この度、6月21日~23日に大阪市立大学稲葉雅章会長のもと開催された日本骨形態計測学会で若手研究者賞をいただきました。発表演題は学位論文のテーマである「卵巣摘出ラットにおける選択的エストロゲン受容体モジュレーターと低強度有酸素運動の骨と脂肪に対する効果」でした。閉経後は骨強度が低下するほか、脂質異常症もきたすことが知られております。その脂質からも骨粗鬆症は惹起されるため、双方に効果のあるSERMと運動療法を組み合わせ、骨と脂肪への効果を検討いたしました。このような賞をいただくことができたのは、日々カンファレンスにて島田洋一教授、宮腰尚久准教授、粕川雄司講師をはじめとする諸先生方からご指導いただけたためと感じております。また、実験も当然ながら一人では成し得ることはできず、A-BONEの先生方、実験助手さんに支えていただきながら進めることができました。本当にありがとうございました。今後も研究を進め、実験結果をしっかりと世界に発信できるよう、まとめていきたいと思います。
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第38回日本骨形態計測学会(阿部和伸)
第38回日本骨形態計測学会が6月21日~23日の3日間、大阪国際交流センターにおいて開催されました。近年、分子生物学、細胞生物学において骨代謝の機序、骨粗鬆症を含む代謝性骨疾患の病態の理解は飛躍的に進歩しています。しかし、分子生物学的手法による病態研究でも、その発現を組織レベルや器官レベルで観察し、さらに骨形態計測法による定量的計測によってよりその変化が把握できます。したがって、骨形態計測法は私たち研究者にとって非常に重要かつ必須の研究方法の一つであるといえます。
学会に先立ち、「骨形態計測ハンズオンセミナー2018ベーシックコース」が同会場で開催されました。これには私を含む当教室の若手研究者4名が参加し、動物実験の計画から実施、検体の採取、固定、標本作成、骨形態計測による評価まで、一連の流れに沿って基礎から学びました。ハンズオンでは実際に標本を作製する手順を確認したり、標本を観察し、どこで骨が作られ、どこで溶かされているかといった組織レベルの計測を実際に行ったりしました。セミナー終了後には修了証書をいただき、私たちが今後行っていく研究の大きな糧となったと感じた次第です。
本学会では、当教室の宮腰尚久准教授が学会2日目のシンポジウム「骨折防止のためのトータルケア-サルコペニア・フレイルの観点から-」の中でご講演されました。「サルコペニアと転倒に対する運動療法」という演題で、転倒の危険因子から転倒予防、骨折予防のための運動療法について当教室の研究を交えて非常にわかりやすくご紹介されていました。会場からも活発な質疑応答が繰り広げられ、全国的な関心の高さを感じました。
2日目終了後には全員懇親会が開催され、その会で若手研究者賞の表彰があり、当教室若手のホープである湯浅悠介先生が受賞されました。湯浅先生の行っている研究は、「卵巣摘出ラットにおける選択的エストロゲン受容体モジュレーターと低強度有酸素運動の骨と脂肪に対する効果」というもので、骨粗鬆症治療として薬剤と運動を組み合わせ、骨だけでなく脂肪との関連も観察した大変有用な研究です。受賞おめでとうございます。
私たち整形外科医にとって、骨粗鬆症をはじめとする運動器疾患の治療はADLの低下や健康寿命の短縮を防ぐために非常に重要です。そして臨床で用いられる治療はすべて、本学会で報告されているような基礎研究の上に成り立っています。本学会でそのことを再認識し、患者さんのADL向上、健康寿命延伸のため今後も研究に邁進していこうと決意を新たにしました。
第10回秋田県小児整形外科研究会(飯田純平)
平成30年6月16日、JA秋田ビルで秋田県小児整形外科研究会が開催されました。
一般演題では県内の若手の先生から秋田労災病院の奥山幸一郎先生まで、様々な領域での小児疾患・外傷についての演題が計8演題あり、とても勉強になるものでした。
今回は、現在研修しております秋田県立医療療育センターから出させていただいた、最近5年間の当県のDDH症例を検討した演題に優秀演題賞をいただきました、ありがとうございます。
小講義では、秋田県立医療療育センター整形外科科長で当県のDDH key personでいらっしゃる三澤晶子先生から「乳児健康診査における股関節脱臼二次健診の手引き」と題し、二次健診における一般的な小児身体所見の取り方・レントゲンの読影などについて、秋田県におけるDDHの疫学的傾向なども交えてお話いただきました。明日からの臨床にすぐに応用できる内容の濃い講義でした。
特別講義では、小児整形外科学会の東京都立小児総合医療センター整形外科部長の下村哲史先生から「子どもの運動器疾患のとらえかたとその対応~疼痛管理も含めて~」と題し、一般整形外科がどのような視点から小児を診察・診断し、どんな時に小児整形外科専門機関を紹介すべきか、またその際にどのような誤解や知識不足が問題となるか、様々な外傷から股関節・斜頸などについて実例を交えながらご講演いただきました。
