セミナーレポート」カテゴリーアーカイブ

第3回秋田県リウマチ治療講演会 (原田俊太郎)

秋田はまだまだ冬の寒さ厳しく、雪深い中ではありますが2022年2月15日に「第3回秋田県リウマチ治療講演会」がオンライン開催されました。

Lectureでは平鹿総合病院小林志先生から「AORA registryにおけるサリルマブ投与例の調査」を御講演いただきました。サリルマブを用いることでの他剤減量など、他科と併診が多く内服薬の多い高齢者における有用性は大変勉強になりました。超高齢県である秋田県ならではのデータに基づいたAORA groupの先生方の発表は毎回、大変興味深く拝聴させていただいております。

Special Lectureでは岡山大学学術研究院医薬学域准教授の西田圭一郎先生から「関節リウマチに対する外科的治療のピットフォール」をご講演いただきました。Champion症例の発表や教科書は世の中にたくさんありますが、top surgeonが一度うまくいかなかった際にどのようにrecoveryするかという本当に貴重な内容でした。人工肘・手関節から、人工関節周囲骨折に至るまで豊富な画像や手術動画を交えた実臨床に即した明日からの我々の診療に役立つ情報満載のご講演でした。

講演後はフロアからも質問が殺到し、秋田の深い雪を溶かすほどに大変な盛り上がりを見せておりました。私自身も多くのことを学ばせていただき、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。今回学んだ内容を今後の診療、研究に役立て行きたいと思います。

第7回しらかみ疼痛セミナー(五十嵐駿)

2022年2月9日、第7回しらかみ疼痛セミナーがオンラインで開催されました。

一般演題1では大曲厚生医療センター整形外科の岩本陽輔先生から「大転子部痛症候群における鏡視所見と病態の検討」と題してご発表いただきました。近年、股関節周囲の痛みの原因として注目されている大転子部痛症候群に関して、実際の術中の画像所見や、これまでご経験された症例のデータを分かりやすく説明して頂きました。また、大転子部痛症候群主体が大転子部滑液包炎であるといった最新の知見も教えて頂きました。

一般演題2では当教室の工藤大輔先生から「四肢体幹筋肉量が脊椎矢状面アライメントに与える影響」と題してご発表いただきました。脊椎のアライメントに与える因子や、サルコペニアと腰痛の関連などに関して自験例での検討結果や過去の報告などを詳細に報告して頂きました。脊椎のアライメントにおいては筋量よりも背筋力が重要な因子となりうることをお示し頂きました。

特別講演では秋田大学大学院麻酔・蘇生・疼痛管理学講座准教授の木村哲先生から「慢性疼痛診療における多職種連携」と題してご講演頂きました。

初めに痛みの概念、定義、種類、生理学的な仕組みといった基礎的なことから詳細に解説して頂きました。その中で、以前は心因性疼痛と呼ばれていた疼痛が、近年Nociplasticな疼痛(痛覚変調性疼痛)と名称が変更になったという最新のトピックスがありました。Nociplasticな疼痛とは痛覚伝導路の可塑的変化で生じる痛み、痛覚の機能的異常による痛みを指し、整形外科医にも必須な知識と思われました。薬物治療に関しては抗うつ薬、抗てんかん薬、オピオイドの生理学といった基礎的な内容から実際の適応症例などについて、また、神経ブロックに関しては、その利点や注意点、使い分け、適応の限界について詳細にご説明頂きました。最後に慢性化する疼痛に対しては生物学的要因のみではなく社会的要因、心理的要因も視野に入れることが重要であること、多職種が連携をとりあう集学的治療が今後必要になることを解説して頂きました。疼痛を訴える患者を診ることが多い整形外科医にとっても大変ためになるご講演でした。

今後、痛みで困っている患者さんに対しては、整形外科医で適切に治療していくことはもちろんのこと、治療に難渋する場合には麻酔科をはじめ多職種と連携し、より効果的な治療を行なっていけるように心がけることが重要と思います。

