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第66回東日本整形災害外科学会学術集会(塚本泰朗)

2017年9月15日, 16日の2日間新宿の京王プラザホテルにて, 第66回東日本整形災害外科学会学術集会が杏林大学市村正一教授を会長に開催されました.

秋田大学からは関連病院含めて脊椎班、関節班いずれからも多くの演題が出され, 活発な討論が両日繰り広げられておりました.

また, 秋田大学関連病院の研修医である五十嵐駿先生, 石橋恭太先生も口演で堂々としたプレゼンテーションをしており, 今後の整形外科医としての活躍が期待される素晴らしい発表でした.

総会では学術奨励賞の表彰があり, 学会に投稿された19論文の中から5編の論文が選出され, 光栄なことに私の「特発性膝骨壊死における内側半月板後角損傷と下肢アライメントの関連」と角館総合病院勤務の三浦隆徳先生の「非定型大腿骨骨幹部骨折と骨粗鬆症性大腿骨骨幹部骨折の比較」の2編の論文がその中に選ばれました. さらに若手優秀演題アワードに赤川学先生の「Hybrid closed wedge high tibial osteotomyのアプローチ法による侵襲性の検討」が選出され、秋田大学の勢いを他大学に印象付けられたのではないかと感じました.

 

 

 

 

 

 

 

また、例年学会期間中に開催される親善スポーツ大会は去年と同様に駅伝大会、フットサル、バスケットボールの3種目が行われました. 秋田大学は去年3種目全制覇の快挙を達成しており, 今年も2年連続の三冠を狙い望みました.

結果は駅伝大会では秋田大学Aチームが圧巻の走りで優勝, バスケットボール大会はBリーグ元秋田ノーザンハピネッツヘッドコーチの長谷川誠さんを特別スーパーバイザーとして招聘し大会に望み, 決勝を秋田大学A対Bで行うという完全制覇で連覇を達成することができました. フットサルは去年の準優勝チームと同じ予選グループに入り、熱戦を繰り広げましたが、勝ちきれず2試合とも同点となった末、順位決めのじゃんけんでも惜しくも敗れてしまい, 2年連続3冠には一歩届きませんでした.

このように学術だけでなくスポーツ活動も秋田大学整形外科は全国トップクラスの成績を収めております. 島田教授のもと地元秋田で開催される来年の同会では学術、スポーツいずれもさらなる飛躍を遂げられるよう日々精進を重ねてまいります。

第51回日本側弯症学会に参加して(尾野祐一)

平成29年8月24日~25日に札幌で開催された第51回日本側弯症学会に参加して参りました。秋田からは本郷道生先生、三澤晶子先生、工藤大輔先生、私がポスターで採択され、飯田純平先生が口演で採択されました。本学会は、ポスター・発表スライドは英語で記載するように指定され(発表は日本語でok)、国際学会を意識してか、口演の発表形式は5~8人ずつ発表して、発表者は壇上にならび、最後にまとめて質問を受けるという、日本ではあまり見ないスタイルでした。口演の飯田先生は、普段と異なる雰囲気でさぞ緊張するかと思いきや、今春の日本脊椎脊髄病学会でのシンポジストの経験からか、緊張するそぶりもみせず、「3次元筋骨格モデルによる骨盤傾斜を伴う高齢女性の立位・歩行時の脊椎・骨盤・下肢矢状面アライメント評価」について堂々と発表していました。後輩ながらさすがです!!

学会では、思春期特発性側弯症の手術や評価方法を中心に、側弯症検診のための新たなスクリーニング法、早期発症側弯症の手術方法、成人脊柱変形の病態や疫学・手術法についての演題が多くみられました。思春期側弯症に関しては、自ら外来でfollowする機会がないため、知識がまだ浅く、発表内容も難しく感じましたが、これを機会にもっと勉強していければと感じました。

 

Rehab week 2017(木村竜太)

