第60回日本リウマチ学会総会・学術集会に参加して (市立角館総合病院 青沼 宏)

2016年4月21日から23日の期間,第60回日本リウマチ学会総会・学術集会が横浜で開催されました.今年は,Akita Orthopedic Group on Rheumatoid Arthritis(AORA)設立以来最多の13演題が採択されました.2015年にAORAレジストリーに登録された2021症例をベースとした,手術治療,薬物治療,それぞれの切り口での発表は,どれも見応え,聴き応えのある内容でした.

秋田県の高齢化率は全国一であり,20年後の日本の有り様を先取りしているといわれます.秋田県の各都市は人,物の移動が少なく,比較的狭いコミュニティーのなかで医療を自給自足せざるを得ない状況になりつつあります.その点で,地域ごとのRA治療施設の充実と施設間の連携を主眼に置いたAORAの試みは,現在試みられている関節リウマチ治療のセンター化と一線を画すものです.今年のJCRを見る限り,施設ごと“個”の力の向上には目覚ましいものがあると実感しました.

内容については細かくなるので控えますが,セミナーで記憶に残った言葉を一つ紹介したいと思います.T2Tと合併症・高齢RA患者における治療について,聖路加国際病院の岸本先生が紹介された論文タイトルで,” Rheumatoid arthritis: strategy more important than agent; 2009 The Lancet”です.いくらいい薬があっても,それを使う医者の戦略が適切でなければ,治療は成功しません.整形外科の利点はagentだけでなく,手術を含めた治療strategyを自らの判断で実行できることです.診断,薬物治療,リハビリテーション,手術と整形外科のすそ野の広さを改めて実感させられるとともに,身が引き締まるような哲学的な一言でした.

さきにAORAの“個”の力の向上について書きましたが,施設ごとの連携についても学会を通じて年を追うごとによくなっています.今年も深夜までざっくばらんな意見交換会が催され,非常に実りある学会参加となりました.現在,AORAでは熱意のある若手医師を絶賛募集中です.リウマチと聞くと近寄りがたい若手の先生もいるかと思いますが,メンバー同士との交流が“個”の力の向上のきっかけにもなります.研究会などで,わからないことや気になったことは遠慮なく聞いてみてください.意外とすんなり解決するかもしれません.

最後になりますが,関連病院の先生方,平素よりAORAをご支援いただき有難うございます.今後も柏倉隊長を筆頭にAORA一同頑張ってまいります.今後ともよろしくお願いいたします.

 

市立角館総合病院 整形外科 青沼宏

JCR 小西先生 集合写真