月別アーカイブ: 2018年2月

第5回しらかみ疼痛セミナー(湯浅悠介)

2月9日、秋田ビューホテルにて第5回しらかみ疼痛セミナーが開催されました。

特別講演1として羊ケ丘病院整形外科股関節外科部長の加谷光規先生より「股関節痛を考察する~股関節鏡手術からの検証」と題して御講演いただきました。普段何気なく行っているPatrick testから、股関節痛をより詳細に診断し、それぞれに対する治療法をお示しいただきました。治療法の一つである股関節鏡視下手術は、今や股関節外科医にとって必須手術手技となっており、その重要性、必要性をご教授いただきました。加谷先生には、診察法・手術手技はもちろん、整形外科医としての考え方までいつも優しくご教示いただいており、大変感謝しております。今後も秋田大学をご指導いただけたら幸いです。宜しくお願い致します。

特別講演2として福島県立医科大学医学部整形外科学講座の紺野愼一教授より「慢性腰痛の病態」と題して御講演いただきました。慢性腰痛のリスク因子としてストレスは欠かすことができず、その治療法としてストレスを溜めないことが大切であるとご教授いただきました。適度な運動を行い、好きな音楽を聴くことは下行性抑制系の改善につながることもお示しいただきました。日々の診療にて慢性腰痛を訴える患者さんは極めて多く、様々なアプローチからその症状を改善させるよう導いていく必要があると感じておりました。今回のご講演を明日からの診療に生かしていきたいと思います。この度はご講演いただき誠にありがとうございました。

留学報告⑧(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.

 

今回は外来について

長尾正人先生を通じて,整形外科の外来見学を定期的に行っています.

ZSFGHは教育病院でもあるので,ここ独特の診察スタイルがあります.レジデントと医学生が8人くらい,指導医が3−4人いて,最初にレジデントや医学生が問診・診察・所見をとり,指導医に確認後,一緒に診察し説明する,というスタイルです.時間はかかりますが,患者さんも納得されているようなので,教育病院としてしっかりした体制と感じました.1日の外来患者数は新患・再来を合わせて60人前後とのことですので,そこまで多くはありません.そのため,しっかり時間をかけて診察し,説明できている印象です.

日本との違いなどについて,気になったところ,印象を書き出してみます.

 

・Orthopedic doctorとPhysiatrist,PT,OT,NPその他沢山の業種が一緒に外来にいます.チームで動いているということがとても分かりやすい状況ですし,情報の共有やタイムラグも少なくて良いと思います.が,そのまま日本に取り入れるのはかなり厳しそうです….

 

・スタイル:外来は医師が所見を書いたり話し合ったりする狭い小部屋が2つあり,それを囲むように個室の診察室が15以上配置され,医療従事者がその個室を訪れて診察や処置するというスタイルです.

 

 

 

 

 

 

 

上級医が待機する部屋.結構狭いです.この部屋を中心に20室くらいの診察室が取り囲んでいます

 

・一般的な外来の雰囲気:服装は至ってラフです.レジデントは必ずスクラブを着用していますが,白衣やスクラブを着用しない医療従事者も少なくありません.なので,名札がないと患者か医療従事者か分からないことが多々あります.帽子を被っている人もいますし,ネコ耳のカチューシャをつけている人もいます.ハロウィンのときは仮装している人もいますが,特に誰も気にとめていません.入れ墨率も高いです.このあたりはかなり自由で す.

 

・囚人患者:囚人の患者さんも結構きます.映画で見るような上下オレンジ色のジャージを着て足と手に手錠をはめられた患者さんをみて妙に感動しました.訴えは至って普通で,喧嘩して腰が痛い,などです.

 

 

 

 

 

 

 

写真はイメージです.でも本当にこんな感じです.

 

・外来中のアシストは少なく,トリガーポイントなどの注射も準備してくれません.しかし,カルテ記載以外の事務的な業務に関してはクラークさんが行ってくれます.看護師はNP(Nurse practitioner)という診察も処方もできる人が,医師と同様に診療しています.名札が無ければ普通に医者です.