会全体を通し、小児整形外科診療においては、基本的な知識に加えて、立位から歩行、全身の身体所見を丁寧に見ていくことでその診断に近づけていけるのだということを強く感じました。本研究会で得たものを、今後の診療に役立てたいと思います。
APSS 2018 in Taiwan (石川慶紀)
2018年6月8-9日,台湾台北市においてAPSS (Asia Pacific Spine Society)のannual meetingが開かれました.APOA (Asia Pacific Orthopaedic Association)のspine sectionとして発展したこの会では, アジア太平洋地区を中心とした地域のspine surgeon, neurosurgeonにより,脊椎疾患にかかわる基礎研究から臨床研究,手術成績などの発表が行われます.秋田大学からは宮腰尚久准教授が講演依頼を受け,粕川雄司講師と私も演題を登録し参加発表いたしました.
宮腰准教授はシンポジウムSurgical Treatment for Spinel Deformity in Patients with Osteoporosisという演題で,骨粗鬆症に伴う椎体変形の矯正手術とその治療成績,手技につき,ASG (Akita spine group)で開発発展したPAVREC (Posterior-approach vertebral replacement with rectangular parallelepiped cages) という手術手技を交じえわかりやすくご講演され,反響も大きく,多くのご質問が会場からよせられました.粕川講師は骨粗鬆症椎体骨折治療に関して, 私は脊椎アライメントと背筋力や重心動揺を利用したバランス研究について発表討論いたしました.
学会の合間には台湾の歴史や食文化も学び,アジアでの日本の位置付けとこれから担うべき役割りを再考いたしました.世界に目を向けるのはもちろんですが,アジア太平洋地区にもアンテナを張り,その発展のために協力して行く必要性があると感じました.来年は韓国での開催になります.秋田の脊椎,さらにはアジアの脊椎を盛りあげ発展させるべく,当大学からも沢山の演題を出せればと考えております.
第11回秋田県整形外科リウマチセミナー(佐藤千晶)
6月8日、第11回秋田県整形外科リウマチセミナーが開催されました。
一般演題では、雄勝中央病院の青沼宏先生より「高齢関節リウマチ患者に対するエタネルセプト投与継続率と有用性」として、高齢化日本第一位の秋田県において、高齢者リウマチ患者に対する生物学的製剤の実際の使用状況を臨床診療の立場より考察を交えながら講演していただきました。また、秋田労災病院の加茂啓志先生より「秋田県における関節リウマチ治療の地域間相違」として、秋田県内を中央、県南、県北に分けて様々な項目についての検討をご講演いただきました。秋田県内でのリウマチ患者の疾患活動性は地域ごとに差はなく抑えられておりますが、地域ごとに患者の併存疾患などの患者個人のバックグラウンドに偏りがあり、治療薬剤等についての検討が必要なことなど、改めてリウマチ治療の難しさを認識させられるご講演でした。
特別講演では、東京女子医科大学の整形外科・膠原病リウマチ痛風センターの猪狩勝則准教授に「RA治療における薬物治療と手術療法」についてご講演いただきました。
新興薬剤の開発により以前よりもリウマチの疾患活動性は確かに抑えられている一方で、活動性によらない関節破壊の進行する症例や、より高いQOLを目指した手指、足趾の手術が増えていることを最新の手術治療の症例を見せていただきながら興味深く拝聴することができました。また、機能障害、関節痛、外観問題を一気に解決できる手段としての手術は投薬コントロールが進んでいく今後でも重要な位置を占めることを改めて認識させていただきました。
今後とも猪狩勝則先生の御活躍をお祈りしております.この度は本当にありがとうございました。
奥山幸一郎先生(秋田労災病院)が ドクターズエッセイ私のゲンキの素 に掲載されました
奥山幸一郎先生(秋田労災病院)が ドクターズエッセイ私のゲンキの素 に掲載されました
第4回 出羽・阿賀リウマチフォーラム(齋藤光)
2018年6月2日、秋田ビューホテルで第4回の出羽・阿賀リウマチフォーラムが開催されました。昨年の第3回は新潟県で開催され、今年は秋田県での開催となりました。
関節リウマチとは、関節が炎症を起こし軟骨や骨が破壊され、関節の機能が損なわれる病気です。治療の第一目標は早期治療介入し、身体機能や社会活動を保ち、長期にわたる生活の質を最大限にすることであり、多職種の連携が重要です。一般演題では医師、看護師、検査技師、理学療法士の先生よりご講演をいただき、様々な視点からディスカッションが行われました。またフロアからも沢山の質問があり、盛り上がりをみせておりました。
