投稿者「akita-u-seikei」のアーカイブ

第50回 日本脊髄障害医学会学術集会(水谷 嵩)

第50回日本脊髄障害医学会学術集会が2015年11月19〜20日グランドプリンスホテル高輪で開催されました。当教室でも毎年参加している学会で、今年もポスター6題、口演1題を発表してまいりました。メンバーは大学から島田洋一教授、松永俊樹准教授、佐々木研先生、益谷法光先生、木村竜太先生と私、能代厚生医療センターから安藤 滋先生、市立横手病院から大内賢太郎先生が参加しました。

脊髄障害がテーマのため、整形外科のみならず、脳神経外科、神経内科、泌尿器科、リハビリテーション科など様々な分野から演題が集まり、内容も臨床的な内容から基礎研究の話題まで幅広い知見を得ることができました。今回私はハンドリハビリテーションシステムの発表をさせていただきましたが、発表後他県の発表者の方からも質問を頂いたり、情報交換をすることもできました。また、教育講演では腰痛、慢性疼痛、首下り症候群など臨床的な内容にも触れることができ、今後診療の場で役立つ知識も身につけることができました。

本学会は国内でも歴史のある学会ですが、今回は記念すべき第50回ということで京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授の特別講演が企画されました。山中先生の基礎研究を志した経緯や、留学についてのご経験、iPS細胞を完成させた時のお話など盛りだくさんな内容でした。臨床応用に向けて課題の多い分野ですが、近い将来、より身近になって様々な場面で活躍できる可能性を感じました。最後の締めに、肝硬変で亡くなられたご家族を例に、昔は治せなかった病気も治療できる時代になったとお話され、自身の基礎研究に対する思いが込められた一言でした。

今回平日の日程にもかかわらずこのような貴重な機会を与えていただきまことにありがとうございました。

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タイPongsthorn Chanplakorn先生手術見学 (工藤大輔)

11月15日Ramathibodi Hospital, Mahidol Universityよりポン先生が来日され、11月16日から20日の間、秋田大学、秋田厚生医療センター、秋田赤十字病院で脊椎外科の研修をされました。Mahidol Universityはタイでも1,2を争う大学でアジア大学ランキングにもランクインしています。タイでも近年、高齢者の手術が増加し、高齢者脊椎手術に伴う手術難易度、合併症の問題があり、その勉強のため秋田まで研修に来ていただきました。期間中、XLIFを用いた前後合併手術や、内視鏡手術、頚椎椎弓形成術など様々な症例を見学していただきました。タイでもXLIFなどの側方アプローチ手術はあるようですが、患者さんが負担する費用が高額となるため、あまり行っていないとのことでした。また同様の理由で骨粗鬆症患者さんに対するテリパラチドの使用も、症例をかなり限定して使用し、側弯症手術でも全椎体にスクリューを挿入することはせず、矯正と費用のバランスを考えて手術をされているとのことでした。日本とタイの医療経済に関する違いを感じました。また頚髄症に対する手術も以前は椎弓形成術を行っていたようですが、現在は白石先生の方法で椎弓切除を行っているとのことで、手術法はなんと動画を見て独学とのことです。ポン先生は40歳と比較的若い先生でしたが、Total en bloc spondylectomyや脊索種に対するSacrectomyも行われているとのことで、穏やかな風貌とは裏腹に激しい手術もたくさんされているようでした。

木曜日は朝からケースディスカッションを行い、宮腰准教授からは高齢者骨粗鬆症性椎体圧潰に対する手術術式の変遷や、現在の治療戦略について解説していただき、ポン先生からはTotal en bloc spondylectomyについて解説していただきました。臨床実習中の学生も交え、整形外科疾患のみならず英会話の良い勉強にもなったかと思います。

アフターファイブは、秋田の料理や地酒を楽しんでいただき、特に水曜日のWelcome partyではAkita Spine Groupでポン先生を囲んで交流を深めることができたと思います。タイは羽田空港から約5時間で利便性も良く、今後ますます交流を深め、お互いに研修して技術の向上が図れればと思います。

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第6回 秋田県骨粗鬆症PTH治療セミナー報告(水谷 嵩)

2015年11月11日、第6回 秋田県骨粗鬆症PTH治療セミナーが秋田ビューホテルで開催されました。高い高齢化率を誇る秋田県では、いっそう骨粗鬆症治療が重要になってきています。今回は一般演題と特別講演を各1題ずつご講演いただきました。

