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第5回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会( Akita Orthopedic Society for Knee, Arthroscopy, and Sports Medicine: AKAS)に参加して (村田昇平)

秋田では猛暑が過ぎ去り、太陽の光が日増しに黄色く弱っていくような気持ちの良い晩夏となってまいりました。そんな中、2019年8月24日第、5回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会( Akita Orthopedic Society for Knee, Arthroscopy, and Sports Medicine: AKAS)が開催され、季節を裏切り盛夏のごとく熱い会となりました。

 
一般演題は、Akita Sports Arthroscopy Knee Group(ASAKG)メンバーから全部で11題もの演題がありました。筆者の発表の他、高橋靖博先生(秋田労災病院)、塚本泰朗先生(市立田沢湖病院)、赤川学先生(市立秋田総合病院)、大内賢太郎先生(市立横手病院)、佐藤千恵先生(秋田労災病院)、瀬川豊人先生(城東スポーツ整形クリニック)、斉藤公男先生(秋田大学)、佐々木香奈先生(中通総合病院)、冨岡立先生(市立横手病院)、関展寿先生(秋田労災病院)たちから素晴らしい発表をいただき、大変勉強になりました。

 

ミニレクチャーでは、秋田赤十字病院人工関節副センター長、冨手貴教先生からご講演をいただきました。『人工膝関節置換術について』と題して、人工膝関節手術(TKA)について、その歴史を踏まえながら、基本的な考え方、pit fall、現在から今後のトピックについてご指導をいただきました。TKAについてこれほどまでに体系的に学べるのは非常に貴重な機会でしたので、机にかじりつきながら勉強させていただきました。今回必死になって書いたメモは大事にしてこれから何度も見直したいと思います。

 

そして、なんといっても特別講演は大変豪華な2講演をいただきました。一つ目は、大阪大学大学院医学系研究科運動器スボーツバイオメカニクス学共同研究講座、特任教授、前達雄先生より『膝前十字靭帯の治療・評価 -変形性関節症にならないためにすべきこと-』、もう一つは、東海大学医学部外科学系整形外科学、准教授、内山善康先生より『柔道選手における肩関節疾患・外傷』と題しまして、誠に素晴らしいご講演を頂きました。

 
前達夫先生からは膝前十字靭帯(ACL)について、初診時、術前、術後の詳細かつ実践的な評価法について、これまでの歴史も踏まえながらご教示を賜りました。大変鮮烈に私の記憶にのこったのが前先生の「アメリカでにわかに言われている、ACL再建はやってもやらなくても変形性膝関節症(OA)になるというのはウソ。正しく再建すればOAにならない。」という言葉であります。OA膝をつくらないACLの正確無比な再建のために、前先生が評価から手術まで、いかに情熱的に、繊細にやっているのかということを教えていただき、本当に刺激的な内容でした。

 
内山善康先生は大変高名な整形外科医、肩関節外科医でありますが、同時にTBS系の「消えた天才 〜超一流が勝てなかった人 大追跡〜」であのバルセロナオリンピック金メダリスト古賀稔彦選手から唯一投げられなかった選手として紹介され、ご出演された最強の柔道家でもあります(柔道インターハイ2年連続準優勝、医師柔道世界大会チャンピオンという恐ろしい経歴です)。柔道家としての経験を活かした肩関節に治療についてご教示いただきました。私も一応は北海道相撲3位という肩書きがあるのですが、最強の空手家である島田洋一教授が座長、最強の柔道家である内山善康先生の演者という自分より遥かに強い二人のご講演を大変興味深く、楽しく拝聴させていただきました。

 

第5回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会で学ばせていただいたことを今後の臨床、研究に活かして、また明日から一人でも多くの患者様に満足していただける医療を行えるように努めたいと思います。

第12回秋田県手外科研究会 (齋藤光)

