研究会レポート」カテゴリーアーカイブ

第16回秋田県手外科研究会(佐藤貴洋)

2023年6月3日秋田温泉さとみにて第16回秋田県手外科研究会がハイブリッド形式で開催されました.昨年は大学医局で本部のPC操作を行ってのオンライン参加でしたが,今年は発表者全員が現地での参加となり初めて現地参加しました.

エコーハンズオンでは,テーブル講師に指名されました.描出がまだ得意でなく,知識や経験もまた不足しているため,自分が講師となるに戸惑いを感じました.今後はしっかり人に教えられるように頑張ろうと改めて思いました.

本会では白幡毅士先生が司会,千馬誠悦会長の御発令で開始されました.急遽湯本先生が欠席されたため,一般演題の持ち時間が1人14分に伸び,深いディスカッションが可能となりました.秋田大学からは白幡先生の御指導の下,小滝先生,中西先生と自分の3演題を発表しました.自分以外の2人とも非常に見やすいスライドと落ち着いた発表,適切な質問対応で非常に素晴らしい発表でした.齋藤光先生,久田朱里先生からも貴重な症例を報告頂き,とても勉強になりました.

ミニレクチャーでは湯浅悠介先生が舟状骨骨折に関して診断から治療までレクチャー頂きました.スポーツ障害に関する復帰時期や経験した症例から得た知識についても詳しく教えて頂きました.近しい先輩のレクチャーということで非常に興味深く拝聴しました.

特別講演ではJACHO大阪病院の島田幸造先生より「肘関節外科の怖さと面白さ 〜肘関節鏡視下手術を実践して〜 」と題してご講演頂きました.肘関節外科で御高名な島田先生が下積み時代から症例に触れ,何を感じ,ご研鑽を積まれたのか詳細に教えて頂きました.島田先生は多くの手術をご執刀されるだけでなく,多くの論文もご執筆されておりました.手術した症例から感じたことを論文のテーマとして取り上げ,それをさらに深める研究する姿勢は,本当に素晴らしいと感じました.

僭越ながら閉会式の前に一般演題の最優秀賞の発表があり,私の演題を選出頂きました.本発表は白幡先生を始め,大学にいる小滝先生,中西先生のご助力を得て作成したものであり,先生方には心から感謝しております.今後も手外科医を目指し,臨床・研究共に精進していきたいと思います.

第77回秋田県整形外科医会(森下耀)

2023年5月20日, 第77回秋田県整形外科医会が行われました. COVID-19が5類感染症に移行し, 現地開催がメインの会となりました. 日頃より大変お世話になっている先生たちと久しぶりに対面でお話ができ, 大いに盛り上がりました.

まず, シンポジウムでは4名の先生がご講演をくださいました. 高齢化の進む秋田ならではのお話で、”高齢者に対する整形外科診療”と題し, 脊椎脊髄病, 骨軟部腫瘍, 関節疾患, 外傷疾患についてお話しいただきました. 高齢者の診療の現状と課題について語っていただき, 高齢者医療のモチベーションが高まるとても有意義なシンポジウムとなりました.

続いて, 若手のセッションが行われました. 今回からはResident Award SessionとYoung Specialist Award Sessionの2部門に分けられ, 若手により多くのチャンスをいただけるようになり, 若手のモチベーションもとても高かったと思います. Resident Award Sessionでは16題, Young Specialist Award Sessionでは7題のたくさんの発表があり, 各発表に対して活発なdiscussionが行われました. Resident Award Sessionの最優秀賞は大曲厚生医療センターの長岡佑樹先生が受賞され, Young Specialist Award Sessionの最優秀賞は秋田厚生医療センターの東海林諒先生が受賞されました. おめでとうございます.

その後, 教育研修講演1として, 奈良県立医科大学 骨軟部腫瘍制御・機能再建医学講座 教授 朴木寛弥先生より『骨・軟部腫瘍 最近の話題から』と題し, ご講演いただきました. 骨軟部腫瘍の診断・治療の基本的なお話, 腫瘍切除と人工関節のお話, 新規治療薬などをわかりやすくご教示いただきました. 最近では, がんゲノムプロファイリングによって臓器別の治療から遺伝子別の治療へ進歩していたり, リバース型人工肩関節置換術を用いて機能再建を行っていたり, 骨軟部腫瘍の治療が日々進化していることを実感しました.