はじめに一般演題では、秋田労災病院の加茂啓志先生から「人工関節周囲骨折に対するPTH治療」と題して御発表いただきました。TKAや人工骨頭置換術が一般的に行われるようになった昨今、人工関節の周囲で骨折してしまう方々も見られるようになりました。背景には骨粗鬆症が合併していることがほとんどで、手術方法や骨粗鬆症治療など様々な問題が生じます。加茂先生からは手術を行った例も含め受傷後にPTHを併用した自身のご経験をご紹介いただきました。

特別講演では、埼玉医科大学准教授の宮島剛先生から「骨粗鬆症治療におけるテリパラチドの位置付け」と題して御発表いただきました。宮島先生は骨粗鬆症を専門とされており、テレビ出演もされ大変ご多忙な中はるばる秋田までお越しいただきました。前半は改訂された骨粗鬆症治療ガイドラインの話題を中心に、一般的な骨粗鬆症の話から基礎的な話題、治療薬の選択方法、など多岐にわたる御発表をいただきました。これまであまり意識していなかった副次的作用に関してもご説明いただき、治療薬選択の幅が広がりました。

後半は宮島先生の専売特許とも言える研究分野で、性同一性障害の方の骨代謝変化についてご紹介いただきました。なぜ性同一性障害が発症するのかという疑問について性分化の段階からご説明いただきました。研究のため実際に新宿2丁目まで足を運び、被験者を探されたというエピソードには驚きました。また、現在適応はありませんが、男性の骨粗鬆症に対してもSERMは有効であるという結論に至るまでの研究内容は大変興味深かったです。

今回は普段と異なるテーマのご講演も拝聴することができ、貴重な知識を得ることができたセミナーでした。

和歌山労災病院 脊髄モニタリング研修 2015/11/11,12 担当 鈴木真純

脊髄電気生理学的モニタリングの歴史は古く、体性感覚誘発電(somatosensory evoked potentials:SEP)から始まり、1954年にDawsonが自動加算装置を開発してからは急速に広まることになりました。1990年代に入ってからは経頭蓋磁気あるいは電気刺激によって誘発筋電図を記録する、運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)が普及し始め、それまでは感覚路のみのモニタリングでありましたが、運動路モニターも可能となりました。神経モニタリングは整形外科に限らず、心臓血管外科、耳鼻科などあらゆる分野で活用されています。運動・感覚神経に直結する分野である脊椎外科領域では必須の手技と言えます。

今回島田教授の御高配により、尾野祐一先生・木村竜太先生とともに和歌山労災病院脊椎センター 安藤宗治先生の元でモニタリングの研修をさせて頂く機会を与えて頂きました。かねてからモニタリングに関する御功名は存じておりましたが、実際にお会いするのは初めてで、島田教授と同じKARATE fighterということでいささか緊張しておりましたが実際お会いした先生は非常にgentleでした。まず朝の病棟のオーダー端末の前で行われる術前術後カンファランスから参加させていただきました。脊椎以外にも上腕骨頚部骨折, TKA, 手外科など幅広い分野の疾患を扱っているようでした。その後は別室で、安藤先生直々にスライドを用いた脊髄モニタリングの基礎と実際の症例を提示して頂きながら応用に関する講義をしていただきました。脊髄モニタリング初心者の自分にもとても分かりやすく感銘を受けると同時に、実際の症例を交えてのpit fallの話などは、秋田で行っている脊椎手術においても決して人ごとではなく、モニタリングをさらに普遍的な物にしていかなくてはならないと、重要性を改めて実感するものでした。

さて、実際のモニタリングの見学症例ですが、胸椎OYL laminectomyでした。まず驚いたのが、技師さんが電極設置から術中刺激, 記録など医師の指示の元全て行っていたところです(欧米では普通のことのようですが)。しかもその日は見習い的な方を含めて技師3人体制で行われておりました。技師さんも、安藤先生からの御指導以外にも研修, 勉強会等に参加するなど、積極的にモニター管理に取り組む体制が構築されているのにも驚くと同時に秋田の遅れを痛感いたしました。また、これはコストやマンパワーなど施設間の体制に左右されることもあるのかもしれませんが、和歌山労災病院では transcranial MEPに加えて脊髄刺激脊髄誘発電位も同時にモニタリングしておりました。先にご講義頂いた内容を見てですが、双方のモニター方法で補完し合うことで(例えばtranscranial MEPでは後側索レベルでの障害の検出には不向きです)、無駄なope中止や重篤な神経障害の残存を回避した症例もあり、当院でも導入すべき体制であると感じました。