7月17〜22日、英国ロンドンで開催されましたRehab Week 2017へ、当講座より島田洋一教授、松永俊樹准教授、工藤大輔先生、飯田純平先生、井上純一先生、畠山和利先生、渡邊基起先生、千田聡明先生、木村、当大学工学部より巖見武裕教授、秋田高専より小林義和准教授の計11名で参加してまいりました。International Neurorehabilitation Symposium (INRS)、IEEE International Conference on Rehabilitation Robotics (ICORR)、Annual Meeting of the International Functional Electrical Stimulation Society (IFESS)、British Society of Rehabilitation Medicine (BSRM)​​ Meetingの4学会が併催され、日本からも医学、工学両分野から多くの参加者がいらっしゃいました。レクチャーが主体でしたが、Poster発表では畠山先生、渡邊先生、千田先生、小林先生、木村がIFESSで、工藤先生がBSRMで発表を行いました。

 

本会はICORRというリハビリテーションロボットの学会も含まれているため、多くのリハビリテーションロボットの展示も行われていました。歩行訓練ロボットでは、日本に1台しかないLokomatのデモもあり、実際に体験しながら、現地のPT、エンジニアから詳細を聞くことができました。目標軌道追従型でありながら、麻痺の改善に応じてモーターサポートとは競合せず、ケーデンスに合わせた歩行速度の調整もできるなど、高い技術に感動するとともに、我々のロボットの利点というのも実感しました。

また手指ROM訓練ロボットや、外骨格系の歩行補助ロボットも様々な機構のものが開発されていました。個人的には、転倒予防訓練のために外乱を歩いている人に与えるという衝撃的なロボットもあり、リハビリ自体にリスクも感じましたが、今後もっと様々なリハビリテーションロボットがでてくると思われ、ワクワクさせられました。

今回得た経験、情報をもとに、より研究の発展へ邁進してまいります。

 

第61回日本リウマチ学会総会・学術集会に参加して(河野哲也)

2017年4月20日〜22日、福岡県国際会議場で開催されました、日本リウマチ学会学術総会・学術集会に参加しました。

私個人にとっては、AORAメンバーに加えていただいてから、初めてのリウマチ関連学会への参加となります。AORAからの演題は、オーラル、ポスターを合わせて10演題の発表がありました。学会日程は計3日間でしたが、毎日14会場で発表・講演があり、内容も診断、治療、リハビリ、看護と多岐にわたり、リウマチ診療は多職種が密に関わっていることを改めて実感しました。

今回私はオーラルでの発表機会に恵まれました。私の演題は「AORA registryにおける生物学的製剤併用手術周術期合併症の検討」です。現在では、多くの生物学的製剤が登場し、よりタイトな関節リウマチ治療が可能となってきましたが、関節破壊が進行し手術が必要な患者さんも多く存在します。そういった症例において、生物学的製剤併用による、術後感染や創傷治癒遅延の発生率等について発表いたしました。質疑応答でも大変貴重なコメントをいただきました。

まだまだ関節リウマチ治療経験の浅い自分ですが、今回の経験を糧に、診断から治療まで一貫して行えるよう、さらに精進したいと思います。

12th Annual International 2017 Orthopaedic Trauma Course(尾野祐一)

2017年4月26日〜30日、島田教授のご高配により、毎年継続して秋田大学整形外科から参加している米国サンフランシスコでの外傷コースに参加しました。参加メンバーは赤川学先生、木村竜太先生、私の大学院同期3人です。初日の26日には、Pre-CourseのCase Presentationsに参加したのち、UCSF San Francisco General Hospitalでリハビリテーション医としてご活躍されている長尾正人先生のもとを訪れ、同院を案内していただきました。長尾先生は、島田教授の札幌医大の同級生ということで、アメリカの勤務医の日常から病院の仕組み、学生時代の島田教授の武勇伝まで幅広い内容のお話を聞かせていただきました。
写真1.Orthopaedic Trauma Instituteで長尾先生と。

