投稿者「akita-u-seikei」のアーカイブ

2015青森県足の外科研究会(野坂光司)

11月28日青森県足の外科研究会に行ってまいりました。主にMATILDA法と足の外科領域の難治症例について講演いたしましたが、このような貴重な機会を与えて下さった石橋恭之教授には心から御礼申し上げます。弘前大学さんは日本でも非常に早い時期からIlizarov創外固定とMicro Surgeryを融合させていたところで、最近また大学でもIlizarovを行うようになってきているとのでした。情報交換会でも、県内のたくさんの、やる気に目を輝かせたヤングドクターから質問を受け、自分も元気をもらうことができました。石橋恭之教授からは、以前は藤哲名誉教授と多くのIlizarovを行っていたという懐かしいお話をお聞きいたしました。もう一つの特別講演は、奈良県総合医療センター杉本和也先生で、次の日本足の外科学会会長という大変御高名な先生で、私自身もとても勉強になるお話でした。

石橋教授には主任教授としての責務はじめいろいろなお話を伺うことができて、大変有意義でした。その中で脊椎のみならず関節、外傷あらゆる分野をしっかり組織作りされている島田教授の統率力の偉大さを称えていただき、非常に嬉しく思いました。

秋田イリザロフ法グループAIMG、秋田足の外科グループAFGともに益々頑張っていかなければ、とパワーをもらえた貴重な一日でした。

 

 

第18回日本低侵襲脊椎外科学会 (木村竜太)

第18回日本低侵襲脊椎外科学会が11月26日〜27日、品川プリンスホテルを会場に開催されました。秋田からは島田教授がモーニングセミナーのご講演をされ、石河紀之先生、櫻場乾先生、水谷嵩先生、尾野祐一先生、木村が参加しました。脊椎の低侵襲手術はPEDやLLIFの普及に伴い、大きな変革期となっています。今回のテーマは「新しいゴールデンスタンダードを確立する」で、MED、XLIF/OLIFがゴールデンスタンダードに成り得るかについてシンポジウムで議論がなされました。結論として、MEDは顕微鏡手術と同等の成績だが、内視鏡に一度慣れるとその実用性から離れられなくなる、今後は手術教育ならびに機器の普及次第ということでした。LLIFは成人脊柱変形において、欠かせない手術手技となっており、今後indirect decompressionの長期成績が出て来れば短椎間固定にも普及する可能性があるということでした。

島田教授のモーニングセミナーは、早朝にも関わらず多くの方が聴講されました。現在秋田でもXLIFを用いたASDの治療を行っていますが、そこに至るまで自家骨のみのPLIFから始まり、日本の先駆けとして取り入れたTLIF、またmultiple PLIFなどについてお話しいただき、この歴史があった上で、今の治療があることを再認識しました。また、秋田大学のメンバーでありながら、島田教授のご講演を聴く機会はなかなかないのですが、聴講されている方を1時間魅きつけたままのプレゼンテーションは大変勉強になりました。

この会の後、石河先生と尾野先生は生体ブタを用いた内視鏡手技トレーニングのため神戸へ向かいました。私たちも内視鏡手技を身につけるべく、今後継続して受講して参りたいと思います。

JASMISS

第12回研修医のための整形外科学セミナー (木村竜太)

平成27年11月21日に「第12回研修医のための整形外科学セミナー」が開催されました。研修医、学生の皆さんに、秋田大学整形外科の若手医師、大学院生が実際どのようなことを行っているのかを知っていただき、ぜひ一緒に働きたいと思ってもらえることを目的に毎年開催しております。

今回は大学院生の赤川学先生、尾野祐一先生、私の3名が発表しました。当日は初期研修医8名、学生10名と多くのご参加をいただき、会場は満員でした。

 