第11回こまちリウマチセミナー (大屋敬太)

吹雪と共に冬が来訪する中で、2021年12月2日に第11回こまちリウマチセミナーがオンライン開催されました。

オンラインのため当直先の社宅から参加でき、専門医ではない大学院生の私にとっても大変勉強になる内容でした。

一般演題は大曲厚生医療センターの岩本陽輔先生から「アバタセプトの使用成績~AORA registryから~」の演題でご発表いただきました。DMARDsの経験が少ない筆者ですが、その他のbDMARDsとは一線を画すアバタセプトについてとても勉強になりました。間質性肺炎合併RAへの使い勝手の良さがわかったので、間質性肺炎になっている高齢RAの初療にに対して検討してみたく思いました。

続いて能代厚生医療センターの伊藤博紀先生からは「リウマチ手指変形に対する治療アプローチ」にてついてご発表いただきました。尺側偏位の原因の一つが、屈筋腱や伸筋腱の外方化や拘縮によるという、今まで知る由もなかったことが分かり、一気に知識が深まった気がします。

特別講演は、北海道内科リウマチ科病院最高顧問の小池隆夫先生のご講演「関節リウマチの治療:20年のあゆみと今後の展望」で締めくくられました。

治療内容の変遷や、DAS28やACR/EULAR2010への疑問提示といった、普段RAの治療経験が少ない若手にこそ勉強になる内容だけでなく、関節エコーを駆使した小池隆夫先生流のフォローアップの方法や、JAK阻害薬の添付文書の改訂、生検・病理を用いた未来のRA診療など、AORAグループの先生方にとっても最新の知見が得られた講演内容でした。T2Tの考え方の下、適切なタイミングで、エコーやbDMARDsなど今使えるものをフルに用いて、患者さんの訴えに沿った診療をしていきたいと思います。

素晴らしいご講演をいただいた小池隆夫先生、本日の運営に携わった先生方、誠にありがとうございました。

関節機能改善トピックスセミナー in AKITA(村田昇平)

7月となり,今年もいよいよ夏本番の足音が聞こえる時期となって参りました.スポーツを行うに気持ちの良い季節となり,今年は東京オリンピックも開催予定であります.そんな運動シーズンにぴったりな「関節機能改善トピックスセミナー in AKITA」が令和3年7月1日にオンライン開催されました.

一般演題では宮腰尚久准教授の座長のものと,秋田大学,齊藤英知先生より「前十字靭帯不全による2次性変形性膝関節症に対するアプローチ」と題してご講演いただきました.先生の非常に豊富な経験から導き出された,ACL不全の膝OAに対する骨切り術の治療戦略,実際に手術を行う上でのテクニカルなポイントをご教示いただきました.膝関節手術において,関節温存,関節機能改善の観点から,近年,骨切り術への関心が年々高まってきております.実際の臨床の場では手術適応などの決定に難渋することも多いですが,齊藤先生の明瞭なお話は,膝治療に携わるものとして,とても勉強になりました.

特別講演では秋田県立療育機構理事長,島田洋一先生の座長にて,愛知医科大学整形外科学講座教授,出家正隆先生より「変形性関節症治療の話題」と題してご講演を賜りました.出家先生のご講演では,運動療法,PRP療法,ヒアルロン酸の関節注射,装具療法,TKA手術の適応など,保存治療から手術治療まで,「膝関節機能改善」に関するありとあらゆる話題をご教示いただきました.どの話題も素晴らしかったですが,私は,秋田ではまだあまり馴染みのないPRP療法の実際や,装具療法による半月板移動量の変化に関する研究について,特に興味深く拝聴させていただきました.公演後はフロアからも質問が殺到し,非常に盛り上がっておりました.関節機能改善のために,明日からの診療,研究に実践できるお話をたくさんしていただき,大変感銘を受けました.

膝関節機能低下により痛みなどのトラブルを抱えた症例は,整形外科の臨床の場では日々遭遇します.「関節機能改善トピックスセミナー in AKITA」では,関節機能を回復させるための多くのことを教えていただきました.今回,学んだ内容を活かして,今後の診療,研究に邁進していきたいと思います.