最後になりますが、確かに脊髄モニタリングは、波形の高低、出た出ないだけで行えるほど単純なものではありませんが、基本的な原理を理解すればあとは症例を重ねてゆく事が重要であると思いました。

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第23回日本腰痛学会 (1日目工藤大輔、2日目粕川雄司)

2015年11月14日から15日の会期でJPタワーホール&カンファレンスを会場に第23回日本腰痛学会が開催されました。秋田からは私と宮腰尚久准教授、本郷道生講師、粕川雄司講師、鵜木栄樹先生が発表いたしました。私は“腰椎変性疾患術後遺残疼痛に関連する因子の検討”について発表し、PainVISIONTMの機器の特徴、今回明らかになった術後成績不良因子を有する患者に対する対応についてご質問を受け、今後の論文作成の参考になりました。他には腰痛に関する基礎研究、脊柱アライメント、QOL、骨粗鬆症、低侵襲を含めた各種手術術式に関して様々な研究が発表され、大変興味深い演題が多かったと思います。特に基礎研究では閉経後の傍脊柱筋内のpH低下と筋原性腰痛に関する動物実験についての演題があり、以前から瀬川豊人先生がミノドロネートの疼痛抑制効果と骨内微小環境の酸性化についてご研究されていたことを知っておりましたので、骨内のみならず筋内でもpHの低下が起こり、腰痛の原因になっている可能性があるとの内容で大変興味深く、今後の臨床や研究の参考になったと思います。

初日のランチョンセミナーでは、宮腰尚久准教授が骨粗鬆症に伴う腰背部痛の予防と対策について骨粗鬆症患者の痛みの背景、薬物療法、運動療法、ブロック注射、手術療法について解説され、大変分かりやすく日常診療ですぐに使える実際的なご講演でした。会場は満席で、骨粗鬆症と腰痛に関する関心の高さが伺えました。2日目午後のシンポジウム「骨粗鬆症と腰痛管理」では、島田洋一教授が大阪市立大学の中村博亮教授と座長をされ,宮腰尚久准教授がシンポジストのお一人として「骨粗鬆症患者の腰背部痛に対する骨粗鬆症治療薬の鎮痛効果」について御発表されました。骨粗鬆症に起因する腰痛について基礎的な研究から、疫学や臨床像、さらに運動療法や薬物治療について、シンポジストの先生方から御発表があり、その後活発なディスカッションでとても盛り上がり、大変有意義なシンポジウムとなりました。

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第25回日本リウマチ学会 北海道・東北支部学術集会 (杉村祐介)

写真12015年11月13、14日に、第25回日本リウマチ学会北海道・東北支部学術集会が盛岡市で開催されました。

今回AORAからは島田洋一教授の特別講演の座長をはじめ、宮本誠也先生のシンポジウム1題と、一般演題10題の計11演題を口演発表してきました。「関節リウマチの疫学・外科治療」の分野で、小西奈津雄先生、柏倉剛先生、浦山雅和先生、櫻場乾先生、鈴木紀夫先生、「関節リウマチの保存治療」の分野で、谷貴行先生、阿部秀一先生、加茂啓志先生、杉村祐介、「脊椎関節炎」の分野で相澤俊朗先生がそれぞれ発表しました。

一般演題の総数は54演題で、5題に1つはAORAからということで北海道・東北地区に我々の活動をアピールできたのではないかと思います。発表後には、北海道大学の渥美達也教授にもお声をかけて頂き、大変嬉しく思いました。

シンポジウムの「生物学的製剤の功罪」では、内科、整形外科のそれぞれのスペシャリストが集まり議論を交わしました。その中で、外科治療の必要な患者、必要なタイミングを見逃さないように、という”Surgical window of opportunity”の重要性を認識すること、また、周術期の生物学的製剤休薬によるフレアーアップと感染症対策とのジレンマの議論が盛り上がりました。今後はその分野のデータを蓄積していくことが必要と感じました。

AORAの研究発表をするだけでなく、他大学の研究からも多くの刺激を受け、とても実りの多い学会となりました。

今後もさらに活動を発展させられるよう日々頑張りたいと思います。

最後に、いつもご指導頂いております島田洋一教授、宮腰尚久准教授をはじめ、学会中の業務を代行してくださいました先生方に感謝いたします。

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第42回日本臨床バイオメカニクス学会(木島泰明)