夜の懇親会では、長尾先生を中心に、UCSFに留学に来られている清水先生、小林先生、森岡先生や、短期で研修に来ている関西医大の6年生の二人、我々と同じくTrauma Courseに参加するために渡米してきた最上先生、徳永先生、脇先生、稲垣先生らと中華料理を食べに行きました。会場はGreat Eastern Restaurantという所で、あのオバマ前大統領や元NBAプレーヤーの姚明も訪れた有名な会場でした。それぞれ違う大学で、異なる専門分野の先生方から、留学中の苦労や、各大学での基礎研究の様子、他大学からみた秋田大学の印象などといったお話しを聞くことができ、大変貴重な経験となりました。

27〜30日にかけてはGeneral Sessionとして、各骨折に対する一般的な治療法の解説が行われ、最後にプレゼンターが壇上にあがり討論する、という形式でTrauma Courseが進みました。上腕骨近位部骨折に対しては積極的にReverse型肩人工関節置換術が行われていることや膝蓋骨粉砕骨折にプレートが用いられていることなど、日本とは一部異なる部分もありましたが、大方の骨折治療に関しては日本と同様のことが行われ、知識の再確認をすることができました。銃撃事件やテロ発生時の外傷への対応などについてのセッションもあり、銃やテロが日本よりも身近にあることを意識させられ、日本がいかに平和であるかということを強く感じました。

写真2.2017 Orthopaedic Trauma Courseの様子

写真3.Workshopで模擬骨にインプラントを挿入している赤川先生(右)と稲垣先生(左)

今回の米国滞在を通して、米国ならびに世界での骨折・外傷治療方法について確認できたこと、日本の他大学の先生方と親交を深めることができたことは非常に良かったと感じています。と同時に、自分の英語能力の低さも痛感しました。リスニング能力が低いのはもちろんのこと、スピーキング能力が著しく低く、言いたいことを伝えられないもどかしさをいろんな場面で感じました。日本に帰国してからも「英語を身につけたい!」というモチベーションを保ち、いつか海外の人とディスカッションできるよう英語学習を継続していきたいと思います。

The 4th Japan Korea Knee Osteotomy Symposium(赤川学)

平成29年4月22日、富山市民プラザにおいてJapan Korea Knee Osteotomy Symposiumが開催されました。我々ASAKGはここ数年毎年このシンポジウムに参加していますが、今回はシンポジウムに先立ち、前日の4月21日にAO Around the Knee Osteotomy seminarが開催され、国内外の膝周囲k関節温存手術のエキスパートからOsteotomyの基本を学ぶ機会を得ました。セミナーには海外からの参加者も多く、講演からハンズオンまで大盛況でした。当科からは齊藤英知先生がFacultyとして講演し、日本一のTCVO surgeonとして手術手技の基本から豊富な症例を示してくれました。

翌日のJapan Korea Knee Osteotomy Symposiumにも多くの整形外科医が集い、関節温存手術の最新の研究について熱いdiscussionを交わしました。当科からは塚本泰朗先生、佐藤千恵先生がポスターセッションで、斉藤公男先生、齊藤英知先生が口演で発表しました。国内外を通してもTCVOを行っている施設は限られており、その発表は大きな注目を集めました。

ここ数年、膝関節温存手術は急速に普及してきており、特に日本の様な膝の深屈曲を要する生活様式では、その需要はまだまだ大きなものがあると思います。HTO、TCVO、DFOとその術式は多様で、さらにこれらを組み合わせたDouble level osteotomy、Double level triple osteotomyにより、進行した変形性膝関節症患者さんにも対応できる様になってきています。関節温存手術で痛みを取りながらも、自分の膝で生きていく。この意義は非常に大きく、我々ASAKGはますますこのOsteotomyの発展に貢献していかなければならないと感じました。

第8回日本ニューロリハビリテーション学会、The 6th Japan-Korea Neurorehabilitation Conference(木村竜太)

H29年4月22日、23日に富山国際会議場で第8回日本ニューロリハビリテーション学会、The 6th Japan-Korea Neurorehabilitation Conferenceが開催されました。当大学からは島田洋一教授が「Neurorehabilitation with most advanced biomedical engineering technology」と題してlectureを、松永俊樹先生、木村が一般口演で、岩本陽輔先生がポスター発表を行いました。島田教授から、我々の主なテーマである医工連携による医療機器の開発ならびにその臨床応用について、韓国の先生方にも力強いメッセージを伝えていただきました。

