研究会レポート」カテゴリーアーカイブ

第76回秋田県整形外科医会(佐藤貴洋)

どんどん肌寒くなり日増しに秋の深まりを感じるこの頃,第76回秋田県整形外科医会が開催されました.

まずシンポジウムでは5名の先生方がご講演くださいました.人工関節置換術のアップデートということで,現状資格をもつ人しかできないRSAについて,なじみのあるTKA,THAでは最新のロボット手術について,少し専門的なものとしては人工足関節や人工指関節についてと非常にボリュームもあり,充実感のある内容でした.教科書や文献から勉強できることもありますが,実際に手術されている先生方から,手術をしての印象というのも知ることができ,非常に有意義なセッションでした.

そして県医会の目玉であるヤングドクターセッションが始まりました.整形外科1年目,2年目の先生方も症例報告だけでなく,臨床研究にも積極的に取り組みご発表されていたのが非常に印象的でした.専門医取得後の先生方のセッションはさらにレベルが高く教育的内容や,実臨床にも直結しうる素晴らしい研究の一端など様々な内容でご発表頂きました.齋藤光先生,最優秀演題賞おめでとうございます.

特別講演1ではマツダ病院菊川和彦先生より「肩関節外科におけるリバースショルダーの現在地」と題してご講演頂きました.前半はRSAの総論としてこれまでの遍歴,原理など基礎的なところを詳細に教えて頂きました.後半にかけては肩関節疾患とRSAの各論について教えて頂き,その後,数々のRSAの御経験から生まれた臨床研究の一部をご紹介頂きました.最後には,教訓的な症例とその時の原因,対策なども考察頂き非常に勉強になりました.時折挟まれるMAZDAのスライドが素敵でした.

特別講演 2では藤田医科大学藤田順之先生より「超高齢社会における運動器疾患の問題点―腰椎変性疾患を中心に―」と題してご講演頂きました.疫学研究から腰痛が不健康期間に大きく関わるという研究結果からご講演が始まりました.運動器疾患の大きな問題として深部静脈血栓症,ポリファーマシーというトピックスに焦点を当てた臨床研究に関してご紹介頂きました.後半ではメタボと腰椎疾患との関係に関して脂肪が何たるかというところから教えて頂きました.やはり肥満は手術を受けるか受けないか関係なく,良くないなと感じました.最後に先生が行われている腰椎変性疾患に関連する最新の研究を紹介頂きました.基礎研究,臨床研究など様々な分野の研究をご紹介頂き非常に有意義な時間となりました.

今回も非常に充実した研究会となりました.本日学んだことを明日への診療に活かしていきたいと思います.

第11回秋田・札幌整形外科合同セミナー(小滝優平)

令和4年9月10日第11回秋田・札幌整形外科合同セミナーが開催されました。

コロナ禍での開催に伴いオンライン形式での開催となりました。

一般演題は札幌医科大学側から、札幌医科大学の杉憲先生から「肩関節の機能と解剖を踏まえた治療戦略」同じく札幌医科大学の輿村慎一郎先生から「当科における膝前十字靭帯損傷の治療」以上2題の発表がありました。

続いて秋田大学側から2題、秋田大学の木村竜太先生より「さまざまな病態に合併する仙腸関節障害へのアプローチ」、羽後病院の益谷法光先生より「秋田県における非定型尺骨骨折に対する治療の現状」に関して発表していただきました。実臨床における最近の取り組みから基礎的な研究まで、多岐にわたる発表を拝聴することができました。

特別公演1では「迷わない骨粗鬆症と骨粗鬆性大腿骨近位部骨折治療―AO分類やVancouver分類はコストがかかりすぎ⁉―」という演題で、秋田大学整形外科木島泰明先生よりご講演いただきました。前半はインプラント選択に有用なAkita分類を中心に、後半は実際の症例をご提示いただき大腿骨近位部骨折の治療戦略に関してご教授いただきました。有限要素によるバイオメカ的な領域から実臨床の領域まで幅広くご講演頂き、症例数の多い大腿骨近位部骨折に対す知識を深めることができました。

特別公演2では札幌医科大学寺本篤史先生から、「変形性足関節症の治療戦略~骨粗鬆症を含む保存治療から手術治療まで~」に関してご講演をしていただきました。変形性足関節症の治療戦略について田中高倉分類にあわせた保存療法、骨切り術、鏡視下関節固定術、人工関節術など関し実臨床でのデータを含めてご教授いただきました。専門性の高いイメージであった変形性足関節症の治療戦略について分かりやすく明快に示していただき、明日からの診療に役立つ知識を勉強することができました。