はじめに尾野先生から、先日参加されたSRS(Scoliosis Research Society, Minneapolis)〜Mayo clinic研修〜ASBMR(American Society for Bone and Mineral Research, Seattle)の米国短期留学について御発表いただきました。当科では若手に海外学会への参加を積極的に促しており,特に大学院生は毎年必ず海外学会へ参加しています。SRSでは教科書に出てくるような偉大なドクターのセミナーで側弯症の治療の歴史を体感され、360度回旋した脊椎など衝撃的な写真をお見せいただきました。Mayo clinicは当科の本郷講師が留学されていました。そのご縁もあり,病院・研究施設を見学され、Dr. Zhaoや実際に留学されている日本の先生方からもお話を伺う機会があり、「大変だけど必ず留学するべき」と激励いただいたそうです。ASBMRは当科から宮腰准教授はじめ計10名が参加し、多くの発表をされました。尾野先生は長期米国滞在による食事への不満を解消し、シアトルを満喫されたようです。

 

次に、私から運動器の超音波について発表しました。秋田県の整形外科では超音波を診断、治療に積極的に取り入れております。実際の症例として河野先生の肋骨骨折時のエコー像や、自分の足関節捻挫後の足関節不安定性や、急性腰痛時に赤川先生に施行いただいた生理食塩水での筋膜リリースの効果などを提示させていただきました。初期研修医の皆さんにとってエコーは身近な存在だと思います。ぜひ運動器エコーにも積極的に取り組んでいただきたいです。

 

赤川先生からは動作解析を中心に御発表いただきました。現在取り組んでいる、VICONを用いた変形性膝関節症患者の術前後の動作解析を始め、なかなかとっつきにくいバイオメカニクスについてご説明いただきました。またASAKG(Akita Sports Arthroscopy Knee Group)やノーザンバイソンズ(バスケットボール)の活動もとても輝かしいものでした。ただ途中に出てきた「Male spine motion during coitus」の論文に皆興味を奪われました。

 

最後にサプライズ特別講演として、秋田大学6年生の原田俊太郎君に発表いただきました。原田君は学生中に早々に入局を決め、今年の東北整形災害外科学会の学生セッションで発表し、見事準優勝を勝ち取られました。その演題「秋田大学整形外科における学生リクルートの現状と成果」では、慢性的な医師不足の中、なぜ当科が入局者を確保できているのか、その現状について説明いただきました。山田研修教育長を中心にしたサポート体制の充実ぶりは、実際に働いている私も実感しております。

 

その後の懇親会でも研修医、学生の皆さんと交流を深めることができました。ぜひ一緒に働けるのを楽しみにしています。

今後も定期的に開催を予定していおります。ご興味のある研修医、学生の方はぜひご参加ください。

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第5回秋田県骨粗鬆症学術セミナー (鈴木 真純)

第5回となりました秋田県骨粗鬆症学術セミナーですが、週真ん中の平日にも関わらず多くの先生にご参加頂き有り難うございました。一般演題に斉藤公男先生・瀬川豊人先生を、そして特別講演には浜松医科大学整形外科 准教授 星野裕信先生を御招きして御講演して頂くこととなりました。

初めに、斉藤公男先生の「骨粗鬆症患者における骨密度と脊柱・下肢アライメント」に関する御講演です。骨粗鬆症と脊椎・下肢関節アライメントとの関連に関する報告は多く散見されますが、先生ご自身の研究患者におけるデータの解析ということで非常に興味深いものでした。特に、膝OA進行期とBMDに正の相関を認めたという結果も色々と原理を考えさせられました。また、非常に難しいと思われますが、脊椎アライメント破綻⇔下肢アライメント破綻は単純な原因結果関係ではなく、今後こうした研究報告を重ねて発展させてゆく事が重要であると思いました。次いで、瀬川豊人先生の「壮年期の骨折患者における血中ビタミンC濃度の検討」の御講演です。比較的若年で、骨脆弱性が関与する骨折患者と、通常のhigh energy 外傷による骨折患者とで、血中ビタミン濃度やその他骨脆弱性に関与する因子の有無について比較されたご報告でした。骨脆弱性とビタミンCとの関連は過去の報告からも明らかですが、改めて県内施設実際の臨床データとして確認したというもので、今後ビタミンC補充などの治療介入で後々の結果が楽しみでもあるご報告でした。