ニューロリハの概念が一般的となり、黎明期、そして揺籃期を経て次の段階へ進む時期のようです。再生医療技術、またロボット技術の発展で急激に発展する可能性をもった分野であり、秋田大学整形外科、リハビリテーション部でも最先端の知識を得ながら、日常診療に還元をしてまいります。

 

追記、晴天の春の富山はとても清々しいところでした。同日隣で行われていた The 4th Japan-Korea Knee Osteotomy Symposium参加の先生と交流もできました。

第46回日本脊椎脊髄病学会学術集会 (工藤大輔)

第46回日本脊椎脊髄病学会学術集会を2017年4月13日〜4月15日、札幌市のロイトン札幌、さっぽろ芸文館で秋田大学整形外科主幹のもと開催させていただきました。遠方にもかかわらず演題数約1500題、参加者数約2300人といずれも過去最大級の学術集会となりました。会長は当教室島田洋一教授で開会式では本大会のテーマ「サイエンスに基づく脊椎脊髄外科の進歩 The practice of spine surgery is an art, based on science」とともに教育研修講演、シンポジウム、パネルディスカッションなどについてご紹介いただきました。また秋田ならではのおもてなしの一つとして秋田銘菓かおる堂についてご紹介いただきました。

各セミナーでは、日本の第一線でご活躍されている先生方に教育的かつ最新の知見について幅広い分野からご講演いただきました。秋田からは阿部栄二先生より成人脊柱変形の治療の変遷と現在の最新知見について、宮腰尚久准教授より骨粗鬆症患者における転倒・骨折予防に対する運動療法とビタミンDの有効性について大変分かりやすくご講演いただきました。また河谷正仁教授より慢性疼痛に関するfMRIや遺伝子工学などを用いた最新のメカニズムについてご講演いただきました。

本学術集会の目玉の一つであるパネルディスカッションでは「医工連携による脊椎バイオメカニクス研究」として日本あるいは世界最先端のシミュレーション技術、バイオメカニクスについて各大学の先生方から最新の研究をご紹介いただき、活発なディスカッションとなりました。特に秋田大学からは理工学部教授巌見武裕先生、当科飯田純平先生より秋田大学独自の最新のシミュレーションモデルについてご紹介いただきました。本モデルの作成は現在もなお進行中で、近い将来本モデルを用いて臨床データをより迅速に検証、評価できるようになるものと期待されています。

会長講演では島田教授より脊柱変形診療の歴史についてご講演いただきました。30年以上も前から秋田県ではモアレ法を用いた側弯症検診が行われてきたこと、1992年当時に世界に先駆けて当教室で胸椎椎弓根スクリュー法が開発されたことなどをご講演いただきました。現在では胸椎椎弓根スクリューは側弯症手術におけるゴールドスタンダード法ですが、当時は危険な方法として世界に受け入れられなかったことなど先輩の先生方の当時の革新的な手術法の開発、それに伴う苦労が伝わってきました。

会期中は一時季節外れの吹雪にも見舞われましたが、幸い大きなトラブルもなく、日本全国のみならず教育講演として世界中から第一線でご活躍されている先生方にもご参加いただき大盛況にて閉幕となりました。ご参加くださいましたすべての先生方、関係者の皆様、企業の皆様、また2年前から本大会を支えてくださいました株式会社コングレの皆様にこの場をお借りして深謝申し上げたいと思います。また本大会が大成功しましたことを会長の島田教授に改めてお慶びお祝い申し上げます。

2017 AAOS(American Academy of Orthopaedic Surgeons,アメリカ整形外科学会)のpaper(口演)を経験して,いま思うこと(野坂光司)

2017年3月14日~3月18日,サンディエゴで開催されたAAOSで.口演してまいりました.発表内容は,足関節周辺骨折におけるMATILDA法(Multidirectional Ankle Traction using Ilizarov external fixator with Long rod and Distraction Arthroplasty of Pilon fracture )の有用性についてです.MATILDA法とは,秋田Ilizarov法グループで発案した,高齢者足関節周辺骨折に対して行うIlizarov創外固定の特徴を生かしたLigamentotaxisによる整復, Distraction Arthroplastyを行いつつの早期荷重を可能にするリング設置による治療法です(別冊整形外科66:173-177,2014,整形外科サージカルテクニック 5:56-62, 2015,整形外科手術 名人のknow-how イリザロフ創外固定を用いた難治骨折の治療.整・災外 59:1152-1157,2016).

