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第9回秋田県運動器リハビリテーション研究会 (鈴木真純)

2月13日に開催されました、秋田県運動器リハビリテーション研究会のレポートです。リハビリテーションという整形外科医のみに限らず幅広い分野、職種の関係するテーマという事もあり、会の開始前から会場は超満員の状態でした。会場後方のパーテーションをずらしてそこに応急的に椅子を並べて対応しなくてはならないほどでした。

一般演題1題目は秋田大学の木村竜太先生から御講演頂きました。先生の臨床研究テーマであるリハビリテーション用パートナーロボットに関する内容で、TOYOTAが藤田保健衛生大学と共同開発した歩行練習アシストロボット:GEARの概要、有用性について分かりやすくお話して頂きました。特に、strokeの40代男性患者の症例では、GEARを導入したリハビリプロトコルによりストライド・歩行速度の増加がみられ、劇的に歩容・歩行能力が改善した様子の実際の動画が衝撃的でした。その他、長下肢装具から短下肢装具への移行への時間短縮効果、脊髄損傷対麻痺への応用の可能性などもお話頂き、今後の更なる発展が楽しみな研究テーマでした。2題目は北秋田市民病院の冨手貴教先生の、コンポーネントの形状によってACLの機能を再現しているという特性を持つBCS TKAと従来型(決して古いという意味ではありません)conventional TKAの加速度センサーを用いた比較のご発表でした。加速度センサーを用いることで、双方のTKAの安定性を定量化し比較考察できる点が非常に有用であると感じました。ROM,満足度はともに改善傾向にありましたが、PCS TKAの脛骨、大腿骨センサーの加速度が低下したのに対し、Conventional TKAでは速度が増加したという結果で、ACL機能を再現しているため、膝の安定性に関わっているのかもしれないという非常に興味深い内容でした。

 

特別講演は、東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学教授、正門由久 先生より「転倒とその予防」を御講演頂きました。なぜ転ぶのか→長生きするようになったから、というシンプルですが深い導入から、地域高齢者の転倒頻度・転倒恐怖を有する割合など大規模なデータまで、実際の先生のご家族の事例を要所要所に実例として織り交ぜてお話頂きました。特に、先生がご専門とされいていることに関連し、電気生理学的な運動単位数の変化(60歳を境に単位数減少)のこと、そしてそれに対応するように歩行速度も低下していることなど実際の基礎研究のデータの解説も、転倒という実際の臨床のoutcomeにつながる内容は非常に興味深かったです。秋田大学でも今後のテーマとしている運動療法介入に関しても、転倒予防のためのプログラム導入によりデータで20%は転倒抑制になるということはとても参考になりました。下肢伸展筋力、片脚起立時間の延長などの効果だけでなく鬱の改善の可能性もあるということで、自殺率N0.1(最近は返上したようですが)の我が県が問題に抱えるうつ状態と関連した自殺予防効果の可能性もあるかもしれません。あくまで個人的な見解ですが。

今後さらに増加してゆく高齢者に備えて、転倒予防は最重要課題の一つになります。今回の講演を是非参考にさせて頂きたいと思いました。

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ついに開催!秋田大学イリザロフ法セミナー(野坂光司)

島田洋一教授のご高配により,2月14日,秋田大学イリザロフ法セミナーを開催することができました.

秋田県内に広く浸透したイリザロフ創外固定を,基本から学ぶ機会として,若手医師,手術室看護師を対象に行いました.『若手医師は全員イリザロフを使えるようにさせる』という,全国で最もIlizarov愛を持つ教授と呼ばれる島田教授の熱い思いに応えるかのように,会場には多くの若武者たちが,所狭しと集結,イリザロフワイヤーを刺しまくっていました.模擬骨を使用し,実際にワイヤー,ハーフピンを刺入しまくり,固定するという,臨床さながらの熱気に包まれたハンズオンセミナーとなりました.

参加最年長の阿部栄二院長先生は,『組織のトップとして,自分のところの若手が使いこなすデバイスを理解する義務がある』と述べられ,非常に感銘を受けました.

休日に集まってくれた参加者のみなさん,準備,テーブル講師,後片付けを手伝ってくれたAIMGメンバー,開催に多大なるご協力いただきましたSmith & Nephewの皆様,源川医科の佐々木さん,本当にありがとうございました.

秋田のイリザロフ,まだまだ伸びしろあり,を実感することができた貴重な一日でした.アドバンスコースも計画中ですので,次回もぜひよろしくお願い申し上げます.