令和1年7月20日に、第11回秋田県手外科研究会が開催されました。
毎年恒例、エコーのハンズオンセミナーがまず開催されました。今年は平鹿総合病院の佐々木研先生から「神経ブロックあれこれ」と題し、エコー下神経ブロックで用いる局所麻酔薬の副作用について、明日から役立つ内容を講義していただきました。その後、被検者の方に実際エコーを当てながら、腋窩、鎖骨上、斜角筋間での神経の描出を行いました。秋田大学整形外科では若手の必修事項にこのエコー下ブロックがあります。この手技によって上肢や下肢の手術を整形外科医師自身が麻酔をかけることで可能となっており、手術件数の増加に寄与しています。若手の先生方は、日常診療で感じる疑問点を、実際にエコーを触りながら質問することができ、非常に有意義な時間になったかと思います。
一般演題は6演題の発表があり、最優秀演題賞は「緊急手術を要した急性手根管症候群の1例」で市立横手病院の大内賢太郎先生が受賞されました。稀な症例に対して手根管内の内圧を自身で測定し、適切な治療を行い良好な成績が得られたこと、また文献的考察をあわせてお示しいただきました。稀な症例に真摯にむきあい、一つひとつ知識を蓄積していくことの重要性をあらためて教えていただきました。その他の5演題もすべて勉強になるものばかりで、明日からの診療に生かしていきたいと思いました。
その後、町立羽後病院の益谷法光先生から「Wide awake hand surgery の基本 -外来手術から腱移行まで-」と題してミニレクチャーをいただきました。手術は通常、全身麻酔やブロック麻酔で行うことが多いのですが、Wide awake hand surgeryでは局所麻酔薬を皮下に浸潤させて麻酔を得ます。益谷先生は秋田県で先駆けてこの手法を導入されており、その適応疾患から実際の麻酔方法について詳細にお話いただきました。患者さんは手術中に手指を動かすことができるため、指の腱を扱う手術で特に有用な方法であり、また低侵襲であるため入院期間の短縮にもつながるとのことでした。今回のミニレクチャーで勉強させていただいた内容をもとに、今後の診療に私自身も応用させていただこうと思いました。
特別講演は兵庫医科大学元教授であり、現在は荻原整形外科病院の副院長 兼 手外科・スポーツ障害治療センター長の田中寿一先生から「スポーツによる手・肘の障害治療」と題してご講演いただきました。田中先生には手外科医として、またスポーツドクターとしてのこれまでのご経験を元に多岐にわたってご講演いただきました。舟状骨の骨折で現在我々が頻用しているDTJスクリューは田中先生が考案されたものであり、その特性や使用方法について動画を交えて非常にわかりやすくご説明いただきました。研究会後の懇親会では直接お話させて頂く機会がありました。その中で印象的であったのは、スポーツ選手の復帰時期についての田中先生のお考えでした。骨折であれば焦らず骨癒合してから、その間は「傷害部位に負担をかけない、やっても良いこと」を指導してあげることが大切であるということをお話しいただきました。スポーツ傷害の患者さんに対して、「やってはいけない」というのは簡単なことですが、できることを一緒に考え提案することの重要性を教えていただきました。手外科疾患、スポーツ傷害で困っている患者さんに対して最良の治療を提供できるよう、そしてスポーツ復帰までを適切に指導できるよう、日々研鑽を積んでいきたいと思いました。田中先生、ご講演いただき、誠にありがとうございました。

 

 

第56回秋田県脊椎脊髄病研究会 (阿部和伸)

ひと雨ごとに寒さもゆるみ、春を待ちわびる3月9日、「第56回秋田県脊椎脊髄病研究会」がにぎわい交流館AUで開催されました。

初めにAO Spine fellowship in 2018で留学された2名の先生方の帰朝報告が行われ、小林孝先生が韓国、工藤大輔先生がイギリスでの様々なご経験をご報告されました。