20年後の関節症性変化が勝負とされるPilon骨折において,わずか1年の臨床成績のこの我々の後ろ向き研究に対し,これまで国内のプレゼンではときに批判も受けてきましたが,今回,難関のAAOSのOralに採択されたことで,さらに,フロアの反応も良好だったことで,我々のしてきたことが世界でも認められたと嬉しく思っております.

県内では,島田教授の応援に加え,山田晋講師が『MATILDAっていいな』と言ってくれたことがとても心強かったです.

また国内でも,私のIlizarovの師匠である大関教授や杉本先生,さらには多くのPilon骨折の達人の方たち,特にJSETS土田芳彦先生の応援は非常に心強く,『MATILDA法は世界に誇るべき優れた方法です』という励ましのメッセージを,AAOS発表前,緊張を和らげるために何度も読み返しました.今回創外固定学会で多くのシンポジウムを下さった白濱正博先生,また衣笠清人先生,野田知之先生,小川健一先生,松村福広先生ら,多くのプレートの達人,髄内釘の最上敦彦先生や,EOTSで認めて下さった黒住健人先生など,IlizarovなしでもPilonをラクラク治せてしまう天才外科医の方々の励まし,Ilizarov界では竹中信之先生の応援など,私が若い頃から本当に憧れ,目標にしてきた多くの偉大な先生方がMATILDA法を認識して下さったことはAIMGにとって本当にありがたいことです.

留学先のBossで,アメリカ足の外科学会の重鎮であるProf. Brodskyの高評価と激励も大変な自信になりました.

これまでIlizarovのプレゼンをするたびに,幾度となく『そんなもの(Ilizarovなんか)いらない』と言われてきました.その通りです.患者さんを,トラブルなく,内固定し,しっかり歩かせられて,早期に社会復帰させることができれば,あんな大きくて不快なIlizarovなどいらないのです.僕はMATILDA法が最強だ,などとは微塵も思っておりません.内固定で上手く,そして早く社会復帰させられたら,それに優るものはないのです.でも残念ながら,世の中は天才外科医だけではありません.私のもとには多くの悲惨な感染例が紹介されてきますし,骨はついたけど尖足で困るといった症例なども後を絶ちません.いい手術だけど2ヵ月ほど『足をつかないで』と言われてリハビリ病院で車イス生活になった人もいます(それはいい手術ではないかも).

いつも思うことは,プレート,髄内釘,Ilizarovは単なる固定材料であり,そこに優劣などつけるべきものではありません.Bone Transport,血管柄付腓骨移植,Masqueletも手術方法であり,それに優劣をつけようとするのも同様の行為と思います.大切なのは,どの治療戦略が,目の前の患者さんを最も上手く早く治すのかという,詳細な術前準備と,患者を最後までしっかり治そうとする強い意志(自分の哲学)と,自分の力量の把握だと思います.

何事も,我々の対象は患者さんです.外科医の手術自慢であってはなりません.その患者さんにとって何がベストなのか,症例ごとに大腿骨か下腿か,関節内か関節外かなどの部位,重症度のグレード,骨強度,若年か老年か,骨欠損なら大きさ,開放骨折ならGustiloのグレードなど,丁寧に適応を議論したり,エビデンスを模索すべきものなのに,一元的に何が一番いいかに固執することはナンセンスと思います.