 

AIMGから学ぶILIZAROV法 (BASIC COURSE)   【日時】2016年2月14日(日)

【会場】北臨床棟2階 カンファランスルーム

【内容】イリザロフの基礎.外傷で使うために.

【対象】イリザロフ法に興味のある医師,手術室看護師

プログラム

12:00~12:05  島田洋一教授ご挨拶

12:05~12:50  レクチャー(野坂)

12:50~15:00 ハンズオンセミナー

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第37回東北骨代謝骨粗鬆症研究会優秀演題賞の報告(野坂光司)

このたび,2月6日に仙台にて開催されました第37回東北骨代謝骨粗鬆症研究会優秀演題賞を受賞いたしました(演題名『難治性骨折における骨質マーカーの意義:野坂光司 宮腰尚久 山田  晋 本郷道生 永澤博幸 粕川雄司 齊藤英知 木島泰明 土江博幸 島田洋一』).この会は佐藤光三名誉教授が会の立ち上げから携わっており,我々秋田大学整形外科学教室にとって大変縁の深い学会です.留学から戻り,今回久しぶりに参加させていただきましたが,大変勉強になりました.

発表内容は,早急に論文化すると宣言しますので,ということで,ここでは省かせていただき,自分の尻を叩きたいと思います.

島田洋一教授,宮腰尚久准教授のご指導のもと,A-BONEの一員として,ますます精進いたします.さて東北骨代謝骨粗鬆症研究会の優秀演題賞のA-BONEの獲得率,かなり高いのではないでしょうか.去年,一昨年は田村先生,木下先生が受賞したと記憶しておりますし,私も今回で3回目の受賞となりました.A-BONEの勢いを感じます.私,近いうちに偽関節と仮骨延長の動物実験も頑張って,来年は基礎でも発表したいと思っております.今後ともご指導よろしくお願い申し上げます.

賞状

 

第37回 東北骨代謝・骨粗鬆症研究会 (粕川雄司)

 

2016年2月6日仙台市で第37回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会が開催されました.この研究会はとても歴史のある会で,佐藤光三名誉教授が創設メンバーのお一人となっています. 今回は宮腰尚久准教授が当番世話人をされ,A-BONEからは田村康樹先生,堀川 明先生,野坂光司先生,粕川雄司が発表しました.田村康樹先生は「エディロール投与例における血中Ca/P値およびeGFRの変動と血管石灰化との関連について」,堀川 明先生は「骨粗鬆症治療におけるイバンドロネートとアレンドロネート静注製剤の使用経験」,野坂光司先生は「Charoot関節に対するLIPUSとTeriparatide併用の有効性」と,「難治性骨折における骨質マーカーの意義」の2題,粕川は「3年以上のビスホスホネート製剤治療による骨代謝マーカーの推移」の発表を行いました.15題の一般演題中5題がA-BONEからの発表となりました.そのなかで野坂光司先生の「難治性骨折における骨質マーカーの意義」が臨床系の優秀演題賞を受賞されました.野坂先生,受賞おめでとうございます.宮腰尚久准教授は「骨粗鬆症性脊椎病変の病態と治療戦略」と題したミニレクチャーをご講演されました.この研究会では基礎系の先生方や,外科,産婦人科,小児科,歯科などの臨床系の先生方が参加しているので,脊椎の骨折や変形などの脊椎病変の病態や治療法についてわかりやすく詳細にお話しされました.

特別講演では東京医科歯科大学大学院 細胞生理学分野 教授 竹田 秀先生より「臓器ネットワークからみた骨粗鬆症の病態と治療」のご講演がありました.骨と他臓器の密接な関連について最新の知見をお話しいただきました.今後骨疾患の病態解明や治療に様々な要素の理解が必要になると感じました.

また来年も研究会で発表できるように頑張りたいと思います.お疲れ様でした.

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イギリス留学記 ~その6~ (工藤大輔)  

毎朝8:15 (金曜は7:30)から症例検討のカンファレンスがあり,以前から気になっていたが,馬からの転落による脊椎外傷が意外と多い.乗馬という文化の違いと思われるが,逆に秋田の冬場の屋根からの転落による脊椎外傷はこちらでは珍しいに違いない.(というか雪自体があまりないので,雪下ろし作業というものが伝わらない気がするが・・・)また,よく言われるように頚椎椎弓形成術はほとんど行われていない.たいていは前方固定で,後方手術は椎弓切除(+固定)のようだった.前方固定は,DepuyのZero-P stand alone spacerが多く使われているようだった.たしかにプレートを当てないぶん非常にすっきりしていて良い.日本ではよく遭遇する広範囲の頚椎後縦靱帯骨化症は椎弓切除かそれ意外かで議論が白熱していた.特に椎弓切除後の後弯変形について議論となっていた.一応,椎弓形成術の話も出るが,最終的には術者の判断になり,今回は椎弓切除術が行われていた.頚髄症の評価は日整会のJOA(ジョアと呼んでいた) スコアが用いられていた.頚髄症の論文は日本から多数publishされており,この分野においては現在JOAスコアが世界標準なのかもしれない.