セッションⅠでは研修医・若手整形外科医のための脊椎外科基礎講座と題して、頸椎脱臼骨折の分類、初期対応、手術について鈴木真純先生、石川慶紀先生、鈴木哲哉先生にそれぞれご講演いただきました。頸椎脱臼骨折というテーマは、あらかじめ若手を対象に行ったアンケートで最も要望が多かったことから決まりました。整形外科のみならず救急を担当しているものならば誰しも対応しなければならない可能性があり、そのような場合に適切に対応できるよう、たっぷりと勉強しました。

セッションⅡではミニレクチャーとして、本研究会の当番幹事である木下隼人先生に「腰椎椎体骨折に対する経皮的椎体形成術」という題でご講演いただきました。Balloon kyphoplasty(BKP)の特徴や適応、実際の手順について、写真を多数交えてわかりやすく教えていただきました。

セッションⅢは一般演題で、珍しい症例や教育的な症例の報告、整形入院患者の筋量変化に着目した臨床研究、手術時の放射線被ばく低減を目指した研究の発表があり、どの発表についても活発な議論がなされました。

セッションⅣは特別講演でした。
特別講演1には金沢大学整形外科講師の出村諭先生をお招きし、「脊柱変形、脊椎腫瘍に関する基礎的知識と当科での治療の変遷について」という題でご講演いただきました。小児脊柱変形の特徴や自然経過といった基本的な内容から治療の歴史、治療戦略まで幅広い内容と、脊椎腫瘍に対するTotal en bloc spondylectomy(TES)の戦略について実践的な内容をお話しいただきました。また、金沢大学とはバスケットボールでライバル関係であり、ご講演の途中でバスケットの動画(なぜか秋田大学の好プレー集)が放映され、大いに盛り上がりました。
特別講演2にはJA広島総合病院整形外科主任部長の田中信弘先生をお招きし、「頸部神経根症に対する後方手術—マイクロサージャリーと疼痛治療—」という題でご講演いただきました。豊富な経験から微細解剖や手術手技、長期成績について、画像、動画をふんだんに用いてわかりやすく、最後はリスクマネージメントについてもお話しいただき、大変勉強になりました。

セッションⅤとして市内の焼き肉店で肉を食べながら情報交換を行い、特別講演でお招きした先生方に日ごろ疑問に思っていることなどを質問させていただきました。今後も秋田県脊椎脊髄外科の進歩と、若手の育成のため、本研究会を盛り上げていきたいと思います。

(文責:阿部和伸)

秋田県運動器リハビリテーション研究会(三田基樹)

1月19日、秋田県運動器リハビリテーション研究会が開催されましたためご報告いたします。

一般演題では塚本泰朗先生、境梨沙先生、齋藤光先生、千田聡明先生よりご講演いただきました。塚本先生からは運動器疾患や全身機能不全に対するリハビリテーションについて疼痛コントロールの重要性をご講演いただきました。境先生からは社会復帰・退院支援の観点から回復期病棟の問題点やMSWなどの他職種連携の重要性について、齋藤先生からは脳性麻痺によるToe-in gaitについて幼少期の運動負荷及び痙縮による股関節形成不全の関係を含め考察いただきました。千田先生からは転移性脳腫瘍片側上肢麻痺にReoGo-Jを使用し奏功した症例をご講演いただきました。

特別講演では兵庫医科大学 道免和久教授より「ロボットリハビリテーションの現状と展望」についてご講演いただきました。
リハビリドクターとは患者のニーズに技術を結びつける事が重要であり、リハビリテーション支援ロボットの必須条件として運動学習が可能であり・RCTによるエビデンスが確立されており・企業の安定したback upがある事を挙げられておりました。
上下肢用のリハビリ支援ロボットのご紹介を頂き、それぞれの特徴を活かして患者のADLupを目指すことの重要性をご説明いただきました。また、運動学習の観点からEnd-Effector型の推奨や50ms以内のフィードバック能力の必要性や、今後のロボットリハビリテーションの展望についてご講演頂き、現在の最先端をご教授いただきました。

