投稿者「akita-u-seikei」のアーカイブ

秋田型運動部活動サポート事業 高校野球強化支援    「野球を科学する講演会」(村田昇平)

秋田型運動部活動サポート事業、高校野球強化支援とは県内野球選手及び指導者等を対象に、科学的な側面から野球のパフォーマンスや指導方法を理解することや医科学的な視点から障害の予防、早期回復に向けたポイントを学ぶことで、県内各段階における競技力の向上、指導力の向上を図ることを目的に行われている活動です。秋田県教育委員会が主催し、 秋田県高等学校野球連盟の後援にて行われています。今回その活動の一環として令和2年1月11日(土)に秋田市文化会館で「野球を科学する講演会」が行われ、秋田大学整形外科教室から齊藤英知先生が講師として招待されましたので、一緒に参加して参りました。

「秋田発」野球の指導をアップデートする〜最先端の理論と成長期のスポーツ障害〜

をテーマに國學院大学人間開発学部、准教授 神事努先生、当教室の齊藤英知先生の二人の講師からご講演がありました。

神事努先生はスポーツバイオメカクニクス分野で大変有名な先生で、メディアにも多数出演されております。野球の動作解析にも非常に熱心に取り組まれており、メジャーリーガーの菊池雄星投手の指導なども行っている先生です。近年急速に研究が進んできた野球のデータ化についてのご講演をいただきました。動画を含む膨大なデータから野球を科学するための手法やその歴史、そこから導きだされたデータをどのように解釈すると野球の上達につながるのかという旬なトピックスで、非常に興味深く拝聴させていただきました(フライボール革命、ハイボール革命など今まさに話題のトピックスがたくさん出てきました。)。

齊藤先生からは現在話題となっている野球選手の投球数制限問題について、医学的な観点から講演がありました。医学的にみると投球動作とはどのような動作なのか、故障を予防するにはどのような運動連鎖が望ましいのか、選手自身ができる日々のセルフチェック、セルフケアの方法などを述べられておりました。またトミージョン手術、ピッチスマートなどの最新の見知に触れながら、今どうして投球制限数が話題になっているのか、どのような根拠で議論させているのかを詳細に解説していました。

会場は400名の小学生から高校生までの球児で満員となっており、みなさんメモをとったりして真剣な表情で両講師の講演を聴いていました。

今回学んだことを活かして、また明日からの診療や社会貢献活動に努めてまいります。またノーザンデーモンズ(整形外科野球部)にも、フライボール革命、ハイボール革命、セイバーメトリクスなど最新の風を吹かしていきたいと思います。

 

第9回こまちリウマチセミナー(齋藤光)

令和1年12月12日、第9回こまちリウマチセミナーが開催されました。

 
一般演題1は、北秋田市民病院の岩本陽輔先生から「RA治療におけるアバタセプトの有効性〜AORA registryから読み解く〜」の題で発表いただきました。秋田県内でのリウマチ患者さんを登録した“AORAレジストリー”の特徴は高齢者が多いことであり、その中でのアバタセプトの使用状況についてわかりやすく報告いただきました。

 
一般演題2は能代厚生医療センターの伊藤博紀先生から「リウマチ上肢手術の適応とタイミング」の題で発表いただきました。リウマチ患者さんの生活に大きな影響をあたえる“手関節”の手術治療について、手術のタイミングやその実際について解説いただきました。

 
特別講演は、山形大学医学部附属病院 リハビリテーション部 准教授の高窪祐弥先生から「北欧フィンランドリウマチ診療を目指して−山形循環型病診連携“やらんなネット”5年間の軌跡−」という演題名でご講演いただきました。まずリウマチ治療の基礎について最新の知見を交えながら解説いただき、フィンランド留学中のご経験を多数の写真を交えながら臨場感たっぷりにご紹介いただきました。フィンランドの医療状況、食文化や生活は非常に興味深く、楽しく拝聴させていただきました。日本との相違点として、フィンランドでは一人の患者さんにじっくりと時間をかけて診療することが可能で患者満足度も高く、医師患者間の信頼関係構築もしやすいのかなと思いました。ご留学から帰国後に、高窪先生が山形県で取り組まれたリウマチ診療病診連携システムの構築については、立ち上げから現在にいたるまでの紆余曲折を教えて頂きました。地域連携ネットワークを構築する際のノウハウは私達にとっても大変役立つものであり、貴重なお話を聞くことができました。高窪先生、大変ありがとうございました。
本セミナーで学んだことを、明日からの臨床に役立てて、さらに研鑽を積んでいきたいと思います。

 

 

 

第8回秋田県股関節研究会(三浦隆徳)

