セミナーレポート」カテゴリーアーカイブ

第8回秋田県足の外科・創外固定研究会(長幡樹)

2017年11月11日に第8回秋田県足の外科・創外固定研究会が開かれました。一般演題からは7題、そして特別講演として清仁会シミズ病院 足の外科センター センター長 奥田龍三先生に「成人足部変形の病態と治療ー最近の話題を中心にー」という内容で、また湘南鎌倉総合病院 外傷センター センター長 土田芳彦先生に「重度四肢外傷の標準的治療」でご講演いただきました。
 一般演題では県内の重度外傷や、高度変形の治療への専門的な治療の発表があり、各病院の先生から活発な討論がありました。秋田県のお家芸でありIlizarov創外固定の有用性、また自家で行い手術の待機時間、患者負担を減らせる神経ブロックのまとめたDataなどとても勉強になる内容でした。
 またミニレクチャーとして「足部におけるinternal brace」という内容で市立角館総合病院の千田秀一先生にご講義いただきました。軟部組織・靭帯損傷に対する新しい治療方法を話をしていただき、今までの治療で生じていた合併症、後療法の短縮、機能改善を教えていただき、今後の治療の一助になる内容でした。
 特別講演Ⅰの奥田龍三先生は成人期扁平足と外反母趾を中心に解剖学的知識、診断に始まり、治療方針、様々な症例と、手術の動画を交えてとてもわかりやすくご講演をしていただきました。今までの知識に加えて、今後の診療でとても有用な勉強になるご講演をしていただきました。
 特別講演Ⅱでは土田芳彦先生が、高度四肢外傷のたくさんの激しい外傷症例とともに、治療方針、技術、治療のタイミングを教えていただきました。皮弁の重要性や、治療のタイミングの重要性、これからの秋田大学の医療の展望を示していただきました。
 両先生の講演はとても為になる内容で、今後の日常診療に役立てていきたいと思います。

第24回東北地区骨軟部腫瘍研究会(土江博幸)

この度、11月3日の文化の日に、秋田温泉さとみで第24回東北地区骨軟部腫瘍研究会が行われました。

私自身、昨年は留学していたためこの研究会への参加は今回でまだ2度目と参加回数が少ないのですが、数少ない骨軟部腫瘍を扱う研究会の1つであり、貴重な勉強の場でもあります。各病院で珍しい症例・診断に悩む症例を持ち寄り、整形外科だけでなく病理医、放射線科医と相談して話し合う、というのが基本スタイルであり、一般演題1つ(1症例)に25分も割り当てられています。やはり骨軟部腫瘍は、病理診断がとても重要であり、この骨軟部腫瘍という分野においては、病理医の中でも意見が分かれる事がしばしばあります。その際のDiscussionは白熱したものとなりましたが、通常の整形外科医では全くわからないような用語が次々と飛び出し、自分の知識の無さを痛感させられました。

 

一般演題終了後は、当科島田洋一教授に座長を務めて頂き、福井大学整形外科学教室教授の松峯昭彦教授から、「変貌する骨・軟部腫瘍の治療」というタイトルで御講演頂きました。自身の知識を整頓する事が出来る内容から、普段聞けないような新しい知見まで、幅広い内容の御講演をして頂き、大変勉強になりました。

 

更に会の終了後には、特別講師の先生や東北県内の骨軟部腫瘍を扱う先生方と一緒に温泉につかり、親睦を深めあう事もできました。私自信も松峯教授から色々な話を御伺いさせて頂く事が出来てとても勉強になりました。

 

今回は秋田大学が当番幹事でしたが、敏腕幹事の永澤講師により、無事に会を終える事が出来ました。来年は弘前大学が主幹ですが、今後も自身の向上のため、参加を続けていきたいと思います。

御講演頂いた松峯昭彦教授

抗RANKL抗体フォーラム in Akita(尾野祐一)

平成29年11月1日、秋田ビューホテルで抗RANKL抗体フォーラムin Akitaが開催されました。特別講演1は秋田大学整形外科の宮腰尚久准教授から「骨粗鬆症患者の転倒・骨折予防と医療安全」についてのご講演でした。転倒・骨折の疫学から、骨粗鬆症と転倒との関係、転倒予防のための運動療法のエビデンス、入院患者の転倒・骨折予防対策に至るまで、過去の論文や秋田大整形外科グループの研究を交えて、詳細にご講演いただきました。我々整形外科医は、骨折予防のために骨粗鬆症の薬物治療を普段の外来で行っていますが、転倒予防に関しては、歩行能力の著しく低下した人にどうやって筋力を増やすかなど、まだまだ課題が多く、高齢者の多い秋田県において、今後も取り組むべきであると再認識しました。