先日は,午前のグレビット先生の側弯外来の後,午後にメディアン先生の側弯外来を見学させていただいた.術後の患者さんは皆,真っすぐになった背骨に満足し,大変喜んでいたのが印象的だった.特にGrowing rod術後に大変良好な経過で,執筆された本の症例にもなった患者さんが家族とともに来院され,患者さん本人よりもむしろご家族が術前の我が子の写真の懐かしさと術後の経過に大喜びして携帯のデジカメでスライドの写真を撮る姿や,別の患者さんでは母親が喜びのあまり先生に抱きつく姿が印象的であった.忙しい外来であったが,いろいろ丁寧に教えていただき,modified Shilla法についても教えていただいた.まだ最近始められた術式で,中長期成績や論文はこれから発表されると思われるが,今のところトラブルは皆無とのことである.

手術は,今週も側弯症手術を多く見学させていただいた.一番大変だったのは,年齢がやや高い若年者の固い側弯であった.体格も日本ではなかなか出会えないほど立派であったため展開からすでに大変だった.Bendingで10°ほどしか矯正されない固い側弯で,凹側はほとんど骨癒合していたが,いつものように上下端と頂椎は凸側のみのPS設置を行い,ノミ-ノミ-リュエルの3ステップで骨切りを行い,椎弓下半分は一瞬で無くなった.ノミをハンマーで叩くと刺激で下肢が跳ねたり,いきなり硬膜外脂肪まで見えたりすることがあるので,見ているほうは時にヒヤヒヤするが,手慣れた作業であっという間に終了した.術前にどのように手術をされるのか尋ねたときは,固いからバランスを保つように・・・などとおっしゃっていたが,手術が終わってみるとほとんど真っすぐになっていた.感動!

渡英前に理容室に行ったが、さすがに髪がずいぶん伸びてきたので、最寄りの床屋に行ってみた.事前に島田教授から髪に水もつけずにカットする話やネットの情報も見ていたので不安だったが,背に腹は変えられない.ネット情報では洗髪はないことが多いようだったので、ちょうど手術見学後ということもありシャワーを浴びて、生乾きの髪で行ってみた.予約はとらずに突撃したが幸い店は空いていた.お客さんは一人でなぜかスキンヘッドだった.床屋に来る必要があるのだろうか・・・ すごく不安になった.お店のお兄さんも両腕に見事なタトゥーで怖かったが,引き返すこともできず,Next Please!と声をかけられると,言われるがままに座った.どうしますか?と聞かれたので,スマホの写真を見せて,こんな感じで・・とお願いした.日本の同僚に合わないので,10年ぶりくらいに短くしてもらった.ネット情報ではバリカンを多用するらしい情報があったが,いきなりバリカンで豪快に刈り上げられた.日本と違い,棚に無造作に置かれたハサミ(多分消毒洗浄があまりされていなそう)で豪快に切られた.ただ一応スプレーで水をつけてくれたので,もしかしたらいい店だったのかもしれない.ネット情報では10分くらいで終わると書いてあったが,13分くらいで終了した.お礼を行って8ポンド(1ポンド=169円 5/2/2016現在)支払って店を出た.

QMCのすぐ近くにWollaton Hall (写真12)というところがあり,なんとバットマン ダークナイトライジングでバットマンハウスとして撮影に使われたらしい.ノッティンガムではところどころ桜(?)が咲き始めてきた.(写真13)

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イギリス留学記 ~その5~ (工藤大輔)

ノッティンガム留学へ留学し,ちょうど1ヵ月経った.ノッティンガムはロビンフッドの伝説で有名ということで,いたるところにロビンフッドの像や絵が飾ってある(写真9).

写真9

(写真9)

中心街やノッティンガム城(写真10)周辺もバスでほとんど行けるので,車が無くても困らない.