 

2019年12月7日「第8回秋田県股関節研究会」が秋田温泉さとみで開催されました。

一般演題は、全6演題で筆者の発表の他、五十嵐駿先生(秋田厚生医療センター)、阿部和伸先生(秋田県立療育センター)、長幡樹先生(大曲厚生医療センター)、岩本陽輔先生(北秋田市民病院)、佐々木研先生(平鹿総合病院)から素晴らしい発表をいただき、大変勉強になりました。

 

ミニレクチャーでは秋田大学の河野哲也先生から「人工股関節置換術後ステム周囲骨密度と骨粗鬆症治療」と題した講演をしていただきました。人工股関節置換術は良好な治療成績ですが、stress shieldingなど検討すべき課題もあり、リスクを下げるためにも積極的に骨粗鬆症検査、治療を行うことや患者さんの生涯に関わる大腿骨ステムの選択には慎重にするべきかと考える機会を頂きました。

 

特別講演Ⅰでは角館病院の谷貴行先生から「大腿骨近位部骨折の診断と治療‐頚基部骨折って何ですか!?‐」というご講演をして頂きました。大腿骨近位部骨折は整形外科医として診療する機会が多い疾患ですが、骨折形態と解剖学的関係、分類、治療などを成書、論文をもとに系統立ててご紹介くださり大変勉強になる内容でした。またHip research groupで治療方法に直結する分類として提唱しているArea分類(Akita分類) の有用性やご自身の執筆された英語論文の紹介などもあり圧巻のご講演でした。

 

特別講演Ⅱでは金沢医科大学の兼氏歩教授から「形成不全股に対する寛骨臼骨切り術‐昭和から令和へ‐」という題目で、骨盤骨切り術の歴史から最新の治療、今後の展望までご講演いただきました。

寛骨臼骨切り術の代表的な手術としてChiari骨盤骨切り術、寛骨臼回転骨切り術などがありますが。皮切の大きさ、筋腱処理などの侵襲の大きさや、安静期間の長さ、Chiari骨盤骨切り術では自然分娩への懸念がありました。

今回ご講演頂いたSpherical periacetabular osteotomy; SPO)は原俊彦先生により開発され、兼氏教授は第一人者であります。SPOは以前までと異なる前方アプローチで恥骨、Quadrilateral surfaceを骨切りすることなく寛骨臼周辺を球状に骨切りして骨頭の被覆を改善させる手法です。そのため低侵襲(7cm程度の皮切)、閉鎖動脈損傷リスク回避、骨盤の安定性確保、広い骨切り面、産道温存などの利点があります。実際には症状を伴う、寛骨臼形成不全を適応としていますが、CE角20°以上はOA進行がほとんどなく、15°未満は進行リスクであることから15°未満の症例を対象としていると伺いました。その良好な治療成績をご紹介いただき、我々が今後進むべき道を示して頂いたかと思います。

今回学ばせていただいたことを今後の臨床、研究に活かして、患者さんに満足していただける医療を行えるように努めて参りたいと思います。

 

 

 

 

 

秋田県リウマチアーベント (村田昇平)

霜が朝日にキラキラと溶けていく様子に清々しい一日の始まりを感じる、師走間近の今日この頃でありますが、11月28日、「秋田県リウマチアーベント」が秋田ビューホテルで行われました。

一般演題では、市立秋田総合病院、柏倉剛先生を座長に、秋田大学の河野哲也先生より「AORA registryにおけるステロイド性骨粗鬆症治療の現状と試み」、平鹿総合病院、小林志先生より「AORA registryにおける高齢関節リウマチ患者の実態」という題でそれぞれご講演をいただきました。お二人の先生とも、莫大なAORA registryから抽出したデータをもとに、リウマチ治療の現状から今後の展望について大変ためになるレクチャーをいただきました。

特別講演では島田洋一教授の座長のもと、信州大学医学部附属病院整形外科講師、中村幸男先生をお招きし、「関節リウマチの最新治療と骨粗鬆症合併対策」という題でご講演いただきました。中村先生は2019年に全国ネットのテレビ番組に出演もされている、大変ご高名な先生でありますが、骨粗鬆症予防のための「かかと落とし運動」、骨粗鬆症の栄養学、周産期の骨粗鬆症、骨粗鬆症の分子病態学、リウマチ患者の骨粗鬆症治療戦略などなど、多岐に渡って最新の知見や、先生自身の研究データを惜しみなくお示しいただき、大変勉強になりました。知識を啓蒙していただいただけではなく、先生がいかに魂を込めて情熱的に臨床、研究に取り組んでいるかが伝わってくるご講演で、非常に感銘を受けました。