現在のロボットリハビリテーションの進歩に非常に驚かされた研究会でした。私自身今後の研究の糧にして参りたいと思います。

第8回秋田県骨粗鬆症学術セミナー(齋藤光)

2018年11月30日に第8回秋田県骨粗鬆症学術セミナーが開催されました。

一般演題1として、市立秋田総合病院の赤川学先生より、「糖尿病モデルラットにおける低強度有酸素運動と活性化ビタミンD製剤が血糖値・骨密度・筋に及ぼす影響」のテーマでご講演いただきました。この内容は赤川先生が大学院で行われた基礎研究の研究成果であります。ビタミンDと運動療法が糖尿病の治療、骨や筋肉にどのような影響を与えるのかについて、非常にわかりやすく発表いただきました。特に筋肉に与える影響については遺伝子の観点からもご考察いただき、レベルの高い研究内容に感銘いたしました。基礎研究を行っている大学院生の我々にとって、大変刺激となるご講演でした。

一般演題2として秋田労災病院の奥山幸一郎先生より、「転倒、筋力低下とビタミンDの関連性の疫学調査―北鹿地方のミステリー―」のテーマでご講演いただきました。ビタミンDに関した疫学調査について、先生が行われている大規模な疫学調査についてご講演いただき、ビタミンDを中心にその充足率や、サルコペニア、筋力、転倒との関連について詳細な調査結果をお示し頂きました。日常診療を行いながら素晴らしい研究を行われる先生の姿勢は見習うべきであり、研究者の観点をもって日常診療にあたって行く重要性を再認識しました。

特別講演は札幌医科大学医学部、整形外科学講座准教授の射場浩介先生より、「骨代謝異常と運動器の疼痛―変形性関節症からCRPSまで―」のテーマでご講演いただきました。先日札幌医科大学に国内留学された湯浅先生との対話形式の講義となり、射場先生の質問に湯浅先生が的確に解答する非常にエキサイティングな特別講演となりました。骨代謝が全身に及ぼす影響について、実際の症例を交えて検討いただきました。骨代謝亢進状態が骨格の疼痛を引き起こすメカニズムについて遺伝子・細胞レベルからご講演いただき、なぜ痛むのかについて最新の知見をお示しいただきました。骨が痛む患者さんを診察した際に、その疼痛改善のためにどのような薬剤が、どのように作用するのか理解することができ、明日からの日常診療に大変参考になりました。

本セミナーでは骨代謝に関する最新の治験、ビタミンDの重要性について学ぶことができました。これからの基礎研究や臨床にご講演いただいた内容を活かし、邁進していこうと思います。

第9回秋田県足の外科・創外固定研究会(村田昇平)

2018年11月24日に第9回秋田県足の外科・創外固定研究会が開かれました.一般演題からは9題,そして特別講演として奈良県立医科大学救急医学・高度救命センター講師前川尚宣先生から「重度四肢外傷に対する初期治療・再建の実際〜安全確実な再建を目指して〜」という内容で,また獨協医科大学埼玉医療センター第一整形外科主任教授大関覚先生から「Ilizarov法を応用した下肢機能再建術」という演題にてご講演いただきました.

一般演題では県内の重度外傷や,変性疾患に関する治療への専門的な治療の発表があり,各病院の先生から活発な討論がありました.秋田大学整形外科の得意とするIlizarov創外固定の有用性や神経ブロックをまとめた発表などとても勉強になりました.
またミニレクチャーとして「足関節果部骨折」という内容で男鹿みなと市民病院の柴田暢介先生にご講義いただきました.果部骨折に対する様々な最新の知見,具体的な技術をご教示いただき,これからの診療に非常に役立つ内容でした.

特別講演Ⅰの前川尚宣先生からは数々の衝撃的な重度四肢外傷,見事な治療や再建術をこれでもかというくらい多数ご教授いただきました.前川先生はマイクロサージャリー,Ilizarov創外固定など多数の分野に極めて精通されており,大変刺激的な内容でした. 前川先生が後輩の指導で大事にされていることは「プランニング」であることや,「本当にトレーニングをつんだ外科医にしかできない重症な症例は多くない. 基本事項の積み重ねで多くの症例に対応できる.」という言葉には,大変感銘を受け,今後の自分の症例との向き合い方に是非とも活かして行きたいと思いました.