写真10

(写真10)

グレビット先 生には、本当に良くしていただいており,側弯手術だけでなく,腰椎人工椎間板置換術なども見せてもらうことができ,手術は毎回楽しみにしている.先日,たまたま病院の玄関先でメディアン先生にお会いし,日曜日に側弯の手術を予定しているとのことで,それも見学させていただいた.AISの後方矯正固定術であったが,グレビット先生の手術法とは異なり,どちらかというと我々の方法に近かった.全椎体にフリーハンドでスクリューを設置後,rod rotationで矯正していた.術前にはメディアン先生が考えるLIVの決め方について教えていただいた.また,前回聞けなかったGrowing rod法(modified Shilla法)を行っている理由なども教えていただいた.先週はUniversity Hospitals of Leicesterのセル先生の側弯症手術も見せていただいた.というわけで1月後半もたくさんの側弯症手術を見学することができた.また何例かTLIFも見学する機会があったのだが,使われていたcageがT-palで約1万km離れた異国の地でいつも見慣れた器械を見ることができ,なんだか懐かしい気持ちになってしまった.

話は変わり,日本とイギリスの違いをいくつか.イギリスの医師は白衣を着ない.イギリスの国営の病院(NHS; National Health Service)では2007年から感染対策のため,白衣の着用を禁止したらしい.またネクタイも禁止.というわけで服装はいつも長袖のワイシャツの袖をまくり,スラックス,革靴というスタイル.島田教授より渡英前に服装の違いで医師の位が分かると教えていただいたが,もちろんグレビット先生はカフスを使用していた.おそらくスーツもオーダーメードの上等のものだと思われる.そしてDr.ではなくMr.と呼ぶ.専門医の受診は,日本のように紹介状なしでいきなり大学病院を受診することはできず,まずは家庭医(GP; General Practitioner)を受診し,必要に応じて専門医を紹介されるというシステム.専門の診療に集中できるので,仕事の高率が良いと思われた.最後に,これは個人差があるかもしれないが,わりと皆昼食はあっさりしていて,最近は自分も合わせて軽く済ませている.写真はある日の昼食で,パンとコーヒーとチップス(写真11).

 

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イギリスの食事はおいしくないと聞いていたが,今のところそんなことはないと思う.

 

3rd KOREA-JAPAN Knee Osteotomy Symposium (塚本泰朗)

1月16日に韓国釜山で開催された3rd KOREA-JAPAN Knee Osteotomy Symposiumに参加して参りましたのでご報告致します。秋田大学からは齊藤英知先生を筆頭に、齊藤公男先生、赤川学先生、私が参加してきました。

内容は主に変形性膝関節症に対する関節温存手術である高位脛骨骨切り術(HTO)に関するもので、治療成績から合併症に至るまで、幅広く最新の知見を学ぶことができました。

秋田大学からは齊藤公男先生が『Changes of patella position and congruency of PF joint after Hybrid CWHTO』という演題名でhybridCWHTO後のPF関節への影響に関してプレゼンテーションされました。続いて、私も『Features of lower extremity alignment in early stage SONK』という題でプレゼンテーションさせてもらいました。私にとって英語でのプレゼンテーションは初めての経験でしたのでかなり緊張しましたが、なんとか無事終えることができました。

パネルディスカッションでは日本から当大学の齊藤英知先生と、兵庫医科大学の中山寛先生のお二人が選出され、韓国の先生達に混じって活発に議論されており、日本の新進気鋭のトップランナーの勢いを肌で感じることができました。

また、赤川学先生も『Association between varus thrust and lower limb alignment in OA』という題でポスター発表され、なんと日本からの演題数は秋田大学がトップという結果でした。

招待講演では木島泰明先生が留学されたフランスからDr. Philippe Hernigouと齊藤英知先生が留学先のドイツでお世話になったDr. Kristian Kleyのお二人でともに秋田大学と縁の深い先生だったこともあり、お話させていただく機会をいただけたことも大変貴重な経験になりました。

 

今回のシンポジウムでまた新たな発見がありましたので、すぐに臨床および研究に還元していきたいと思います。

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イギリス留学記 ~その4~ (工藤大輔)

英国へ留学し、約2週経った。こちらに来てから日中ずっと晴れていたのは2日くらいだろうか。毎日数時間おきに雨が降ったり、やんだりしている。年間降水量は東京より少ないようであるが、毎日しとしと降っている感じ。感覚としては秋田より天気が悪い気がする。写真は奇跡的に終日晴れていた週末の宿舎の裏のあたりで、シティホスピタルの敷地内で撮影したもの。