教育研修講演2として, 東北大学大学院医学系研究科 整形外科学 教授 相澤 俊峰先生より『知って損のない脊椎外科とヒヤリハット-末梢神経障害の話題も含めて-』と題し, ご講演いただきました. 豊富な臨床経験の中から実際の症例を提示し, 脊椎外科医が気をつけなければならないことを教えていただきました. 研究の分野のヒヤリハットとして, いわゆるハゲタカジャーナルに関してご教授いただきました. なかなか普段の研究会では教えていただけないような内容で, 参加者全員が明日からの臨床, 研究に活かせる実践的なものでした.

今回のシンポジウム, 若手session, 教育研修講演とも大変勉強になる発表とご講演の連続でした. 本日学んだことを活かし, 秋田県の整形外科診療をより良いものにできるように精進していきたいと思います.

第60回秋田県脊椎脊髄病研究会(渡辺学)

2023年3月4日秋田市にぎわい交流館AUで第60回秋田県脊椎脊髄病研究会が開催されました。今回の当番幹事は秋田赤十字病院の尾野祐一先生が務めておりました。Zoomと現地のハイブリッド開催となり少しずつ現地へ足を運べる回数が増えてきたように思われます。最近はコロナ感染も少しずつ落ち着いてきており3月中旬からはノーマスクが可能となり5月には5類となることが決まっております。今後も現地開催が増えることを祈っております。

研修医や若手整形外科への基礎講座として由利組合総合病院の菊池一馬先生、秋田大学医学部付属病院の工藤大輔先生、能代厚生医療センターの佐々木寛先生からそれぞれ出血への対応、硬膜損傷、髄液漏への対応、術後感染への対応をレクチャーしていただきました。脊椎外科を目指す研修医や若手の先生にはとても有意義かつ大事な内容であり、臨床に役立つ内容でした。

また今回は記念すべき第60回であり、記念企画として秋田大学医学部付属病院の本郷道生先生からこれまでの秋田県脊椎脊髄病研究会を振り返ってというお話をいただきました。第1回から現在まで、写真や懐かしいエピソードを交えたお話を聞くことができました。今後の展望も考えられており自分たちもその一員として成長していきたいと思いました。

一般演題は5題あり、珍しい症例や治療に難渋する症例の報告が多く、活発な議論がなされておりました。その中でも記念すべき第60回の最優秀演題賞に選ばれたのは、秋田赤十字病院の浅香康人先生でした「ブラウンセカール型の症状を呈した上位頚椎OPLLを伴う非骨傷性頚髄損傷の一例」についての報告であり、治療に難渋する症例で多くの意見が飛び交っておりました。

特別公演は稲波脊椎・関節病院院長の高野裕一先生より「脊椎脊髄疾患に対する内視鏡アプローチの最新のトピックス」についてご講演いただきました。ご自身の経験から早期離床の必要性を強く確認し内視鏡へ移行した経緯、従来法からMEDやLIFへの移行や注意点のお話、FESS(full-endscopic spine surgery)やUBE (unilateral biportal endoscopy)などに関する最新のお話などがあり大変興味深く拝聴いたしました。

来年にはさらにコロナ感染が落ち着き、第61回も現地の空気を感じながら開催されることを祈っております。ご講演いただいた先生方、本会開催に当たりご尽力いただきました方々に心より感謝申し上げます。

第30回秋田県スポーツ医学研究会(野坂光司)

2023年2月18日,第30回秋田県スポーツ医学研究会がオンライン開催されました.

今回は,宮腰教授の声がけで立ち上がった,本研究会のワーキンググループ活動報告が初めて行われました.義足の方々との活動を,「Ambeins オンラインの活動報告」を佐藤陽介先生 (Ambeins 責任者)から,「秋田でも障がい児者がスポーツできる環境を目指して」を佐藤理枝子先生 (秋田県立医療療育センター リハビリテーション部門)から,「メディカルランナーが現場で傷病に遭遇した場合何ができるか.どこまでするべきか」を木村竜太先生 (秋田大学 整形外科)から,「女性アスリート指導者に対するアンケート調査」を小野寺洋平先生 (秋田大学 産婦人科)から講演いただきました.どの活動も非常に積極的に取り組まれており,とても濃い内容でした.各グループとも,まだまだ活動計画があるとのことで,ますます期待が高まりました.