特別講演2は近畿大学整形外科・リウマチ科の宗圓聡教授の「骨粗鬆症の薬物療法に関する最新の話題」というタイトルのご講演でした。骨粗鬆症治療に用いている薬のガイドラインにおけるそれぞれの推奨度や、デノスマブ、テリパラチド、ビスホスホネート製剤の腰椎・大腿骨骨密度へ及ぼす影響の違い、顎骨壊死を意識したデノスマブの休薬の要否、骨粗鬆症治療の目指すべきゴールなど、すぐにでも臨床で使えるような事柄ばかりで大変勉強になりました。長期followしている骨粗鬆症患者の治療薬の選択については、悩むことも多く、本日得た知識を参考に、臨床へ活かしていければと思います。

第9回秋田リウマチ治療セミナー(高橋靖博)

平成29年10月19日、第9回秋田リウマチ治療セミナーが開催されました。

一般演題の一題目は、羽後病院の阿部秀一先生から「当院における関節リウマチ手術の動向」について御講演いただきました。近年のリウマチの早期診断、薬物療法の進歩で大関節の人工関節手術は減少し足部の手術の割合が増加してきているという内容でした。

二題目は雄勝中央病院の浦山雅和先生が「AORA registryにおける高齢のリウマチ患者に対するトシリズマブ治療」について御講演いただきました。秋田県内の2000人を超える大規模データをまとめて発表されました。傾向として継続率は高く、高齢者にも有効性は高いことや、若年者と比べて有害事象は同様であるものの、やはり有害事象は要注意であることなど、様々な情報を教えていただきました。

また特別公演として、大阪大学の蛯名耕介先生に「関節リウマチにおける骨関節破壊機序とその対策」の演題で御講演をいただきました。まずリウマチにおけるコツ破壊機序の基礎的な部分からわかりやすく教えていただき、リウマチ患者さんへ治療により関節破壊の進行が抑えられることや治療経過をしっかり説明することや、患者さんが自分の病気に対してどう思っているかをフィードバックして治療に生かしていくことの大切さを改めて感じました。また治療ではTAAや足部手術に関して、さらに現在研究中である滑膜の再生治療についても御講演いただき、非常に興味深く拝聴することができました。

2時間という短い時間でしたが、非常に有意義に勉強することができました。今回のセミナーでは整形外科がリウマチの患者さんを診察することの重要性を改めて感じました。今後の外来治療に生かしていきたいと思います。

第38回秋田県リハビリテーション研究会(飯田純平)

平成29年8月5日、秋田大学医学部付属病院に新たに完成した本道40周年記念会館講堂で秋田県リハビリテーション研究会が開催されました。

一般演題では秋田県内で活躍するリハビリテーションスタッフや先生方の発表がありました。整形外科医としては普段かかわることが少ない神経変性疾患や脳血管疾患に関する最新の知見や様々な試みなども拝聴することができ、大変勉強になりました。

特別講演では、岡山大学病院総合リハビリテーション部・リハビリテーション科教授の千田益生先生から「周術期のリハビリテーション-岡山大学病院での取り組み-」と題して、ご講演いただきました。千田先生は、幅広い疾患を対象に術前リハに取り組み,さらに術前リハの効果を客観的立場に基づいて示していただきました。また、岡山大学では医師・リハビリスタッフ・薬剤師・看護師・多くのコメディカルが初めから一丸となって周術期リハに取り組んでおり、大変感銘を受けました。

最後となりますが、特別講演をいただきました千田先生、座長の労をいただきました先生方、当日暑い中、参加されました多くの先生方の今後の益々のご盛栄をお祈りしております。この度は大変ありがとうございました。

第65回秋田県整形外科医会(高橋靖博)

平成29年5月13日、第65回秋田県整形外科医会がビューホテルにて開催されました。
前半は演題発表でした。
例年と同様に医師10年目以上による一般演題7題に加えて、若手医師によるyoung doctors sessionが8題、計15題と非常に活気のある発表・質疑応答が繰り広げられました。
一般演題では「腱板断裂性肩関節症に対する反転型人工肩関節全置換術の短期成績」に関して報告していただいた 中通総合病院の畠山雄二先生、youong doctor sessionでは「小児の後足部内外反変形に対する手術治療の経験」について発表された 湯浅悠介先生がそれぞれ最優秀演題賞を受賞されました。