上肢下肢脊椎にわたる幅広い領域に関して勉強することができ、とても有意義なセミナーとなりました。オンラインの開催となったためセミナー後恒例の懇親会を催すことは残念ながら叶いませんでしたが、未来の懇親会で有意義な討論が可能となる様に日々研鑽を積む所存です。

第8回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会(大屋敬太)

2022年8月27日に第8回秋田県関節鏡・膝・スポーツ整形外科研究会が開催されました。

本会に先立ち、12時から秋田市にぎわい交流館AUを会場に、モデルボーンを用いたハンズオンが開催されました。前線で活躍する先生方からの手厚い指導のもと、関節鏡や膝・肩人工関節、膝周囲骨切り術の手術手技を体験できるという、コロナ禍始まって以来の一大イベントになりました。筆者は他病院勤務の予定があり、現地の熱気を拝むことは叶いませんでしたが、専攻医のみならず研修医や学生の参加もあり大盛況だったようです。若き駿馬の皆さんが、すこしでも興味を持ってくれると嬉しいですね。

本研究会は塚本泰朗先生の座長のもと、スポーツに関するシンポジウムから始まりました。藤井昌先生はプロスポーツ選手の診療についての発表で、LINEを活用した情報の共有や教育方法が印象的でした。三浦隆徳先生はTHA後のスポーツについて、冨手貴教先生はTKA後のスポーツについての発表で、インプラントに対する衝撃の度合いから各スポーツを3つに分類し、術後に何なら可能なのか等を詳細にレクチャーくださいました。手術を考えている患者さんに説明するうえで大変役立つ内容でした。杉村祐介先生は肩の画像診断とスポーツについて、瀬川豊人先生はリハビリとスポーツ復帰についての発表で、それぞれ、どの肢位で撮影し、タイトネスなどをどう評価するのか、リハビリでどこまでの訓練が可能になったらどの運動を許可できるのか等、具体的に学ぶことができました。自分もここ数カ月の間、右肩の四辺間隙などが痛み可動域が低下していたので、実践したく思います。

続いて木島泰明先生の座長のもと、赤川学先生のミニレクチャーが始まりました。TKAの周術期管路の、真の最小侵襲についての講義でしたが、これは聞いていた方、特に若手の先生方にはかなり勉強になったのではないのでしょうか。執刀する医師によって手法が違うと感じていた筆者の気持ちを代弁するような事前のアンケート結果を踏まえ、文献を紹介しつつ当たり前のように行われているカクテルなどの根幹に踏み込んで解説していただき、とても知識が深まりました。

最後は齊藤英知先生の座長のもと、大阪大学大学院医学系研究科健康スポーツ科学講座教授・国際医療センター長、中田研先生から「スポーツ運動器疾患のSaMD開発研究に向けて:ハードウェアからソフトウェアまで」の題名で特別講演をしていただきました。

半月板縫合の新規器具の開発のような、医療機器開発の話に始まり、大阪大学で行われた大学生のウェアラブルデバイスによる歩数の分類や動向など、ここ秋田県に長く暮らしている身としてはもはや近未来を感じさせるほどの眩しい内容でした。自分もGPS搭載の歩数や高度などがわかるランニング用の時計を持っていますが、そのようなウェアラブルデバイスでデジタル医療に活用できそうな研究を思いつくことに驚かされました。

自分はアナログ世代だからなどという言い訳はせずに、新しいものをどんどんと吸収したくなる研究会でした。ご講演くださった先生方には心より感謝を申し上げます。

第8回AKAS!!!(村田昇平)

夕暮れも早まってきた残暑の季節ですが,第8回秋田県関節鏡・膝・スポーツ(AKAS)整形外科研究会が盛夏を呼び戻すような熱量を持って開催されました。

 本年からは顧問の宮腰尚久教授,会長の齊藤英知先生の御発案により,第一部ハンズオンワークショップの部,第2部ZOOM web Seminarの豪華2本立てとなりました。

 ハンズオンワークショップでは,「肩関節鏡」,「人工肩関節置換術」,「膝周囲骨切り術」,「人工膝関節置換術」の4つのテーマで開催されました.整形外科に興味のある学生,研修医,専攻医の先生方がこぞって応募してくださり,(コロナのために当日は若干欠員がでてしまい、ほぼ)満員御礼で開催されました.自分は肩関節鏡のグループで鏡視下腱板縫合について医学生の先生たちにドライキャダバーを使ってレクチャーをさせてもらいました.みなさんすごい集中力で,鏡視下でのアンカー挿入や,スーチャーグラスパーの使用,スライディングノットまであっという間に習得していました.いろんなことを素朴に質問してくださり,自分もとても刺激をもらいました.