特別講演1は,座長 秋田大学大学院医学系研究科医学専攻機能展開医学系 整形外科学講座 教授 宮腰尚久先生で,「足部・足関節のスポーツ傷害」を三重大学大学院医学系研究科 スポーツ整形外科 講師 西村明展先生からお話しいただきました.スポーツ安全協会の報告(2020-2021)では,部位別スポーツ傷害発生率では手指,足関節,膝,足の順となっており,足関節,足,足趾を合わせると,全スポーツ傷害の1/4を占め,日常のスポーツ傷害の中で足部・足関節領域がいかに多いかということ,スポーツ傷害の中で,最も頻度の高い足関節捻挫を中心に,距骨骨軟骨損傷,足関節前方インピンメント症候群,疲労骨折などの診断と治療の実際について,分かりやすく解説いただきました.特に鏡視下手術の第一人者でもある先生の動画は大変迫力が伝わってまいりました.

特別講演2は,座長 秋田大学大学院医学系研究科医学専攻腫瘍制御医学系血液・腎臓・膠原病内科学講座 教授 高橋直人先生で,「肝胆膵疾患と運動・栄養療法(疼痛治療も含む)」を秋田大学の卒業生でもある,福島県立医科大学 消化器内科学講座 准教授 高木忠之先生からお話しいただきました.肝硬変の成因別頻度ではC型肝炎が最多ですが,近年減少傾向であり,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が増加していること,肝硬変,さらには肝細胞癌が出現する前に,食事習慣の改善や運動療法による脂肪肝の治療が推奨されていること,簡易なレジスタンス運動による肝脂肪化の改善の実例を紹介いただきました.また,急性膵炎や慢性膵炎診療ガイドラインの改訂により,膵疾患での栄養療法が見直されましたこと,従来脂肪制限やカロリー制限を強いて来たのですが,十分な膵消化酵素を補充した上での食事療法が推奨されるようになったこと,さらに膵臓癌は増加傾向で未だに切除率が30%以下と低く癌性疼痛を伴いますが,内視鏡を利用した腹腔神経叢ブロックを行うことも可能と,幅広いお話しをいただきました.

どの講演も大変勉強になり,心より御礼申し上げます.

次回は2024年2月17日開催となります.よろしくお願いいたします.

若手セミナー・第30回秋田県スポーツ医学研究会(原田俊太郎)

2023年2月18日,毎年恒例の午前に若手セミナー・午後に第30回秋田県スポーツ医学研究会が開催されました。

若手セミナーには学生から研修医まで多くの若人たちが参加してくれました.みんなで鶏肉を使ったハンズオンも実施し楽しんでもらえました.

そして午後からはスポ医研です.一般演題ではAmbeins責任者である佐藤陽介先生、秋田県立医療療育センターの佐藤理枝子先生、秋田大学整形外科の木村竜太先生、秋田大学産婦人科の小野寺洋平先生からご発表いただきました。様々な分野の先生から、様々な視点からご発表いただき大変新鮮な討論となりました。

 特別講演Ⅰでは三重大学大学院医学系研究科スポーツ整形外科西村明展先生から「足部・足関節のスポーツ障害」についてご講演いただきました。普段の日常診療で困ることが多い足部のスポーツ障害について、診断・保存療法から手術治療のコツに至るまで大変わかりやすくご教示くださいました。明日からの患者様の治療に早速活かしていきたいと思います。

 特別講演Ⅱでは福島県立医科大学消化器内科高木忠之先生から「肝胆膵疾患と運動・栄養療法(疼痛治療も含む)」についてご講演いただきました。レジスタンス運動の有用性は自分たち整形外科にとても馴染み深い内容であり、普段あまり接することのない内臓疾患への有用性は大変興味深かったです。また外傷と腹部疾患の関連性についての発表は重度外傷などを治療する可能性のある我々にとっては普段はなかなか勉強できない分野でもあり非常に勉強になりました。今後外傷症例を治療する際はご講演内容を念頭に置いて治療にあたりたいと思います。

