第9回秋田県運動器リハビリテーション研究会 (鈴木真純)

2月13日に開催されました、秋田県運動器リハビリテーション研究会のレポートです。リハビリテーションという整形外科医のみに限らず幅広い分野、職種の関係するテーマという事もあり、会の開始前から会場は超満員の状態でした。会場後方のパーテーションをずらしてそこに応急的に椅子を並べて対応しなくてはならないほどでした。

一般演題1題目は秋田大学の木村竜太先生から御講演頂きました。先生の臨床研究テーマであるリハビリテーション用パートナーロボットに関する内容で、TOYOTAが藤田保健衛生大学と共同開発した歩行練習アシストロボット:GEARの概要、有用性について分かりやすくお話して頂きました。特に、strokeの40代男性患者の症例では、GEARを導入したリハビリプロトコルによりストライド・歩行速度の増加がみられ、劇的に歩容・歩行能力が改善した様子の実際の動画が衝撃的でした。その他、長下肢装具から短下肢装具への移行への時間短縮効果、脊髄損傷対麻痺への応用の可能性などもお話頂き、今後の更なる発展が楽しみな研究テーマでした。2題目は北秋田市民病院の冨手貴教先生の、コンポーネントの形状によってACLの機能を再現しているという特性を持つBCS TKAと従来型(決して古いという意味ではありません)conventional TKAの加速度センサーを用いた比較のご発表でした。加速度センサーを用いることで、双方のTKAの安定性を定量化し比較考察できる点が非常に有用であると感じました。ROM,満足度はともに改善傾向にありましたが、PCS TKAの脛骨、大腿骨センサーの加速度が低下したのに対し、Conventional TKAでは速度が増加したという結果で、ACL機能を再現しているため、膝の安定性に関わっているのかもしれないという非常に興味深い内容でした。

 

特別講演は、東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学教授、正門由久 先生より「転倒とその予防」を御講演頂きました。なぜ転ぶのか→長生きするようになったから、というシンプルですが深い導入から、地域高齢者の転倒頻度・転倒恐怖を有する割合など大規模なデータまで、実際の先生のご家族の事例を要所要所に実例として織り交ぜてお話頂きました。特に、先生がご専門とされいていることに関連し、電気生理学的な運動単位数の変化(60歳を境に単位数減少)のこと、そしてそれに対応するように歩行速度も低下していることなど実際の基礎研究のデータの解説も、転倒という実際の臨床のoutcomeにつながる内容は非常に興味深かったです。秋田大学でも今後のテーマとしている運動療法介入に関しても、転倒予防のためのプログラム導入によりデータで20%は転倒抑制になるということはとても参考になりました。下肢伸展筋力、片脚起立時間の延長などの効果だけでなく鬱の改善の可能性もあるということで、自殺率N0.1(最近は返上したようですが)の我が県が問題に抱えるうつ状態と関連した自殺予防効果の可能性もあるかもしれません。あくまで個人的な見解ですが。

今後さらに増加してゆく高齢者に備えて、転倒予防は最重要課題の一つになります。今回の講演を是非参考にさせて頂きたいと思いました。

りはびり・IMG_3424