第9回こまちリウマチセミナー(齋藤光)

令和1年12月12日、第9回こまちリウマチセミナーが開催されました。

 
一般演題1は、北秋田市民病院の岩本陽輔先生から「RA治療におけるアバタセプトの有効性〜AORA registryから読み解く〜」の題で発表いただきました。秋田県内でのリウマチ患者さんを登録した“AORAレジストリー”の特徴は高齢者が多いことであり、その中でのアバタセプトの使用状況についてわかりやすく報告いただきました。

 
一般演題2は能代厚生医療センターの伊藤博紀先生から「リウマチ上肢手術の適応とタイミング」の題で発表いただきました。リウマチ患者さんの生活に大きな影響をあたえる“手関節”の手術治療について、手術のタイミングやその実際について解説いただきました。

 
特別講演は、山形大学医学部附属病院 リハビリテーション部 准教授の高窪祐弥先生から「北欧フィンランドリウマチ診療を目指して−山形循環型病診連携“やらんなネット”5年間の軌跡−」という演題名でご講演いただきました。まずリウマチ治療の基礎について最新の知見を交えながら解説いただき、フィンランド留学中のご経験を多数の写真を交えながら臨場感たっぷりにご紹介いただきました。フィンランドの医療状況、食文化や生活は非常に興味深く、楽しく拝聴させていただきました。日本との相違点として、フィンランドでは一人の患者さんにじっくりと時間をかけて診療することが可能で患者満足度も高く、医師患者間の信頼関係構築もしやすいのかなと思いました。ご留学から帰国後に、高窪先生が山形県で取り組まれたリウマチ診療病診連携システムの構築については、立ち上げから現在にいたるまでの紆余曲折を教えて頂きました。地域連携ネットワークを構築する際のノウハウは私達にとっても大変役立つものであり、貴重なお話を聞くことができました。高窪先生、大変ありがとうございました。
本セミナーで学んだことを、明日からの臨床に役立てて、さらに研鑽を積んでいきたいと思います。

 

 

 

第15回 秋田県運動器疾患セミナー(粕川雄司)

2019年9月11日水曜日、第15回秋田県運動器疾患セミナーが秋田ビューホテルで開催されました。

 

はじめに、大曲厚生医療センター整形外科 診療部長 阿部利樹先生より「骨粗鬆症性椎体骨折に対する椎体形成術」と題しミニレクチャーをいただきました。高齢化に伴い増加している骨粗鬆症性椎体骨折に対する椎体形成術についての詳細なご講演は、大変勉強になりました。実際の手術手技やその注意点、また数多くの治療例についてその効果・有用性をご提示いただきました。今後益々適応が増えてくると考えられる重要な手技ということを改めて認識致しました。

 

特別講演は、大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学 講師 海渡 貴司先生より 「脳バイオマーカ-を用いた頚髄障害に対する外科・保存治療の効果予測」と題しご講演頂きました。椎間板の再生や骨形成の可視化、また骨形成促進能を有するBMPについての基礎的なお仕事の歴史について、多くの先生方とのかかわりを含めてお話しいただきました。さらに頚髄症の臨床症状、特に上肢症状の改善は、Resting state fMRIという脳機能画像解析による脳機能的結合の変化と関連し、また脳活動(ALFF)の術前後での変化も臨床症状の変化と関連することから、頚髄症の保存治療や手術治療の効果予測・判定が可能であるという、最先端の知見を教えていただきました。最後に基礎と臨床の仕事を進めるにあたっての心構えをお話しいただき、今後の仕事の姿勢について改めて考えることができました。大変お忙しいところ秋田までお越し頂き、ご講演頂きありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

第6回しらかみ疼痛セミナー(阿部和伸)