 コロナ禍中の開催なこともありweb開催となってしまいましたが、秋田の冬の大雪を溶かすような熱く活発な討議が行われました。次回の研究会を今から心待ちにしております。

ご講演いただいた先生方、開催にあたりご尽力いただいた方々に心より感謝申し上げます。

第13回秋田県足の外科・創外固定研究会(富永健太)

2022年12月3日、第13回秋田県足の外科・創外固定研究会がWeb開催されました。

昨年までとは異なりシンポジウム形式での開催となりました。

『足関節果部骨折・周囲骨折で気をつけること』をテーマとし、

益谷法光先生からは『果部骨折における固定方法で気をつけること』

湯浅悠介先生からは『果部骨折に伴うシンデスモーシス損傷について』

三田基樹先生からは『Posterior Pilon Fractureで気をつけていること』

原田俊太郎先生からは『ピロン骨折治療で気をつけること』

といったテーマでそれぞれご発表いただきました。どのご発表もとてもわかりやすく勉強になり、明日からの診療にすぐ活かせる内容でした。ディスカッションの内容も実臨床に即した、かゆいところに手が届く内容でありとても充実した有意義な時間となりました。

ミニレクチャーは三田先生より『骨盤輪骨折に対するスクリュー固定法』をご講義いただきました。TITSスクリュー、LC-2スクリュー、恥骨上枝スクリューについて詳細に解説していただきました。そのまま教科書にできそうなくらいクオリティの高いスライドで大変勉強になりました。

特別講演①は新百合ヶ丘総合病院 外傷再建センター 豊永真人先生より『外傷再建センターにおける創外固定法〜当院での使い分けと使用方法〜』をご講演いただきました。日本を代表する外傷センターでの創外固定の実際を学ばせていただきました。普段はあまり見ることのないハーフピンでの創外固定の工夫や軟部組織に対する配慮、松下先生流のChipping手技など目から鱗の連続でした。

特別講演②はおゆみの中央病院 人工関節・関節機能再建センター 中嶋隆行先生より『有限要素法を踏まえた人工関節ステム周囲骨折、大腿骨転子下骨折の治療戦略』『千葉大学外傷グループ千葉整形外傷研究会(CTA)9年の道のり〜若手整形外科医の焚き付け方〜』という2テーマをご講演いただきました。分類に基づくクリアカットな説明で、これまで曖昧な理解に留まっていた人工関節周囲骨折に対する理解が深まりました。また有限要素解析により視覚的に応力を確認できとてもわかりやすかったです。CTAの取り組みに関しては秋田大学でも若手を中心に同様の取り組みが始まったところであり、参考にできる点が多くありました。

今回もとても勉強になる有意義な研究会となりました。ご講演いただいた先生方、開催にあたりご尽力いただいた方々に感謝申し上げます。

第11回秋田県股関節研究会(河原木剛)

2022年11月12日(土)、第11回秋田県股関節研究会がオンラインで開催されました。毎年恒例、木島先生の躍動感溢れるオープニングムービーを皮切りに、今年も大変盛り上がる会となりました。

一般演題では、若手整形外科医が治療に携わることの多い大腿骨近位部骨折について活発な議論が繰り広げられました。また、人工関節後のforgotten joint scoreの有用性や、術後感染に対するCLAP併用の治療成績についても紹介いただき、まさに目から鱗の内容でした。

特別講演1前半は、由利組合総合病院の長幡樹先生から脆弱性骨盤輪骨折に対するアプローチについて講演いただきました。今までは保存治療が選択されることが多い骨折でしたが、痛みが強い場合には早期離床やADL向上のためにTITSといった固定術が有用であることや、手術の合併症、ピットフォールについてもわかりやすく解説いただきました。特別講演1後半では、大曲厚生医療センターの岩本陽輔先生から大腿骨近位部骨折の治療について、術式やインプラント選択、手術のタイミングをまとめて解説していただき、今までの知識を整理、アップデートすることができました。

特別講演2では、愛媛大学整形外科教授の高尾正樹先生より、「コンピュータ支援整形外科の歴史と今後の展開〜疼痛管理を含めて〜」と題して、ロボット支援手術の精度や術後の筋萎縮解析など、コンピュータ技術を活用した数多くの研究成果を紹介いただきました。AIをはじめ、こうしたコンピュータ技術により、より幅広い研究活動ができ、よりよい医療を提供できるのだと実感しました。講演を聞いて、今後の整形外科診療の発展が楽しみでなりませんでした。また、自分自身も整形外科の発展に貢献できるように精進しようと思いました。