 

後半は教育研修講演が2題ありました。
1題目は岡山大学の尾﨑敏文教授が「骨腫瘍の治療戦略」に関してご講演してくださいました。
骨軟部腫瘍の診断ではCTガイド下穿刺と遺伝子診断の有用性についてを中心に、良性腫瘍の治療に関しては類骨骨腫に対するRFA・巨細胞腫に対するデノスマブ治療について、悪性腫瘍に関しては、化学療法の最近の知見と手術についてわかりやすくご教授してくださいました。手術では、パスツール骨+血管柄付き腓骨移植を施行した症例や液体窒素で治療した症例、さらにはナビゲーション手術など、普段なかなか経験することができない腫瘍の手術画像などを見せていただき、たいへん勉強になる有意義なものとなりました。
2題目は宮崎大学の帖佐悦男教授が「小児の運動器検診;ロコモ対策・学校運動器検診の開始を受けてー疼痛治療を含めてー」という演題でご講演してくださいました。
まず現在の子供の特徴や、体力が低下している子供への取り組みを報告してくださいました。
小児に特徴的な疾患を検査画像を踏まえながら提示していただき、それに加えて運動器検診の実情と問題、野球検診の現状と課題についてご教示していただきました。これまで理解しきれていなかった運動器検診・障害予防の意義について改めて学ぶことができる非常に良い機会となりました。
今回は秋田市内外から多数の先生が参加していただき、100名以上の先生がご出席されました。
昼過ぎから夕方までの研究会でしたが、一般演題・教育研修講演とも勉強になる発表・ご講演であったのであっという間に終わってしまいました。本日学んだことを明日からの診療に役立てて、精進していきたいと思います。

The 4th Japan Korea Knee Osteotomy Symposium(赤川学)

平成29年4月22日、富山市民プラザにおいてJapan Korea Knee Osteotomy Symposiumが開催されました。我々ASAKGはここ数年毎年このシンポジウムに参加していますが、今回はシンポジウムに先立ち、前日の4月21日にAO Around the Knee Osteotomy seminarが開催され、国内外の膝周囲k関節温存手術のエキスパートからOsteotomyの基本を学ぶ機会を得ました。セミナーには海外からの参加者も多く、講演からハンズオンまで大盛況でした。当科からは齊藤英知先生がFacultyとして講演し、日本一のTCVO surgeonとして手術手技の基本から豊富な症例を示してくれました。

翌日のJapan Korea Knee Osteotomy Symposiumにも多くの整形外科医が集い、関節温存手術の最新の研究について熱いdiscussionを交わしました。当科からは塚本泰朗先生、佐藤千恵先生がポスターセッションで、斉藤公男先生、齊藤英知先生が口演で発表しました。国内外を通してもTCVOを行っている施設は限られており、その発表は大きな注目を集めました。

ここ数年、膝関節温存手術は急速に普及してきており、特に日本の様な膝の深屈曲を要する生活様式では、その需要はまだまだ大きなものがあると思います。HTO、TCVO、DFOとその術式は多様で、さらにこれらを組み合わせたDouble level osteotomy、Double level triple osteotomyにより、進行した変形性膝関節症患者さんにも対応できる様になってきています。関節温存手術で痛みを取りながらも、自分の膝で生きていく。この意義は非常に大きく、我々ASAKGはますますこのOsteotomyの発展に貢献していかなければならないと感じました。

第8回日本ニューロリハビリテーション学会、The 6th Japan-Korea Neurorehabilitation Conference(木村竜太)

H29年4月22日、23日に富山国際会議場で第8回日本ニューロリハビリテーション学会、The 6th Japan-Korea Neurorehabilitation Conferenceが開催されました。当大学からは島田洋一教授が「Neurorehabilitation with most advanced biomedical engineering technology」と題してlectureを、松永俊樹先生、木村が一般口演で、岩本陽輔先生がポスター発表を行いました。島田教授から、我々の主なテーマである医工連携による医療機器の開発ならびにその臨床応用について、韓国の先生方にも力強いメッセージを伝えていただきました。

ニューロリハの概念が一般的となり、黎明期、そして揺籃期を経て次の段階へ進む時期のようです。再生医療技術、またロボット技術の発展で急激に発展する可能性をもった分野であり、秋田大学整形外科、リハビリテーション部でも最先端の知識を得ながら、日常診療に還元をしてまいります。

 

追記、晴天の春の富山はとても清々しいところでした。同日隣で行われていた The 4th Japan-Korea Knee Osteotomy Symposium参加の先生と交流もできました。

第65回JABOに講師として参加してまいりました(野坂光司)

第65回Japanese Association for Biological Osteosynthesis(略称JABO)に講師として参加してまいりました.非常に歴史あるJABOにお招きいただき,世話人の福山市民病院 小川健一先生には心より御礼申し上げます.