 ハンズオンワークショップの2時間はあっという間に終わってしまいましたが,どのグループの学生,先生たちも充実感溢れるやりきった顔をしていたと思います.

終了後には斉藤会長より参加者に宮腰教授直筆サイン入りの参加証明書が一人ひとり手渡しされていました.非常に格好良い証明書で自分も欲しいなと思いました.(下にハンズオン時の参考写真を掲載します.体調管理,手指消毒,密な状況をさけることを徹底し,感染対策に十分な配慮をしながらやらせていただきました.みなさんとてもいい顔をしてますね.).来年も開催検討中とのことで今から非常に楽しみです.沢山の皆様のご参加をお待ちしています!

第2部のweb Seminarは,シンポジウム,ミニレクチャー,特別講演の3本立てでした.

シンポジウムは「〜〇〇とスポーツ〜」のテーマで,開催され,北秋田市民病院の塚本泰朗先生が座長を務められました.「プロスポーツ」について市立秋田総合病院の藤井昌先生,「THAとスポーツ」について市立田沢湖病院の三浦隆徳先生,「肩の画像診断とスポーツ」について秋田労災病院の杉村祐介先生,「TKAとスポーツ」について秋田赤十字病院の冨手貴教先生,「リハビリとスポーツ」について城東スポーツクリニック瀬川豊人先生よりご発表がありました.どの発表も最新の治験や自験例を踏まえた非常にわかりやすい内容で,大変勉強になりました.また,web Seminarではありますが,発表の後は,活発な討論が行われていました.個人的には,秋田ノーザンハピネネッツのチームドクターを努めている藤井昌先生の,アスリートに対する診療の取り組みについての発表が印象的でした.実際のアスリート診療の難しさや,診療の際のちょっとしたコツなど,非常にためになりました.

ミニレクチャーは木島泰明先生の座長のもと,大曲厚生医療センター赤川学先生よりご講義いただきました.赤川先生の患者様によりよいTKAを提供したいという珠玉のエッセンスが詰まった内容で,TKAの周術期管理への徹底したこだわりをご教示くださいました.ためになる内容でばかりで,自分もどんどん真似させていただこうと思いました.あと,8時間ぐらい聞いていたくなる本当に素晴らしいレクチャーでした.

 特別講演は,齊藤英知先生の座長のもと,大阪大学健康スポーツ科学講座教授,国際医療センター長,中田研先生より「スポーツ運動器疾患のSaMD開発研究に向けて:ハードウェアからソフトウェアまで」についてご講演を賜りました.

 中田先生の開発された半月板縫合の際に非常に有用なtie-grip suture法のtips,再生医療の話,医療支援機器開発のお話など,非常に実践的な話から,最先端医療,未来の話まで大変にわかりやすくお話いただきました.自分が全く知らないような話題もたくさんあり,非常に刺激をいただけました.世界のトップランナーである中田先生のお話を今回のように秋田で聞かせていただいたのは本当に貴重な機会となりました.

今回のAKASで学んだことなどを明日からの診療や,研究に是非とも活かしていけたらと思います.今後ともご指導ご鞭撻の程を何卒よろしくお願い申し上げます。

第13回秋田県小児整形外科研究会(河原木剛)

2022年7月9日(土)、第13回秋田県小児整形外科研究会がZoomによるオンラインにて開催されました。

一般演題では、小児の外傷や感染症、下肢変形、側湾症など多岐にわたるテーマで発表があり、活発な討議が行われました。私自身も「歩行可能な脳性麻痺児におけるはさみ脚変形への対応」という演題を発表させていただきましたが、幸運にも優秀演題賞を頂くことができました。この場をお借りして、ご指導いただいた先生方に深謝致します。

その後のミニレクチャーでは、秋田労災病院の関展寿先生より、「一般整形外科医にも知ってもらいたい成長期スポーツ傷害の知識」と題して講演をいただき、よく経験するスポーツ外傷から、足関節捻挫に対する靭帯再建術、膝のタナ障害(滑膜ヒダ障害)に対する手術治療についてレクチャーしていただきました。