特別講演Ⅱでは大関覚先生が,股関節,膝関節,足関節,距骨下関節,足部の高度変性疾患をIlizalov創外固定を用いて,達人技で加療された症例を多数ご教示いただきました.直立2足歩行には「等張性 ,アライメント ,関節の可動性,安定性」が大事であるという言葉からご講演は始まり,患者さんに満足した歩行をしてもらうためには何が大事なのかということを大変熱心にご講義いただきました.先生の豊富な経験や,知識によって立案されたIlizalov創外固定のストラテジーは,興味深い内容ばかりで,非常に勉強になりました.Ilizalov創外固定の盛んな秋田大学整形外科の一員として,今後の加療に是非とも活かしていきたいです。

最後になりますが,本研究会で学んだたくさんのことを今後の日常診療に役立て,より邁進していきたいと思います.

第68回秋田県整形外科医会(粕川雄司)

2018年10月6日土曜日、第68回秋田県整形外科医会が秋田ビューホテルで開催されました。多くの先生方にご参加いただき一般演題とYoung doctors sessionあわせて15題の発表と、お二人の先生方に教育研修講演を頂き大変有意義な会となりました。

一般演題では、佐々木寛先生、菊池一馬先生、白幡毅士先生、野坂光司先生、畠山雄二先生と5名の先生方から、DISHに生じた脊椎外傷、脊椎固定術術中の放射線被ばく、人工指関節置換術、シャルコー関節の手術時期、近年の雪下ろし外傷について発表いただきました。また、Young doctors sessionでは、大屋敬太先生、五十嵐 駿先生、東海林 諒先生、笠間史仁先生、三浦隆徳先生、佐藤千晶先生、尾野祐一先生、河野哲也先生、佐々木 研先生、益谷法光先生の10名の先生方から、それぞれ素晴らしい発表を頂きました。その中から最優秀演題賞には、一般演題 秋田赤十字病院 畠山雄二先生の「秋田県における最新(2015-2018)の雪下ろし外傷」とYoung doctors session 中通総合病院 尾野祐一先生の「骨粗鬆症患者の身長とArm spanの関係からみたサルコペニアの診断基準」が選出されました。お二人の先生方、おめでとうございます。

教育研修講演1では、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 運動器外傷学講座 教授 野田知之先生より「大腿骨転子部・転子下骨折と関節周囲骨折治療-Current concept-」と題しご講演頂きました。大腿骨転子部骨折・大腿骨転子下骨折・大腿骨遠位部骨折・脛骨近位部骨折の4つの骨折について実際の手術手技や注意点などについて、沢山の画像をご提示頂き詳細にお話し頂きました。転子部や転子下骨折では様々な整復法を熟知しより正確な整復が必要なこと、大腿骨遠位部骨折では髄内釘とプレート手術の実際と限界、脛骨近位部骨折では、軟部組織の重要性とアライメント変形治癒を回避することが重要であることなど、治療に難渋することもある骨折手術手技の実際についてとてもわかりやすくご講演いただきました。

教育研修講演2では、岐阜大学大学院医学系研究科 整形外科学 教授 秋山治彦先生より「高齢社会の日本における人工股関節置換術・再置換術」と題してご講演頂きました。
まず、日本における人工関節、THAのレジストリーの詳細についてお話し頂きました。
さらに、最新の統計からTHA再手術の現状をご提示頂き、再手術の原因のひとつとなるインプラント周囲骨折の治療について骨移植や骨粗鬆症に対する最近の取り組みを含め多くの画像をお示し頂きました。次いで、治療が大変なTHA後の感染、注意しなくてはいけない病態、骨切り術後の股関節症、急速破壊性股関節症と再置換術について、その対応を大変わかりやすくお話し頂きました。骨の脆弱性が進んでいることの多い高齢者に対する人工股関節手術について勉強させていただきました。