今回勉強させていただいたことを活かして、日々自己研鑽を行いながら、明日からの診療で一人でも多くの患者さんにより良い治療が提供できるように取り組んでいきたいと思います。

第46回日本マイクロサージャリー学会学術集会に参加しました(野坂光司)

第46回日本マイクロサージャリー学会学術集会(2020年11月28~29日,ハイアットリージェンシー東京),パネルディスカッション「長管骨偽関節に対する再建」にパネリストとして参加してまいりました.市立奈良病院整形外科 矢島弘嗣先生,帝京大学整形外科 渡部欣忍先生の司会のもと,血管柄付き骨移植術,Masquelet法,Bone transportについて議論いたしました.巨大な第1会場が満員となり,この組織再建に対する参加者の関心の高さを感じました.パネリストは,それぞれの長所,短所,実際の症例について詳しく解説され,私自身,大変知識の整理になりました.マイクロサージェリー学会ではありますが,Ilizarov創外固定によるBone transportの重要性も,会場のみんなに深く理解されていることが伝わってくる内容でした.フロアでAkita Hand Group&Akita Ilizarov Method Group期待の星,益谷法光先生が熱心にメモを取っている姿が印象的でした.益谷先生はじめ,秋田大学の若手がIlizarovとMicrosurgeryを融合させ,全国にアピールしてくれる日が,そう遠くない将来に来ることを確信しました.

世の中には血管柄付き骨移植術やMasquelet法の不成功例がたくさんおり,特に血管柄付き骨移植術の不成功例は,それ以上粘ることなく,切断を選択されることが多くあります.救肢が困難と思われる難治例でも,時間をかけて,IlizarovによるBone transportで最後の最後まで救肢を目指せることを今後も地道に伝えていきたいと思います.

第9回秋田県骨粗鬆症学術セミナー (阿部和伸)

初雪が降り、冬将軍の到来を目前に控える2019年11月23日、「第9回秋田県骨粗鬆症学術セミナー」が秋田ビューホテルで行われました。

一般演題では、中通総合病院整形外科科長の尾野祐一先生に「アジュバント誘発関節炎ラットの続発性骨粗鬆症と関節炎に対するエルデカルシトールとイバンドロネートの効果」、医療法人久幸会今村記念クリニック院長の田村康樹先生に「血清Ca、iPTH、25(OH)DおよびeGFRの変動から考えるエディロール内服の有用性について」という演題でそれぞれご講演いただきました。尾野先生は大学院で取り組まれた基礎研究、田村先生は日常診療と並行して行われた臨床研究によって得られた貴重な成果を発表してくださいました。

特別講演では熊本大学大学院生命科学研究部整形外科学講座教授の宮本健史先生をお招きし、「骨粗鬆症の病態の理解に基づく治療法の選択肢」という題でご講演いただきました。骨粗鬆症のメカニズムを深く考察され、そこから新たな治療標的を見出した過程、そしてその結果に基づく治療戦略を学び、大変勉強になりました。骨粗鬆症の病態をしっかり理解し、それぞれの患者さんに合った治療を提供したいと改めて感じました。

今後も日々進歩を続ける骨粗鬆症治療の知識をアップデートし、病態に基づいた最適な治療を行えるよう精進していきたいと思います。

第3回日本リハビリテーション医学会 秋季学術集会(井上純一)

 

2019年11月15日〜11月17日の3日間、第3回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会が静岡で開催されました。本学会はリハビリテーション科のみならず、整形外科を含め、多種多様な科・職種が関わる全国規模の学会です。

秋田大学からも総勢7名が参加しました。2020年6月に京都で日本リハビリテーション医学会学術集会を秋田大学が主幹で開催する予定で、今回は発表の場というだけでなく、準備段階としても非常に重要なものとなりました。

島田洋一教授は特別講演をはじめ、ランチョンセミナー、座長とご活躍されていました。秋田大学の脊椎手術の歴史や動向、リハビリテーションロボットの開発など現在の秋田大学整形外科を全国に発信されていました。講演後は質問も多数あり、活発なご討議となっておりました。

その他、来年の東京パラリンピックに関する内容や再生医療に関するリハビリテーションの内容もあり、最新のトピックを学ぶ非常に良い機会となりました。

学会全体を通して、非常に多くの分野からの発表があり、自分の今後の診療・研究を行う上で、視野を広げることになったと思います。この経験をしっかり活かしていきたいと思います。

整形外科市民公開講座 2019 ロコモティブシンドロームを知ろう!! 〜健康寿命は骨で決まる〜  (河野哲也)

 

2019年11月9日秋田市文化会館小ホールにて,「整形外科市民公開講座 2019 ロコモティブシンドロームを知ろう!!〜健康寿命は骨で決まる〜」が開催されました.