2015年11月13日から14日の2日間、東京・お茶の水のソラシティ・カンファレンスセンターにて、第42回日本臨床バイオメカニクス学会が開催されました。学会長は東京医科歯科大学大学院運動器外科学教授の宗田大先生です。学会場のすぐそばに東京医科歯科大学、そしてそのすぐ隣に順天堂大学が見え、東京ならではの会場です。

この学会のテーマはバイオメカニクス(生体力学)ですが、”臨床”バイオメカニクスですので、生体力学的な手法で実際の患者さんに役立てられる技術や知識についてのたくさんの演題発表やご講演を拝聴することができました。

今回の学会長のご専門も膝関節ですが、理事長も史野根生先生であり、やはり膝の演題が多い印象ではありましたが、「圧迫性脊髄症のバイオメカニクス」や「骨折外科医によるバイオメカニクス研究」などのシンポジウム、手術支援ロボットや股関節・肩関節の解剖学の教育研修講演などもありました。

方法論としてはポイントクラスター法による動作解析や有限要素モデルによる応力解析などのスタディが多く、特に個人的には有限要素解析に関して興味深く勉強させてもらいました。どのような骨折、どのような骨形態には、どのような内固定材料、どのような人工関節デザインを用いるべきかといった、ある意味、究極の質問に対する答えもバイオメカニクス研究の中から出てくるのかもしれません。

そのような非常に価値ある本学会が2018年、島田洋一会長のもと、秋田市で開催されます。その準備も兼ねて、山田晋講師、野坂光司先生、そして木島が今回の学会に参加させて頂きました。

またAkita Sports, Arthroscopy, and Knee Groupの動作解析ワーキンググループリーダーの斉藤公男先生が、我々の行っている中学生アスリートに対するメディカルチェックにおける強化指定中学生の動作解析についてご発表されました。このワーキンググループから赤川学先生もバイオメカニクスについて勉強するために本学会に参加されていました。この学会においても秋田大学整形外科メンバーの今後の大活躍が予感されます。来年はぜひみなさんも参加してみませんか?DSC00645

全学駅伝2015(佐々木研)

11月7日,秋田大学手形キャンパスをスタート・ゴールとして第41回渡邉杯争奪全学駅伝が開催され,今年も秋田大学整形チームとして2チーム参加しました.Aチームはかなり充実したメンバーで臨み,3位入賞を目標としていました.レースは1区阿部先生が11位と出遅れ,2区千馬先生が見事なごぼう抜き,3区竹島先生,4区佐々木は粘りの走り,5区長幡は見事な復活の走り,6区高橋が前の4位大学職員チームとの差をつめ,7区初めてAチームに抜擢された三浦先生が4位とのデッドヒート,8区岩本先生が前を抜き4位に,しかし9区根本先生が抜かれ,10区成田先生が必死に追い上げるも惜しくも届かず,結果は5位となりました.Bチームは4人の助っ人の力もありましたが,例年であればAチームである山田先生,冨手先生,伊藤博紀先生がBチームに入るなど,レベルの高いチームとなり,過去最高タイムでの10位となりました.来年こそは学生に負けないぞ!

駅伝1

 

 

 

 

 

 

 

駅伝2

 

 

 

 

 

 

 

結果(訂正:阿部先生のタイムは-1分,千馬先生のタイムは+1分)

第6回秋田県足の外科・創外固定研究会(野坂光司)

11月7日(土)、第6回秋田県足の外科・創外固定研究会が開催されました。多数のご参加をいただきました。特にヤングドクターの目の輝きは素晴らしかったと思います。

特別講演は聖マリアンナ医科大学教授 仁木久照先生と長崎の牧野佳朗先生からいただきました。どちらも、自分にとっては大変有意義かつ、時間があっという間で、それはもうグイグイと引き込まれる内容のお話でした。仁木教授は日本の、そして世界の足の外科をリードされている方で、リウマチ足、スポーツ、扁平足など多方面で業績を出し、ご活躍中でございます。 私の留学先のBoss、Brodsky教授もことあるごとに『Nikiの論文では。。。』と説明に引用されておりました。牧野先生は昨年いらして頂いた寺本先生率いる長崎Ilizarov研究会の主力メンバーであり、AIMGが推奨する『牧野式牽引』の開発者としても有名です(脊椎の講演で佐世保を訪れた島田教授と、夜を徹してIlizarovを語り合ったことでも有名です)。