冬の厳しい寒さが続いてはいるものの、ひだまりの温かさには春の気配を感じ始めた2019年2月22日、「第6回しらかみ疼痛セミナー」がアトリオンで行われました。整形外科診療と疼痛には深いつながりがあり、疼痛とその治療に関する知識は私たち整形外科医にとって必須のものといえます。今回は北海道と鹿児島から2名の先生に秋田へと足を運んでいただき、脊髄損傷の医療とそれに関連する痛み、肩腱板断裂の痛みと手術についてそれぞれご講演いただきました。

特別講演1には独立行政法人労働者健康安全機構北海道せき損センター副院長の須田浩太先生をお招きし、「北海道における脊損医療の現状と課題~痛みも含めて」という題でご講演いただきました。
北海道せき損センターは、脊髄損傷の急性期から慢性期に至るまで、すなわち救急、手術、リハビリテーション、社会復帰まで包括的な医療を行っている大規模専門せき損センターです。このような施設は日本で北海道と九州に2施設しかありません。須田先生は北海道における脊髄損傷の疫学、治療、リハビリテーションの現状、呼吸器感染や血栓といった合併症対策などについて、実際の豊富な症例を交えてお話しいただきました。また、須田先生の秋田通ぶりもご紹介いただき、秋田と所縁のある祖先の話題であるとか、秋田の食などもスライドに登場し、大変楽しいご講演でした。

特別講演2には鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻運動機能修復学講座整形外科学教授の谷口昇先生をお招きし、「腱板断裂に対する腱板修復術と人工関節の適応」という題でご講演いただきました。
谷口先生はアメリカのスクリプス研究所へ留学して10年近く研究をされてきた先生で、研究者から臨床の現場に戻る決意をされ、帰国して北海道で肩の修行をしたのちに宮崎を経て故郷である鹿児島に戻ったという経歴があります。最初にこれまでをドラマティックに振り返り、研究所での出来事やターニングポイントとなった出来事などをお話しいただきました。肩の痛みを訴えられる患者さんは非常に多いです。今回は特に腱板断裂の痛みやこれに対する手術治療について、すなわち腱板縫合から反転型人工肩関節まで最前線の治療をご紹介いただき、大変勉強になりました。

今後も疼痛を訴える患者さんに真摯に向き合い、痛みの改善やQOLの向上を目指して最適な治療を提供できるよう研鑽を重ねていきたいと思います。

整形外科若手セミナー(長幡樹)

昨年から始まった整形外科若手セミナーを今年も開催しました。今回は大学院3年目の飯田・岩本・高橋・長幡・湯浅の5人で年末から準備をしてきました。今年からの新しい取り組みとして整形外科の若手だけでなく、県内の各病院の研修医や5・6年生の学生にも声をかけて参加してもらいました。30人近い参加者の中、和気藹々と若手同士だからこそできるような気兼ねのない討論となり大盛況の会となりました。

 
島田洋一教授の挨拶に始まり4つの講演と、後半はギプス巻きのハンズオンの内容で本会を開催しました。最初に高橋先生の「単純X線のCheck point」と湯浅先生の「骨粗鬆症」についての講義をしてもらい知っている人にとっては再確認ができ、またこれから活躍する若手には明日からでもすぐに使える内容の講義でした。見逃しを防ぐための心構えや注意してみていても見逃してしまいそうな骨折について話をしてもらい、「ハッ」とさせられるような内容でした。湯浅先生は普段ちょっと悩んでしまうような骨粗鬆症薬の使用方法から各薬の注意点など二人ともウィットに富む話術と飽きさせないスライド作りでみんなを楽しませてくれた講演でした。後半2つの演題は若手ならでは普段の講演では無いような発表となりました。自分から「病棟での過ごし方」での発表と飯田先生から「学会活動のメリット」の講演をしてもらいました。およそ学術的な面からは離れるような内容でしたが笑いとともに突っ込みのような質問が飛びかいとても活発な会になりました。

 
その後ギプスの巻き方を各箇所に合わせて全員で手を動かしてハンズオンとして行いました。講演が盛り上がりすぎて少し時間が押してしまったためギプスは全部を教えきれなかったところもありましたが、細かいポイント、普段何を気をつけて固定しているのかなどみんなで情報を共有することができたのではないかと思います。

 
最初から最後までみんなが笑顔で楽しんで会が開催できました。今回のセミナーに参加してくれた多くの先生がたに感謝します。これからの診療・医師生活の参考になっていただければと思います。

Rehabilitation Year Topic Seminar 2018(渡邉基起)

H30年12月2日,秋田県リハビリテーション研究会主催のRehabilitation Year Topic Seminar 2018が開催されました.