そして、星野裕信先生による「運動器検診を利用した骨粗鬆症評価から治療介入へ」の御講演です。御講演の中でありましたが、秋田県でも声高に言われておりますが骨折患者への積極的な骨粗鬆症検査治療介入に関して、達成率が27%程度であるというのは有名な報告ですが、実際知りながらもなかなか改善してゆくが難しい問題であると思います。今回の御講演では、星野先生が行っている愛知県東栄町という地区での運動器検診(TOEI study)で得られた貴重なデータを中心にその点を中心にお話を頂きました。同様に秋田大学でも毎年阿仁地区を中心に脊椎検診を行っており、今後の発展のために非常に勉強になる内容でした。具体的に、検診に参加された町民の全脊椎, 下肢全長の単純X-rayを施行されておりそうした体制が整っているということや、2年間での骨折率や再骨折率(各々12%, 14%)などのお話は非常に興味深い内容でした。その他、現在controversialな内容である長期Bisphosphonate使用者のdrug holiday(ほぼ統一見解とする報告はなされてきておりますが)・PTH治療終了後の継続治療についての新しい報告から、病診連携に関する事まで幅広い内容のお話も頂きました。

最後になりますが、平日にも関わらず秋田に来て頂いた星野裕信先生、そして県内関連病院の先生方にこの場を借りて御礼申し上げます。conv0001

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第30回日本臨床リウマチ学会 (杉村祐介)

2015年11月21、22日に、第30回日本臨床リウマチ学会が神戸市で開催されました。

今回AORAからは、1日目には宮本誠也先生の「トシリズマブ4年継続投与例における関節エコー所見の検討」、柏倉剛先生の「関節リウマチ患者における関節エコーを用いた中・後足部評価」、櫻場乾先生の「関節リウマチ患者の骨折リスク因子の検討」、杉村祐介の「発症早期リウマチ患者の2年間の治療経過」、2日目には小西奈津雄先生の「生物学的製剤投与下の関節リウマチ患者に対し、感染が疑われ二期的に人工股関節全置換術を行った1例」の計5演題を口演発表してきました。

この学会はより臨床に則した内容の演題が多く、フロアからの質問や討論も活発で、深い内容まで議論する印象を受けました。その中で、他の施設での研究や臨床の取り組みの発表に刺激を受け、また自分たちの発表の際に投げかけて頂いた質問から新たなテーマを発見し、とても実りある学会となりました。

また、1日目の夜には皆で神戸牛を食べ、今後の英気を養いました。

今後もさらに活動を発展させられるよう頑張っていきたいと思います。

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第8回 Murup Hospital Live Surgery(韓国 釜山)に参加して(齊藤英知)

8th Murup Hospital Live Surgery

I would so appreciate and be thankful with prof Jung who is a Director of the Murup hospital. The successful meeting finished with hot discussion between Korean and Japanese orthopedic doctors including two live surgery. The first one was TKA performed by prof Seo, with original measuring method. The last was TCVO performed by prof Yonekura. All surgery were so wonderful. I could have a good friendship with Korean orthopedic doctors through 2 night 3days. I hope we could meet next January, 3rd Korea Japan Knee Osteotomy Forum in Busan again, and discuss each other again.

 

この度、2015年11月21日に、韓国の馬山市のMurup病院で行われた本会に参加して参りましたので報告致します。Murup病院はJung Woon-Hwa先生が設立されたprivate clinicでJung先生はosteotomyに関する多くの論文をArthroscopyなどで発表されております。