天候の悪いなか遠路秋田までお越し頂きご講演頂き誠にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

秋田県腰痛セミナー2017(佐藤千晶)

一般演題では、羽後病院の阿部先生から詳細なデーターを元に認知症高齢者の服薬状況の現状、今後の展望について、また、北秋田市民病院の相澤先生からは関節リウマチ患者に生じた化膿性仙腸関節例の一例について診断、治療方法の詳細をお話しいただきました。

特別講演では千葉大学整形外科の大鳥 精司教授より「高齢者腰椎疾患の診断と治療―筋減少、骨粗鬆症の観点から―」という内容でご講演をいただきました。

慢性腰痛診断の歴史,定義から、MRI画像にて神経圧迫,痛みを数値化する最新の研究や診断に渡り、また血中炎症マーカーに注目したバイオ製剤治療法まで広く深く大変貴重なお話しをいただきました。

また、メインテーマである高齢者の筋減少、骨粗鬆症から起きる腰椎疾患について、筋骨のcross talkについてのお話は、個人的に自分の大学院での研究テーマでもあり、興味深く聞かせていただきました。初学者にもとても分かりやすいお話で、高齢者腰痛診療について診療で役立つ知識も得ることができ、大変勉強になりました。

大鳥教授、ご講演いただき誠にありがとうございました。

第10回秋田県手外科研究会(湯浅悠介)

7月1日第10回秋田県手外科研究会が開催されました。

昨年に引き続き冨岡立先生から「腋窩ブロックを成功させるポイント」と題してレクチャーをいただいた後に、最新の超音波を用いながら、腋窩神経の描出を行いました。数年前から当研究会で、このハンズオンが行われており、現在超音波ガイド下神経ブロックは秋田大学整形外科若手医師の必須手技となるに至っております。超音波による描出を行いながら、日常診療での疑問などもざっくばらんに話せる、とても有意義な時間となりました。

一般演題は、6演題の発表があり、最優秀演題賞は「両側橈骨若木骨折に対し3Dプリンター装置を用いた1例」で北秋田市民病院の加賀望先生が受賞されました。骨折に対して、装具を3Dプリンターで作成するという、数年前までは想像もつかなかったことが医工連携により現実となってきている事実を知ることができました。知識のアップデートを怠らず、医療の新たな形にも順応していくことが求められていると感じました。その他の5演題もすべて勉強になるものばかりで、明日からの診療に生かしていきたいと思いました。

その後、白幡毅士先生から「日常診療で遭遇する手外科疾患の治療」と題してミニレクチャーをいただきました。普段よく遭遇する疾患を中心に、その症状や治療方法などをわかりやすくご講義いただきました。以前は保存療法が主流であったものが、手術療法が主流となっていたり、逆に手術をしないと治らない疾患であったものが注射などによる保存療法で高い治療効果が期待できるようになったりと、自分の古い知識が一掃される内容となっておりました。今回のミニレクチャーで勉強させていただいた内容をもとに、今後はより詳細に治療方針を説明し、積極的な治療介入をしていこうと思います。

特別講演は奈良県立医科大学手の外科講座の面川庄平教授から「手関節尺側痛の診断と治療-スポーツ外傷から変性疾患まで-」と題してご講演いただきました。手関節尺側痛というblack boxを系統立てて、わかりやすくご説明いただきました。TFCC損傷やECU腱鞘炎はもちろん、手根中央不安定症やLT関節不安定症といった稀な疾患も鑑別に挙げ、それに対しての圧痛点、誘発テスト、治療方法などをご教示いただき、非常に勉強になりました。外来では、いかにその訴えが何に由来するのかを導き出す診断力が求められるため、圧痛点や誘発テストの知識は極めて重要なものであることは明らかだと思います。今回学んだ知識を生かし、今後は一つ一つの理学所見から詰将棋のように診断を付け、適切な治療を行えるように精進していきたいと思います。面川教授、ご講演いただき誠にありがとうございました。