休日であるにも関わらず,全県から医師や理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,義肢装具士,エンジニアなどリハビリに関わる多職種150名程度の方に参加いただきました.

はじめに島田洋一教授から今年のトピックスが短時間で学習できるという本企画の趣旨と秋田県で行われている本研究会が県外でも注目されていることを述べられました.

以下,プログラムに沿ってご講演の概略を記載します.

脳卒中リハ:秋田大学大学院医学系研究科 医師 竹内直行先生

近年,技術の発達によりロボットやVirtual reality(VR)を用いた運動療法が報告されていることやニューロリハとしてCI療法や経頭蓋磁気刺激(rTMS),経頭蓋電気刺激(tDCS)を用いた報告が比較的効果が高いことを説明いただきました.また,それ以外に興味深い報告として全身振動刺激やビタミンDによる効果,体感ゲームなど,今後注目したい新しい治療方法についてもご紹介いただきました.従来の運動療法のみでは改善し得なかった症例についても他の技術と組み合わせることで高い効果を得られる可能性があることを学びました.

重度外傷リハ:秋田大学大学院医学系研究科 医師 野坂光司先生

重度外傷では死を回避することはもちろん大事だが,よりよく生きること(後遺障害を回避すること)も非常に重要なため近年注目さていることを学びました.後遺障害の3/4は運動障害(脊椎や四肢)であり,運動器外傷は整形外科医とリハビリテーションの腕にかかっていることが報告されていることなどをご説明いただきました.本県ではリング型創外固定器を用いた手術により早期離床を可能としており,リハビリテーションでも足底装具を作製し,痛みの軽減を図ることで早期荷重・歩行を可能としている.また,多数の症例をご紹介いただき,秋田県の重度外傷が多種職連携により高いレベルにあることがわかる内容でした.

呼吸器リハ:市立秋田総合病院 理学療法士 高橋仁美先生

今年の呼吸リハビリにおける最大のトピックスはステートメントが公開されたことであり,これまで,運動耐容能やQOLに注目されていたが,近年身体活動量に注目が集まっていることをご紹介いただきました.今回は特にCOPDに焦点を当て,そのガイドラインも5年ぶりに改定され,身体活動性の低下がCOPDを惹起させる可能性があることを学びました.身体活動量は呼吸リハのみでは向上させることが出来ず,カウンセリングを併用することで改善させる可能性があることを多くの研究から示していただきました.

股関節リハ:秋田大学医学部附属病院 理学療法士 畠山和利先生

今回は股関節の病態のひとつであるAIISpinitis(下前腸骨棘炎)に焦点を当てて,ご講演いただいた.Groin Pain(鼡径部痛)のひとつの病態であり,7つのタイプ(筋損傷,腸骨筋炎,股関節インピンジメントなど)に分類されることを学びました.AIISpinitisでは大腿直筋付着部損傷や脂肪体の線維化が起こっており,鏡視下関節外デブリドマンにより除痛されることが近年報告されていることを示していただきました.リハビリテーションでは,可動性や安定性,協調性の改善が重要であり,具体的な評価・運動療法の方法について実技を交えていたため,わかりやすい内容でした.