3週間前に横須賀市民病院関節外科の竹内良平先生から、竹内先生が急遽行けなくなったので、長崎大学の米倉暁彦先生のTCVO(脛骨内側顆外反骨切り術)のライブ手術のmodulatorをやってくれ!とお電話を頂きましたので、” It’s my honor!’とうことで参加が決定しました。異国で慣れないスタッフと手術をする大変さは、自分もドイツでの執刀経験から十分承知しているつもりでしたので、少しでも米倉先生がやりやすいようにアシストするつもりで臨みました。日本からの参加者は、秋山先生(福岡)、中村先生(やわたメディカルセンター)、米倉先生(長崎大学)、立石先生(同愛記念)、長瀬先生(同愛記念)、松井先生(浜の町病院)、朴先生(焼津)、岡崎先生(長崎大学)で、皆さんがtopicを英語でプレゼンされました。自分もhybrid CWHTOと長方形骨孔ACL再建を同時に施行したcaseを発表しました。会のプログラムは、午前中はcase discussionや研究報告などが英語で行われました。ごごから、韓国の重鎮のSeo教授(元サムソンメディカルセンターのprofessor)がTKAのライブ手術を行い、それに引き続きて、米倉先生のライブ手術が行われました。MCLがかなり硬い患者さんだったらしく、骨切り部の開大に時間を要しましたが、完璧な手術で、術前の計画通り、TCVOにOWHTOを加える手術が無事に終了しました。ここで、影のヒーローであったのは、助手をされていた岡崎先生でした。たまたま、福岡ー釜山便では隣の席であったので、我々は、翌日に控えた手術に備え、手順を確認しておりました。岡崎先生は、原稿用紙4枚分程度の英語の原稿をすでに準備しており、すでに完璧でした。手術中も執刀医である米倉先生は手術の集中するため、要所要所での岡崎先生の英語での説明が光り輝いていました。韓国の先生も全くTCVOを見たことはないので、いろいろ質問がありましたが、basicな質問が多かったように思います。

懇親会では、ACIのKim教授、TKAのIn教授、Kyung教授、ホストのJung教授と多くのお話ができ、交流できたことは多くの収穫となりましたが、若手整形外科医からも多く声をかけられ、血気盛んな若手が非常に多いと感じました。10月にはうちの赤川学先生が、東北整形災害外科学会のトラベリングフェローですでに、In教授や多くの若手整形外科医と旧知の関係となっており、赤川学先生の韓流スターぶりも十分感じることができました。「ボーイ先生、さすがです!」この調子で、われわれのASAKG(秋田スポーツ膝関節鏡グループ)から多くのトラベリングフェローが輩出してくれればいいなと若手に期待してます。

秋田スポーツ膝関節鏡グループで現在研究を進めている内容などは、最新の知見であり、みんなが知りたいと思っていることも今回、改めて再認識したので、秋田からアジアに、そして世界へとどんどん情報を発信して参りたいと思います。

この会、このような機会をくださった島田洋一教授、竹内良平先生、関節グループの皆様、医局の皆様、同門の皆様に深謝申し上げます。ありがとうございました。

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第50回 日本脊髄障害医学会学術集会(水谷 嵩)

第50回日本脊髄障害医学会学術集会が2015年11月19〜20日グランドプリンスホテル高輪で開催されました。当教室でも毎年参加している学会で、今年もポスター6題、口演1題を発表してまいりました。メンバーは大学から島田洋一教授、松永俊樹准教授、佐々木研先生、益谷法光先生、木村竜太先生と私、能代厚生医療センターから安藤 滋先生、市立横手病院から大内賢太郎先生が参加しました。

脊髄障害がテーマのため、整形外科のみならず、脳神経外科、神経内科、泌尿器科、リハビリテーション科など様々な分野から演題が集まり、内容も臨床的な内容から基礎研究の話題まで幅広い知見を得ることができました。今回私はハンドリハビリテーションシステムの発表をさせていただきましたが、発表後他県の発表者の方からも質問を頂いたり、情報交換をすることもできました。また、教育講演では腰痛、慢性疼痛、首下り症候群など臨床的な内容にも触れることができ、今後診療の場で役立つ知識も身につけることができました。