自戒も込めて,若手にはIlizarovは患者の快適さを犠牲にしているという謙虚さを常に忘れないように口を酸っぱく言います.1㎜の整復不良が,1日のLIPUSの注文忘れが,骨癒合を遅らせるのです.また,AFTTGの若手にはFlapは健常組織を犠牲にしているという謙虚さを忘れないMicrosurgeonになってほしいです(もちろん積極的に必要なFlapを行うことで,これまでのIlizarovよりも快適な術後生活を早く提供できる腕も身に着けてほしいです).相手は生きた患者なのです.

最近,偉大な先生方の講演を拝聴し,トラブルケースの相談を受け,思うところを綴ってみました.

日本中の優秀な外傷外科医が本気で力を合わせたら,日本中の患者がHappyになるはずです.いがみ合っている場合ではありません.

そのような日が一日も早く訪れるように,もう若手ではない自分は,『老害』と言われないように勉強を続け,もっともっと自分の尻を叩いて,奮起しなくてはと思います.時代は刻一刻と変わり,この多様性に適応するには,あらゆる分野の『融合』が必要なはずです.まさに『現状維持は退化』なのだと感じずにはいられない今日この頃です.

AAOS2017米国整形外科学会報告(木島泰明)

 世界最大規模の整形外科学会であるAmerican Academy of Orthopaedic Surgeons (AAOS)
が2017年3月14日から3月18日までアメリカ西海岸のサンディエゴで行われています。
 今日はその最終日のSpecialty Dayで、各専門分野のトップの先生方が今年度のまとめの講演をして下さる日でした。私はHip Societyの会場で講演を拝聴してきました。
 やはり人工股関節置換術の話題が多く、第2世代の高架橋ポリエチレンの成績は良くリメルト処理の方がアニール処理よりも摩耗が少ないとか、いずれにしてもポリエチレンのクオリティが高いためアメリカでの人工関節摺動面の選択は6割がメタルonポリエチレン、35%がセラミックonポリエチレンだという報告がありました。しかし最近ではネックと骨頭部のTaper Corrosionの話題が多く、骨頭もセラミックが選択されるケースが増えているそうです。ちなみに感染率もセラミックヘッドの方が低いと報告されていましたが、今後は抗菌薬入りのポリエチレンも開発されるようで、驚きです。
 本学会で特筆すべきは何といっても我らが秋田大学の野坂光司先生が口演でのご発表をされたことです。タイトルは、Comparison of Joint Distraction and Non-distruction using an Ilizarov External Fixator in the Treatment of Ankle Fractures in Older Patientsです。とても素晴らしい内容ですし、この分野のゴールドスタンダードになる手術方法だと会場の先生方が確信されたことと思います。
 今回は秋田大学整形外科AAOSトラヴェリングフェローとして、今年度人工関節関連の英語論文を発表された鈴木紀夫先生(由利組合総合病院)と冨手貴教先生(北秋田市民病院)が選ばれ、AAOSに参加されています。冨手先生はサンフランシスコに留学経験がありますし、鈴木先生もつい先日リウマチ分野の国際学会でワシントンを訪れていてアメリカ慣れされているため、今回、特別研修プログラムとして参加した若手の井上純一先生(秋田厚生医療センター)や原田俊太郎先生(由利組合総合病院)を先導し、学会参加だけでなくアメリカ文化に触れるためのノウハウも率先してご教示くださっております。
 さて、そろそろこちらは最終日の午後5時を迎えようとしています。今回は野坂先生の留学先でお世話になったアメリカ人の方からも多大な歓迎を受け、連日、おいしいレストランにも連れて行っていただきましたが、今晩は6人で最後の晩餐を頂き、秋田への帰路に就きたいと思います。この度はこのように大変貴重な経験を得る機会を我々に与えてくださいました島田教授をはじめ、参加者の勤務先の先生方、並びに整祐会員の皆様方ににこの場を借りて御礼を申し上げたいと思います。特に山田講師には多大な援助を頂きました。本当にありがとうございました。明日の朝は午前四時にホテル出発予定ですが、無事に全員秋田まで返すのが私の任務ですので最後まで気を抜かずに頑張ります。それではみなさん、秋田で。