第54 回秋田県脊椎脊髄病研究会 (粕川雄司)

 

2017年3月11日土曜日秋田県JAビルにおいて第54回秋田県脊椎脊髄病研究会が開催されました。今回の当番幹事は秋田厚生医療センターの菊池一馬先生が務められ、特別講演の講師に名城病院 整形外科 部長の辻 太一先生と、岐阜市民病院 整形外科 部長の宮本 敬先生をお招きしました。

7回目となった研修医・若手整形外科医のための脊椎外科基礎講座では、秋田赤十字病院の鈴木哲哉先生が座長で、1.覚えておきたい脊椎疾患として、1) 秋田厚生医療センターの小林 孝先生から神経筋疾患・炎症性疾患について、2)湖東厚生病院の鵜木栄樹先生より仙腸関節障害についてレクチャーいただき、2.最小侵襲脊椎手術(MISS)について、1)除圧術に関して秋田大学の工藤大輔先生から、2)固定術について秋田厚生医療センターの阿部利樹先生からご講演いただきました。当番幹事の菊池一馬先生が若手の先生方に興味のある話題についてアンケートを行い、希望が多かったテーマについて各先生方から大変わかりやすくお話しいただきました。

ミニレクチャーは、宮腰尚久准教授の座長で菊池一馬先生より「PLIFのラーニングカーブ-これまでの経験-」と題して、PLIF手術執刀例の手術時間と出血量に関する変化を詳細にご講演いただき、術式の変遷や今後の展望も含めて勉強になりました。

一般演題は、秋田赤十字病院の石河紀之先生が座長で4題の発表がありました。秋田厚生医療センターの井上純一先生は「胸髄Arachnoid webの1例」、秋田大学の尾野祐一先生は「ハローベストにより治療した神経線維腫症に伴う慢性環軸椎回旋位固定の1例」、秋田大学の鈴木真純先生は「機械弁置換術後抗凝固療法中の頚椎硬膜外血腫の1例」、秋田労災病院の佐々木寛先生は「当科でのOLIF-導入時からの短期成績-」でした。すべての演題とも大変興味深い発表でしたが、その中から鈴木真純先生が最優秀演題賞を受賞されました。おめでとうございます!4月から新しい勤務先でますますご活躍されますことを祈念しています。

特別講演1では、辻 太一先生から「脊柱変形治療の悩みどころ-小児から成人まで-」というご講演を頂きました。数多くの難しい脊柱変形患者さんの治療を実際に行っている先生のお話しは、大変勉強になりました。特に、一人一人の患者さんについてどのように治療するか、それに伴い生じた問題点を解決するため、先生が考え悩んでいることがとても印象に残りました。特別講演2では、宮本 敬先生から「脊椎前方手術の轍(わだち)の認識、回避、克服」と題したご講演を頂きました。岐阜と秋田とのかかわりから、秋田では比較的手術数が少ない前方手術について、そのピットフォールを楽しいお話しとわかりやすい画像・動画でお話しいただきました。前方手術の轍をいろいろ知ることができ、身が引き締まるご講演でした。3月のお忙しい時期に、遠路はるばる秋田までお越しいただいたお二人の先生方に心より感謝申し上げます。今後とも、ご指導よろしくお願いいたします。

本研究会は、今回で54回を迎え役員の改選が行われました。会発足より会長をお務めいただいた阿部栄二先生がご退任され、宮腰尚久准教授が会長にご就任されました。さらに小林 孝先生が副会長、奥山幸一郎先生と鈴木哲哉先生が常任幹事にご就任されました。今後ますます研究会が発展し、若手の先生方にとっても有意義な研究会となるように頑張っていければと感じました。当日、ご参加いただいた先生方ありがとうございました。これからも、よろしくお願いいたします。