本学会は国内でも歴史のある学会ですが、今回は記念すべき第50回ということで京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授の特別講演が企画されました。山中先生の基礎研究を志した経緯や、留学についてのご経験、iPS細胞を完成させた時のお話など盛りだくさんな内容でした。臨床応用に向けて課題の多い分野ですが、近い将来、より身近になって様々な場面で活躍できる可能性を感じました。最後の締めに、肝硬変で亡くなられたご家族を例に、昔は治せなかった病気も治療できる時代になったとお話され、自身の基礎研究に対する思いが込められた一言でした。

今回平日の日程にもかかわらずこのような貴重な機会を与えていただきまことにありがとうございました。

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タイPongsthorn Chanplakorn先生手術見学 (工藤大輔)

11月15日Ramathibodi Hospital, Mahidol Universityよりポン先生が来日され、11月16日から20日の間、秋田大学、秋田厚生医療センター、秋田赤十字病院で脊椎外科の研修をされました。Mahidol Universityはタイでも1,2を争う大学でアジア大学ランキングにもランクインしています。タイでも近年、高齢者の手術が増加し、高齢者脊椎手術に伴う手術難易度、合併症の問題があり、その勉強のため秋田まで研修に来ていただきました。期間中、XLIFを用いた前後合併手術や、内視鏡手術、頚椎椎弓形成術など様々な症例を見学していただきました。タイでもXLIFなどの側方アプローチ手術はあるようですが、患者さんが負担する費用が高額となるため、あまり行っていないとのことでした。また同様の理由で骨粗鬆症患者さんに対するテリパラチドの使用も、症例をかなり限定して使用し、側弯症手術でも全椎体にスクリューを挿入することはせず、矯正と費用のバランスを考えて手術をされているとのことでした。日本とタイの医療経済に関する違いを感じました。また頚髄症に対する手術も以前は椎弓形成術を行っていたようですが、現在は白石先生の方法で椎弓切除を行っているとのことで、手術法はなんと動画を見て独学とのことです。ポン先生は40歳と比較的若い先生でしたが、Total en bloc spondylectomyや脊索種に対するSacrectomyも行われているとのことで、穏やかな風貌とは裏腹に激しい手術もたくさんされているようでした。

木曜日は朝からケースディスカッションを行い、宮腰准教授からは高齢者骨粗鬆症性椎体圧潰に対する手術術式の変遷や、現在の治療戦略について解説していただき、ポン先生からはTotal en bloc spondylectomyについて解説していただきました。臨床実習中の学生も交え、整形外科疾患のみならず英会話の良い勉強にもなったかと思います。

アフターファイブは、秋田の料理や地酒を楽しんでいただき、特に水曜日のWelcome partyではAkita Spine Groupでポン先生を囲んで交流を深めることができたと思います。タイは羽田空港から約5時間で利便性も良く、今後ますます交流を深め、お互いに研修して技術の向上が図れればと思います。

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第6回 秋田県骨粗鬆症PTH治療セミナー報告(水谷 嵩)

2015年11月11日、第6回 秋田県骨粗鬆症PTH治療セミナーが秋田ビューホテルで開催されました。高い高齢化率を誇る秋田県では、いっそう骨粗鬆症治療が重要になってきています。今回は一般演題と特別講演を各1題ずつご講演いただきました。

はじめに一般演題では、秋田労災病院の加茂啓志先生から「人工関節周囲骨折に対するPTH治療」と題して御発表いただきました。TKAや人工骨頭置換術が一般的に行われるようになった昨今、人工関節の周囲で骨折してしまう方々も見られるようになりました。背景には骨粗鬆症が合併していることがほとんどで、手術方法や骨粗鬆症治療など様々な問題が生じます。加茂先生からは手術を行った例も含め受傷後にPTHを併用した自身のご経験をご紹介いただきました。

