秀一先生、河野哲也先生、私の5人が口演で、計8題採択されました。内容はリウマチ・イリザロフ・靭帯/アキレス腱損傷・超音波・小児足部疾患の口演で、秋田の幅広い活動を全国にアピールできたと思います。

本学会では、子どもから成人の足および足関節に関する先天異常や麻痺性疾患をはじめとして、外傷やスポーツ傷害、変性疾患、腫瘍性疾患など、あらゆる足部・足関節の外傷や疾患、障害の成因や病態、診断、治療に関する臨床や基礎研究について学ぶことができます。私は「運動器エコーの診断・治療への活用 -足の外科領域において-」というハンズオンセミナーに参加しました。高倉先生(高倉整形外科クリニック)・岡田先生(岡田整形外科)・笹原先生(帝京大学スポーツ医科学センター)と著名な講師の方々が、描出のコツなどをわかりやすく解説してくださいました。足部・足関節の外傷ではATFLやCFL損傷・外果裂離骨折のようにレントゲンよりエコーの方が確定診断に有用な検査となることが多く、その技術を短時間で学ぶことができました。明日からの日常診療に役立てたいと思います。

夜は札幌医大の寺本先生・羊ヶ丘病院の倉先生にお招き頂き、秋田・札幌医大・羊ヶ丘病院の合同懇親会が開催されました。総勢20人を超える懇親会となり、他大学の年の近い先生やベテランの先生達、羊ヶ丘で研修した時にお世話になったスタッフ達と交流できたので、非常に刺激的かつ有意義な時間となりました。

今回この学会は初めての参加となりましたが、非常に楽しく学習できました。これを機会にもっと勉強していければと感じました。

第1回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会(木村竜太)

H29年10月28、29日に大阪国際会議場で第1回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会が開催されました。大阪大学の菅本一臣教授が会長をされ、「すべてがかわるリハビリテーション」というワクワクするテーマでした。

リハ医学会の秋季学術集会は初めての開催で、急増するリハビリの需要に対応し、エビデンスのある医療を提供するため今年度から春季と秋季の年2回の開催となりました。

当科からは島田洋一教授、松永俊樹准教授、工藤大輔先生、加賀望先生、岩本陽輔先生、塚本泰朗先生、木村の7人が参加し、FES(機能的電気刺激)、脊髄損傷の疫学、ロボットリハ、3Dプリンター装具、超音波などの発表を行いました。

療法士の先生も多く参加されており、どの会場でも立ち見が出るほどの盛況ぶりで、各会場で熱のこもった討論が行われておりました。

 

東京オリンピック・パラリンピックに向けての、障がい者スポーツのシンポジウムでは、カヌーでリオ8位になった瀬立モニカ選手も登壇され、「障がい者スポーツ医に望むこと」を提言されていました。海外では医師から障がいが生じた方へスポーツへの参加を積極的に促すそうですが、日本ではそのようにしてスポーツを始めた選手は少ない、ということでした。まだ日本国内では障がい者スポーツに理解がある医師は少なく、障がい者スポーツ医は秋田県内には2人しかいません(1人は当科の藤井昌先生です)。ぜひ自分も取得し、障がい者スポーツ発展の力になれればと思います。

第44回日本肩関節学会(杉村祐介)

2017年10月6~8日に、第44回日本肩関節学会が東京で開催されました。

今回は中通総合病院の畠山雄二先生、秋田大学の木島泰明先生、市立横手病院の大内賢太郎先生の演題が採択されました。今年の学会はこれまでの2日間から3日間に会期が延長され、また第1回アジアパシフィック肩肘シンポジウムも同時開催となり海外からの講師も多く、規模の大きさと国際色を感じさせる学会でした。日ごとに腱板、不安定症、人工関節、スポーツ障害などテーマが分かれていたこともあり、テーマごとに勉強しやすい構成でした。不安定症では具体的な症例ごとにケースディスカッション形式でのシンポジウムも行われ、様々な意見が出て診療方針を決める際の参考になる内容でした。また鏡視下上方関節包再建術の講演では、関節窩へのアンカーはメタルでなく細いソフトアンカーを多く使用することや、腱板の前方および後方(残存する肩甲下筋、棘下筋)を可及的に修復してから筋膜固定することの重要性が述べられていました。

また、学会後は畠山先生セレクトの中華料理店を訪れ、皆で美味しい料理を頂きました。

新たな刺激を受け実りのある学会となりました。今後もさらに成長できるよう日々頑張りたいと思います。

最後に、学会中の業務を代行してくださいました先生方に感謝いたします。

第6回国際足の外科学会(IFFAS 2017)に参加して(柴田暢介)

2017年9月29~30日にポルトガル・リスボンにて開催された6th Triennial IFFAS Scientific Meetingに参加して参りました. メンバーは, 柏倉剛先生, 青沼宏先生と私の3名です(千田秀一先生は残念ながら直接は参加できませんでしたがポスターでのご発表あり). 演題は全員が採択され, ポスターでの発表となりました.

演題を見渡すと, ポスター・オーラルともに日本人の発表が多く, 特に関節鏡のセッションでは演者の半数以上を日本人が占めていて日本のレベルの高さを感じることができました. 演者の先生は獨協医大の大関覚先生, 奈良医大の熊井司先生, 帝京の高尾昌人先生など日本を代表する先生だけでなく, 羊ヶ丘病院の倉秀治先生の元で研修されている若手の丸山和典先生が, オーラルでご自身の研究についてすばらしい発表をされていて, 私ももっと頑張らなくてはと思った次第です.

わずかではありますが観光も楽しめました. 会場近くの発見のモニュメント, ジェローニモス修道院を観て回り, リスボンで一番有名なお菓子であるエッグタルトの人気店にも立ち寄り, 食事は海産物や地元のビール, サングリアを堪能することができました.

今回の学会参加を機に, 今後もAFGの研究, 臨床共に益々励んで参りたいと思います. このような機会を与えていただいた島田洋一教授始め, AFGの先生方, また学会不在中ご迷惑おかけした先生方に深謝いたします.

第11回秋田県整形外科RAトータルマネジメントフォーラム(尾野祐一)

平成29年9月28日、第11回秋田県整形外科RAトータルマネジメントフォーラムが開催されました。一般演題は、北秋田市民病院の相澤俊朗先生から「AORA registryにおけるIFXの検討」、由利組合総合病院の鈴木紀夫先生から「股関節発症の関節リウマチの1例」についてご講演いただきました。特別講演は、帝京平成大学の仲村一郎教授から「関節リウマチと骨代謝―骨免疫調整における抗TNF製剤の役割―」という演題名でご講演いただきました。講演内容は、活性型ビタミンD製剤、プラリアの開発の経緯や、関節リウマチの名前の由来、歴史、原因に至るまで多岐にわたり、とても興味深いものでした。抗TNF製剤には、骨吸収抑制作用とともに、骨形成促進作用を有するという話題や、抗CCP抗体の値に応じて、RAの薬物選択の基準になりうる、という話題など、臨床診療やA-BONEの基礎研究につながるような部分もあり、今後参考にしていければと感じました。