今回も非常に勉強になる充実した研究会となり、あっという間の3時間でした。企画運営していただいた方々、ご講演いただいた先生方に御礼申し上げます。ありがとうございました。

第76回秋田県整形外科医会(佐藤貴洋)

どんどん肌寒くなり日増しに秋の深まりを感じるこの頃,第76回秋田県整形外科医会が開催されました.

まずシンポジウムでは5名の先生方がご講演くださいました.人工関節置換術のアップデートということで,現状資格をもつ人しかできないRSAについて,なじみのあるTKA,THAでは最新のロボット手術について,少し専門的なものとしては人工足関節や人工指関節についてと非常にボリュームもあり,充実感のある内容でした.教科書や文献から勉強できることもありますが,実際に手術されている先生方から,手術をしての印象というのも知ることができ,非常に有意義なセッションでした.

そして県医会の目玉であるヤングドクターセッションが始まりました.整形外科1年目,2年目の先生方も症例報告だけでなく,臨床研究にも積極的に取り組みご発表されていたのが非常に印象的でした.専門医取得後の先生方のセッションはさらにレベルが高く教育的内容や,実臨床にも直結しうる素晴らしい研究の一端など様々な内容でご発表頂きました.齋藤光先生,最優秀演題賞おめでとうございます.

特別講演1ではマツダ病院菊川和彦先生より「肩関節外科におけるリバースショルダーの現在地」と題してご講演頂きました.前半はRSAの総論としてこれまでの遍歴,原理など基礎的なところを詳細に教えて頂きました.後半にかけては肩関節疾患とRSAの各論について教えて頂き,その後,数々のRSAの御経験から生まれた臨床研究の一部をご紹介頂きました.最後には,教訓的な症例とその時の原因,対策なども考察頂き非常に勉強になりました.時折挟まれるMAZDAのスライドが素敵でした.

特別講演 2では藤田医科大学藤田順之先生より「超高齢社会における運動器疾患の問題点―腰椎変性疾患を中心に―」と題してご講演頂きました.疫学研究から腰痛が不健康期間に大きく関わるという研究結果からご講演が始まりました.運動器疾患の大きな問題として深部静脈血栓症,ポリファーマシーというトピックスに焦点を当てた臨床研究に関してご紹介頂きました.後半ではメタボと腰椎疾患との関係に関して脂肪が何たるかというところから教えて頂きました.やはり肥満は手術を受けるか受けないか関係なく,良くないなと感じました.最後に先生が行われている腰椎変性疾患に関連する最新の研究を紹介頂きました.基礎研究,臨床研究など様々な分野の研究をご紹介頂き非常に有意義な時間となりました.

今回も非常に充実した研究会となりました.本日学んだことを明日への診療に活かしていきたいと思います.

第11回秋田・札幌整形外科合同セミナー(小滝優平)

令和4年9月10日第11回秋田・札幌整形外科合同セミナーが開催されました。

コロナ禍での開催に伴いオンライン形式での開催となりました。

一般演題は札幌医科大学側から、札幌医科大学の杉憲先生から「肩関節の機能と解剖を踏まえた治療戦略」同じく札幌医科大学の輿村慎一郎先生から「当科における膝前十字靭帯損傷の治療」以上2題の発表がありました。

続いて秋田大学側から2題、秋田大学の木村竜太先生より「さまざまな病態に合併する仙腸関節障害へのアプローチ」、羽後病院の益谷法光先生より「秋田県における非定型尺骨骨折に対する治療の現状」に関して発表していただきました。実臨床における最近の取り組みから基礎的な研究まで、多岐にわたる発表を拝聴することができました。

特別公演1では「迷わない骨粗鬆症と骨粗鬆性大腿骨近位部骨折治療―AO分類やVancouver分類はコストがかかりすぎ⁉―」という演題で、秋田大学整形外科木島泰明先生よりご講演いただきました。前半はインプラント選択に有用なAkita分類を中心に、後半は実際の症例をご提示いただき大腿骨近位部骨折の治療戦略に関してご教授いただきました。有限要素によるバイオメカ的な領域から実臨床の領域まで幅広くご講演頂き、症例数の多い大腿骨近位部骨折に対す知識を深めることができました。