特別講演では、埼玉医科大学准教授の宮島剛先生から「骨粗鬆症治療におけるテリパラチドの位置付け」と題して御発表いただきました。宮島先生は骨粗鬆症を専門とされており、テレビ出演もされ大変ご多忙な中はるばる秋田までお越しいただきました。前半は改訂された骨粗鬆症治療ガイドラインの話題を中心に、一般的な骨粗鬆症の話から基礎的な話題、治療薬の選択方法、など多岐にわたる御発表をいただきました。これまであまり意識していなかった副次的作用に関してもご説明いただき、治療薬選択の幅が広がりました。

後半は宮島先生の専売特許とも言える研究分野で、性同一性障害の方の骨代謝変化についてご紹介いただきました。なぜ性同一性障害が発症するのかという疑問について性分化の段階からご説明いただきました。研究のため実際に新宿2丁目まで足を運び、被験者を探されたというエピソードには驚きました。また、現在適応はありませんが、男性の骨粗鬆症に対してもSERMは有効であるという結論に至るまでの研究内容は大変興味深かったです。

今回は普段と異なるテーマのご講演も拝聴することができ、貴重な知識を得ることができたセミナーでした。

和歌山労災病院 脊髄モニタリング研修 2015/11/11,12 担当 鈴木真純

脊髄電気生理学的モニタリングの歴史は古く、体性感覚誘発電(somatosensory evoked potentials:SEP)から始まり、1954年にDawsonが自動加算装置を開発してからは急速に広まることになりました。1990年代に入ってからは経頭蓋磁気あるいは電気刺激によって誘発筋電図を記録する、運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)が普及し始め、それまでは感覚路のみのモニタリングでありましたが、運動路モニターも可能となりました。神経モニタリングは整形外科に限らず、心臓血管外科、耳鼻科などあらゆる分野で活用されています。運動・感覚神経に直結する分野である脊椎外科領域では必須の手技と言えます。

今回島田教授の御高配により、尾野祐一先生・木村竜太先生とともに和歌山労災病院脊椎センター 安藤宗治先生の元でモニタリングの研修をさせて頂く機会を与えて頂きました。かねてからモニタリングに関する御功名は存じておりましたが、実際にお会いするのは初めてで、島田教授と同じKARATE fighterということでいささか緊張しておりましたが実際お会いした先生は非常にgentleでした。まず朝の病棟のオーダー端末の前で行われる術前術後カンファランスから参加させていただきました。脊椎以外にも上腕骨頚部骨折, TKA, 手外科など幅広い分野の疾患を扱っているようでした。その後は別室で、安藤先生直々にスライドを用いた脊髄モニタリングの基礎と実際の症例を提示して頂きながら応用に関する講義をしていただきました。脊髄モニタリング初心者の自分にもとても分かりやすく感銘を受けると同時に、実際の症例を交えてのpit fallの話などは、秋田で行っている脊椎手術においても決して人ごとではなく、モニタリングをさらに普遍的な物にしていかなくてはならないと、重要性を改めて実感するものでした。

さて、実際のモニタリングの見学症例ですが、胸椎OYL laminectomyでした。まず驚いたのが、技師さんが電極設置から術中刺激, 記録など医師の指示の元全て行っていたところです(欧米では普通のことのようですが)。しかもその日は見習い的な方を含めて技師3人体制で行われておりました。技師さんも、安藤先生からの御指導以外にも研修, 勉強会等に参加するなど、積極的にモニター管理に取り組む体制が構築されているのにも驚くと同時に秋田の遅れを痛感いたしました。また、これはコストやマンパワーなど施設間の体制に左右されることもあるのかもしれませんが、和歌山労災病院では transcranial MEPに加えて脊髄刺激脊髄誘発電位も同時にモニタリングしておりました。先にご講義頂いた内容を見てですが、双方のモニター方法で補完し合うことで(例えばtranscranial MEPでは後側索レベルでの障害の検出には不向きです)、無駄なope中止や重篤な神経障害の残存を回避した症例もあり、当院でも導入すべき体制であると感じました。

最後になりますが、確かに脊髄モニタリングは、波形の高低、出た出ないだけで行えるほど単純なものではありませんが、基本的な原理を理解すればあとは症例を重ねてゆく事が重要であると思いました。

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