特別講演では、千葉県こども病院の整形外科主任医長 及川泰宏先生より「こどもの化膿性関節炎・骨髄炎~発熱・痛みの診断・治療・鑑別~」のテーマで講演をいただきました。治療を遅らせてはならない化膿性関節炎・骨髄炎ですが、その診断にはPredictive factorが有用であることや、鑑別診断、治療等について解説していただきました。難治症例についてもご提示いただき、大変勉強になる講演でした。

今回学んだことを活かして、今後の小児整形外科診療に貢献できるよう精進してまいります。

第15回秋田県手外科研究会(岡本憲人)

2022年6月11日に第15回秋田県手外科研究会が開催されました。

研究会に先立ちエコーハンズオンセミナーも開催され、エコーガイド下神経ブロックの取得を目標に研鑽を積みました。

ハンズオンセミナーの冒頭では、市立横手病院の冨岡先生からランドマークを意識した神経同定について解説頂きました。腋窩や鎖骨上での神経ブロックの実際について教えていただき、初学者でも理解しやすい内容でした。その後実際にエコーを使用して神経描出を行いましたが、最後には全員神経描出が身についていた様でした。今後の診療への活用が期待されます。

研究会では一般演題から活発な討論が繰り広げられ、全ての演題が非常に勉強となる内容でした。優秀演題賞は中通総合病院湯浅悠介先生の「腱縫合後癒着に対しsoft wireを用いた腱剥離術を行った1例」が受賞されました。おめでとうございます。

ミニレクチャーでは北秋田市民病院の加賀望先生からは橈骨遠位端骨折の保存療法について、町立羽後病院の益谷法光先生からは切断指への初期対応から治療までについて、それぞれ解説いただきました。今回のレクチャーを通じて初期対応に少しは自信がついた先生も多いかと思います。

特別講演では、産業医科大学病院の善家雄吉先生より「教訓的な上肢・手外科症例を検討する」と題してご講演いただきました。診断や治療の遅れが機能予後の悪化に直結することを痛感する、タイトルの通り非常に教訓的な内容でした。

最初から最後まで非常に内容の濃い研究会でした。今後の県内の手外科診療に貢献できるよう精進していきたいと思います。

第75回秋田県整形外科医会(小滝優平)

2022年5月7日、オンラインにて第75回秋田県整形外科医会が開かれました。

一般演題から4題、Young Doctors Sessionから11題の発表がありました。各発表に対して非常に白熱したdiscussionが交わされました。Young Doctors Session最優秀演題賞は、「脆弱性骨盤輪骨折(FFPs)のプロトコルに沿った治療戦略」について発表された、大曲厚生医療センター岩本陽輔先生が受賞されました。

その後、教育研修講演1として、順天堂大学大学院医学研究科 整形外科・運動器医学主任教授石島旨章先生より「早期変形性膝関節症―病態に則した治療の実現を目指した現状と展望―」と題しご講演いただきました。K/L分類0、1に分類される早期変形性膝関節症の病態プロセスについて最新の知見を交えて分かりやすくお示しいただき、その治療方針についてご教示いただきました。今後いかに活動性を保ちながら、膝関節への過剰な力学的ストレスを回避させていくかという事が課題なのだと感じました。

教育研修講演2として、信州大学医学部運動機能学教室教授髙橋淳先生より「信州から世界に発信した側弯症の新知見」と題しご講演いただきました。側弯症について、多彩なデータ・エビデンス用いて具体的にお示しいただきながらご説明いただきました。また信州大学より世界へ発信された「S-line, Modified S-line」についてもご教示いただきました。自分の娘に手術するなら、という考えのもと、より低侵襲・低被ばくな手術計画・手術方法を生み出した先生方の功績に非常に感銘を受けました。

一般演題・教育研修講演とも大変勉強になる発表・ご講演でありました。本日学んだことを明日からの診療に役立てて、精進していきたいと思います。

第59回秋田県脊椎脊髄病研究会(笠間史仁)

2022年3月5日に第59回秋田県脊椎脊髄病研究会がオンライン開催されました。

「研修医・若手整形外科医のための脊椎外科基礎講座vol.10」として、今回は「脊椎のリハビリテーション」をテーマとし、秋田大学PT渡邊基起先生から「肩こりと日本人」、市立秋田総合病院PT川越厚良先生から「体幹筋としての呼吸筋」、城東整形外科PT渡部裕之先生から「脊髄神経後枝障害に対する理学療法」についてご講演いただきました。