写真6 先日テレビが欲しくなり、近くのホームセンターに買いに行った。英国でテレビを見るためにはTV licenceなるものを購入しないと見られないので(厳密には見られるが、ちゃんとお金を払わずにこっそり見ると罰金を請求される)、さっそくOnlineで購入した。しかし、残念ながら宿舎の電波が弱いためか?見られなかった。ブースターをつなげば映るかもしれなかったが、あいにくどこに売っているのか分からないし、日本の家電量販店のような店も近くにはない。仕方なく、届くか不安であったがAmazon.ukで注文してみた。結果は・・・ちゃんと届いたが、玄関先に荷物が置かれていた。

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もちろん受け取りのサインもなし。事前にメールが来ていつ届くとか、不在時の対応(玄関先に置いてもらう、ガレージに置いてもらうなどいくつか選択できる)が記載されていたのだが、予定より早く届き、しかも不在時の対応を選択する前に玄関先にそっと置かれていた。たぶん高価なものはamazon.ukで頼まないほうが無難かもしれない。幸いテレビは見ることができた。イギリスではほとんどの番組が英語の字幕付きで見られるのだが、逆に字幕がないと英語が速すぎてさっぱり聞き取れない。でも字幕を見ながらだとけっこうリスニングの勉強になることに気付いた。朝のカンファレンスは骨粗鬆症性を含む椎体骨折(何となく、階段からの転落症例が多いような気がする)、と脊椎転移が圧倒的に多い。骨粗鬆症性椎体骨折ではほぼルーチンに多発性骨髄腫のスクリーニングを行っているようだ。また脊椎転移では不安定性がない場合にはVertebroplasty (cement augmentation)も積極的に行っているようだった。

今週見学させていただいた手術は全部側弯であった。並列で別の手術が行われていることもあるが、側弯の手術がある日は側弯を希望している。今週はグレビット先生のAISの手術の他、メディアン先生のEOSに対するGrowing rod法の手術を見せていただいた。印象はAmazing!の一言に尽きる。スクリューは凹側凸側全椎体フリーハンドで、あっという間に設置し(四肢の骨折の手術より早いかもしれない)、矯正ももちろんすばらしかった。個人情報なので、詳しいことはここに書けないが術式としてはShilla法をmodifyした感じの手術であった。通常Growing rod法では全部展開しないが、本法では全部展開しており、フェローの先生に聞いたらSemi Growing rodと言っていた。またFinal fusionの手術もしないと言っていた。メディアン先生は閉創前に退室されてしまい、あまり質問できなかったので、今度いろいろ聞いてみたいと思う(写真:病院の正面)。

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イギリス留学記 ~その3~ (工藤大輔)

2016年1月4日月曜日。今日も夜明け前に病院に向かう。病院までは無料のシャトルバスがあり30分くらいかかり、病院に着くころにようやくうっすら空が明るくなる(写真5)。新年明けて最初の研修は、毎日の朝の全体カンファレンスの後、グレビット先生の外来見学であった。イギリスでは日本とは違い、かかりつけ医(GP)からの紹介がないと専門医を受診することができない。フェローの先生と一緒にグレビット先生の外来につき、Consultantであるグレビット先生がフェローを教育し、またフェローの先生もグレビット先生に適宜質問し、一つ一つの症例をディスカッションするというスタイルであった。新患が多いせいか一人一人の患者さんとの面接や診察の時間が日本よりも長く丁寧であると感じた。ちなみに診療録の記録は一通り診察した後にまとめて病歴や所見を音声として記録するというものであった。また腰痛のみの症状で紹介された患者は日本のようにすぐ薬を処方したり、注射をしたりすることもなく、多くは運動療法を指導し、特に所見や画像に問題無く、手術適応がない場合にはもとのGPに再紹介していた。この日の午後は、グレビット先生のご高配でUniversity Hospitals of Leicesterの側弯外来を見学させていただいた。こちらの病院で手術適応の患者さんが来ればQMCへ紹介し、手術を行っているとのことであった。ちなみにイギリスでは小児の側弯症に対する装具療法はほとんど行われていないとのことで、理由はイギリス人の女の子の多くがタイトな服を好み、装具を付けたがらないためコンプライアンスが悪く、多くは装具ではなく手術を望むからと教えていただいた。また側弯の学校検診も現在では行われていないとのことであった。日本では検診でなるべく早く発見して、装具療法でなるべく手術を回避しようとしているが、こちらでは装具療法を行う程度の側弯はさほど問題ではなく、進行したら手術をすれば良い(するしかない!?)というコンセプトなのだろうか。