特別公演2では札幌医科大学寺本篤史先生から、「変形性足関節症の治療戦略~骨粗鬆症を含む保存治療から手術治療まで~」に関してご講演をしていただきました。変形性足関節症の治療戦略について田中高倉分類にあわせた保存療法、骨切り術、鏡視下関節固定術、人工関節術など関し実臨床でのデータを含めてご教授いただきました。専門性の高いイメージであった変形性足関節症の治療戦略について分かりやすく明快に示していただき、明日からの診療に役立つ知識を勉強することができました。

上肢下肢脊椎にわたる幅広い領域に関して勉強することができ、とても有意義なセミナーとなりました。オンラインの開催となったためセミナー後恒例の懇親会を催すことは残念ながら叶いませんでしたが、未来の懇親会で有意義な討論が可能となる様に日々研鑽を積む所存です。

第8回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会(大屋敬太)

2022年8月27日に第8回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会が開催されました。

本会に先立ち、12時から秋田市にぎわい交流館AUを会場に、モデルボーンを用いたハンズオンが開催されました。前線で活躍する先生方からの手厚い指導のもと、関節鏡や膝・肩人工関節、膝周囲骨切り術の手術手技を体験できるという、コロナ禍始まって以来の一大イベントになりました。筆者は他病院勤務の予定があり、現地の熱気を拝むことは叶いませんでしたが、専攻医のみならず研修医や学生の参加もあり大盛況だったようです。若き駿馬の皆さんが、すこしでも興味を持ってくれると嬉しいですね。

本研究会は塚本泰朗先生の座長のもと、スポーツに関するシンポジウムから始まりました。藤井昌先生はプロスポーツ選手の診療についての発表で、LINEを活用した情報の共有や教育方法が印象的でした。三浦隆徳先生はTHA後のスポーツについて、冨手貴教先生はTKA後のスポーツについての発表で、インプラントに対する衝撃の度合いから各スポーツを3つに分類し、術後に何なら可能なのか等を詳細にレクチャーくださいました。手術を考えている患者さんに説明するうえで大変役立つ内容でした。杉村祐介先生は肩の画像診断とスポーツについて、瀬川豊人先生はリハビリとスポーツ復帰についての発表で、それぞれ、どの肢位で撮影し、タイトネスなどをどう評価するのか、リハビリでどこまでの訓練が可能になったらどの運動を許可できるのか等、具体的に学ぶことができました。自分もここ数カ月の間、右肩の四辺間隙などが痛み可動域が低下していたので、実践したく思います。

続いて木島泰明先生の座長のもと、赤川学先生のミニレクチャーが始まりました。TKAの周術期管路の、真の最小侵襲についての講義でしたが、これは聞いていた方、特に若手の先生方にはかなり勉強になったのではないのでしょうか。執刀する医師によって手法が違うと感じていた筆者の気持ちを代弁するような事前のアンケート結果を踏まえ、文献を紹介しつつ当たり前のように行われているカクテルなどの根幹に踏み込んで解説していただき、とても知識が深まりました。

最後は齊藤英知先生の座長のもと、大阪大学大学院医学系研究科健康スポーツ科学講座教授・国際医療センター長、中田研先生から「スポーツ運動器疾患のSaMD開発研究に向けて:ハードウェアからソフトウェアまで」の題名で特別講演をしていただきました。

半月板縫合の新規器具の開発のような、医療機器開発の話に始まり、大阪大学で行われた大学生のウェアラブルデバイスによる歩数の分類や動向など、ここ秋田県に長く暮らしている身としてはもはや近未来を感じさせるほどの眩しい内容でした。自分もGPS搭載の歩数や高度などがわかるランニング用の時計を持っていますが、そのようなウェアラブルデバイスでデジタル医療に活用できそうな研究を思いつくことに驚かされました。

自分はアナログ世代だからなどという言い訳はせずに、新しいものをどんどんと吸収したくなる研究会でした。ご講演くださった先生方には心より感謝を申し上げます。