脊椎リハ:秋田大学大学院医学系研究科 医師 本郷道生先生

今回は腰痛と脊柱変形に対する運動療法に焦点を当てて,ご講演いただきました.腰痛については,急性腰痛では運動はあまり推奨されていないが,慢性腰痛では推奨されており,ストレッチングや筋力トレーニング,有酸素運動,VRなど運動によって改善されることを多くの文献を基にご紹介いただきました.また,脊柱変形(後弯・側弯)も同様に,運動以外に装具や全身振動刺激などでも改善されることについて文献を示していただきました.今回の分野は,運動療法の頻度や強度などまだ確立されていないが,他の治療と併用することで改善させる可能性があることを学びました.

認知症リハ:県立リハビリテーション・精神医療センター 医師 下村辰雄先生

はじめにアルツハイマー型認知症やレム睡眠時行動異常症,レビー小体型認知症,前頭側頭葉変性症など様々な認知障害を起こす病態について講義していただきました.認知症へのリハビリテーションでは,“○○療法や○○トレーニングは予防効果がある”という文言をみる機会があるものの,実のところその効果についてはまだcontroversialな部分があるため検討しなければならないことを学びました.また近年,認知症と交通事故が取り沙汰される機会がありますが,どのようなことが問題になるかを詳しくご説明いただきました.

一昨年より開催されている本会ですが、どの演者もその分野のスペシャリストであり,3時間で今年のトピックスが学べるため,参加者の方も集中して聴講していました.毎年,師走の忙しい時期に大勢参加されており,秋田県のリハビリが非常に盛り上がっていると感じる研修会でした.

第38回日本骨形態計測学会(阿部和伸)

第38回日本骨形態計測学会が6月21日~23日の3日間、大阪国際交流センターにおいて開催されました。近年、分子生物学、細胞生物学において骨代謝の機序、骨粗鬆症を含む代謝性骨疾患の病態の理解は飛躍的に進歩しています。しかし、分子生物学的手法による病態研究でも、その発現を組織レベルや器官レベルで観察し、さらに骨形態計測法による定量的計測によってよりその変化が把握できます。したがって、骨形態計測法は私たち研究者にとって非常に重要かつ必須の研究方法の一つであるといえます。

 

学会に先立ち、「骨形態計測ハンズオンセミナー2018ベーシックコース」が同会場で開催されました。これには私を含む当教室の若手研究者4名が参加し、動物実験の計画から実施、検体の採取、固定、標本作成、骨形態計測による評価まで、一連の流れに沿って基礎から学びました。ハンズオンでは実際に標本を作製する手順を確認したり、標本を観察し、どこで骨が作られ、どこで溶かされているかといった組織レベルの計測を実際に行ったりしました。セミナー終了後には修了証書をいただき、私たちが今後行っていく研究の大きな糧となったと感じた次第です。

 

本学会では、当教室の宮腰尚久准教授が学会2日目のシンポジウム「骨折防止のためのトータルケア-サルコペニア・フレイルの観点から-」の中でご講演されました。「サルコペニアと転倒に対する運動療法」という演題で、転倒の危険因子から転倒予防、骨折予防のための運動療法について当教室の研究を交えて非常にわかりやすくご紹介されていました。会場からも活発な質疑応答が繰り広げられ、全国的な関心の高さを感じました。

 

2日目終了後には全員懇親会が開催され、その会で若手研究者賞の表彰があり、当教室若手のホープである湯浅悠介先生が受賞されました。湯浅先生の行っている研究は、「卵巣摘出ラットにおける選択的エストロゲン受容体モジュレーターと低強度有酸素運動の骨と脂肪に対する効果」というもので、骨粗鬆症治療として薬剤と運動を組み合わせ、骨だけでなく脂肪との関連も観察した大変有用な研究です。受賞おめでとうございます。

 

私たち整形外科医にとって、骨粗鬆症をはじめとする運動器疾患の治療はADLの低下や健康寿命の短縮を防ぐために非常に重要です。そして臨床で用いられる治療はすべて、本学会で報告されているような基礎研究の上に成り立っています。本学会でそのことを再認識し、患者さんのADL向上、健康寿命延伸のため今後も研究に邁進していこうと決意を新たにしました。