 

ピロン骨折は世界的にも難易度が高く,チャレンジングなものとされており,今回は募集即満員御礼だったそうです.

 

原口直樹先生からは受傷機転から分類,小川健一先生からは初期治療の大切さ,早稲田明生先生からアプローチ,松村福広先生からは骨接合,辻英樹先生からは軟部組織の扱い方,最上敦彦先生からは髄内釘,私がIlizarovによるMATILDA法の有用性,依光正則先生からは最近の文献の紹介をいただき,あっという間の一日でした.

 

私の講演の座長は野々宮廣章先生にしていただきました.本当にありがとうございました.他の講師の先生の話も大変興味深く,私自身も大変勉強になった一日でした.またコメントいただきました帝京の渡部欣忍先生,北九州総合病院の福田文雄先生には心より御礼申し上げます.

 

秋田からは益谷先生,湯浅先生が参加されました.この二人には本当に秋田大学の外傷を引っ張っていってほしいと思います.

2017人工関節学会で膝周囲骨切り術のハンズオンセミナー講師を担当して(齊藤英知)

リーフレット

内側開大型高位脛骨骨切り術後X線像

脛骨近位に変形がある場合に行われる高位脛骨骨切り術の手術の適応、プランニング、実際、合併症の注意点について述べた

熱心な眼差しで取り組む参加者の先生方

2017人工関節学会で膝周囲骨切り術のハンズオンセミナー講師を担当して

変形性膝関節症に対する手術治療として、関節温存手術である高位脛骨骨切り術などの膝周囲骨切り術や人工膝関節置換術がある。膝周囲骨切り術の特徴として、術後可動域や深部感覚が保たれる。一方、人工膝関節置換術では、可動域は失われるものの除痛効果が高いという特徴がある。人工関節置換術は、関節軟骨を金属とポリエチレンで表面置換する、いわば、最終手段であり、若年で活動性が高いほど術後の満足度が低く、ポリエチレンの磨耗も生じやすい。現在に日本では、人工膝関節置換術は、年間10万件以上が施行されている一方、膝周囲骨切り術は年間、7000件しか行われておらず、日本に2530万人の患者さんがいると推定される変形性膝関節症の進行度の分布や医療経済の側面から考えても、膝周囲骨切り術の手術件数はもっと多くてしかるべきである。

今回、第47回人工関節学会において、高位脛骨骨切り術ハンズオンセミナーが主催された。「なぜ人工関節学会で骨切り術のハンズオンやるの?」と多くの声を聞いた。この企画は、非常に画期的であり、従来、人工膝関節置換術を専門として行ってきた整形外科医で会場は、立ち見が出るほどであった。今回、私に与えられたテーマは、surgical technique of OWHTO(高位脛骨骨切り術の手術技術)ということで、手術適応、プランニング、コツとそのエビデンス、合併症、後療法などについて、ドイツ仕込みのテクニックを豊富な手術ビデオとともに概説した。特に驚いたのは大学病院からの参加された先生方の多さである。このことは、今後の膝周囲骨切り術が、より日本中に浸透していくであろうことが予想される。模擬骨を用いたワークショップでは、細かなポイントを参加者の皆様にお伝えした。幸い、秋田県では、我々Akita Sports Knee and Arthroscopy Group内で、変形性膝関節症に対する手術適応および手術技術が一貫教育されており、すでに知識や技術が若手整形外科医に渡るまで維持されている。このような体制で膝周囲骨切り術と人工関節置換術の適応をバランスよく、大学主導で教育できている都道府県は少ない。これも、ひとえに島田洋一教授の指導力の賜物であり、秋田県民にとって、非常に有難い環境を作って下さっていると感じる。先日も、福島からわざわざ秋田まで膝周囲骨切り術を受けに下さった患者さんがいらっしゃった。あくまで人工関節置換術は、最終手段であり、侵襲の少ない膝周囲骨切り術がもっと日本中に浸透していくことを切に願う。

「死ぬまで自分の膝で!」