今週は側弯症手術と腰椎人工椎間板置換術であった。側弯症手術では執刀前のレベル確認のマーキング針の打ち込みはなく、まず腰椎のみ展開し、術中所見と肋骨の触診などで見当をつけてスクリューを挿入(術前のX線と術野の終椎の傾きを見比べればほぼ間違いそうにないのだが。)し、術中にX線側面像を撮影してレベルを確認。腰椎にスクリューを入れ終わったら、胸椎を展開し、胸椎にスクリューを挿入していた。ちなみにグレビット先生のお考えでは、アウトカムに対するエビデンスが弱いとのことで回旋変形の矯正はあまりこだわっておらず、頂椎レベルでは凸側にしかスクリューを挿入しないとのことであった。もう一つの理由は脊髄が凹側によっているため、安全性を考慮してとのことであった。スクリューは刺入点の骨をリュエルで咬除してから、全てフリーハンドで素早く挿入していた。スクリューを入れ終わると、頂椎凸側の肋骨形成(肋骨切除)を行っていた。これはいつも行っているわけではなく、見ためを考慮してとのことであった。続いてCapener lamina gougeで次々と両側の下関節突起の切除を行っていく。骨から出血するのだが、手際よくサージセルとガーゼで圧迫するのでそんなに出血しない。凸側にロッドを設置すると側弯が矯正される。コンプレッション、デコンプレッションをかけてさらに側弯を矯正してから再頭側は横突起にフックを設置していた。凹側も同様にロッドを設置し、最後に棘突起を基部を少し残して切除、移植骨とし、ノミで残った棘突起基部と椎弓外板を削ぐようにdecorticationを行い、切除骨を置いて閉創していた。骨切り操作を手術の終盤に行うことで出血が押さえられ、また手数を少なくすることで手術時間が短縮されていると思われた。別の日は小児の後側弯で、Ponte Osteotomyを併用した矯正術であった。骨切りはノミで両側下関節突起を切除し、残った正中の骨を棘突起ごと一気にリュエルで切除するというやり方であっという間に、骨切りが終わってしまった。ちなみにこの手術では長い手術だから・・・ということでみんな途中で手を下ろしてランチタイムをとっていたのに驚いた。

グレビット先生は脊柱変形を主に手がけられているようであったが、今週は腰椎前方進入による人工椎間板置換術も見せていただいた。実はこれまで腰椎前方進入を見たことがなかったので、すべてが驚きであった。術中は一つ一つ丁寧に解説していただいたので非常に分かりやすかった。まだ1週間しか経ってないが、非常に勉強になった1週間であった。

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チームイリザロフ,秋田大学附属病院プロジェクトコンペ最優秀演題賞表彰式!!

昨年末に行われました,秋田大学附属病院プロジェクトコンペで,チームイリザロフが最優秀演題賞受賞したニュースを先日お伝えいたしましたが,2016年1月7日,その表彰式が盛大に行われました.プロジェクトを支えて下さった坂谷慶子師長,門間りつ子看護師はじめ,中心メンバー(高橋加苗,金 悠佳,朝倉愛子,照井ゆかり 敬称略)が列席いたしました.病院長から,『附属病院発展のため,益々頑張ってほしい』と激励いただき,堂々たる発表をした高橋加苗看護師が賞状を,金 悠佳看護師が目録を受け取りました.その瞬間を目にしたときは,ちょっと目頭が熱くなりました.イリザロフ創外固定のケア,退院支援は年々進歩しており,病棟に次々と新しいスタッフが入っても,ケア,退院支援のレベルが維持,発展しているというのは,チームイリザロフが成熟した組織である証しだと感じています.今年もたくさんの患者さんと共に歩みながら,大きな研究成果を挙げていけるように,みんなで頑張りましょう(^^)/

最後に,師長さんから一言いただきました

第一病棟8階の坂谷慶子です。病棟の退院支援ワーキンググループが院内のプロジェクトコンペ(医療サービス部門)で最優秀賞をいただきました!!日々の病棟スタッフのがんばりを院内に発信できればと思いコンペの参加を思いついたのですが、こんなに素敵なご褒美がいただけるとは想像しておりませんでした。とてもうれしく、スタッフのがんばりを誇りに思っております。これからも、スタッフとともによいケアができるようがんばっていきたいと思っております。イリザロフケアセミナーでご支援いただいた島田洋一教授はじめ、野坂光司先生に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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