ミニレクチャーでは、柏倉先生からエコーとCTの新たな可能性をお話いただきまして本当に勉強になりました。非常に濃い内容でした。一般演題も8つ、しかも全てが素晴らしい内容でした。県レベルの足の外科・創外固定関連に、テコ入れもせずに一般演題が8つ集まるというのは、島田教授主導で始まったAFG、AIMGの層が厚くなった表れと感じました。最優秀演題賞は大学整形外科病棟 佐々木学看護師が受賞されました。非常にレベルの高い研究で、AIMGの臨床スコアの好成績は、看護師の方々の頑張りに支えられていることを強く印象づけられたと思います。

世話人会では今後の業績アップに向けて、今年の秋田大学整形外科流行語大賞の有力候補(個人的には『準優勝は敗者だ』か『論文合宿』だと思う)のひとつ、『論文合宿』をAFG,AIMG合同で行うことが約束されました。

今後ますますAFG,AIMGを盛り上げて行きたいと思います。今回頑張って下さった全関係者のみなさま、心より御礼申し上げます。

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第49回日本側彎症学会及び第24回日本脊椎インストゥルメンテーション学会(本郷道生)

2015年11月5日と6日の2日間、新潟市のりゅーとぴあ・新潟市民芸術文化会館で,第49回日本側弯症学会が開催されました。学会長は、新潟脊椎外科センターセンター長の長谷川和宏先生です.また,同じ会場で11月6、7日には日本脊椎インストゥルメンテーション学会(会長 冨士 武史先生・独立行政法人地域医療機能推進機構 大阪病院)があり「Spine Week Japan Niigata 2015」として合同開催となりました.二つの学会の同時開催により,両方参加の場合は参加料の割引されたり,似たようなテーマのセッションが重複しないようさまざまな工夫がなされていました.

今回の日本側彎症学会では,いくつかの新しい発表形式が試みられており,スライドは全て英語での発表となり,またステージに左右二つの演者台を置き交互に発表し,討論は一括とすることで時間を短縮し,より多くの演題発表ができる工夫がされていました.これにより例年のように活発な討論が行われつつ,かつスムーズな進行がなされていました.

学会のテーマは「健全な脊柱バランス:Natural Spinal Balance」です.このテーマに沿い,脊柱バランス,成人脊柱変形,進行機序,学校検診などの主題を含む合計194演題の発表がありました.秋田からは,これらの主題に沿って,県立医療療育センターの三澤晶子先生は側弯の進行機序と潜在性二分脊椎に関する口演発表,木下隼人先生は心機能障害を伴う重度脊柱変形の手術例の2例報告のポスター発表,佐々木研先生が脊柱後弯変形のmotion analysisのポスター発表,私からは脊柱アライメントに関する口演発表の4演題を発表しました.

他の発表は,メインテーマテーマに沿った特に成人脊柱変形の診断学,手術成績などに関する演題が多く見られました.これに関連して,フランスからこの分野の第一人者であり,CDシステムという脊椎インストゥルメンテーションの開発者であるDr. Duboussetによる脊柱変形治療の原理・原則に関する講演を拝聴しました.また,トピックスとしては,全身の2方向同時の撮影が低被爆で可能なEOSという装置のフランスからの専門家による講演がありました.日本まだ4台しか導入されていないものですが,このEOSを用いた研究の演題も増えており,今後普及が進むことが期待されます.側弯症学校検診のセッションでは,平成28年度から新しい運動器検診が始まるにあたり,側弯症検診のありかた,整形外科医の関わり方に関して,賛否両論の様々な意見交換がありました.

一方日本脊椎インストゥルメンテーション学会では「脊椎インストゥルメンテーションの光と影」をテーマとして新しい手術手技の成績とともに合併症の発表が多数報告されました.特別講演の新潟脊椎外科センターの本間隆男先生からは「頸椎頚髄外傷の診断学の劣化について-訴訟例からの考察-」と題して様々な難しい事例を提示してくださり,基本的な診察,診断手技の重要さを再認識しました.

昼間の学会終了後には,仙台の西多賀病院,千葉の船橋整形,千葉大の若手の先生方と新潟の繁華街である古町にてご一緒させていただき,夜更けまで交流を深めることができました.

以上のように,新潟にて研究成果を発表し,最新知見を得,様々な交流を深めることができて有意義な学会でした.留守中に業務を代行していただいた宮腰尚久准教授はじめ脊椎班の先生方,医局の方々に感謝申し上げます.