 

・レジデント:概して上級医に対して,レジデントの聞く態度は悪いです(足組んだりはまだしも,足を机に上げたり,普通にご飯を食べたりコーヒー飲んだり…)が,いつも真剣に?聞いています.

 

 

 

 

 

 

 

 

右が指導している長尾正人先生,左がレジデント…

 

・英語が通じないとき(トランスレーター):サンフランシスコは移民率が高く,英語が話せない・通じない人もかなりいます.そんなとき,トランスレーターを通じて診察を行います.主に中国語,スペイン語ですが,いろいろな言語に対応しています.ちなみに日本語はありません.いろんな言語が飛び交っているので,ここは何処の国だろうと分からなくなるときがあります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前のブログにも登場した翻訳機.実際はこの機械よりも電話のスピーカー機能がよく使われています.

 

・長尾正人先生:Physiatristとして勤務されています.Physiatristはリハビリテーション専門医と訳されますが,実情は幅広く,意味合いが異なると思います.長尾先生は筋骨格系を中心とした診療をされていますので,日本での整形外科に近く,EMGや,needle specialistとしてブロックや関節内注射を専門にされています.また,ブロックや関節内注射は別日に手術室で行われており,外来診療中は行っていません.患者さんに対する態度は至って物腰柔らかであり,かつ問題点を明確に提示し,それに対しての解決方法を明快に説明されます.また,レジデントや学生への説明も非常に論理的で分かりやすく,大変勉強になりました.レジデントや同僚ドクターからの信頼も厚く,コンサルテーションが耐えず常に御多忙の様子でした.いつも大変ありがとうございます.

 

つづく

留学報告⑦ スケジュール(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.

 

④タイムスケジュール

現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Institute (以下OTI)です.今回は

OTIにいる医師に共通するタイムスケジュールについてです.

・週間スケジュール  

月曜日:fractureカンファ/病棟合同カンファ

火曜日:fractureカンファ/病棟合同カンファ

水曜日:Ground round

木曜日:専門別(Trauma, Spine, Hand, Ankle/Foot)カンファ・レクチャー

金曜日:専門別(Trauma, Spine, Hand, Ankle/Foot)カンファ・レクチャー

・1日のスケジュール

AM6:00-6:45:レジデント病棟回診

AM7:00-8:00:各種カンファ

AM8:00-8:30:病棟合同カンファ/レクチャー

以降,手術や外来へ.

 

・OTIはアテンディングとレジデント合わせて約30名の医師がおり,Gold,Blueの2チーム分かれて活動しています.

・fractureカンファは術前・術後検討で,月曜は1つのチームが今週の手術予定を提示し,もう一つのチームが先週の術後報告をする,火曜はその逆,という形です.

・合同カンファではアテンディング,レジデント,看護師で病棟の問題患者について検討しています.基本てきに前日の救急患者と,術前・術後検討です.1症例2-3分,ときどき激論となるのはどこも一緒みたいです.

・レクチャーはシニアレジデントがジュニアレジデントに教える形で症例提示をしながら進みます.ときどきジュニアレジデントやアテンディングからの質問,激論が入りながら約1時間行われています.

・水曜日のGround roundは朝に行われるCloseの勉強会でParnassusキャンパス(後日報告)にUCSF整形外科のほとんどのスタッフ・レジデントが集まり,1時間ほど外部から講師を招いて講演を行っています.

・第一水曜日の朝は,レジデント向けにキャダバトレーニングが定期的に開催されています.

骨折カンファの様子.朝,暗いうちからやってます.