教育講演では市立秋田総合病院の柏倉剛先生より「秋田県におけるリウマチ診療 AORAの取り組み」についてご講演を賜りました。秋田県での関節リウマチ治療の歴史から、AORAの活動内容、AORA registryから得られた秋田県内のリウマチ診療の特徴について、詳細なデータをお示しいただきました。また秋田県のリウマチ患者には高齢者が多いといった観点から、治療薬、腎機能、骨粗鬆症治療のポイントについてもご講演いただきました。
特別講演では、国立病院機構大阪南医療センター 統括診療部長 橋本淳先生より「我々の取り組んでいるチーム医療の考え方−リウマチのトータルマネジメントをめざして−」についてご講演を賜りました。リウマチ治療の歴史から、患者が求める医療の変化、最新の手術治療について、網羅的にご講演いただきました。リウマチ患者には多様なケアが求められ、全人的医療が必要となりますが、一人の医師には限界があるため、チーム医療が重要となります。体制作りには多くの時間と労力がかかりますが、長期的な治療を見据えた医療、予防医学のためにはコメディカルスタッフの協力が不可欠であり、各々がプロフェッショナリズムをもって診療にあたることが重要とのことでした。
リウマチ診療にあたる我々は、チーム医療を担う一員として、最新・最適の医療を提供できるよう、これからも日常診療に取り組んでいこうと思います。
平成30年度阿仁健診(井上純一)
本年度は5月16日、17日、18日に北秋田市阿仁地域で運動器健診を行いました。
平均寿命が長くなってきている現在、今度は健康寿命をいかに伸ばしていくかが課題となっております。運動器症候群と訳されるロコモティブシンドローム(以下ロコモ)は、運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態を指します。その原因としては運動器自体の疾患によるものと加齢による運動器機能不全によるものがあると言われております。
阿仁健診は毎年受診している方が多く、経年的に結果を知ることが出来るという特徴があります。今回の健診を通して、阿仁地域の方には自分の現時点での運動機能がどのくらい保たれているのかを知っていただき、その後対策することでロコモを未然に防ぐことができます。将来的に阿仁健診と同様の運動器検診が県内の他の地域でも実施出来れば、秋田全体で元気な高齢者が増えていけばと考えています。普段の診療の現場でもロコモ予防につながるように整形外科医として今後も貢献していきたいと思います。
第67回秋田県整形外科医会(湯浅悠介)
2018年5月19日、ビューホテルにて第67回秋田県整形外科医会が開かれました。
一般演題から7題、Young Doctors Sessionから10題の発表がありました。各発表に対して白熱した討論が繰り広げられました。最優秀演題賞は、一般演題からは能代厚生医療センター伊藤博紀先生が、Young Doctors Sessionからは町立羽後病院の益谷法光先生が受賞されました。本当におめでとうございます。
その後、教育研修講演1として、国際医療福祉大学医学部整形外科学主任教授石井賢先生より「脊椎脊髄疾患治療における合併症―出血・神経損傷・感染症の予防と対処法―」と題しご講演いただきました。椎骨動脈損傷や腸管損傷など、脊椎手術における合併症を実際の動画を用いてお示しいただき、そのピットフォールをご教示いただきました。また、脊椎手術にvirtual realityを導入した新しい技術についてもご紹介いただきました。今後より高度な手術がより安全に行えるように、医療と工学の連携が大切なのだと感じました。
教育研修講演2として、島根大学医学部整形外科学教室教授内尾祐司先生より「スポーツに伴う関節軟骨障害の病態と治療~疼痛管理と機能回復に向けて~」と題しご講演いただきました。関節軟骨障害としてOCD、骨軟骨骨折、軟骨損傷について、実際の症例を用いて具体的にお示しいただきながらご説明いただきました。また島根大学で行われている研究「自家骨から作成するScrew」についてご教示いただきました。新しいもの作成し、世に発信するためには、多くの基礎研究を行い、その一つ一つを論文化し証明していく必要があることを学びました。
本日勉強させていただいたことをしっかりと吸収し、明日からの臨床・研究に努めていきたいと思います。
留学報告㉗あとがき(斉藤公男)
秋田大学医学部附属病院 リハビリテーション科/整形外科の斉藤公男です.2017年9月から島田洋一教授の御高配によりアメリカサンフランシスコ UCSFに留学させて頂いております.現在お世話になっているのはZuckerberg San Francisco General Hospital(ZSFGH)のOrthopedics Trauma Instituteです.