いずれもリハビリからの目線で、患者さんの病態を深堀りし改善に至るための戦略を学べる素晴らしい内容でした。

ミニレクチャーとして秋田大学木村竜太先生より「秋田のMIST」についてご講演いただき、秋田の最小侵襲脊椎治療のこれまでの発展と現状、そして今後の展望についてご教授いただきました。

現状秋田県には脊椎内視鏡下手術・技術認定医が少なく、今後の手技の発展・拡散に若手脊椎外科医が積極的に関わっていく必要があると感じました。

一般演題6題は貴重な経験症例や椎体終板貫通スクリューに関する発表など多岐にわたり、熱い質疑応答が行われました。

最優秀演題賞は初期研修1年目にして「椎間関節が癒合している変性後側弯症に対して側方侵入法を併用して矯正固定術を行った1例」を発表し、質疑応答でも素晴らしい対応をされた秋田厚生医療センターの秋山美穂子先生が受賞されました。整形外科入局確率99.9%とのことで、今後のご活躍も期待されます。

本当におめでとうございました!

特別講演では、亀岡市立病院脊椎センター長の成田渉先生より「脊椎手術に対するデジタルトランスフォーメーション(DX) -映像配信・メタバース(仮想空間)の試み-」についてご講演いただきました。

30歳頃から一人医長として多くの症例をご経験なさっていたことに驚いたのとともに、安全に手術を行うために様々な映像技術・システム開発を自ら行うという異色さが非常に興味深かったです。またこれらのDXがスタッフなどの教育に効果的であり、実際に木村竜太先生がオンラインで手術見学を行ったお話もスゴイ時代だと感じました。「整形外科的視点」だけではなく、他分野からの視点を持つことも重要ではないかと感じ、非常に勉強になりました。

次回は記念すべき第60回となります。

若手が秋田県の脊椎外科をさらに盛り上げられるよう、本研究会で学んだ内容を診療に役立てていきたいと思います。

第29回秋田県スポーツ医学研究会 (木村竜太)

2022年2月19日、第29回秋田県スポーツ医学研究会がオンライン開催されました。

下記、プログラムからの転載になりますが、それぞれがとても興味深い内容ばかりで、スポーツの幅広さを実感いたしました。ご講演いただきましたシンポジストの先生方、誠にありがとうございました。

【シンポジウム1】スペシャリストからの提言

1)「SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体価」

富樫 賢 先生 (あきた 腎・膠原病・リウマチクリニック)

2)「アスリートと生活習慣病」

森井 宰 先生 (秋田大学 糖尿病・内分泌内科)

3)「秋田県医師会「明日はきっといい日になる」ロコモダンスプロジェクト」

高橋 郁子 先生 (秋田大学 小児科)

4)「秋田県女性ジュニアアスリートと女性医学指導の実態」

小野寺 洋平 先生 (秋田大学 産婦科)

【シンポジウム2】障がいを超えた地域スポーツの取り組み

  • 「スポーツを通した子どもたちとの関わり」

佐藤 理枝子 先生 (秋田県立医療療育センター リハリハビリテーション部門)

2)「eスポーツでつくる新たな参加の形」

若狭 利伸 先生 (社会福祉法人北杜 障がい者支援施設ほくと)

3)「義足スポーツサークルAmbeinsについて-スポーツ活動からみる義足の可能性-」

佐藤 陽介 先生 (秋田厚生医療センター リハビリテーション科)

4) 「パラアスリートサポートの最前線 〜 Tokyo 2020 Paralympic Games 活動報告 〜」

藤井 昌 先生 (市立秋田総合病院 整形外科)

特別講演1は、「最期まで自分の脚で歩くためのスポーツ疫学研究~こどもからトップアスリートまで~」と題して、千葉大学大学院国際学術研究院准教授(千葉大学大学院 医学研究院 整形外科学)山口智志先生にご講演いただきました。

山口先生は整形外科医でありながら、教育学部関連のご所属ということで、疫学をもとにしたアプローチを主体にご講演いただきました。ロコモーティブシンドロームへの介入の重要性についてデータを元にご説明いただき、改めて積極的な介入の必要を実感させていただきました。また、ヘルスリテラシーを高めるという点について、インターネット上に誤情報が多くあるからこそ大切な介入点だと思いました。アキレス腱の治療は日本は手術が増加傾向、子供は身体が硬いのが普通、扁平足は痛みの原因でない、アスリートのトランスジェンダーなど多くの話題で、疫学調査から得られる学びをご教授いただきました。