まず,宮腰尚久准教授より「健康寿命と骨」と題して基調講演をいただきました.健康寿命の定義や,平均寿命に対する健康寿命の差が8〜10年あることについてご紹介いただき,健康寿命延伸の妨げとなる原因としては,骨粗鬆症と関連がある慢性疾患が増加してきており,背中が曲がると負の連鎖が生じるため,最初の1個目の骨折を防ぐことが重要であり,セルフチェックの方法としてarm spanについてもご説明いただきました.また,最新の知見として,高齢になってから運動を始めても,運動経験が豊富なアスリートと同程度に筋肉量が増えるという研究結果をご紹介いただき,聴衆の皆さんにとっても今後の運動へのモチベーションになったのではないかと思います.

続いて,秋田テレビ杉卓弥アナウンサーに総合司会を務めていただき,パネルディスカッションが行われました.コーディネーターを,もりた整形外科医院森田裕己先生,秋田大学整形外科 粕川雄司先生,パネリストとして,秋田赤十字病院 石河紀之先生,大曲厚生医療センター 阿部利樹先生,工藤整形外科医院 工藤透先生,いしがき整形外科クリニック 石垣智先生,中通総合病院 佐々木香奈先生に務めていただきました.会の最初に「ロコモを知っている方は?」と会場の皆様に確認した際,9割以上の方が手を挙げており,意識の高さに驚きました.パネルディスカッションでは,ロコモについて,チェック方法,ロコモの対策等についてご説明いただきました.また,会の途中には実際に現役で運動をしていらっしゃるお二方に登壇いただき,運動を継続する秘訣,健康のために意識していることなどについて,お話いただき,大変盛り上がりました.

2000年から始まった本回は,今回で第25回となります.今後秋田県はさらなる高齢化が予想されます.この市民公開講座が,1人でも多くの方がロコモティブシンドロームを理解され,健康で生き生きとして生活が送れるようなお手伝いとなれば幸いです.最後に,この場をお借りしましてご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます.

第53回日本側彎症学会(本郷道生)

このたび群馬県高崎市で11月8日~9日に開催された『第53回日本側彎症学会学術集会』に参加しました.学会長は榛名荘病院 群馬脊椎脊髄病センター長の清水敬親先生が務められました.学会テーマは,“全脊椎を様々な角度から眺めてみよう!”で,小児・成人・頚椎の3本柱を軸にした講演,シンポジウム,セッションが組み合わされたプログラムでした.この3本柱のそれぞれの国内外のエキスパートによるご講演や,総演題数204題の発表があり,また学会のpre meeting sessionとして乳幼児症例検討会も開催されました.秋田からは,宮腰尚久准教授,秋田厚生医療センターの小林孝先生,医療療育センターの三澤晶子先生と私の計4名が参加しました.

5つのシンポジウムが組まれ,英語シンポジウム「脆弱骨への対応」では宮腰准教授が,「骨脆弱性を有する脊椎のマネージメントにおける未解決の問題」と題してご講演し,国内外のエキスパートとの英語でのディスカッションで,脆弱骨への技術的な対策から薬物治療まで,まさにメインテーマに沿った多角的な議論がなされていました.また,三澤先生がシンポジウム「これからの側弯症健診と健診システム」で,「側弯症検診のこれから~運動器検診の問題点」として,秋田県の現状を踏まえた検診のあり方を述べ,ディスカッションでは様々な意見が出されて熱い議論となりました.私は背筋運動療法による2年以上経過観察例のX線計測結果についてポスター発表しました.他には,世界のエキスパートによるWorld Symposium,頚椎変形,成人脊柱変形のシンポジウムでは最先端の研究の発表があり,その間でセミナー,一般演題,ポスターセッションが組まれ,随所に学会長の清水先生の工夫がみられる内容の濃い学会でした.

学会場であるビエント高崎は,広々としつつコンパクトにまとまり,またアクセスも良くて学会に集中できる快適な環境でした.また全員懇親会では,榛名荘病院スタッフや,事務局として学会を仕切る榛名荘病院の井野正剛先生(大曲厚生医療センター,井野剛志先生のお父様)みずから,オールブラックスのハカの余興が披露され大変な盛り上がりをみせ,おもてなしの気持ちが伝わる素晴らしい学会でした.

日本側弯症学会は長い歴史があり,年々演題数も増えて規模も大きく内容も多岐に渡ってきており,今後秋田からもさらに演題を出していけるよう研鑽を深めたいと思います.