平成27年10月31日秋田ビューホテルにて第62回秋田県整形外科医会が開催されました。総演題数は17題で、うち卒後9年目以下のYoung Doctors Sessionが13題と若手の勢いが感じられる会でした。一般演題では、市立秋田総合病院リハビリテーション科柏倉 剛先生がDAS28で評価の対象となっていない関節リウマチMTP関節における理学所見と関節エコー所見の比較という新しい切り口の研究についてご発表され、見事受賞されました。また後半のYoung Doctors Sessionでは、若手、上級医の討論がさらにヒートアップ、どの演題も非常に内容がすばらしく、スライドの作り方を見ても自分が若手と言われていた時代と比べ、最近の若手全体のレベルアップが明らかでした。おそらく審査員の先生方も採点に苦慮されたことと思います。その中で、秋田県立医療養育センター尾野祐一先生が、見事受賞を勝ち取りました。おめでとうございます。
特別講演1では、佐賀大学整形外科教授 馬渡正明先生より股関節外科の現状と展望として股関節疾患の診断、治療、評価、また教育について分かりやすくご講演賜りました。寛骨臼移動術では、重度の症例には同種骨移植を併用すること、女性の出産に影響しないように内板は切らないようにすること、他にもたくさんの手術のポイントを分かりやすく解説していただきました。またTHAにおける銀HAコーティングインプラントや3Dプリンターの使用、VICONによる歩行解析など新たなご研究についても解説され、大変勉強になりました。
特別講演2では、九州大学整形外科教授 岩本幸英先生より整形外科の歴史と将来展望についてご講演賜りました。日本の整形外科は1906年に東京大学(東京帝国大学医科大学)で田代義徳先生のもと開講され、Orthopädieに相当する日本語として「整形外科」が正式名称となりました。1926年には日本整形外科学会が設立され、現在では会員数23,000人を超える大規模な学会となっています。ご講演のスライドには、現在使用されている機器の原型となるものや、神中正一先生が著された教科書の原画など当時の非常に興味深い写真の数々を拝見できました。当時の日本は戦争の最中にあり、その中で外傷学が発展してきたこと、当時は結核、ポリオなど感染に関する疾患が重要でしたが、化学療法やワクチンの進歩によりこれらはほとんど見られなくなり、現在では平均寿命の延長に伴い、骨粗鬆症や変性疾患などの重要性がますます高まっていることなど、時代の移り変わりを感じました。また個人的にはこれまで腰椎椎間板ヘルニアは腫瘍と考えられていたこと、もともと内科で治療されていたものが、1932年に東 陽一先生による手術が報告されてから整形外科で治療される疾患となったこと、側弯症の治療の歴史がとても印象的でした。
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