また、東京オリンピック2020で金メダル獲得のスケートボード種目の、裏側のお話も興味深く、テレビ中継の裏ではかなりのご苦労があったことを知ることができました。

スポーツ障害について、疫学調査から介入を始めるというお考え、とても素晴らしくぜひ秋田でも取り組みたいと思います。

特別講演2は、「総合診療と喘息・スポーツ」と題して、秋田大学大学院医学系研究科 総合診療・検査診断学講座 教授 植木 重治先生にご講演いただきました。

喘息の基本的な知識から、IgEが日本で発見された(石坂公成先生)こと、IgEが関係しない喘息(非アトピー型喘息、成人発症)があり、気道の上皮障害などが原因で生じること、整形外科で多用するNSAIDsに関連するアスピリン喘息(N―ERD)について、アスピリンに対するアレルギーではない=アレルギー学的検査では診断不能、問診が重要など、なかなかブラッシュアップできずにいた知識について、とてもわかりやすくご教授いただきました。

アスリートの喘息有症頻度が一般より高いこともあり、プレーへの影響がどうなのか気になっていたのですが、オリンピックのメダリストは参加者の中でも喘息有症率が高いということで、コントロールできているとプレーに影響しないということで、アスリートの支えになる内容でした。

また、総合診療部で行われている渡航外来では、英文診断書・証明書の作成や、ワクチン接種、マラリアや高山病予防薬などに取り組まれていらっしゃり、スポーツ選手にも大切な存在が身近にあることを知りました。

講演中、植木先生が不意に発せられた、「スポーツを通して全人的にみる」という表現が素敵だなと思いました。スポーツが好きな医療者は、スポーツを通してその人そのものをみたいのかもしれません。

最後に、秋田県スポーツ医学研究会では、パラスポーツ推進ワーキンググループを作り、パラスポーツ(障がい者スポーツ)の普及にも取り組んでまいります。

第15回東北MISt研究会 Best Discusser Award受賞報告 (木村竜太)

2022年1月23日、第15回東北MIST研究会が、当番世話人である福島県立医科大学ふたば救急総合医療支援センター兼整形外科学講座 渡邉和之先生のもとWeb開催されました。

前日の東北脊椎外科研究会に続いて、web開催です。

MIStという単語は、「Minimally Invasive Spinal Treatment」の略で、日本語では「最小侵襲脊椎治療」と言われます。

脊椎治療を、患者さんに、医療者に、そして社会にやさしい治療にできるよう考える場となっています。

秋田からは工藤大輔先生が「経皮的 self-tapping 椎弓根スクリューの安全性の検討 」を、私が「若手整形外科医の超音波ガイド下頚椎神経根ブロック習得の取り組み 」を発表いたしました。本演題は当大学の笠間史仁先生が企画してくれたものを、一緒にまとめたものになります。頚椎神経根ブロックも超音波ガイド下に行うことで、多くの患者さんに対して、安全で有益な治療を提供できていると感じています。超音波ガイド下神経ブロックを、整形外科医全員が行える安全で有効な手技に昇華させていけるよう、今後もハンズオンセミナーなどを定期的に継続してまいります。

特別講演は香川県立中央病院 整形外科 部長 生熊 久敬 先生から『 脊椎側臥位手術(single position surgery)の適応とコツ そして落とし穴について ( 骨粗鬆症例を含めて)』 と題してご講演いただきました。

側臥位手術は、LLIFと呼ばれる側方進入手術や、びまん性特発性骨増殖症(DISH)の椎体骨折などに有用と聞いていましたが、生熊先生の取り組みは、そのさらに何歩も先を行かれるような内容でした。安全に行うため、ナビゲーションの必要性もあると思いますが、ぜひ秋田でも取り組んでいきたい手術です。

また本会では優秀演題としてBest Presentation Awardがあり、今回「テリパラチドの椎弓根皮質骨・椎体皮質骨に対する影響 : 腰椎固定術患者における縦断的 CT 解析」 新潟大学の田中裕貴先生と、「DISHを伴う椎体骨折における、メイフィールド三点固定器を用いた体位の工夫 -前方開大予防、整復の試み-」 福島県立医科大学の小林洋先生が受賞されました。おめでとうございます。

もう1つの賞として、会で一番質問をした人に贈られるBest Discusser Awardがあり、今回私が頂戴することができました。本研究会は、脊椎外科医を志したきっかけの会であり、このような賞を頂戴できたことをとても嬉しく思います。

大変な状況で、中止される地方MISt研究会もある中、開催いただきました渡邉先生はじめ、関係の皆様に御礼申し上げます。