山形大学の先生も短期留学していました

 

つづく

第39回東北骨代謝・骨粗鬆症研究会(赤川学)

2月3日に仙台で行われた東北骨代謝・骨粗鬆症研究会に参加してきました。秋田からは大学から粕川雄司先生、野坂光司先生、尾野祐一先生、自分の4人が参加し、また大学外からも秋田労災病院の奥山幸一郎先生、五十嵐記念病院の堀川明先生が演題を出し、さらに労災病院検査科の豊口恵理さんも労災病院での仕事をまとめ発表していました。一般演題21演題中、その1/3にあたる7演題が秋田からの演題でした。また今村記念クリニックの田村康樹先生も参加し、積極的に質問されていました。

一般演題の後は、弘前大学の石橋恭之教授からミニレクチャー「骨粗鬆症と変形性膝関節症〜地域一般住民検診の結果から」がありました。膨大なnの地域コホートの結果から骨代謝と変形性膝関節症に関連を教えていただきました。

特別講演は香川大学の真柴賛先生で「骨粗鬆症治療の際に知っておきたい骨代謝動態、骨強度の知識」として、骨代謝の基本的知識から、薬剤の体内での動態まで詳細に講演していただきました。

今回学んだことを学位研究や今後の臨床研究に活かしていきたいと思います。

留学報告⑥(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.   今回はインフルエンザ流行と咳予防について 米国でもインフルエンザが猛威をふるっています. しかし,日本ではおなじみのあの風景が全くありません.そう,マスクです.

 

 

 

 

 

 

 

本当にほとんどしていません.咳をしている人も….流石にしてくれと言いたいところですが. 病院でも,手術前室でマスクをつけていると,逆に何かに感染していると怪しまれるということで外さないといけません. もう一つ.咳や仕方です.よく飛散しないように手を前に顔を塞ぐようにしますが,間違いです.これだと,手に菌やウィルスがついて拡散します.          

 

 

 

 

自分の娘が風邪を引いたとき,小児科の先生からは正しい咳の仕方の指導が入りました.この正しい咳の仕方を覚えていないと学校に行けません,と厳しく言われました.日本でもマスクをしていてもこの咳の仕方が合理的だと思います.是非とも啓蒙をお願い致します.

留学報告⑤(斉藤公男)

秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.

 

③ZSFGH/OTI その3 OTIについて

現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Institute (以下OTI)です.今回はOTIについて.

OTIはDr. Theodore Miclauが主導で2009年に開設された比較的新しい研究所です.Dr. Miclauはミーティング前には自ら椅子や机を自分で並べたりと,屈託のない人柄の方です.身なりもいつもしっかりしていて,いいとこの出身なんだと勝手に思っていましたが,プエルトリコで路上生活していた経歴もあるとんでもない苦労人の先生でした.

https://ryortho.com/2011/06/dr-ted-miclau-part-i/

https://ryortho.com/2011/07/dr-ted-miclau-part-ii/

OTI立ち上げ前の状況を知るある先生は,2003年頃のSFGHの整形外科部門は3−4人の医師しかおらず,小さな一部屋にまとめられていたと教えてくれました.現在はOTIだけで職員が50人を超える大所帯です.現在の施設からは想像できませんが,Dr. Miclauは研究費や寄付を獲得し,たった9年ほどでOTIを立ち上げて世界的な研究施設にしたということで,ただただ驚嘆してしまいます。

ベイエリア日本人整形外科の会

下段中央が長尾正人先生,下段右がDr. Theodore Miclau

 

施設の概要

Building 9という3階建ての歴史深い旧病院の建物にOTIはあります.2回の地震を乗り越えたレンガ造りの築100年を超えるビルですが,中身はリノベーションされており,見た目は非常に綺麗な施設です.1階は装具部門,2階にスタッフ用の,2人1部屋のスタッフルームがあり,ミーティングルーム,図書室や受付などがあります.3階は研究部門でClinical research(臨床研究)部門,Laboratory for skeletal regeneration部門(基礎研究),手術室を完備したキャダバトレーニングセンターがあります.キャダバセンターではキャダバを用いたBiomechanics,インプラントの開発,レジデントのトレーニングなどがひっきりなしに行われています.

私はclinical research部門の一室に席を頂いて,ここを拠点に病院の見学や臨床研究を行っています.

Building9 骨格模型が静かに出迎えてくれます

中はペンキで綺麗にリノベーションされています

受付もおしゃれ

休憩室もおしゃれ

自分の机

 

つづく