留学ブログ あとがき
2018年3月26日に無事帰国し,4月から復職させて頂いております.いない間に変わっていた電子カルテシステムにも慣れ,仕事のペースも思い出し始めました.バタバタしていて投稿できていなかったブログ原稿の残りを全てアップして,留学ブログを終了しようと思います.
実は,2017年9月にセットアップのためにサンフランシスコに行ったのが,自分1人だけで行った初めての海外でした.おかげさまで学会や旅行などで何度か海外に行く機会はあったのですが,必ずそばに誰かがいる状況でした.降り立ったときは楽しみと言うより,どちらかというと呆然とか絶望とかに近いモノで,ものすごく不安だったことを今でも鮮明に覚えています.飛行場から鉄道に乗ってダウンタウンに出ることすら一苦労で,1人でレストランに入ったりはできず,買い物するのもいちいち緊張を強いられる作業でした.
9月中旬に家族が合流してからは更にまた不安が増えます.娘の学校が決まり,家具が揃って生活が落ち着くまで1ヶ月ほどかかりました.その間は不安感で悪夢を見ながら動悸をして朝起きるという日が続きました.
OTIに行って,ミーティングに参加してもまわりが話している2割も分からずついていけませんでした.でも,毎日顔を合わせる研究助手さんと,朝にどうでもよい世間話を30分ほどするようになり,だんだんなんとなく聞き取りができるようになってきました.何よりもサンフランシスコという土地柄,英語とスペイン語と広東語が入り乱れる外来を見ているうちに,多少変な英語を恥じらう必要性が全くないことを悟りました.英語は単なるコミュニケーションツールに過ぎないとわりきり,どんな形でも発音でも相手の言うことを理解して,自分の言いたいことを理解してもらうことが重要だということに少しずつ気づいてきました.
少し会話が成り立ち始めるとだんだん楽しくなってくるもので,いつの間にか朝の悪夢や動悸も無くなり,感謝祭やクリスマスなどの休暇には家族で旅行などもする気持ちの余裕もでてきました.ベイエリアの日本人医師の先生や整形外科の先生との交流することができて,今までに無いほどの刺激を受けることができました.
12月まではOTIでリハビリテーションを中心に見学していましたが,1月からは自分の希望する他病院の見学やラボ見学を多数させてもらうことができました.3月になりようやくIRB(日本の倫理委員会)が通り,最後の2週で臨床研究のデータ取りを行っていました.最小限のデータは取れたので今後論文化するように尽力しますし,知り合えた先生方やスタッフとまた共同研究が行えればうれしいと考えています.
留学中,言葉や文化,システムの違いに戸惑い,驚き,羨望し,日本を顧みて日本の良いところ(悪いところも)を思い出し,今後の改善策や試してみたいことを考えていました.そんな繰り返しをしているうちに,今までは考えなかったような広い視野を頂いた気がします.米国の医療システムと日本は根本的に違うし,今の時代インターネットで十分わかると言われるかもしれませんが,生活して肌で経験することで分かったことが多かった気がします.本当にこの経験をさせてもらえて良かったです.今後はこの貴重な経験を少しでも還元していけるよう尽力したいと考えております.
不在の間,医局,外勤先の先生方,スタッフの方々には大変ご面倒ご迷惑をおかけしました.また,留学中は秋田大学のみならず,他大学の先生方,UCSFの先生方やスタッフに多大なるご助力を頂きました.この場を借りて御礼申し上げます.
最後に,この留学を御裁可御高配頂いた島田洋一教授,快く受け入れて下さったUCSF長尾正人先生に深く御礼申し上げます.ありがとうございました.今後ともよろしくお願い申し上げます.